※この作品はR-18です。

みなも-Minamo-   作:おこそとのほもよろを

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第十七局:魔法にかかった魔法少女

 長野県大会の翌日、東東京大会が開催された。

 臨海女子高校のネリーは、清澄高校の次鋒が、みなもであることを知って闘志を燃やした。そして、監督のアレクサンドラ・ヴェントハイムに、

「大会当日にメンバー訂正がきくんでしょ。」

 と鋭い眼光を向けて聞いた。

「できることは、できるが…。」

「じゃあ、ネリーを次鋒にして。ミナモ・ニーマンと戦いたい。絶対、あいつを殺してやりたい。」

 恐ろしいほどの迫力だった。地下麻雀での出来事が、彼女をそうさせていた。

 あの日、ネリーは大切なものを失った。しかも、気絶させられた上、筋肉弛緩剤まで打たれて強引に性器に挿入された棒を直径10センチまで膨らまされた。

 もはや、あれは棒ではなかった。最初、千歳あめだったのがキュウリになり、いつしか冬瓜になった。ソーセージを経てハムになったとも言える。

 いずれにしても、ネリーにとっては、あそこに強引にクサビを打ち込まれたようにしか思えなかった。

 途中までしか覚えていないとは言え、彼女には忌々しい記憶だった。今でも思い出しては、ミナモへの殺意が湧く。

「しかし、お前には大将が…。」

「いいから、あいつを殺らせろ! あのウラミ、今こそ晴らしてやる!」

 ここまで激しいネリーは、見たことがない。本当に、人を殺しそうな勢いだった。

 そうは言っても、勝てば名が売れ、負けても最大10万ユーロの大金が貰えると聞いて地下麻雀に喜んで参加したのはネリーだった。たしかにチームは負けたが、結果的にネリーは10万ユーロを手にしていた。なので、本来恨むのは筋違いなのだが、恨むことで精神を保っていた部分もあった。

 やむを得ず、アレクサンドラは、急いでメンバー訂正の紙を大会本部に提出した。

 臨海女子高校は、先鋒に置いた日本人選手の力量不足で、先鋒戦では大差をつけられたが、次鋒ネリーと中堅雀明華の2人で相手校をトバし、余裕で代表を決めた。

 

 数日後、

「久しぶりだねぇ。」

 熊倉トシが、清澄高校を訪れた。

 その日は暑かった。さすがに麻雀部でもエアコンをつけていた。

 ただ、この日は、麻雀部はレギュラー5人と補員2人、ムロ、閑無、恭子のみで、他は帰宅させた。京太郎も例外ではなかった。

 部室が暗幕カーテンで閉められた。

「これに、マホちゃんが出ていたよ。既に、ニーマンの魔法…まあ、催眠術みたいなものだね。みなもと同じで記憶を奪われているみたいだねぇ。それにしても、団体戦だけど、本当、この子は、とんでもない麻雀をするねぇ。」

 トシがBDを取り出した。

「敵ながら、あっぱれだよ。この子を取ってかれるとはね。しかも、去年、ルール改定の話が出てね。次の世界大会からは、留学生は留学先の代表になっても良いことになったよ。つまり、この子はドイツ代表にもなれるってことだね。」

 レギュラー5人と補員2人には、既にマホがドイツに連れ去られたことを、県大会個人戦の翌日に告げていた。

「でも、これを高校生に見せるのはねぇ…。それも女の子が見るには、ちょっと…。」

 地下麻雀の様子が収められたディスクだった。当然、箱下になったチームのメンバーの痴態が映っている。とても、未成年に見せられるようなものではなかった。

 トシの言いたいことは、みなもが一番よく知っていた。女子高生が見るにはエグい…と言うよりもグロいと言ったほうが正しいかもしれない。

 当然、みなもは、トシの言うことに賛成だった。

「私も、そう思う。ねえ、咲、和。私達は見るのやめようよ。」

 しかし、和は、

「みなもさんに聞いて、とんでもないものだという理解はあります。それに、そこにマホが映っているのでしたら、マホが今、何をしているのかを知りたいです。」

 と答えた。どんな映像が映っていようと耐える覚悟を決めていたのだ。

 トシは、困った表情で、

「でもねぇ。恭子さんですら、ちょっと見せるのはマズイかもしれないしねぇ。一応、未成年だし…。」

 と言った。すると、恭子は、

「私は、選手ではなくコーチです。彼女達を守る立場です。それに、マホも来年、ここに来るつもりと聞いていました。ならば、私の教え子になるはずだった選手です。見させてください。」

