※この作品はR-18です。

みなも-Minamo-   作:おこそとのほもよろを

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第十二局:運命の西………三人役満で三家和?

 咲が用をたし終え、ホッとした顔でトイレから出てきた。

「どうして、トイレを対局室のすぐ前とかに置かないのかな。」

 これが、方向音痴でトイレに行くたびに迷子になる咲の感想…というか本音だ。夏の長野県予選決勝戦でも、これが原因で休憩中にトイレに行きそびれた。

「たしかにそうだね。でも、私と照おねーちゃんも結構方向音痴だけど、会場でトイレに行くくらいは問題ないよ。ここまでヒドイのは、咲くらいだって。」

「そうかなぁ…。」

 咲は、方向音痴の自覚はあったが、重症度についての自覚はなかった。

「それで、みなもは、なにか私にアドバイスでもあってきたのかな?」

「別に…。精神面以外で咲に言うことはないよ。平和主義で争いを嫌うから、勝負には不向きな性格ってことくらいかな。だから、敢えて負けられない大将に当ててるのは、意外と良いのかもしれないって思うけど…。」

「そんな風に思ってたんだ。」

「でも、まだ全力を出していないでしょ。」

「そんなことないってば。」

「自覚はナシね。まあ、イイか。」

「うーう。」

「ただ、手を抜いて負けるのだけはしないでね。」

「分かってるって。」

「それと、私が咲のところに来たのは、アドバイスとかじゃなくてトイレに連れてゆくため。夏の県予選でも方向音痴が原因でトイレに行きそびれたって聞いていたからね。」

「ちょっと、それって…。」

「うん。和に聞いた。」

 二人は、そうこうしながら対局室の前まで来ていた。というよりも、みなもが咲を対局室まで連れてきたと言う方が正しかっただろう。

「じゃあ、大将後半戦、たのんだよ。」

 みなもは、そう言うと対局室を後にした。

 

 咲が対局室に入ると、既に他の三人は場決めの牌を引いていた。

 {東}は穏乃、{南}は衣、{北}は淡が既に引いていた。咲は、残る{西}を引いた。この順番は、前半戦と全く同じだった。

 穏乃の起家で後半戦がスタートした。

 前半戦開始のときと同様に淡の背後に宇宙空間が広がった。絶対安全圏が発動し、全員の配牌を支配したのだ。淡のみ二向聴、他は五から六向聴だった。

 後半戦に入れば、また東場からスタートとなる。ゆえに、今は穏乃の山支配が緩くなっていた。

 3巡目に穏乃が捨てた{北}を、

「ポン!」

 淡が鳴いた。そして、次巡、

「ツモ! 北中ドラ1。1300、2600。」

 速攻で淡が和了った。

 絶対安全圏さえ発動していれば、基本的には5巡以内に他家が和了ることはない。他家は、不要牌の処理が中心で、まだ和了りへの道筋も見えないだろう。ならば、速攻に磨きをかけ、他家の手ができる前に和了れるようにする。これが淡の出した答えだった。

 淡は、速攻のブラッシュアップを目標に、夏の大会以降、努力してきた。

 しかし、特訓相手には、衣や咲、穏乃といった特殊プレイヤーがいなかった。つまり、彼女たちの支配を受けながらの速攻まではシミュレーションできていなかった。

 東二局、衣の親番。ドラは{⑧}。

 ここでも、淡の絶対安全圏が発動したが、衣の支配も動いていた。そのため、淡の配牌とツモがまるで噛み合わなかった。

 そして、そのまま、誰の鳴きもリーチも入らないまま、終盤にもつれ込んだ。

 15巡目、淡の捨てた{⑤}を、

「ポン!」

 衣が鳴いた。晒されたのは、{[⑤]横⑤[⑤]}。赤ドラが2枚あった。

 次巡、穏乃の捨てた{三}を、

「チー!」

 再び衣が鳴いた。晒されたのは{横三四[五]}。ここにも赤ドラが含まれていた。

 この連続の鳴きによって、海底牌は、衣のツモになった。そして、当然のように、

「ツモ。海底撈月、タンヤオドラ5。6000オール。」

 衣の手には、ドラである{⑧}が2枚あった。これで、咲との点数を2万点ちょっとまで狭めてきた。

 

