まこは、対局室を出た。ただ、控室に行くのはやめようと思った。みなもが笑顔でつぶつぶドリアンジュースを渡してくる構図が容易に想像できたからだ。
「あれは、まずくはないんじゃが、ニオイがきつうてのう。さすがに後半戦の前に飲むんは、抵抗が…。」
すると背後から、
「部長。」
みなもの声がした。この時、まこには、悪魔の声にしか聞こえなかった。
まこが恐る恐る振り返ると、みなもがイヤラシイ笑みを浮かべながら缶ジュースを差し出してきた。
一瞬、まこは、つぶつぶドリアンジュースかと思ったが、なしジュースだった。
「やっぱり、白糸台のオーラスと、阿知賀のボーリング娘にやられたね。」
「不甲斐なくて済まんのう。」
「まだトップだし、気にしないで。それと、つぶつぶドリアンジュースは飲まないでイイから安心して。」
「別に嫌いじゃないんじゃが、ニオイがなぁ。」
「だから、罰ゲームは無しだから、なしジュース。」
「洒落か、これは!」
「でね。まこ部長に試して欲しいことがあるんだけど…。夏のインターハイに向けての下準備としてね。」
「それは、さっきのドラ爆対応みたいなことかのう。」
「うん。じゃあ、耳貸して。」
みなもは、楽しそうな顔で、まこに耳打ちした。これを聞いて、まこにイヤラシイ笑みが灯った。なんだか、次鋒戦で数絵が敢えて槓ドラを増やして阿知賀を叩いたのと同じような、性格の悪そうな打ち方をアドバイスしているようだ。
暫くして、まこが対局室に戻ってきた。
「(あいつは、おもしろいことを考えるのう。いっちょ、それに乗ったろうか。)」
まこが場決めの牌をめくった。前半戦と同じで、{北}だった。
起家は尭深、南家は智紀、西家は灼になった。
後半戦東一局がスタートした。
龍門渕高校の控室では、純と一がモニターで対局の様子を見ていた。一は、透華のことをハギヨシに任せ、病院から戻ってきていた。
尭深の第一打牌は{東}だった。
「ポンー。」
いきなり、まこが鳴いた。そして、打{③}。それは、尭深の連荘を阻止するがための早和了りに思えた。しかし、数巡後、
「ツモ! 平和ツモドラ1。 1300オール。」
尭深が和了った。まこは、尭深の親を流すことができなかった。
東一局一本場、尭深の第一打牌は{白}だった。そのまま、鳴きの入らない静寂な場が続いた。そして、
「ツモ! タンヤオツモドラ1。 2100オール。」
尭深が和了った。さらに連荘だ。
東一局二本場、尭深の第一打牌は{中}だった。
今回も鳴きの入らない静寂な場が続いた。数巡後、
「リーチ!」
灼が攻めに出た。そして、
「ツモ! リーチ一発ツモタンヤオ一盃口ドラ4。 4200、8200。」
倍満をツモ和了りした。これで、智紀との差は17500点。ハネ満ツモでひっくり返るところまで来た。
東二局、智紀の親番。
ここで、まこが、また動き出した。自分の第一打の直後、北家の尭深が捨てた第一打牌の{發}を鳴いた。
「ポンー。」
そして、打{6}。
数巡後、
「ロン! 發ドラドラ。3900。」
まこが、尭深から和了った。
東三局、灼の親番。尭深の第一打牌は{南}だった。
ただ、この局は、誰も和了れずに流局した。まこと智紀が聴牌。灼と尭深がノーテンで、1500点ずつのノーテン罰符が発生した。
東四局は、流れ一本場だった。尭深の第一打牌は{西}だった。
3巡後、
「ポンー。」
まこが、{東}を鳴いた。しかし、
「ツモ! 1400、2700。」
智紀が平和手をツモ和了りした。
南入した。南一局、親の尭深の第一打牌は{發}だった。
「ツモ! 平和ツモドラ1。1300オール。」
尭深がツモ和了りした。
続く南一局一本場、尭深の第一打牌は{白}だった。