 と、自分も覚悟を決めていることを主張した。

「仕方ないねぇ。後悔しないでね。」

 トシが、ディスクを恭子に渡した。恭子は、それをBDプレイヤーに挿入した。

 テレビ画面に、マホの姿が映し出された。みなもには、見慣れた部屋だった。それは、地下麻雀の風景であった。

 その時、マホは袖なしのガウン一枚しか身に着けていなかった。勿論、対戦相手も同じであった。ただ、マホのガウンは、他の選手よりも丈が随分と短かった。もう少しで秘部が見えそうな感じだった。

「なんでマホだけ、あんなのなんだ?」

 優希が聞いた。すると、

「あれは、チョンボ服。チョンボすると、そのプレイヤーだけ、あのガウンに着替えさせられる。」

 みなもが、そう答えた。

「チョンボか。マホらしいじょ。」

 ただ、試合はこれからだ。まだチョンボしていない。みなもには、何故マホが既にチョンボ服を着ているのは分からなかった。

 すると、トシが、

「この子は、必ず一回チョンボするからね。チョンボ姫とも呼ばれているらしいよ。それで、わざわざ着替えるのが面倒だから、最初からあの短いガウンを着てくるみたいね。」

 と説明してくれた。ただ、チョンボ姫のニックネームからは想像できないほど恐ろしい麻雀を打つ。それを、みなもは、まだ知らなかった。

 

 ルールは各チーム25000点持ちで、先鋒、次鋒、中堅、副将、大将が各1半荘ずつ対局を行い、点数は、当然、チームの次の対局者に引継がれる。また、芝棒は1本当たり300点ではなく1500点と大きい。ツキのある者に連荘されると結構厳しい。

 各プレイヤーの後ろ、少し離れたところに、同じチームのメンバー達が前後2列に置かれた4つの椅子に、それぞれ座っていた。

 持ち点が5000点を割ると、そのチームは全員ガウンを脱がされ、裸になる。そして、箱割すると、長さ22センチ程度、太さ1センチ程度の棒がメンバー全員の性器に挿入されることになっている。

 また、その棒の体積と同じ容積の液体の入ったビンが各プレイヤーに100本ずつ用意されており、箱下1000点マイナスになる毎に一本ずつその棒に中に液体が注入される。

 その棒は、長さは変わらず、注入された分だけ太くなる構造になっている。

「マホちゃんは、先鋒で出場して、和了り続けるよ。かつての、ミナモ・A・ニーマンみたいにねぇ。」

 別に、トシは悪気あって言ったわけではなかった。しかし、みなもには、責められているようにしか思えなかった。

 場決めの後、マホは、両手を上に上げて背筋を伸ばした。短いガウンの下から性器がギリギリ………当然だが見えていた。観客達は、それを見て歓喜の声を上げた。

「みなさん。マホ、頑張っちゃいます! 応援よろしくお願いします!」

 元気にそういうと、マホは笑顔で卓に付いた。

 