 現在の各校点数は、

 東家:龍門渕高校 135800

 南家:清澄高校 157500

 西家:白糸台高校 26400

 北家:阿知賀女子学院 80300

 次は、東二局一本場、衣の連荘だ。

 淡の絶対安全圏と衣の支配で、咲の手は、なかなか進まなかった。終盤になり、ようやく一向聴までもってゆけた。

 この時の咲の手牌は、

 {四[五]①①①③⑤99西西西西}

「(咲は、一向聴…。まだ衣の支配が破れていないようだな。だったら大丈夫か?」

 衣の脳裏に夏の長野県大会決勝後半戦での出来事がフラッシュバックした。あの時、咲は一向聴から連槓で一気に倍満までもっていった。しかも、2000点の手を24000点に化けさせたのだ。

「(たしかに咲は、一向聴からでも衣の想像を超えるナニかをしでかしてくる。しかし、衣も逃げるわけには行かない。勝負だ!)」

 衣が{①}を捨てた。すると、

「カン!」

 咲が{①}を大明槓した。そして、咲がツモった嶺上牌は{④}だった。

「もいっこ、カン!」

 連槓で、今度は{西}を暗槓した。

 次の嶺上牌は{三}だった。

「ツモ。嶺上開花赤1。70符1翻の一本場は、1300、2400。」

 ここでも、和了り役は嶺上開花のみ。前半戦南三局と同じ和了りだった。これも、嶺上牌が分かる咲ならではの和了りだった。

 

 東三局、咲の親番。ドラは{2}。

 ここでは、淡がオーラを全開にしてきた。

「(衣の支配が強いけど、私には、まだダブルリーチの力がある。)」

 淡の配牌は、

 {二三三四四五①③⑧⑧66南}

 淡は、第一ツモの{⑧}を手に取り込み、{南}を切った。しかし、牌を横にしなかった。ダブルリーチをかけなかったのだ。

「(まだ役無しだけど、ここから手を上げてゆく!)」

 衣の支配は、他家が一向聴から先に進めることができなくする。しかし、最初から聴牌していれば話は違う。

 数巡後、淡は{五}をツモった。そして、打{二}。

 更に、数巡後、{[⑤]}をツモった。これは、もしダブルリーチをかけていたならば、和了り牌である{②}を出させるための後迷彩として、うってつけの牌だろう。これを、淡は取り込んだ。そして、打{①}。これで、手はタンヤオ一盃口赤1に変化した。

 そして、その2巡後、

「ツモ! 2000、3900!」

 淡がツモ和了りした。

 続く東四局、淡の親番。ドラは{3}。

 淡の配牌は、

 {一三四五⑥⑥⑥⑦⑨456東東}

 これは、{⑥}を暗槓して使い難くなった{⑧}を出させるパターン。

 ここでも淡は、絶対安全圏プラスダブルリーチの能力を使った。しかし、ダブルリーチをかけなかった。

「(そろそろ、穏乃の支配が本格化してくる。配牌聴牌も、ここまでかもしれない。だから、ここは、必ず和了る!)」

 ここから、打{一}。

 そして、3巡後に{東}をツモ、打{⑨}で{⑤⑦⑧}待ちに変化した。

「(でも、{⑧}はダブリー能力の和了り牌だから終盤にならないと出ないし、もしかしたら出ないかも。{⑤}は赤が二枚あるから出にくいし…。)」

 次に淡がツモってきた牌は{發}だった。

「(衣の支配を考えたら、待ちは19字牌のほうが良いかも…。)」

 そう考えて、淡は{⑦}を捨てた。

 その数巡後に赤牌である{[5]}を引き、淡は手牌の{5}と入れ替えた。

 そして、そのさらに数巡後、淡は{發}をツモった。

「ツモ! ダブ東ツモドラ1。4000オール!」

 淡にとっては、嬉しい和了りだった。しかし、この和了りで衣の心に火がついた。

「なかなか、やるじゃないか。やはり、こうでなくては楽しくない。」

 衣のオーラが、さらに強力になってゆくのを淡は感じ取っていた。

 

