冒険者というものは夜寝るのは早いものだ。
もちろん酒を飲んでない冒険者に限る。飲酒している場合は夜遅くどころか朝まで騒いでいるが、酒を飲まない冒険者はさっさと寝床に入る。元の世界と違って夜遅くにやれることは数限られているし、昼のモンスター退治なんかで疲れているからだ。二十二時過ぎた頃には夢の世界に旅立っている冒険者も多い。
特に冬は皆眠るのが早い。
宿屋ということで寝る人のために、一階の食堂も二十一時頃にはしめてしまう。なので、一階でお手洗いをすませた俺は暗闇の中、立っていた。
「ああ、さむっ」
季節が季節だ。
寒さが肌に突き刺さってくるようだ。パジャマ代わりにしている服も薄着だし。懐が寂しいわけではないから冬服でも買わないといけないな。ゆんゆんから風邪引くといけないので、服を買いにいきましょうと俺とめぐみんはここ最近よく誘われている。
手に息を吹きかけ温めながら、俺は一つの作戦を実行しようとしていた。
今日は二十九日。
神器の時間はたっぷりある日にちだ。
それも今日は使う機会がなく、制限時間は丸々残っている。
いつものエロタイムである。
今日、赤いウェーブの髪をした女の子が馬小屋に泊まろうと入っていくのが、宿屋に帰ってくる時にちらりと見えた。あの尻の大きい子。もちろん、いつものセクハラを俺はするつもりだが、今回はいつもとは趣向を変える。
今までは時間停止の最中に一度のエロ。
何もそう決めているわけではなく、自然とその日にエロいことをするのは一人一回だけだった。
それは俺の神器に時間制限があるせいだ。手間とかを考えて、どうしても一度エロいことをすれば終わりになってしまう。準備、エロ行為、後始末。これらを含めるとどうしても時間がかかる。時間を止めているのに、時間がかかるとはおかしな話だが。
けれど、今日は制限時間は二十九分もあるので、いつもと違うことをしようと思っているのだ。
当然周囲には誰もいないが、一応いないことを確認してから俺は神器のスイッチを押した。
夜の時間が止まる。
寝静まった夜に動くのは俺だけだ。
俺はさっさと宿屋の入り口から出て、馬小屋に急ぐ。どこに寝ているかわかっているので、その場所に行く。ここまでの使用時間は僅か十五秒である。
馬小屋の中に入るとそこは案外温かい。宿屋の一階よりも温かいぐらいだ。
お目当ての彼女は藁の上に薄い布団を敷いて寝ている。
今回は仰向けで寝ている彼女は、杖を胸元ではなく横に置いていた。帽子やいつもの服もちょこんと置かれている。
俺は藁を踏みながら彼女の下へ行く。寝ているか起きているかは時間停止した今わからないが、目はつぶっているのは間違いない。彼女の上にかかっているシーツをめくり、服の上からその胸を揉む。
長袖長ズボンの色気がない彼女のパジャマ。無地の安物の寝間着である。そんな寝間着の上からおっぱいをこねる。
うむ、良いおっぱい。
あれから何度か揉んできたがなかなか絶妙な大きさだ。
手のひらの大きさというか、何故か知り合いが基本大きいか小さいかの両極端なので、安心できる大きさである。
ムニムニと彼女のおっぱいを揉みながらもう片方の手で、ズボンの中に手を突っ込む。女の子のズボンの中に手を突っ込むというのが良い。このシチュエーションだけで興奮できる。
下着の上から俺は大陰唇の部分を擦る。
上は乳首を中心的に、下は大陰唇を中心に俺は彼女の感じる場所を責めていく。たまに下着の上からクリトリスの部分に爪で刺激を与える。
三分ぐらいエロ行為をしただろう。
俺は布団をかけなおして、急いで宿屋の元いた場所に戻る。
そして時間を動かし、十秒ぐらいしたらまた――止める。
