※この作品はR-18です。

別に素晴らしくもない時止め屑野郎が来た   作:伏見透

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六話

 

 

 焦げた防具に土がついている。地面を転がった汚れは、冒険者ギルドに入る前に落としたはずだが、それでもところどころにこびりついていた。

 俺とめぐみんは冒険者ギルドのテーブルでぐったりとしていた。

 散々なありさまだ。自分でいうのもなんだがまるで敗残兵のような格好である。

 けれどもこれは強敵と死闘を潜り抜けてきたわけではない。まあ俺らからしたら油断ならぬ敵ではあったのだが。

 

 俺は眼前に座っているめぐみんの顔を見つめながらボソッと呟く。

 

「めぐみん。お前ってもしかしてよくテンパる?」

「……そんなことあるわけないじゃないですか。学校でも一番成績優秀だったこの私が、そんなそんな」

「じゃあ、言葉変えるけど、めぐみんってビビりなの?」

「は? はぁ!? おいこらお前。その侮辱。紅魔族随一の天才に喧嘩売ってるものだと見なしますよ! 今すぐ爆裂魔法を叩き込みましょうか!」

「今日はもう無理だろ」

「……さっき撃ちましたね」

 

 それによって俺はこんなボロボロになっているのだから。

 先ほど起こった危機を思い出しながら俺は息を吐く。

 

「……しかし実際の問題、めぐみん。初心者殺しが出たくらいであんなに慌てないでくれよ」

「それについては……」

 

 めぐみんはとんがり帽子を深く被り体を縮こませる。

 主人の意気に反応してかとんがり帽子もしゅんと頭を垂れている。どういう連動機能それ?

 

「言葉もないといいますか……」

 

 練習から二日間。

 俺達は上手いことをやっていた。めぐみんは早くも爆裂魔法の位置調節を自分のものとし、危険はグッと減った。計算能力の高さは、まるで機械だ。同じようにして作られた人間とは思えない。

 

 しかし、三日目の今日。俺達は失敗をした。

 いや事故が起こったというべきか。

 

 初心者殺しに出くわしたのだ。

 名前の通り初心者にとっては強敵である。大型な獣みたいな外見をしているその魔物は知能が高く、四人に満たない初心者のチームは、死を覚悟しなければならない時もあるぐらいの厄介な魔物。

 俺達もレベルはまだ初心者だ。

 だが、かつて時間停止で逃げていたころと違って冒険者としての経験を積み、ステータス的には中級者に届いている俺。めぐみんの一部のステータスは上級者にさえ引けを取らないどころか勝っている。

 前衛の俺さえしっかりして落ち着いて戦えれば、勝てる相手である。

 

 それなのにめぐみんは暴走した。

 

「まさか、いきなり爆裂魔法をぶち込むとは」

「出会い頭に一発と思ったんです! ……ただ恐怖心がなかったかと聞かれれば、その……私としても否定はできません」

 

 今まで最も近い距離での爆裂魔法。

 マジで死ぬかと思った。損傷が少ない死体だと、高いお金を教会に払えば一度だけ蘇らせてくれるらしいが、あれをまともに食らったら骨すら残らないだろう。そもそもそんな金ないし。

 

 防具が焦げただけですんだのは、あ、やば死ぬわこれ、と俺の勘が知らせてくれたのと敏捷が高かったおかげだろう。今着ている防具は焦げて脆くなったので、新しいのを買わないといけないが。

 めぐみんといると命の危機をよく感じるせいか、勘の精度が上がっている気がする。もしギャンブルでもしたら大勝ちできそう。

 

「愚痴ったけど、別に責めてるわけじゃないんだ」

「……今さっきおもいっきり暴言吐かれたように思えましたけど」

 

 睨みをきかせるめぐみんに俺は素直に謝罪を口にする。命の危機に直面した理性が若干後退していた。

 

「確かに責めたかもしれん。口が滑ったすまん。……あんなこと言ったが、めぐみんは危機を感じても当然だしな」

「と言いますと?」

 