 東四局一本場、淡は、絶対安全圏プラスダブルリーチの能力を使った。しかし、配牌聴牌はしていなかった。

「(やっぱり、穏乃の力が私の能力に干渉してる。ここに、衣の支配が入るから、ずっと一向聴かな?)」

 この淡の読みどおり、淡の手は全く進まなかった。しかし、それは穏乃も咲も同様に思えた。

 誰も鳴きの入らない静寂な場。

 その14巡目、咲が切った{④}を、

「チー!」

 聴牌欲しさに淡が鳴いた。

 その直後、淡は、自分の犯したミスに気が付いた。

「(もしかして、私。衣に海底を回しちゃった?)」

 もしかしなくてもそうだった。本来、穏乃に行くはずだった海底牌が、これで衣のモノになった。

 そして、ラスト1巡。

「リーチ!」

 衣がリーチをかけてきた。誰も流せないし、鳴きもできない。そして、

「ツモ! 海底撈月。」

 衣の手牌は、

 {一一二二三九九⑨⑨⑨123} ツモ{三} ドラ{⑨}。

 リーチ一発ツモ海底撈月ジュンチャン一盃口の三倍満だった。

「6100、12100。」

 これが、衣の本日一番の和了りとなった。

 

 南入した。現在の各校点数は、

 東家:阿知賀女子学院 66900

 南家:龍門渕高校 151700

 西家:清澄高校 148500

 北家:白糸台高校 32900

 龍門渕高校がトップに立った。ただ、この時、既に穏乃の目には、全てのものが越えるべき山として映っていた。

 南一局、穏乃の親。

 衣と淡には、卓上に靄がかかっているような感覚があった。

 本来、衣には全員の手の高さや手の進み具合を察知できる能力がある。しかし、今、この衣のレーダーが機能しなくなっていた。

「(やはり、穏乃か?)」

 そして、衣の切った{二}を、

「ロン。平和タンヤオドラ2。11600。」

 穏乃が和了った。まさかの衣の振込みであった。

 一瞬にして、龍門渕高校が再び2位に後退した。

 続く南一局一本場、衣と淡の感じる靄が、更に濃くなった。

 二人は、手探りで麻雀を打っているような不思議な感覚に陥った。まるで、ナニか変な薬でも打たれたかのようだった。そして、衣が捨てた{⑧}を、

「ロン! 平和タンヤオ一盃口ドラ3。18300。」

 穏乃が和了った。衣の二連続振込みであった。

 

 南一局二本場、穏乃の連荘。

「(視界良好! まだ行ける!)」

 衣や淡とは違い、深い山の主である穏乃には、靄で周りが見えないような感覚はなかった。むしろ、視界は晴れ渡っていた。

 しかし、晴れているのは穏乃の周りだけではなかった。山頂も晴れていた。

「カン!」

 咲が{⑨}を暗槓した。そして、

「ツモ! 嶺上開花! 1000、2000の二本場は1200、2200。」

 面前で60符2翻を和了った。

 

 南二局、衣の親。ドラは{③}。

 この時点での各校点数は、

 東家:龍門渕高校 120600

 南家:清澄高校 153100

 西家:白糸台高校 31700

 北家:阿知賀女子学院 94600

 終盤に入り、本来ならば逆転優勝を目指し、咲以外は高い手を狙う局面になっているはずであった。衣の場合は、連荘で稼ぐ選択肢もあるが、30000点差がある。高い手を狙うのが普通であろう。

 ただ、この時、咲は

 {234[5]699南南南南白白}

 {147}待ちでハネ満一向聴だった。しかも、咲のことである。嶺上開花と面前清自摸を足して倍満ツモをやりかねない。

 しかし、

「ロン! 2600。」

 和了ったのは穏乃だった。淡からの直取りだった。

 淡からみれば、咲の連荘阻止は必要だが、ダンラスの淡から直取りする意味も、この安手をここで和了る意味も薄く感じた。

 ただ、穏乃には何かを見通す力があった。この2600和了りは、後々大きく絡んでくる。インターハイ準決勝で、1300の出和了りを見逃してゴミツモをした時のように。

 