 マホは、起家だった。そして、いきなり、

「天和。16000オールですぅ。」

 これは、優希のコピーだった。インターハイ決勝戦を思い出させる。

「これって…。」

 優希の声が漏れた。さすがに驚いたのだ。

 東一局一本場、

「ツモ! 嶺上開花。四槓子。16100オールですぅ。」

 今度は、咲のコピーだった。

 他家は全員、箱割れした。性器に棒が挿入され、更に液体が注入されていった。みなもには、かつて見慣れた光景ではあったが、思い出したくないものでもあった。

 いや、感性が元に戻った今、かつて見慣れたものであっても今は見たくない。精神的にもきつい。みなもは、画面から目を逸らした。

 咲と和も、みなもに聞いてはいたが、実際に映像で見ると吐き気を催した。聞くのと見るのでは全然違った。

「なんなんだ? これは? ねえ、ミナちゃん…。」

 この優希の問いに、みなもは答えられなかった。苦しくて言葉が出なかったのだ。

「ゴメンだじぇ、ミナちゃん。もしかして、ミナちゃんも、これに出ていたのか?」

 みなもが、静かにうなずいた。

「そうか…。だから、これを思い出したくなくて、団体戦に出るのを断っていたってことか…。私の代理とはいえ、済まなかったな、ミナちゃん。」

「あ…あれは…、優希が悪いわけじゃない。おかげで、団体戦に出られるようになったし。感謝してるよ。」

「でも、軽蔑するじょ。」

「ゴ…ゴメンなさ…。」

「ミナちゃんのことじゃないじょ。ミナちゃんやマホに、こんなことをさせた奴のことをだじぇ。」

 ちなみに、ダブル役満なしのルールだった。じわりじわりと注入されてゆくのを見て喜ぶ輩がいるためだ。

 その後も、小蒔のコピー、霞のコピー、爽のコピー、白望のコピー、豊音のコピー、漫のコピーなど、特徴的な和了りを見せ続けた。

 映像が、どんどん信じられないものになっていった。挿入されたものの太さが尋常ではないのだ。

 咲も和も数絵も、震えながら映像を見ていた。さすがに、こんなに太くなるとは思っていなかったのだ。

 ムロと栄子は、既に顔を両手で覆い、映像を見るのを拒否していた。

 正直、女子高生に見せる映像ではなかった。

 一瞬、マホの表情が映った。恥辱を受ける他の選手達を見ながら、うっすらと笑っていた。まるで、痴態を曝す者達を見下し、バカにしたようにも見えた。

 これを見た瞬間、優希は、大粒の涙を流した。

「どうして…、どうして、そんな顔をするんだじょ…。」

「あれは、ニーマンの魔法…一種の催眠術がかけられた状態だからだよ。今のマホは正常な状態じゃない。私も………一年前は、ああだった…。」

 そう言いながら、みなもの目からも涙が流れていた。

 閑無と恭子は、はらわたが煮えくり返っていた。こんな見せ物が麻雀をネタに繰り広げられているのが許せなかった。

 棒の太さが、とうとう10センチに達した。マイナス10万点を割ったのだ。

 すると、今度は、性器に入れられたのと同じ棒が、肛門にも挿入された。二穴同時攻撃であった。そして、液体がどんどん注入されていった。液体のビンは、さらに50本ほど用意されていた。

「なにこれ?」

 みなもが叫んだ。

「今年から追加されたルールらしいね。正直、これは、やりすぎね。」

 トシの口調が厳しくなった。ニーマン達への怒りが、ヒシヒシと伝わってきた。

「(そんなオマ○コありえません。そんなオシリもありえません!! SOASOASOA…。)」

 和は両手で顔を覆った。

「この、マホちゃんを中心に、ドイツチームが新たに編成されるようね。来年の世界大会に向けて。これは、その宣伝でもあるみたいだね。私達もマホちゃん達に打ち勝つチームを作らなきゃいけない。でも、その前に、もっと大事なことがあるんだよ。」

 トシが画像を停止した。

「未成年には、かなりキツイ映像だったようだね。」

 この時、未成年ではない閑無も、精神的に参った顔をしていた。

「アラサー女子でもキツイですよ、これ。気持ち悪くなりました。でも、なんで男性だけでなく女性客もいたんだろ?」

 観客は、殆どは男性だったが、一部女性が紛れ込んでいたことに閑無は気付いていた。男性ならまだしも、女性がこんなものを積極的に見たいとは、閑無には到底思えなかったし、理解できなかった。

「まあ、欧米には、あそこにワインのビンを底のほうから突っ込んでいる画像とかがあるらしいからね。私達とは感性が違うのかもしれないねぇ。ただ、マホちゃんは、この地下麻雀を盛り上げるために連れ去られた。あの笑顔、立ち振る舞い、特徴的な麻雀…。」