 指で自分を指した後、俺はテーブルにべたりと頬をつけたままこちらを見るめぐみんを指す。

 めぐみんもそこそこ泥がついている。

 ――なにかから見られている気がする。

 

「ほら、今のところチームは俺とめぐみんの二人だろ。魔物退治するには単純に役割が足りてない」

「ソードマンとアークウィザード。攻め側にまわれば強いんですが、不意を突かれた時は脆いですからね。特に私が」

 

 攻撃全振りのチームである。

 こちらが主導権を握れば正直そこそこ強い自信がある。

 俺はそんなに弱いわけではないようだし、めぐみんの一発はそれこそ強烈だ。単体なら瞬殺。複数なら俺が敵を誘導してドカン。

 

 それが、守備に回れば途端に弱くなる。

 カエルの時を思い出してみればわかる。俺は斬り込んでいくスタイルだし、めぐみんと一緒のところにはいない時が多い。どうしてもめぐみんがフリーになりやすくなってしまう。一発屋のめぐみんは、敵に近づかれたら終わりだ。カエルの時みたいに口の中に含まれるだけではすまなくなる。

 

「ユウスケは新しい仲間を見つけるつもりですか」

 

 まだ冒険者ギルドに来た理由を説明していないのに悟られたようだ。

 めぐみんは俺の腕をガッと力強く掴んだ。グググと俺の腕が引っ張られる。一応俺の方がステータス的には力は強いはずだが、それ以上の力が出ている気がする。

 

「ま、さ、か、ですけど、私を捨てて新しいパーティーのところに入ろうなんてしてませんよね?」

「は?」

「そんなことしたら大声で私を弄んで捨てた男だと言いふらしますからね。次の日には冒険者中がユウスケのことをロリコンペド野郎というあだ名で呼ぶことになるでしょう」

「キツイ冗談だな。ははは」

 

 そんなことしたら俺は捕まりかねない。

 俺がいた世界では嘘発見器というものがある。言葉通り嘘かどうかを判断する機械だが、その精度はまだ低く裁判の証拠にもならない。しかしこの世界には精度が高い嘘発見器の魔法道具とそれを裁判で証拠にできる法律があるらしい。

 

 ロリコンペド野郎の俺は実際にめぐみんを性的に弄んだ。

 つまり取り調べられたら確実に牢屋行きだ。

 

 冗談だよねめぐみん? いや、冗談じゃねえな。この目本気だわ。

 捕まれた手で器用に揉み手を擦りながら俺は笑顔を作る。

 

「いやだなぁめぐみん! 俺が大事な仲間であるめぐみんを放って別パーティーに入ろうとか考えているはずないじゃないか!」

 

 まあでもそれは本当だ。 

 正直予想していたよりめぐみんの危険度は高い。位置調整を覚えたとはいえ、一週間後生きているかちょっと不安になる。それでも彼女の実力は本物だし、なによりここで放りだすのは気持ち悪い。一度決めたことだ。めぐみんが俺の悪意やゲスさに気付いて離れるか爆裂魔法で殺されそうにでもならない限り、戦闘面においては俺は彼女を絶対に手助けしよう。

 自分でも自分のことを臆病者でクソカスゴミクズ野郎と思うが、それは譲れないところだ。

 譲れない――なんて言葉を使うのは俺にしては格好良すぎて合ってないか。

 うん。なんか嫌なだけである。

 

「それならいいんですけどね。今更ユウスケにはい降りたというのは許しませんよ。一蓮托生。ここまで爆裂魔法に理解ある人はあなた以外いませんからね。絶対あなたのことを離しません」

 

 最後はこういう時でなければ、最高の口説き文句なのだが、今の状況では恐怖にしか感じない。まあいいんだけどね。

 

 めぐみんの強く握っていた手の握力が弱まる。

 しかしその手は俺の腕を掴んだままだった。

 ――ほう! という興奮したような声がどこかから聞こえた。

 

「それなら新しくパーティーメンバーを募集するということですか」

「まあな。めぐみんを守ってくれるような仲間が欲しい」

 