中盤に差し掛かった頃、
「リーチ!」
灼がリーチをかけてきた。そして、
「ツモ! リーチツモドラ3。2100、4100!」
満貫をツモ和了りした。
南二局、智紀の親番。ここでも、まこが1巡目から動き始めた。灼の第一打牌、{1}を鳴いたのだ。
「チー!」
そして、打{七}。
この後、尭深が第一打牌として{中}を捨てた。
3巡後、
「ツモ! 一通ドラ1。500、1000。」
まこが、{9}をツモり、片和了りの一気通関を和了った。かなり、強引な和了り方だった。
南三局、灼の親番。ここでは、尭深の第一打牌は{北}だった。
7巡目、
「リーチ!」
灼が親でリーチをかけてきた。
「チー!」
まこが一発を消す。しかし、数巡後、
「ツモ! リーチツモドラ2。3900オール」
これで、智紀と灼の点差は900点。灼は、リーチ棒一本分まで迫ってきた。
続く南三局一本場、ここでも尭深の第一打牌は{北}だった。
どうも流れが灼のほうに流れていた。3巡目で、
「リーチ!」
灼が早々にリーチをかけてきた。そして、
「ツモ! リーチ一発ツモドラ2。4100オール!」
とうとう阿知賀女子高校が龍門渕高校を逆転して2位に浮上した。しかも、1位の清澄高校とも21300点の差まで縮めた。まさしく、インターハイ準決勝戦で15万点差をひっくり返した時のことを髣髴させる快進撃だった。
吉野の阿知賀女子学院麻雀部後援会は、この灼の活躍に大賑わいだった。
そして、南三局二本場、ここでの尭深の第一打牌はドラの{南}だった。
ここまでの尭深の第一打は、順に、
{東白中發南西發白中北北南}
つまり、
{東南南西北北白白發発中中}
尭深スロットは、大七星のイーシャンテンまで迫っていた。
「ポンー。」
まこが、この{南}を鳴いた。そして、打{⑧}。
「(みなもに言われたことは三つ。一つ目は、白糸台の第一打牌を可能な限り鳴くこと。二つ目は、もし可能なら白糸台の第一ツモの前にも鳴きを入れること…。」
数巡後、
「ツモ! ダブ南ドラ3。2100、4100じゃ。」
まこが満貫を和了った。
オーラスが始まる。
現段階での各校点数は、
東家:清澄高校 149400
南家:白糸台高校 33500
西家:龍門渕高校 101800
北家:阿知賀女学院 115300
誰もが気になる尭深の配牌。大七星一向聴のはず。しかし、彼女の配牌は、
{三七③⑧6南西北北白白発中}
と予想とは異なっていた。
この時、清澄高校控え室では、尭深の配牌が、山の浅いほうから、
{③白中6南西發白七北北⑧三}
の順になっていることを咲とみなもは見逃さなかった。
「咲。私の思ったとおりだったね。」
「うん。第一打牌を喰い取られたところが、まこ部長の捨て牌に置き換わってる。」
「それと、白糸台の人が第一ツモをツモる前に鳴いたところも同じだね。まこ部長の捨て牌に置き換わっちゃってる。」
「つまり、これって、蒔いた種が発芽できなかったってこと?」
「うん。ハーベストタイム不発ってとこだね。」
一方、白糸台高校控室では、淡が愕然とした表情でモニターを見つめていた。
「尭深スロットの、こんな破り方があったなんて…。」
1位との差は10万点以上。副将は、淡と同じ1年で佐々野いちごの妹、佐々野みかん。みかんは、別に弱くはないが、決勝戦での他校の選手を相手に、どれだけ食い下がれるか不安があった。多分、副将で稼ぐのは厳しいだろう。
しかも、自分の相手は、咲、衣、穏乃だ。いくら宮永照の後継者と言われる淡でも、逆転できるとは思えかった。
この時、まこの配牌には、尭深から喰い取った{東發中南}が来ていた。そして、第一打牌は{南}。