 このトシの言葉で、閑無は、ようやく慕の言いたい意味がわかった。あの容姿や可愛い笑顔。そして、それらからは想像できない麻雀の強さ。ニーマンは、地下麻雀のスターが欲しかったのだ。そのために、マホを手に入れた。

「参加資格は10代から20代前半の女性。マホちゃん以外にも、その白羽の矢が立ちそうな者達を誘拐されないようにしなきゃいけない。具体的には、ここ数年間、インターハイで活躍したスター選手達を守らなきゃならないってことさ。」

「そのために、協会も動くと言うことですか?」

 恭子がトシに聞いた。

「まずは、宮永照、宮永咲、天江衣、園城寺怜、荒川憩、藤白七実、戒能良子といった25歳以下の超強豪プレイヤーにSPをつける。」

「みなもは?」

「地下麻雀の引退試合をしているってことで、ルール上、出られないことになっているらしいねぇ。まあ、ニーマンのところを去った人間に、ニーマン側の選手がやられないように、そういったルールが作られているみたいだけどね。」

「では…。」

「誘拐される可能性は低いと見てるよ。一応、警護対象にはするけどね。それと、警護を要する選手は他にもいるよ。原村和や南浦数絵、大星淡、高鴨穏乃とか他にもいっぱいいる。それ全員を警護するとなると経費が馬鹿にならない。」

「たしかに、そうですね。」

「それで、こっちも麻雀を守るために投資してくれる人を探さないといけないのさ。それで、今、協会が龍門渕財閥に話を持ちかけているところだそうよ。」

「龍門渕…ですか。」

「天江衣も絡んでくるから、他人事では済まさないだろうしね。」

 多分、透華の性格なら、衣を守るために大金を出すだろう。

 衣だけではなく、透華も冷たい透華として拉致される可能性があるのだが、恐らく透華は、自分のことを置いといて、衣のことを第一に考える。

 当然、協会側としては、透華にも注意を促し、警護もつける方針だった。

「それと、来年の世界大会。昨年以上に強いチームを作りたい。開催国は日本。絶対に負けれらない。特に、ニーマンのチームには…。」

 これが、麻雀と長い年月向き合ってきたトシ本来の願いであった。

 順当に行けば、その中心になるのが、咲とみなもだろう。

 昨年のメンバーは、宮永照、宮永咲、天江衣、荒川憩、園城寺怜と、補員として辻垣内智葉、獅子原爽の計7名だった。

 照も怜も智葉も爽も高校を卒業した。来年は、衣も憩もいない。ここに、みなもが入っても、照の分を埋めるだけだ。

 昨年以上に強いチームとなると、衣、憩、怜、智葉、爽以上の人材を5人選出する必要がある。

 今までの戦績から、穏乃と淡を入れたとして、他に誰がいるだろうか?

 それ以前に、穏乃と淡が、衣と憩と怜の3人のうちの2人の代わりになるだけの力を現時点で確実に備えているだろうか?

 ここからはじき出される答え。

 それは、和や数絵といった高レベルな選手に、さらなるレベルアップを要求していることに他ならない。

 和と数絵は、胸になにかが突き刺さったような感じがしてならなかった。自分達の課題の大きさをようやく知ったからだ。

 だから、閑無が監督で赴任してきた。よくよく考えれば、教師が島根県から長野県に異動してくるのは普通ない。慕あたりに頼まれたのだろう。

 そして、コーチ志望の恭子を大阪からわざわざ長野の地に連れてきたのも協会側が狙ってやったことだろう。姫松高校元監督、善野一美も慕や閑無達と同年代で交流がある。これは、恐らく恭子のコーチ業教育のためではない。他に意図がある。

 和と数絵は、全てが繋がった気がした。

 

 同じ頃、龍門渕高校には、小鍛治健夜と瑞原はやりが訪れていた。

 ここでも、マホの出ているBDが再生された。ただし、衣は透華がハギヨシに命じて退席させた。

 ドイツで一度、純は地下麻雀に参加していた。もっとも、先鋒で出場したミナモが、全てを片付けてくれたのでプレイはしていなかったが…。ただ、それゆえに、最初は驚いてはいなかった。ただ、