 前衛職。もしくは後衛のウィザード辺りか。盗賊やプリーストなんかよりも欲しいのはそこら辺の職業である。

 魔法使い職というのは本来なら様々なことができる。冒険者を除き、多種多様なスキルを取れるのが魔法使い職の強みだ。ソードマスターが最強の一を使えるとしたら、魔法使い職は全の万能とでもいうべきか。

 

 同じ職の魔法使いが二人いてもと思うが、まあめぐみんは魔法職というかまた別物だし。

 

「でも、私達ってかなり特殊じゃないですか。私の破壊力は自分でいうのもなんですが飛びぬけていますし、ユウスケの実力も冒険者を始めたばかりとは思えないなかなかのものです。能力も初心者を越えてますし、勘の鋭さにいたっては正直近くの未来を予知しているのかと思うほどです。……一度バラして脳を調べたいぐらいですよ。――そんな私達にいきなりついてこいというのは厳しいと思うのですが」

「そうなんだよな。初心者の街だと厳しいよな。って今なんか途中変なこと言わなかったか?」

「いえ。別に」

 

 めぐみんは普通の表情で顔をテーブルにべとーとつけたまま軽く首を振る。

 なにやら物騒な言葉が聞こえた気がしたが、空耳だったらしい。

 

「聞き間違いか。ここって意外に高レベルの冒険者が混じっているのに気づいているか?」

「そういえばレベル二十ぐらいの人も見かけますね」

 

 レベル二十以上ともなればよっぽどその人に才能がないとかでもない限りは他の街で充分やっていけるレベルだ。

 この街でも高レベルの依頼はある。しかし多くは低レベル向きの依頼だ。十五レベルともなれば強さと多くの依頼があってないようになり、ここから離れる人も多い。しかし、いまだになぜか高レベルで留まっている不思議な人もいる。特に男パーティーの人達。

 

「そんな人達はとっくにパーティー組んで変えることもないから誘いに乗らないんだよな。しかし初心者をパーティーに誘うのはめぐみんの言う通りキツイかもな」

 

 俺だからまだいいが、初心者だとめぐみんの爆裂魔法で本気で死ぬ可能性がある。足手まといとかいう話ではない。

 

「難問ですね」

「そうだな。ところでめぐみん」

「なんですか?」

 

 垂れたパンダみたいに緊張をなくしてだれているめぐみんに、俺はずっと気にかかっていたことを聞くことにした。

 

「あそこの木の陰にいる女の子はめぐみんの知り合い?」

 

 木の陰からこちらを見ていた女性は俺に指摘されたと気づいたら、パッと木の陰に全身を隠れるようにする。

 いや無理だろう。その体隠すの。

 明らかに鉢に植えられた観賞用の木より彼女の体の方がデカい。主に胸が。

 

「誰ですそれ。……ああ、知らない人ですね」

 

 その言葉を聞いて振り返っためぐみんは彼女の突き出たおっぱいを見て首を振った。

 

「私には恥知らずなあんなたわけたおっぱいの知り合いはいませんよ」

 

「なななな、なにを言ってるのよめぐみん!」

 

 たわけたおっぱいさんは腕を滅茶苦茶に振りながらこちらに飛び出してきた。

 胸が揺れる揺れる。ぼよんぼよんと空耳が聞こえてくるようだ。たしかにたわけたおっぱいだ。良いものを見させてもらっている。時間停止の最中なら拝みたいぐらいだ。

 

「私達知り合いでしょ! ……もしくはその、友達というか。と、とにかくそれはないでしょ!」

 

 ケッと不良っぽく声を吐き出しためぐみんは眼付きを鋭くした。

 

「知りませんね。上級魔法を覚えてくるまで旅に出てくると言ってたのに、もう帰ってきた人は。流石にまだですよね」

「うっ」

 

 痛いところを突かれたようで巨乳をおさえるけしからんおっぱいさん。たまらんおっぱいさんだっけ?