俺は時間が止まった中、赤いウェーブ髪の子の馬小屋に戻り、瞼を閉じていることを確認してから同じことをする。上と下を責めて、彼女の体に刺激を加えていく。丁寧に、愛撫していく。
これを更に二度繰り返して、残り時間が十七分ぐらいになった時、彼女の体には大きく変化が表れていた。
服の上からでもわかる。
彼女の乳首ははっきりと勃っている。
寝ている間なので、ブラジャーをしていないこともあって、彼女の硬くなった乳首は外から見ても確認できる。それにズボンの中に手を突っ込んでみたら、下もじっとりとしている。下着がじんわりと濡れている。
当然、時間停止中に体が変化することはない。
しかし、一度時間を再開させれば薄くなっているとはいえ、時間停止最中に悪戯したその感覚が体を襲う。
何度も俺は繰り返すことで、赤い魔法使いの子の体に襲い掛かる刺激によって、本人の意思とは無関係にその体は女として反応してしまっていた。
簡単にいうなら、帽子の魔法使いは性的に興奮しているのである。
これでも起きた様子がないのは、よほど冒険で疲れて帰ってきているのだろう。瞼を閉じて眠っている彼女は今は夢の中で淫らしい状況にでも陥っているのかもしれない。
「これが硬くなった乳首か」
俺は彼女の上着を胸の上まで容赦なくめくりあげる。ツンと張った乳首がそこにはあった。この世界に来てからもう何度もおっぱいを見た俺だが、性的快感を覚えている体を相手にするのは初めてだった。
柔らかくふにょっとした乳首が今はその興奮をあらわにするように硬くなっている。
手で掴むと独特の感触がする。グミ? ともちょっと違うだろうか。でも似ているとは思う。
摘まんだり引っ張ったりと俺は魔法使いの乳首を弄ぶ。
いまだ名前を知らない彼女だが、この乳首の感触は本人以外では一番知っている自信がある。もう何度も弄った乳首だ。
このツンと硬くなった生意気な乳首を俺はちゅちゅとキスをして、舌で転がす。
熟睡している彼女の顔を見ながら、勃った乳首を愛撫したり口に含んだりしていた。
そして、もちろんそれだけで収まることはなく、俺は彼女の色気のないズボンと白の下着を剥いた。最早彼女の大部分の肌がさらされている。おっぱいもおまんこも、どちらもこの粗末な馬小屋で露出している。彼女の大事な部分は俺というクズの前に、どちらとも外界の空気に当たっていた。
隠すものなどなにもない。
彼女の大陰唇はめぐみんやゆんゆんと違って毛が生えている。といってもそんなに生えているわけでもなく、ようやく生え揃いましたよ程度だった。
その生え揃った毛には彼女の愛液がついていて、てらてらと光っている。
「結構濡れてるけど、もしかして俺が何度か悪戯してたせいだろうか。それともこの子が感じやすいのかな?」
わからない。
こればっかりは不明だ。
彼女の膣をパカッと開けてみると、中はじんわりと湿っていて、受け入れ態勢である。ピンク色の膣中は男性器が入るのを期待している。しかし前に確認してたけど、この子も処女なんだよな。
俺が手を出そうとする子は処女が多すぎる。
これでは奥深くまで突っ込むことができない。
「うーん、冒険者なんて荒くれものばかりなはずなんだが、この街の冒険者はやけに紳士だな」
とある知り合いのチンピラ冒険者を除き、この街の男冒険者は女性に積極的に手を出すことはない。性犯罪なんて皆無だ。治安は本当に良い。知り合いのチンピラ冒険者曰くお前はどうせモテそうだから教えてやんねーと言うことからして、なにやら秘密があるみたいだが。
俺は既に準備万端な男性器を取り出す。
とっくに用意は終わっていて、まだかまだかと急かしていたちんこの出番だ。
彼女の足を大きく広げ、俺はその湿った女性器に鈴口を当てた。これが愛液を垂らしているおまんこの感覚か。