 南三局、咲の親番。

 穏乃の支配が最高状態にまで高まった。配牌も五~六向聴ではなくなっていた。完全に淡の絶対安全圏が崩れていた。

 ただ、衣の支配も多少は効いているのか、それとも穏乃の支配によるものなのかは不明だが、淡も咲も一向聴で手の進みが止まった。

 一方の衣も、一度は聴牌したが、嫌な予感のする牌を立て続けに掴まされ、聴牌を崩していた。

「ツモ! タンヤオ一盃口ドラ1。2000、3900。」

 和了ったのは穏乃だった。

 オーラスを直前に迎えた各校点数は、

 暫定1位:清澄高校 149200

 暫定2位:龍門渕高校 118600

 暫定3位:阿知賀女子学院 105100

 暫定4位:白糸台高校 27100

 清澄高校は、安手の和了りでも流局親ノーテンでも優勝、龍門渕高校は咲に倍満直撃するか役満ツモで優勝、阿知賀女子学院は咲から三倍満以上を直取りすれば優勝できる計算になる。

 また、白糸台高校は、ラス親のため、連荘で稼ぐ方法もあったが、ダブル役満をツモるか咲から直取りすれば優勝できる。

 オーラスが始まった。ドラは{八}。

 親の淡の配牌は、

 {八九⑦⑦258東東南南南北北}

 ここから、打{2}。

 

 穏乃の配牌は、

 {一二九①①⑨189東南北白}

 国士無双二向聴。

 南二局を軽く流したのは、この配牌を予知していたのかもしれない。もし、あの局面で咲が嶺上開花と面前清自摸を付けて倍満を和了っていたら、現時点での咲と穏乃の点数は、

 咲: 165200

 穏乃: 101100

 となる。

 これでは、もし咲に役満を直撃しても100点差で負ける計算だ。

 勿論、これは南三局で、穏乃が7900よりも大きい手を和了れないことも事前に予測していたことになる。

 穏乃は、第一ツモの{三}をツモ切りした。

 

 衣の配牌は、

 {二六③③④34白白發發中中}

 ここに{③}をツモ。打{4}。

 

 咲の配牌は、

 {三四六②②[⑤][⑤]⑧⑧1267}

 {⑧}をツモで打{2}。

 

 2巡目、淡は

 {八九⑦⑦58東東南南南北北}

 {⑦}をツモ、打{8}。

 

 穏乃は、

 {一二九①①⑨189東南北白}

 {7}をツモ切り。

 

 衣は、

 {二六③③③④3白白發發中中}

 {白}をツモ、打{3}。

 

 咲は、

 {三四六②②[⑤][⑤]⑧⑧⑧167}

 {⑥}をツモ、打{六}。

 

 3巡目、淡は

 {八九⑦⑦⑦5東東南南南北北}

 {東}をツモ、早々に三暗刻聴牌で打{5}。

 

 穏乃は、

 {一二九①①⑨189東南北白}

 {發}をツモ、打{二}。

 

 衣は、

 {二六③③③④白白白發發中中}

 {發}をツモ、打{六}。

 

 咲は、

 {三四②②[⑤][⑤]⑥⑧⑧⑧167}

 {⑥}をツモ、打{三}。

 

 4巡目、淡は

 {八九⑦⑦⑦東東東南南南北北}

 {9}をツモ切り。

 

 穏乃は、

 {一九①①⑨189東南北白發}

 {⑤}をツモ切り。

 

「ポン!」

 ここで咲が鳴いた。

 {1}切りで、手牌は

 {四②②⑥⑥⑧⑧⑧67}  ポン{[⑤]横⑤[⑤]}

 タンヤオ一向聴。

 

 次巡、淡は

 {八九⑦⑦⑦東東東南南南北北}

 {9}をツモ切り。一巡前で{9}を残していれば、ツモり四暗刻聴牌だった。

「(くっそう。)」

 心の中では悔しがっていたが、淡は、それを顔に出さないようにしていた。

 

 穏乃は、

 {一九①①⑨189東南北白發}

 {⑥}をツモ切り。

 

「ポン!」

 また、ここで咲が鳴いた。

 {四}切りで、手牌は

 {②②⑧⑧⑧67}  ポン{[⑤]横⑤[⑤]}  ポン{⑥横⑥⑥}

 {58}待ちでタンヤオ聴牌。これを和了れば優勝だ。

 

 淡は

 {八九⑦⑦⑦東東東南南南北北}

 {四}をツモ切り。

 