「(そして、みなもから言われた三つ目は、ラス親を連荘させることじゃ。ここでは、わしが親じゃから、わしが連荘すればいい。)」
落胆する尭深を横目に、まこが手を進めた。そして、向聴数の多い手だったが、
「ツモ! 東ドラドラ。2000オール!」
なんとか、みなもの依頼を全て成し遂げた。
続くオーラス一本場、
尭深の配牌は、普通のものになっていた。ハーベストタイムは前局で終了したのだ。
この局は、
「ツモ! 1400、2700。」
智紀が和了った。
これで、中堅戦が終了した。
「「「「有難うございました。」」」」
各校点数は、
暫定1位:清澄高校 152700
暫定2位:阿知賀女学院 111900
暫定3位:龍門渕高校 105300
暫定4位:白糸台高校 30100
白糸台高校が、他校に大きく引き離される結果となった。
控室に、まこが戻ると、みなもが、
「大役お疲れ様。私の思ったとおり、ハーベストタイムは破れるよ。」
「ほう。じゃあ、わしの罰ゲームは無しじゃな。」
「最初から無いってば。だから、なしジュースを差し入れたじゃん。」
「そうじゃったな。」
「でも、これで白糸台の中堅の人の破り方が、全国に披露されたってことだから、インターハイでは、白糸台は結構きついだろうね。」
「そうなるじゃろうな。まあ、それは、わしらには関係ないことじゃな。」
たしかにテーブルの上には、つぶつぶドリアンジュースは置かれていなかった。
まこは、それを見てホッとしながらソファーに腰を降ろした。
「じゃあ、和。副将戦。たのんだぞ。」
「はい!」
エトペンを片手に、和が控室を出て行った。
そう言えば、今大会で、まこ以降が団体戦に出るのは初めてだった。一回戦は次鋒で終了。二回戦と準決勝戦は先鋒で終了。中堅以降まで回ったのは、この決勝戦のみだった。
一方、阿知賀女子学院の控室では、2位に浮上で大賑わいだった。
灼が戻ってきた。
「ただいまー。」
「お帰り、灼。2位浮上、お疲れ様。」
晴絵も嬉しそうだった。
「じゃあ、初瀬。副将戦、頼んだよ。」
「はい。」
岡橋初瀬は、インターハイ直後に晩成高校から阿知賀女子高校に転校してきた。別に、偏差値70の進学校である晩成高校で勉強についてゆけなくなったわけではなかった。中学からの友人、憧と一緒に麻雀が打ちたかったのだ。
それに、中高一貫校の阿知賀女子高校も、高校から入る場合は、普通に偏差値66は必要だった。それが、昨年のインターハイでの活躍で、今年は入学希望者が増え、偏差値が一気に72を突破する事態になった。
今後、優秀な後輩達に恵まれることになるだろう。
初瀬が出てゆくと、急に晴絵は深刻な表情になった。
「灼。実は、清澄高校がとんでもないことをやってくれたんだ。」
「どうかしたの? はるちゃん。」
晴絵が、灼に、さっきの中堅戦の牌譜を見せた。
「白糸台の渋谷尭深のオーラスの配牌を見て欲しい。一本場じゃなく、連荘前のほう。」
灼は、なんの意味か分からなかったが、晴絵に言われて牌譜を見た。すると、
「えっ? なに、これ?」
ハーベストタイムのことは、灼も知っていたし、これまでもVTRで何回も見てきた。しかし、そこにあったのは、予想していた配牌とは違っていた。
「東一局、東二局、南三局二本場。清澄の染谷まこが渋谷の第一打牌を鳴いたところ。そこが染谷の捨て牌に置き換わったんだ。」
「本当だ。」
「それと、渋谷が第一ツモをツモる前に染谷が鳴いた局もあったね。」
「南二局…。」
「そこも、染谷の捨て牌に置き換わってる。第一ツモをツモる前に鳴かれているから、それは自動的に2巡目のツモという扱いになる。同巡にならなくなるんだ。」