いつもはもっと閉じられたような感覚がするのに、入り口が開いているような感覚がある。無意識に彼女の膣はちんこを欲していた。
「このままブスっといってしまえば、さぞ気持ちいいんだろうな」
俺は残念な気持ちを押し隠しながら、その感じているおまんこを楽しむ。
膣口にちんこを押し当て、奥にある処女膜を破かないように気を付けながらぐにぐにっと生臭い竿で彼女のおまんこを蹂躙していく。
まあでも、奥に挿れなくてもこれがかなり気持ちがいい。
彼女の膣口はまだずっぽりと男性器を受け入れたことがないだけあって、キュッとしまっており、そこに押し付けるのだから、鈴口の部分への感触は強い。
ぐっぐっとまるで本当に挿入しそうになりながら、俺は腰を一心不乱に動かしていた。
「入れるなよー入れるなよー」
そう自分に言い聞かせながら、この赤いウェーブ髪をした子の女性器に醜い男性器を擦りつけていた。
赤黒く血管が浮き出たちんこが、名前も知らない彼女のおまんこに挿いる直前だ。
それも今回は彼女の女性器は性的興奮によって愛液が垂れているので、それを潤滑油として危うく処女膜を破ってしまいそうな勢いになっている。
ぐちゅぐちゅと男性器と女性器によって淫らな音が鳴り響いている。
止まった世界で、その淫靡な音だけが存在しているのだ。他にこの世界に音はない。彼女のおまんこから滴り落ちる愛液が、名前も知らない男のちんこによって擦られて音を作っている。
薄暗い馬小屋で、彼女の処女膜はもう風前の灯火だった。
鈴口が処女膜に何度も触れることがあって、腰をわずかに前に突き出すだけで彼女の十何年間守ってきた純潔は散ろうとしている。
清純そうな顔。真面目な彼女。遠くから見てておとなしめな感じのする彼女の守ってきた証が、赤黒いちんこによってその証を汚そうとしていた。
乳首を抓ったりしながら、ジュプジュプと愛液の中、俺の男性器を動かす。
事故が起きる前に、俺の方に限界が来た。
「はぁ! どこに出すか!」
ここは馬小屋だ。
元より臭いは鼻につく。髪にかけたりでもしない限り、後始末をしっかりすればそこまで気にならないだろう。
もちろん布団や服にも駄目だ。
だが、今回は肌にかけたい。
俺は彼女の柔らかな恥丘に今にも出そうな男性器を押し付け、そこで我慢を止めた。
「ああああ……」
白く濁った精子が彼女の肌に飛びかかる。出る出る! 白濁液が彼女の恥丘の先。お腹に流れだし、臍に到達する。
白濁液でコーティングされた彼女のお腹、それはとてつもなく猥褻で、ひたすらエロかった。
彼女の体を汚したというのが一目でわかる。
「もう、満足」
発情した体というのはこれほどエロいのか。
どうなるかなと考えて実行した案だったが、満足のいくものだというほかない。
「よしよし。布団には垂れなかったな」
俺の精液はべったりと彼女のお腹についていて、他に垂れたりしてはいなかった。
いつもの後始末タイムである。
一度ハンカチで白濁液を綺麗に拭き取ってから、濡らしたハンカチでお腹を拭う。そして最後に乾いたハンカチで拭いて終わりだ。元々馬小屋の臭いがあるので、ここまでしたら大丈夫だろう。
俺は服を整えて、シーツを戻してから宿屋の一階にへと戻る。
扉を開けて中に入ってから、時間を再開させる。
「残り三分か……。濡れるまでの準備時間に結構使ったからな。これが後十分ぐらいあったら更に色んなことができるんだけどな」
まあ、ないものねだりしても仕方がない。
この神器の力は強力なだけに、ある程度制限がかかるのは妥当というものだろう。
俺はすっきりした下半身で、二階へと昇っていくのだが、ふと気になってまた一階に降りてきてしまった。