 

「もう後ちょっとで上級魔法を覚えるスキルポイントは貯まるわよ! でも、めぐみんはどうしているか気になって、ね。ほんの少し顔を見に来たってわけ。悪いの!?」

「悪いとは言いませんが、あれだけ格好いい啖呵きって覚えずに帰ってくるって恥ずかしくないんですか。その面の皮は鉄でできているんでしょうか」

 

 話はまったくわからないが、どうやらたわわおっぱいさんはめぐみんの知り合いらしい。いや、やり取りからしてかなり親しい間柄のようだ。

 

「ううう……」

 

 めぐみんの時折出る鋭い刃の言葉に、おっぱいさんはノックアウト寸前である。俺がセコンドについてたらタオル投げ入れてたぐらい。

 成り行きを黙って見ていた俺だが、話に加わることにした。話が進みそうにないし。

 胸以外の外見特徴。相手のことがよくわかっている前提の会話。彼女の真面目そうな顔に俺は何日か前の話を思い出す。

 

「ああ、その人が前言ってためぐみんの友人か」

「ちょっと! ユウスケ!」

 

 立ち上がって叫ぶめぐみん。

 さっきまでの焦り顔はどうしたのかにんやり、それでも嬉しそうな表情を作る目の色が赤いおっぱいさん。

 

「……へぇーめぐみんってば、私のいないところではそんなこと言ってたんだ。ふーんそうなんだ。めぐみんって本心ではそんなこと考えてたんだ」

「違います! 私が言ってたのはあるえ達のことです! ゆんゆんのことじゃありません」

 

 顔を赤くして必死に弁明するめぐみんと、何度もノックダウンを取られたボクサーが最終ラウンドで相手に渾身の右ストレートをかましたように元気になった胸さん。

 

「そうだったかもな。どうだったか忘れたわ。それでめぐみん。俺にその人紹介してくれよ」

「うろ覚えなら仕方ないですね。真相は闇の中ということにしときましょう!」

 

 これ以上突っつかれても不味いと判断したのか、めぐみんはその話を終わりにした。

 そういうところの判断は早い。

 

「さて、紹介。紹介ですね。こっちにいるのは――」

 

 コホンとめぐみんはそこで咳をする。

 喉の調子を整え、彼女はバサッとマントを翻し、巨乳さんの方へと手で視線を誘導した。

 

「紅魔族の長の娘!」

 

 突然めぐみんは大声を出す。

 自然他の冒険者たちの注目はこちら。おっぱいのある人に集まる。

 

「紅魔の里にて生まれいでし才女! 学校では無遅刻無欠席で賞状を貰い、学年では大天才に次いで二位の成績を保持し、体術でも優秀だった彼女! そう! そんな彼女の名はゆんゆん!」

 

 一息にそこまで叫んだめぐみんは最後に自分の顔を指した。

 

「ちなみに学校一の大天才は私です」

 

 えらく派手に紹介されたおっ……ゆんゆんさんはというと、顔を紅潮させて体はカチンと固まらせていた。

 見るからに羞恥の極みにいるという状態だ。

 本当に不意打ちだったのだろう。次の言葉がなかなか出てこないようだった。

 

「あー、は、はの、はい。んっと、私が…その、ゆんゆんと……ですね……」

 

 それでも健気に自己紹介をしようとしているのは責任感の強さからか。

 しかし流石に限界が来たのか、彼女はめぐみんをポカポカと両手で叩きだす。涙目である。可愛い。

 

「もおお! めぐみん! なんでそんなことするのおおおお!」

「な!? 人が折角盛り上げてやったのにその言い草はなんですか!」

「そんな! そんなハードル上げられたら喋れるわけないじゃない!」

「紅魔族ならこの紹介を受けたら感激する場面ですよ。感謝されることはあっても怒られる筋合いはありません。いたっ! 今のは力入れましたね! ゆんゆんこら! いい加減にしてください!」

「いい加減にするのはめぐみんの方でしょ!」

 

 めぐみんの方は完全に善意でやったらしい。

 どうなっているのか紅魔族。知力と魔力が高い種族らしいが、ここまでくると本当に一度しっかりと調べてみるべきかもしれない。謎多い種族だ。

 