「リーチに対して鳴きを入れると、一発が消えるのと同じってこと?」
「そういうこと。清澄は、勝負していなかった。ただ、これを暴く実験をしていたんだ。この中堅戦を捨てて。結果的に、渋谷尭深攻略法が全国にライブ中継された…。」
灼は、複雑な心境だった。清澄にナメられていたことは間違いない。勝負していなかったわけだから、自分のことなど眼中になかったのだろう。
しかし、結果的に2位に浮上できたわけだし、今後は、各校が一斉に、まこと同じことを尭深にしてくる。そうすれば、ハーベストタイムは恐くない。ある意味、清澄高校には感謝すべきであろう。
灼が、オーラス一本場の牌譜を見た。
「一本場は、普通の配牌だね。」
「オーラス一本場の渋谷だね。」
「うん。」
「それも暴いてくれた。オーラスで渋谷が和了れなかった時、一本場で、渋谷の配牌がどうなるのかを…。しかし、まだ一つだけ分からないことがある。渋谷がラス親になった時、もし和了って連荘したらどうなるのか。」
「でも、渋谷尭深がラス親になったことってないんじゃ…。」
「そうなんだけどね。まあ、渋谷のことは、これくらいにして…。本当に2位浮上してくれてありがとう。今大会は、優勝を目指すよ。それとシズ。」
「なに? 赤土さん。」
「少し打つよ。ギアを一速上げなくちゃいけないからね。憧、玄、入ってくれる?」
「「はい。」」
阿知賀女子高校は、大将戦の準備に入った。シズこと穏乃は、スロースターターだったため、決勝卓に上がる前に、少し打っておく必要があったのだ。
副将前半戦は、龍門渕高校の国広一が起家、南家は和、西家が佐々野みかん、北家が初瀬で開始された。
この時、和は、インターハイ決勝戦での大失態が頭から離れずにいた。本来ならば気合を入れて、みかんをトバしにゆくべくところだが、やはり集中しきれずにいた。エトペン投入前のミスの多いデジタル打ちに戻ってしまっていた。
普通なら、和は、これで自分の麻雀が打てず、他家に追い上げられただろう。しかし、和は運が良かった。他家も集中しきれていなかったのだ。
みかんは、麻里香と同様に姉の失禁事件のことを、レギュラー落ちした先輩達に何かと馬鹿にされ、清澄高校に一泡吹かせたい気持ちが強かった。しかも、今回の相手は、いちごと同様に麻雀界のアイドルと騒がれている和であった。意識しないはずがなかった。当然、
「(こいつ、叩き潰してやるぅ!)」
などと思っており、ある意味、気合は入っていたのだが、それは麻雀競技への集中とはベクトルが違っていた。当然、麻雀への集中力は欠けていた。
初瀬は、この大舞台に、必要以上に緊張していた。それで、本来の実力が出し切れていない様子だった。
一は、透華のことが心配で、いま一つ集中力に欠けていた。心ここにあらずと言ったところだった。
基本的に、この副将戦は能力麻雀ではない。デジタルな展開のはずだった。しかし、互いにミスの多い打ち方だった。
気が付けば、既に南三局に入ってきた。まこの必殺技、超高速時間跳躍が発動したのかもしれない。
ここまでの和了りは、
東一局:和の和了り(500、1000ツモ)、
東二局:みかんの和了り(初瀬に3900直撃)、
東三局:一の和了り(1000、2000ツモ)、
東四局:和の和了り(みかんに3900直撃)、
南一局:初瀬の和了り(1300、2600ツモ)、
南二局:みかんの和了り(1300、2600ツモ)
小さな場で、殆ど点数は変わらなかった。
南三局開始時点での各校点数は、
東家:白糸台高校 31500
南家:阿知賀女学院 110400
西家:龍門渕高校 104400
北家:清澄高校 153700
「(これじゃダメだ。気合を入れないと、透華に顔向けできない。)」