「なんだこれ? こんなの俺、しらねえぞ!」

 みなもと同じところで驚いた。

 他のメンバーは、あまりの酷さに見ていられなかった。

 BD再生が止められた。

「では、宮永咲や衣達の警護のために寄付をしろと言うことですね?」

 この透華の問いに健夜が答えた。

「それもありますが、龍門渕さん。あなたを守るためでもあります。」

「わたくしがですか? わたくしが、こんな麻雀に出場させられるとでも?」

「可能性はあります。宮永咲選手、みなも選手、天江衣選手を相手に、あれだけの戦いを繰り広げたあなたです。当然、ニーマンの目に止まる可能性は、十分あるでしょう。」

「でも、わたくしは、あんな破廉恥なものには出たくはありませんですわ!」

「今の…表のあなた自身の意思ではそうですね。でも、裏のあなたは危ない。それを立証して見せましょう。そこの方、今からビデオをとってもらえますか?」

 丁度、近くにいた純に、健夜が言った。

「スマホでいいですか?」

「構いません。それを後で透華さんに見せたいと思います。では、行きますよ。」

 健夜が、今まで抑えていたオーラを解き放った。すると、急に透華が冷えた。

 この透華に、健夜が、

「地下麻雀は打ちたいですか?」

 と尋ねた。すると、冷たい透華は、

「面白そうですね、あれ。」

 と不気味な笑顔で答えた。少なくとも裏の透華は、地下麻雀に興味を持っていた。あの危険な状況で、自分の尊厳を賭けた戦い。そんな刺激に飢えているのだろう。

 健夜は、この透華の回答を予想していた。だから、これを映像にして透華本人に見せ、自覚して欲しかったのだ。

「しかし、あなたをあそこに連れてゆくわけにはいきませんので、私と瑞原プロでお相手します。それと、もう一人は…。」

「衣を呼んでください。」

「ええ、そのつもりです。」

 龍門渕高校麻雀部の部室で、突然、健夜、はやり、冷たい透華、衣の対局が行われることになった。

 純、一、智紀の3人は、興味はあったが、それ以上に震えが止まらなかった。

 対局は4半荘。最後に冷たい透華が気を失って終了した。

 トップは健夜、2位は透華であった。しかし、獲得素点は僅差だった。3位は衣、4位ははやりであった。

 ただ、この対局の記録は秘密裏にされた。これは、別にはやりの名誉のためではなかった。冷たい透華が地下麻雀に興味を持っていることをニーマンに知られては困るからだ。透華を冷たい状態にすれば、本人の意思でニーマンに付いて行ってしまいかねない。

 

 また、同じ頃、阿知賀女子学院赤土晴絵のところに白築慕が訪れていた。ただ、生徒達は、例のBDは見せずに帰らせた。

 慕は、

「奈良…特に阿知賀には面白い選手がいっぱいいるね。ただ、それが、見せ物としてはウケる可能性があると思う。」

 と晴絵に言った。晴絵も、それには納得せざるを得なかった。

「ドラ支配とか、山支配とか、普通じゃ想像できませんからね。」

「そう。だから、あの子達も狙われる可能性があると思う。後援会をあげて、あの子達を守るよう、お願いします。」

「分かりました。」

「では、私は、これから鹿児島に向かいます。」

「鹿児島? ですか?」

「うん。霧島神境にね。神代小蒔と六女仙。彼女達も危ないからね。」

 たしかに、メンバーを考えると…、薄墨初美とか石戸霞とか特に危ない。

 晴絵は瞬時に理解した。恐らく、ビジュアルだけでいったら、永水女子高校のメンバーが一番狙われそうだ。

 

 数日後、昨年のインターハイに出場していた選手が1名、留学の名目でヨーロッパに旅立った。しかし、協会側が想定していた選手ではなかったため、状況が全く把握されていなかった。