 まあ紅魔族全体を気にかけるよりまずは目の前のことだ。

 

 取っ組み合いになりかけているめぐみんとゆんゆんを俺は引きはがす。流石にソードマンの俺の方が筋力は上だ。野次馬と化しそうになっている冒険者も日本人らしい曖昧な笑みを向けて追い払う。別にこれからは面白いことは起こりませんよ、だから気にしないでくださいね的な笑みだ。

 そして俺はまだにらみ合ってる二人の仲介をする。

 

「はい、落ち着いて落ち着いて」

「ガルル!」

「野生に帰るなよめぐみん。人間に戻れ」

 

 めぐみんとゆんゆん。体格的に上で、体術もできるらしいあっちの方が勝つはずなんだろうけど、実際やったらめぐみんが勝ちそうな凄みがあるのはなんでなんだろう。

 

「久々にあった顔馴染みだろう。喧嘩することはないんじゃないか」

「そ、そうね。今日のところはここまでにしておこうかしら」

 

 よくわからない迫力に押されてまたゆんゆんは涙目になっている。

 野生化していためぐみんも途中で落としたとんがり帽子の汚れを手で払って被った。

 

「ユウスケがそう言うならそうします。今日もゆんゆんとの勝負は私の勝ちで終わりでいいですね」

「なんでよ! どう贔屓目に見ても今のは引き分け――」

「はいはい。じゃあ仲直りでいいな」

 

 また喧嘩が勃発しそうになったので無理矢理終戦させる。

 めぐみんは賢いんだが今日の初心者殺しのようにいざという時慌てやすいし、なにより喧嘩っ早い。瞬間湯沸かし器並みに熱くなる。

 俺はゆんゆんの方へ体の向きを変える。

 

「えっと、君はゆんゆんでいいんだよな。年下みたいだしさん付けはなくていいかな? 俺はユウスケ。君の同級生と今はパーティーを組ませてもらっている。よろしく頼むよ」

「あっ! こちらこそよろしくお願いします!」

 

 彼女は深々とお辞儀をする。

 胸元がかなりあいた服を着ているのでその豊満な胸の谷間が見える。この世界の可愛い子は胸元が見える服を着ないといけない決まりでもあるのだろうか。そうだとしたら天国みたいなところだが。アクア様ありがとうございます。本当にありがとうございます。

 

「さん付けはもちろんいらないです! 私のことなんてゆんゆん。歩いている人間やそこのやつなんかでもいいですよ!」

「いや、そんな呼び名はしないけどな……」

「ゆんゆん。紅魔族の挨拶はどうしたのですか。ここは一発ガツンと決める場面ですよ」

「めぐみんはすこしだまって!」

「はぁ、もう二人ともじゃれ合うな。しかしまあ紅魔族というと……」

 

 ここで俺はようやく彼女。ゆんゆんのことをじっくりと見た。

 

 彼女で真っ先に目がいくのはそのむ……目だろう。めぐみんと同じく赤い瞳。もしかしたらこれが紅魔族の特徴なのかもしれない。紅と魔。目の色と魔法使いに適した能力を持っているからつけられた種族名なのだろうか。

 服装はめぐみんは赤と黒だが、ゆんゆんはピンクと黒である。

 上着は黒を基調としていてところどころピンクのアクセをつけている。下はピンクのミニスカートだ。

 

 顔はどことなく幼さを感じさせる。童顔というか本当にまだ若いのかもしれない。めぐみんの同級生だと言ってたから俺の四つか五つ下だろう。

 それが信じられないのは彼女の発育の良さにある。

 

 おっぱいだ。

 おっぱいである。

 たわわに実った果実を二つ。彼女は持っている。

 

 それも胸元はかなり緩く、ピンク色の短いネクタイみたいなものが、彼女の谷間には挟まれている。もう誘っているとしか思えない。エロだ。エロスの塊だ。

 いや、なにを考えているんだ俺。今は彼女が紅魔族というのが重要だ。

 