一が、両手で頬を叩き、気合を入れた。そして、
「ツモ! 2000、4000!」
満貫をツモ和了りした。これで、和もみかんも初瀬も目が覚めた感じがした。
「(いけない。こんな麻雀をしていたら、みなもさんに、つぶつぶドリアンジュースの刑を言い渡されてしまいます。)」
エトペンを抱える和の手に力が入ってきた。
まさに、ここからがスタートとも言うべきだろう。しかし、もう場はオーラスに入ろうとしていた。
オーラス開始時点での各校点数は、
東家:阿知賀女子学院 108400
南家:龍門渕高校 112400
西家:清澄高校 151700
北家:白糸台高校 27500
一の満貫ツモで龍門渕高校が阿知賀女子学院を逆転した。折角、灼が2位でバトンを渡してくれたのに、阿知賀女子学院は3位に転落してしまった。
初瀬は、
「(なんとかしなきゃ…。)」
とは思うのだが、焦るばかりで巧く頭が回っていかった。
無駄に一面子落したり、効率の悪い展開になった。
結局、
「ツモ! 1000、2000。」
和が和了って、前半戦が終了した。
10分間の休憩に入った。しかし、和は卓から離れずにいた。
別に控室に戻ろうとトイレに行こうと、迷子になろうと、各々の自由だ。ただ、和は、不甲斐ない打ち方をして、咲やみなもにあわせる顔がなかった。それで、対局室から出られないでいた。
和が目を閉じて座っていると、
「のーどか。」
背後から、みなもの声がした。対局室に、みなもが入ってきていたのだ。ドリアン刑が脳裏を掠める。
「えっ? みなもさん?」
和が振り返った。
「ドリアン刑は、ないから。なしってことで。」
「そうですか。一先ず安心しました。それで、なしジュースですね。まこ部長の時と同じですね。」
「まあね。でも、和らしくない打ち方だったね。」
「はい。全然集中できませんでした。インターハイ決勝での大量失点が頭に浮かんで。」
「だろうと思った。手が縮こまっている感じを受けたもん。私も、優希に代わって二回戦で打った時、最初は、そうだった。」
「みなもさんもですか?」
「うん。ちょっとね…。実は…、これは、まだ咲と照おねーちゃんにしか言っていないことなんだけど…。」
みなもは、地下麻雀での出来事を和に話しはじめた。まあ、箱割れした者達は『辱めを受ける』くらいの言葉に留めておいたが…。あれは、さすがに詳しくは話せない。
ただ、その時の記憶があるがゆえに、点を失うことも失わせることも怖くなったことや、その恐怖から逃げるために団体戦を頑なに拒否していたことを告げた。
みなもは、失点が怖いのは、和だけではない。みなもも同じであることを和に分かってもらうことで、少しでも和の心が軽くなればと思ったのだ。
一応、みなもとしては、和をリラックスさせることを目的に話をしたつもりだった。しかし、和には、正直なところ『辱め』と言う言葉だけでも刺激が強過ぎた。ただ、自分の置かれた環境が如何に平和かということだけは、認識することができた。
「世界には、そんな麻雀もあるんですね。」
「うん。でも、今、私達が打っているのは競技麻雀。」
「そうですね。」
「まあ、健全な麻雀なんだからさ。別に負けたって殺されたり辱めを受けたりするわけじゃないよ。」
「と…当然です!」
「だから、気楽に打っていいよ。和の後には、咲が控えてる。高校生一万人の頂点。嶺の上の女王がね。」
「そ…そうです……ね。」
和が深呼吸した。これで、少し気の入った表情に変わった。なにはともあれ、一応、みなもの目的は達成されたようだ。
「じゃあ、後半戦、よろしく。」
「はい。」
「控室で見てるから。」
そう言うと、みなもは静かに対局室から出て行った。