「ちょっと待てよ」
元々濡れていてあれだけ刺激を加えた帽子の魔法使いの子が、どうなっているかが気になったのだ。まだ寝ているのか、ふと目覚めてしまっているのか。
「まあ見るぐらいならいけるな」
どの道、制限時間は残り三分。見て帰ってくるだけなら三十秒もかからない。
一分ぐらいそこでボーと立っていてから、ちょっとした好奇心で俺は時間を止めて、彼女の馬小屋に再訪問したら、まさかの光景が待っていた。
彼女は起きていた。
薄くなっているとはいえ、彼女の濡れた性器にあれだけ刺激が一度に加わったのだからそれもありえることだ。
俺は生唾を飲み込む。この視界の光景にどういっていいかわからず一言だけ漏らした。
「えっろ……」
彼女は、オナニーをしていた。
寝間着の上を落ちないようにと声を出さないようにか、口で裾の部分を咥え、ズボンの中に右手を入れていた。
間違いなく性器を弄っているのだろう。
少し薄幸そうで清純な容姿をしている赤いウェーブ髪の子が、一人夜更けに馬小屋で自慰をしているのだ。俺のちんこの刺激は絶頂するまでは足りなかったようで、起きて体のムラムラが収まらない彼女は、誰にも気づかれないよう必死に口を閉じて、自分のおまんこを満足させようと指を動かしている。
馬小屋の中でもある程度は寒いのに、彼女の頬には汗が流れ、必死に絶頂しようと頑張っている。
早く早くイかないとという心の声が聞こえてくるようである。
……もしかしたら俺が見ていなかっただけで、彼女の性器を執拗に弄った時にはこうして自慰をしていたのかもしれない。それで感じやすくなってたのかも。
誰にも声が聞かれないようにと声を押し殺しながら、彼女はここで何度も理由もわからず突然せつなくなったおまんこを慰めていた光景を想像する。
満足していたはずの下半身がおかわりを求めて再度勃起である。
もう制限時間が足りない俺は、宿屋のトイレに行ってから彼女と同じようにオナニーをしたのは言うまでもない。
三十日。もう冬の寒さも強くなってきた。
朝起きたら布団から出たくなくなる気温である。はーと吐いた息が白くなり、眼鏡でもしてたら邪魔になって仕方がないそんな寒さだ。俺は眼鏡していないが。
元いた世界だろうがこっちの世界だろうが、冬の厳しさに変わりはない。
「めぐみんはどんな服にするの?」
「私はもこもこしたものがいいですかね。ゆんゆんはそのみっともない胸を隠せるようなビッグな服はどうでしょう?」
「み、みっともなくなんてないよ! どっちかというと、世間一般でいうなら、あくまで一般論でいうならね! 私とめぐみんならめぐみんの体の方が……」
「――それ以上言うと本気で拳が飛びますからね。口に出されたら血みどろの死闘にならざるをえない禁句も存在するのです。……そしてさっきから話に入ってこないユウスケ。歩きながら眠っているのですか」
「女性の服の話題に入っていけるかっての。それに服とかよくわからないからな。俺は用途さえ合えばまあ変じゃなければいいや」
「折角服買うのですから、気にいったやつじゃないと勿体ないですよ。ユウスケは背も大きいですし、見てくれも……まあそんなに悪いわけではないですから、身なりを整えさえすれば格好良く見えるかもしれませんよ」
「そうですよユウスケさん。オシャレに男の人も女の人も関係ありません。オシャレするってのは男の人でも大切だと思います」
「例えば、服は黒一色にして白の仮面でも被れば――私なら惚れてしまうかもしれませんね」
「いやそんなヤバい人みたいなオシャレは……。職質されるわ」
今日は冬服を買いに俺達は街を歩いていた。ゆんゆんの前からのお誘いと、俺も流石に寒いと思っていたのでこうして三人で買い物に出かけているのだった。