「ゆんゆんもアークウィザードなのか」

「はい。私もめぐみんと一緒のアークウィザードです。というより私達の種族は子供達以外は皆アークウィザードですね」

「それは……またすごい種族だな」

 

 紅魔族がどれぐらいの規模かはわからないが、大人全員上級職とか戦力過多にもほどがある。なんでそういう種族が生まれたのか不思議だ。自然に生まれた種族なんだろうか。

 しかし、いい機会だ。彼女はめぐみんみたいにスキルを一つしか覚えてないということでもない限り優秀な魔法使いなのだろう。

 

「じゃあゆんゆんもかなりの腕を持っているってことでいいんだよな?」

「え!? そうですね……。そんな私は凄い魔法使いというわけではありませんが、中級魔法ならなんとか使えます。上級魔法はもう少しで覚えられそうなんですが……」

「おいこら待て。もしかしてユウスケ変なこと考えてませんか」

「変なことって、いやな。ゆんゆんがパーティーに入ってくれないかなとは思った」

「ええええええええ!?」

 

 何故かとてつもなく驚くゆんゆん。

 なんでだ。これだけ優秀な人材なら引く手数多だろうに。

 

 不思議に思っていると、地獄から響いてくるような声が俺の後ろからする。

 

「……ほーう。ユウスケは同じ種族のゆんゆんに乗り換えようとするのですね。うんうん。ゆんゆんにですか。……よりによってゆんゆんですか。軽ーい尻ですね。私は今日はもう爆裂魔法を撃ったんですが、もう一度撃てそうな気分ですよ。その尻に当てたらもっと尻軽くなりますかね」

「いつの間に背後に!? 違うって! ゆんゆんにはめぐみんの護衛みたいな役割を頼みたいんだって。さっき言ってただろ」

 

 気配さえしなかった。勘よりも早くめぐみんは俺の背後に回っていた。暗殺者かよ。

 めぐみんはその案について思考する。考える前に俺の尻に押し付けていた杖を退けてくれ。ムズムズする。

 

「魔法使い職が二人っていうのもバランス悪くありませんか」

「俺はそうは思わないかな。めぐみんの特殊性を考えると、悪くないパーティー構成と考えている」

 

 俺はすぐ傍に移動して、後ろにいためぐみんとゆんゆん二人を見た。

 

「もちろん。めぐみんとゆんゆんのどちらも良いと言ってくれたらだけどな」

 

 ほっ、なんとか自然に杖から離れることができた。

 

「その……。私は……」

 

 ゆんゆんは即答はできないようでちらちらとめぐみんを見ている。

 感触的には悪くなさそうな感じだ。

 

 めぐみんはというと即答だった。

 

「私は構いませんよ」

「めぐみんほんと!?」

「ユウスケは考えている人ですからね。ユウスケが言うなら成功するかもしれません。まあ、気心の知れた人がメンバーになるのも不利益とも思えませんし」

「なる! じゃあなる! 私パーティーに入ります!」

「くっつかないでください! 試しにですよ試しに! 臨時的なメンバーとして採用があるかどうかってことです!」

「えへへ。めぐみんとパーティーか」

 

 いちゃつく二人。

 喜色満面に喜んで抱き着くゆんゆんとそれを普通にめぐみんは嫌がっている。

 今日はめぐみんが爆裂魔法を撃ったばかりなので無理だが、明日クエストを受けることにしよう。

 しかしくっつかれているめぐみんの体に当たってゆんゆんのすんごいおっぱいが形を変えている。正直めぐみん代わってほしいです。

 

 

 

 

 

 

 冒険者ギルド。

 次の日も俺とめぐみん、そしてゆんゆんは昨日と同じくそこに集まっていた。

 雰囲気は重苦しい。いまだに誰一人として喋ろうとしない。ウェイトレスさんもその空気を察してか注文を取りに来ることもない。

 