 一方、咲やみなも、照、淡、衣など、日本の10代から25歳までの主だった選手達の身には、特に何も起こらなかった。

 

 夏休みに入った。そして、例年どおり、日本全国、各都道府県の代表校が東京に集結した。麻雀大会インターハイが開催されるのだ。

 阿知賀女子学院は、昨年と同じ高いホテルでの宿泊だった。昨年準優勝校ということもあり、後援会も奮発した。部屋のグレードは、昨年よりも上だった。

 一方、清澄高校は、昨年同様の宿舎だった。公立校だからと言うのもあるが、折角の大会を下級生達にも生で見せたく、部員全員を引き連れていた。そうなると、結構出費がかさむ。それで、昨年と同じところに宿泊することになった。

 夏春の連続優勝校だが、待遇は準優勝校に劣っていたと言える。勿論、昨年のインターハイ5位の千里山女子高校にも7位の姫松高校にも…。

 恭子は、昨年まで自分達が、如何に恵まれていたかを初めて知ることとなった。

 

 抽選会が行われた。

 清澄高校は第一シードで二回戦からの出場だったため、抽選会には出なかった。ただ、夏春夏の団体戦三連覇を目指す高校として注目を浴び、部長のまこ、麻雀アイドルの和、高校生一万人の頂点である咲、世界的プレイヤーとして名を轟かせているみなもの4人はインタビュー対応で忙しかった。

 阿知賀女子学院は第二シード、白糸台高校は第三シード、臨海女子高校は第四シードで、清澄高校と同様に、いずれも二回戦からの出場だった。

 

 大会五日目、清澄高校が姿を現わした。

 対戦校は、射水総合高校、千里山女子高校、琴似栄高校だった。二回戦からは2校勝ち抜けになる。

 射水総合高校は、エースの寺崎弥生を大将に置いていた。宮永咲との戦いを望んでいたからだ。それで、先鋒に第二エースを配置していた。

 千里山女子高校では、二条泉をエースとして先鋒に置いていた。泉は、今日の和との対戦に異常なほどに燃えていた。

 琴似栄高校も、射水総合高校と同様にエースの吉田を大将にしていた。先鋒には、第二エースを配置した。

 清澄高校メンバーは、マホの映像を見たショックから完全には立ち直れていなかった。

 しかし、先鋒の和は、

「(集中しなくては…。)」

 と自分に言い聞かせ、エトペンを左手で強く抱えた。すると、いつものように場をゲーム画面のように認識し始めた。デジタルの化身への変貌を遂げたのだ。精神面では、恐らく清澄高校で一番強い。

 こうなると、咲とみなもに鍛えられた和を崩すことは、3校の先鋒にはできなかった。前後半戦あわせて3万点近く和に稼がれる結果となった。

 次鋒戦。清澄高校からは、みなもが登場した。

 みなもは、他のメンバーほどはショックを受けていなかった。それどころか、来年の世界大会でニーマンチームを叩き潰すべく燃えていた。

 そして、前半戦だけで射水総合高校と琴似栄高校をトバした。

 その結果、清澄高校が1位、千里山女子高校が2位で準決勝進出となった。ただ、1位と2位で40万点以上の差がついていたことは言うまでもない。

 同時刻、別の対局室で、臨海女子高校、姫松高校、永水女子高校、越谷女子高校の試合が行われていた。

 臨海女子高校の次鋒はネリー、姫松高校の次鋒は愛宕絹恵、永水女子高校の次鋒は石戸明星、越谷女子高校の次鋒は水村史織だった。

 先鋒戦で臨海女子高校は、永水女子高校と姫松高校に大差をつけられた。先鋒戦には留学生を配置できないルールがあった。しかし、今の臨海女子高校には、強い日本人選手がいなかった。