財布も順調に金が貯まっているというのもある。ゆんゆんが加わって三人組になってから冒険者としては上手いこといっている。隙が少なくなり、たまに出るめぐみんのぶちギレさえなければ俺達は初心者にしては優秀な冒険者といえた。
特にゆんゆんの加入は大きい。
魔法良しで体術良し。更には可愛くおっぱいまでデカいという完ぺきな存在。正直上級魔法さえ覚えれば最前線である王都でもやっていけると思う。
俺はこの二人に比べればまあ凡人だ。
才能があると言われ、青春の殆どの時間を費やし、剣の腕を磨いてきたが、それでも劣るのは間違いないだろう。なんせ職業の下級職と上級職と目に見えて違いが表れている。というか俺の周りがおかしいのではないだろうか? めぐみんとゆんゆんはアークウィザード、この前会った変なやつのダクネスはナイトの上級職であるクルセイダーだし。クリスだけが仲間だ。レベルはようやく十二になっていまだ下級職の俺としては肩身が狭いばかりだ。
「ユウスケさんじゃないですか。買い物ですか」
そんなことを考えていたからだろうか。
一級品の元冒険者に出くわした。
友人というより知り合い。この前一度会っただけの相手だが、親し気に話しかけてきた。めぐみんが軽く頭を下げる。ゆんゆんは丁寧に頭を下げる。ここら辺で性格の違いが見られる。
「ウィズさんどうもです」
「おはようございます。私達は冬服買いに来たんですよ。めぐみんもユウスケさんもあまり服を持ってなくて。めぐみんも可愛いのに昔からオシャレはあまりしませんし」
「ふふん、私は元が天才級に可愛いからそこまで必要ないのですよ」
「なら更に磨けば伝説級になるんじゃない」
「それもそうですね。ゆんゆんもごく稀に鋭いこと言いますね」
「そ、そんな褒めたって今日の昼御飯のおかずをあげるしかできないんだからね!」
ちょろすぎるぞゆんゆん。
そこまでは褒めていない。一品儲けたとめぐみんは腹黒い顔でニヤリとしているし。
「あら。私も買い物に行く途中なんですよ。……それにしてもユウスケさん。前もそうでしたが、こんな可愛い子を二人も連れて隅に置けませんね」
このこのーと愛想の良い笑顔でからかわれる。こういう時の経験が少ないからどう返していいかわからない。
とりあえず曖昧な笑みで誤魔化す。
「はは、そうですね。俺は元が元なんで服替えてもそんなに変わらないですけど、めぐみんとゆんゆんはとても可愛くなるだろうし、ちょっと楽しみですよ」
「……はわ、わ。そ、そんな可愛いなんて。ユウスケさん」
顔を真っ赤にするゆんゆんだが、これだけ可愛ければそれぐらいの世辞は言われ慣れてもおかしくないはずなのにといつものように思う。
お世辞というか事実だ。いやこいつら容姿は本当に整っているんだよな。元の学校のクラスでもこれぐらい可愛い子なんていなかった。
「む…………」
めぐみんはというと無表情で軽く、本当に軽く――俺の脇腹を拳で当てるようにして叩く。痛くないけど、めぐみんにしたら珍しい感情表現だ。
その光景を年長者のような視線でウィズさんは眺めている。
「若いですね。微笑ましいです」
「ウィズさんもそんなに年齢変わらないでしょう。俺と大体二つぐらいの差ですよね」
外見から察するにそこまで俺と年齢の違いがあるようには見えない。
頬に手を当てて微笑する。
「もー、ユウスケさんってば。そんな上手いこと言っても商品はちょっとぐらいしかまけませんよ。まあ私は二十歳なんですが」
まけてはくれるのか。
あまり儲かってないと言ってたけど、そのせいじゃなかろうか。たまにあそこの店主は初心者にポーションを無料で配っているとか聞くし。