 今日の依頼は終わって冒険者ギルドに集まった俺達は顔を見合わせることもなく黙っていた。隣にはめぐみんが座り、めぐみんの前にはゆんゆんが座っている。

 ただ昨日と違うのは新調した防具はなんの汚れも破損もなくて、ゆんゆんという新戦力がいるということだ。

 

 俺から口火をきった。

 

「……考えてたか?」

「考えてませんでしたよ」

「まあ、そうだよな」

 

 本当だ。まさかこんなことになるなんて思わなかった。軽い気持ちでこのパーティーを組んでみることを提案した俺だが、こんな結果になるとは。現実というのはわからないものだ。

 俺はゆっくりとさっきのクエストの戦闘を口にする。

 

「――ここまで戦闘が楽になるなんて」

「……楽勝でしたね」

 

 不運なことに初心者殺しが今日もモンスターとの戦闘中に乱入してきた。

 ただ不運なことというのは初心者殺しにとってだ。

 昨日の失敗がなんだったのかというぐらい楽に初心者殺しを退治できた。俺には疲労も何もない。毎回めぐみんのことを気にしながら戦ってすり減らしていた神経も、今回に限ってはただ外を走ってきた程度のものである。

 

「ゆんゆんの魔法で距離を取って、めぐみんの爆裂魔法で一発だったな」

「あのー。私はあんな感じで良かったですか?」

「いや良すぎだよ。安定感が半端なかったもの」

 

 後ろの心配をしなくてよくなったので俺も自由に動けるようになった。

 めぐみんも信頼のおける相手ということで慌てることもなかったようだし。普通なら四人パーティーのところを三人だが、これで完成した感すらあった。

 

「これだともっと難しいクエストでもいけそうだな」

「ユウスケ。はしゃぎすぎですよ。冒険者には落ち着きが必要です。どんな時でも冷静にですよ。……でも実際いけないことはないですね! 我らの力なら! いえーい!」

「いえーい!」

 

 盛り上がる俺とめぐみん。パチンパチンとハイタッチして喜ぶ。

 今回の手ごたえは半端なかった。慎重派の俺もこれなら上を目指せると思える。

 ハイタッチに入ろうか迷ってる今日の功労者であるゆんゆんを俺は褒める。

 

「ゆんゆんもよく見てくれていたよな。ちゃんと全体を見て魔法を使ってくれるから楽だったわ」

「あ、ありがとうございます。私も……今日のは良いと思ったような、楽ができた――いえ、別に私がサボってたわけではないですよ! そういうわけじゃなくて!」

「はぁー。何をうろたえているんですか。ゆんゆんがちゃんとやっていたのは私も見てましたよ」

「うんうん。本当によくやってくれてたよ」

 

 めぐみんはそっぽを向きながらゆんゆんに見せるように片手を上げる。彼女の意図を理解した俺は、真似てそうする。

 この世の春がきたみたいな幸せそうな顔でゆんゆんが両手を俺とめぐみんの片手にパンっと合わせた。

 

「良かったあああああ。これで私もパーティー入りよね!」

 

 胸に手を当てて心底ゆんゆんは嬉しがっている。

 こちらも見ているだけで嬉しくなる笑顔だ。

 これで終わればハッピーエンドだ。

 しかし――それで終わらせないのがめぐみんという女の子である。しれっとした表情でゆんゆんに突きつける。

 

「何を言ってるのですかゆんゆん。それとこれとは話が別ですよ」

「え? えええええ! ほ、褒めてくれたのに!?」

「まだお試し期間ですからね。一度の成功では決まりませんよ。偶然ということもありますしね。私達めぐみん最強無敵パーティーは長いスパンをかけて採用を決めるつもりです」

「ど、どおおしてそんな意地悪なこと言うのめぐみん!」

 

 じゃれ合うめぐみんとゆんゆんを見て俺は苦笑する。

 こうしてまあめぐみんが言うには一時的なメンバーとして、俺とめぐみんのパーティーに新たにアークウィザードが加わることになった。

 

 それにしてもパーティー名、クソダサすぎない? そんな名前嫌だぞ俺。

 

 

 

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