 穏乃は、

 {一九①①⑨189東南北白發}

 {六}をツモ切り。{8}が出ないところは、さすがと言うべきだろう。

 

 衣は、

 {二③③③④白白白發發發中中}

 {3}をツモ切り。

 

 咲は、

 {②②⑧⑧⑧67}  ポン{[⑤]横⑤[⑤]}  ポン{⑥横⑥⑥}

 {中}をツモ切り。

 

「ポン!」

 待ってましたとばかりに衣が鳴いた。

 {二}切りで、手牌は

 {③③③④白白白發發發}  ポン{中中横中}

 {②④⑤}待ちで大三元聴牌。

 

 ここで、咲のツモは{⑤}

 加槓すれば、衣の槍槓の餌食になる。しかも、大三元。

 咲は{7}を落とした。

 その結果、手牌は

 {②②⑤⑧⑧⑧6}  ポン{[⑤]横⑤[⑤]}  ポン{⑥横⑥⑥}

 

 次巡、淡は

 {八九⑦⑦⑦東東東南南南北北}

 {北}をツモ、{八}切り。{九}では地獄待ちになるが、穏乃の国士無双をケアして{九}を切るのを躊躇した。

 これで、四暗刻聴牌。{9}を残していれば、ここで四暗刻を和了っていた。さすがに、ここでは悔しさが顔に出ていた。

 

 穏乃は、

 {一九①①⑨189東南北白發}

 ラス牌の{中}をツモ。阿知賀控室では、みんなホッとすると同時に一気に士気が上がってくる。

 ここで{8}切り。咲の{58}待ちが消えたところでの処理だった。

 国士無双聴牌。

 

 衣は、

 {③③③④白白白發發發}  ポン{中中横中}

 {[5]}をツモ切り。

 

 咲は、

 {②②⑤⑧⑧⑧6}  ポン{[⑤]横⑤[⑤]}  ポン{⑥横⑥⑥}

 {4}をツモ切り。

 

 次巡、淡は

 {九⑦⑦⑦東東東南南南北北北}

 {五}をツモ切り。

 

 穏乃は、

 {一九①①⑨19東南北白發中}

 {①}をツモ。捨て牌から染め手に見える咲への振込みが怖いが、勝負。ツモ切り。

 

 衣は、

 {③③③④白白白發發發}  ポン{中中横中}

 {[五]}をツモ切り。

 

 咲は、

 {②②⑤⑧⑧⑧6}  ポン{[⑤]横⑤[⑤]}  ポン{⑥横⑥⑥}

 {④}をツモ。ここから{6}切りで清一タンヤオ赤2の倍満を聴牌した。

 

 次巡、淡は

 {九⑦⑦⑦東東東南南南北北北}

 {西}をツモ、勝負で{九}切り。通し!

「(これで、小四喜四暗刻聴牌。これを和了れば逆転優勝。)」

 淡の意地が産んだダブル役満聴牌と言えよう。急にご機嫌な顔になった。

 {西}単騎待ち。

 

 穏乃は、

 {一九①①⑨19東南北白發中}

 {七}をツモ切り。

 {西}待ち

 

 衣は、

 {③③③④白白白發發發}  ポン{中中横中}

 {西}をツモ。

「(これは切れない…。淡は、あの気配からするとダブル役満、穏乃は国士無双聴牌。ともに{西}待ち。)」

 二家和(ダブロン)、三家和(トリロン)ありのルール。これを振ったら衣のトビで終了となる。

 衣は、{④}を切って{西}待ちに変えた。

「(誰が{西}をツモるか勝負だ!)」

 

 そして、次は咲のツモ番。{④⑦}待ちの倍満聴牌の手。

 しかし、ここで咲がツモったのは…、三人の共通和了り牌である{西}だった。しかも、三人とも比較的早い巡目での役満聴牌。有り得ない展開だ。

 これを捨てたら淡に96000点、穏乃に32000点、衣に32000点の支払いとなり、しかも咲のトビで終了。歴史的大逆転を喰らうことになる。

 咲は、一旦、{西}を手牌の右端につけたが、その{西}を再び掴んだ。

 

 清澄高校控室では、モニターでこの様子を見ながら、

「咲さん!」

 和が祈るような気持ちで叫んでいた。

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