ふんわりとした雰囲気を出しながら、彼女はどこか遠くを見るような視線をする。見ているのは記憶の中の過去だろうか。
「どうも冒険者を辞めて店を経営してからは時間がゆっくり過ぎ去っていくような感じがしてですね。望んでやっているので、今はもちろん楽しいですが、冒険者の熱に当てられると若いなーと思ってしまうのですよ。あっ、もちろん私も若いですよ。なんせピチピチの二十歳ですから!」
大きな胸を張って自慢するように言う。
元冒険者。今はアクセルの街の魔法道具屋を営む店主。
そんな彼女に――俺は苦手意識を持っていた。
「また冒険者に戻ってみてもいいんじゃないですか」
「……そういえば風の噂でウィズさんは元凄腕のアークウィザードと聞きましたね。そのお手並みを一度拝見したいものです」
「ふふ、風の噂とは大抵尾ひれがつきますから。アークウィザードにはなれましたが、そこまで私は大した冒険者じゃなかったです。実際に見るとガッカリしてしまいますよ」
いや、嘘だ。
絶対強い。
……と、いうのも俺の勘が告げているからだ。この人を敵に回すのは不味い。
腰まで届くロングの亜麻色の髪。垂れ目の目元と柔和な笑みは優しさしか感じ取れない。そして巨乳とまさに理想のお姉さんという風貌だが、本当に凄腕だ。
この前店に行った時から感じていたが、この人は強い。それも稀に見るぐらい。確実に俺以上。ゆんゆんでも太刀打ちできないだろう。
女神であるアクア様は桁違いだとしても、アクア様を抜けば多分俺が出会った中で一番強い。このグラビアに出てたら百冊は購入しそうな美人お姉さんがである。
強いだけならめぐみんの破壊力も大したものだが、この人は強さだけではなくなんというか怖さを持っているので、俺の危機察知能力が、ビンビンに反応している。
そんな強者が初心者のアクセルの街にいるのが理解できず恐れを抱いているのである。しかし、藪をつついて蛇を出すこともないし、気づいていないふりをするしかなかった。一応他の冒険者から話を聞く限りはおっぱい大きいと物凄く優しい貧乏店主という評判しか聞かないので、冒険者に害意は持ってないように見えるし。
「冒険者に緊急通報! 緊急通報! 緊急クエストが発生します! 緊急通報! 緊急通報!」
さて、立ち話もこれぐらいにして別れようとしたところ、耳が痛いぐらいの音量のアナウンスが町中に響き渡る。
「手が空いている冒険者も手が空いてない冒険者も今すぐ冒険者ギルドに集合してください! これは訓練ではありません! 冒険者は至急冒険者ギルドに集合してください!」
どうしたんだいきなり。
あまりにも切羽詰まった呼びかけ。なにかとんでもないことが起きたのだろうか。
全員で顔を見合わす。
「……なにかとんでもないことでも起こったのだろうか。俺らも行かないと不味いよな?」
「私は冬服を買いに行きたいですし、ぶっちしてもいいんじゃないですか。ここで起こる緊急クエストなんてそんな重要なものじゃないでしょうし」
「でもめぐみん。これだけ焦っているってことは本当に大変なことかもしれないよ。私達が力になれるかわからないけど、助けに行かなきゃ」
「俺もゆんゆんに賛成だわ。何が起こっているかはわからないが、とりあえず冒険者ギルドに行った方がいいんじゃないか」
俺がこの世界に来てもう数ヶ月は経つが、こんな緊急招集は初めてだ。
何かしら大変なことが起こったに違いない。
ウィズさんは唇に手を当てて、考え込んでいるようだった。
「……この時期で緊急クエストとなるようなものがありましたっけ? ブロッコリーは終わりましたし、まさか冬将軍がこっちまで降りてきたってことはありえないでしょうし……うーん、もしや、まさか!」
うわっ、殺気!?