 当然、ネリーは、この先鋒戦での差を一気に埋めるつもりでいた。

 しかし、

「ツモ! 国士無双!」

「ツモ! 大七星!」

 不気味なオーラを放つ明星の火力に敵わなかった。信じられないが、どんどん点棒が失われていった。それでいて、

「ロン! 12000や!」

 なぜか、明星は絹恵にはハネ満クラスを振り込んでいた。これは、点数調整としか思えなかった。

 後半戦、南二局。明星の親。

「ロン! 混一混老七対子。24000。」

 史織のトビで試合は終了した。

 ここでは、混老七対子を25符5翻の満貫役として数えるルールだった。

 1位の永水女子高校と2位の姫松高校が準決勝に進出し、臨海女子高校は痛恨の二回戦敗退となった。

 ただ、これはネリー以外を次鋒に置いても同じだっただろう。むしろ、ネリーを置いていたからこそ、失点が抑えられてのかもしれない。

 ネリーは、みなもとの戦いを前にして敗れ、珍しく悔し涙を流していた。

 

 大会六日目、白糸台高校と阿知賀女子学院は、無事、準決勝進出を果たした。

 閑無の母校朝酌女子高校も、阿知賀女子学院と同じ卓で二回戦を戦い、2位で準決勝進出を決めていた。

 そして、大会七日目、Aブロック準決勝戦が開始された。

 清澄高校先鋒は和、千里山女子高校先鋒は泉、永水女子高校先鋒は神代小蒔、姫松高校先鋒は1年生だった。

 恭子の母校姫松高校と、姫松高校と交流の深い千里山女子高校を同時に相手にするのでは、恭子もやりにくいのではないかと思い、閑無は、

「もし、なんなら、今日は控室を出ていていいぞ。」

 と恭子に声をかけた。しかし、

「いいえ。清澄高校に来ると決めた時に、こうなる覚悟をしておりました。大丈夫です。今は、姫松高校の末原恭子ではなく、清澄高校コーチの末原恭子です!」

 と恭子は答えた。これは、むしろ、こうやって自分に言い聞かせていたと言うのが正しいだろう。

 ただ、姫松高校の先鋒が、恭子と面識のない1年生だったことは救いだった。これが、漫や絹恵だったら、正直辛かっただろう。

 また、千里山女子高校の先鋒が泉だったことも恭子の心的負担を軽くしていた。

 恭子にとって、泉は自意識過剰で生意気なヤツ程度の認識だったし、現実を判らせてあげたい対象だった。それで、春季大会で泉がみなもにむしられ続けた時ですら、特に心が痛むことは無かった。

 これが、友人愛宕洋榎の従妹、船久保浩子が先鋒だったら、多分辛かったかもしれない。

 先鋒戦の場決めがなされた。

 起家は泉、南家は小蒔、西家は和、北家は姫松高校の1年生だった。

 和は、エトペンを抱く手に自然と力が入った。そして、二回戦の時と同様にデジタルの化身と化した。

 

 東一局、泉の親。

 この局は、

「ツモ。500、1000です。」

 さくっと和が和了った。牌効率では、もはや彼女の右に出る者はいない状態だった。

 

 続く東二局、小蒔の親。

 この局も、

「ツモ。1000、2000です。」

 和が早い手でツモ和了りした。

 

 そして、東三局、和の親。

 ここで和が、5巡目に、

「リーチ!」

 先制リーチをかけた。そして、数巡後、

「ツモ。4000オールです。」

 親満和了りで、一気に他校を引き離した。

 

 東三局一本場、和の連荘。

 ここで、和が、

「ポン!」

 發を一鳴きし、

「ツモ。1100オールです。」

 早和了りを決めた。

 

 これで各校の得点は、

 東家:清澄高校 121300

 南家:姫松高校 93400

 西家:千里山女子高校 92900

 北家:永水女子高校 92400

 清澄高校が、他校に30000点近い差をつけていた。

 しかし、この時、急に小蒔の様子が変わった。彼女が眠りにつき、九面の神の1人が降りてきたのだ。

 場の雰囲気までガラリと変わった。それは、昨年のインターハイ二回戦で、優希が経験したものと同じだった。




こんな映像を女子高生に見せてはいけませんね。さすがに…。
バレたら、閑無は教員免許剥奪ですかね。

マホが箱割れしたら大変なことになりそうです。

明星は、わざと姫松高校を残して臨海女子高校を落としました。
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