とんでもない殺気により俺は一歩下がる。
突然熊さえ殺しそうな殺気を放ち始めたウィズさん、その理由は次のアナウンスによるものだった。
「冒険者のみなさん!――――宝島です!」
びゅんと風が吹いた。
風とはウィズさんのことであり、とんでもない速度で走り始めたからである。
一瞬の内に背中が遠くなっていく。
「どうしたんですかウィ……はやっ!」
グイッと俺はめぐみんから手を引かれる。
「ユウスケ行きますよ! ゆんゆんもぼさっとしない! 急ぎますよ!」
「そ、そうね!」
手を引かれるまま走りだす。
小さなめぐみんの手。その感触を楽しむこともできない。
というかめぐみん速い。ステータス以上の数値出てないかこれ。
「ちょ、めぐみん状況が呑み込めないんだけど! そんなに不味いのか宝島ってのは! ここまで危険事態なのか!」
「ヤバいです。物凄くヤバいです。宝島は美味しすぎてヤバいんですよ!」
美味しすぎるからヤバい? 会話が繋がっていない。俺の頭では何を言ってるかさっぱりだ。
全速力で走りながら俺達はなんとか会話する。
「どういうことだ! それだけじゃわからないぞ!」
「はぁはぁ! 宝島っていうのはあるモンスターの別名称です! 十年に一度鉱脈から地上に上がってくる亀の化け物みたいなモンスターです」
「なんか強そうだな」
「滅茶苦茶強いようですが、そのモンスターとは敵対しません! 向こうも襲ってくることはないですし、こちらからもモンスターに攻撃を加えることはありません」
「めぐみん……! は、速いよ!」
身体能力的には優れているはずのゆんゆんが遅れている。
俺はともかくめぐみんのこの速さは一体なんなのか。
「ゆんゆん根性出しなさい! えっと、何話してましたっけ? そうそう、その正式名称が玄武というモンスターの甲羅には、鉱脈にずっと潜っている間にくっついた鉱物があるんです!」
なるほど。ようやく話が呑み込めてきた。
「それが価値ある鉱物が多いとか?」
「はい! 人の手では掘れないような場所にずっと住んでいたので、貴重な鉱物がどっさりとくっついているんですよ。たまに価値のない鉱物もありますが、殆どは貴重なものです! もうこれはヤバいです! 超ヤバいんですよ! なんせ――金銀財宝が自分の手で好き放題に取れるようなものなんですから!」
だから宝島か。
めぐみんが限界以上の力を出すのもわかる。聞いている限りでは旨味しかないクエストだ。
貧乏店主らしいウィズさんがあれだけ殺気出していたのもそのためか。本当に苦労しているんだな……。
「でも、冒険者限定でのクエストってことはその亀は攻撃してこなくても危険はあるんじゃないか」
「甲羅にくっついているのが鉱物だけとは限りませんからね。鉱物に化けたモンスターもいるので、一般人は掘れないんですよ。そのため冒険者限定のクエストとして美味しいのです!」
会話の最中も、俺達は冒険者ギルドに着くまで走る足を止めることはなかった。しかし、アナウンスから然程時間が経ってないというのに冒険者ギルドの前は混雑している。
侮れないのは冒険者の欲望か。
ウィズさんはツルハシと鞄を装備しながら、街の外へと走りだしているところだった。速すぎる。どこにもあのおっとり店主は存在しない。
「鞄とツルハシの貸し出しはここでやっていまーす! きちんと並んで順番に受け取ってください。はいそこ! 横入りしたので一番後ろです」
冒険者ギルドの前でギルドの職員総がかりで山ほどの道具を冒険者達に貸し出している。
俺達も早く並ばなくてはいけないのだが、良いことを思いついたかもしれない。
急に立ち止まった俺に、焦ったようにグイグイと手を引っ張ってくるめぐみん。
「どうしました。さっさと並びましょうよ」
「めぐみん。俺の分まで借りておいてゆんゆんと先に行っておいてくれないか。俺もすぐ行くけど、冒険者ギルドに借りるものがある」
「なんで、と聞くのも時間の無駄ですし、わかりました! さっさと来てくださいよ」
こういう時、察しの良いめぐみん好き。
ようやく追いついて呼吸を必死に整えているゆんゆんを見てから、俺は冒険者ギルドの中に入って目当てのものを借りるのだった。