※この作品はR-18です。

みなも-Minamo-   作:おこそとのほもよろを

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第十八局:順位操作

 東三局二本場、和の親。

 この局は、和の手の進みが遅かった。デジタルの打ち方を決して間違えているわけではなかった。単に、裏目を引き続けていた。

 一方、小蒔は筒子、索子、字牌の順に切り出した。萬子で染めているのが誰の目から見ても容易に想像できた。確率を無視して、欲しい牌が次々と入っていった。これぞ、神の力…。

 そして、8巡目、

「ツモ。8200、16200。」

 萬子の純正九連宝灯を和了った。これで一気に小蒔が1位に躍り出た。

 

 続く東四局、姫松高校の親番。

 今度は、小蒔は筒子に染めていた。そして、

「ツモ。4000、8000。」

 面前で清一色二盃口をツモ和了りした。

 {①③③④④⑤⑤⑥⑥⑦⑦⑧⑧}  ツモ{①}

 これは、中車輪と呼ばれるローカル役満だったが、ここでは役満として認めれておらず、倍満として扱われた。

 この倍満和了りで、小蒔は、さらに他校を大きく引き離した。

 しかし、ここで、

「はっ、済みません。寝てました。」

 小蒔が目を覚ました。逆転して役目を果たしたと踏んだのだろうか、降りてきた神が小蒔の身体から抜け出たのだ。こうなると、小蒔は、単なる頑張り屋さんに過ぎない。

 

 南一局、泉の親。泉は、トップの小蒔に6万点もの差をつけられて焦っていた。

 身体のほうのトップとアンダーの差も小蒔と和に大きな差をつけられていたが、今は、それをネタに出しているほど余裕は無かった。

「(くそう。連荘で稼ぐ!)」

 しかし、

「ロン。2000点です。」

 姫松の先鋒に小蒔が振り込んだ。

 一瞬で、泉の親が流れた。

 

 南二局、小蒔の親。

「(まだ、私だけヤキトリや…。)」

 泉の焦りが募る。そこに、小蒔が泉の和了り牌を捨てた。

「ロ…ロン! 3900です。」

 やっと和了れた。しかし、まだトップとは5万点も差がある。

 

 南三局、和の親。

「ポン!」

 和が2巡目で{發}を一鳴きした。そして、

「ツモ。2000オールです。」

 發ドラ2で早和了りした。少しでも多く稼いで、みなもに繋げる気だった。

 南三局一本場、

「ツモ。1100オールです。」

 クイタンドラ1。和の早和了りだった。

 しかし、南三局二本場、

「リーチ!」

 姫松高校先鋒が、5巡目で先制リーチをかけてきた。そして、

「ツモ。2200、4200!」

 満貫をツモ和了りした。

 前半戦オーラス。姫松高校の親番。

 和の手は配牌で七対子ドラ2が一向聴。そして、4巡目、

「ロン。6400です。」

 泉が和に振り込んだ。

 

 これで各校の得点は、

 暫定1位:永水女子高校 129800

 暫定2位:清澄高校 112600

 暫定3位:姫松高校 84700

 暫定4位:千里山女子高校 72900

 と、もし25000点持ちだったら、泉がトバされて終了だった。これは、泉にとって結構ショックだった。

「(こんなんじゃ、高2最強なんて言ってられへん。こうなったら、西日本高2最強を名乗ったる!)」

 が、ある意味、メンタルは強かった。

 

 みなもが対局室に入ってきた。

「和。九連宝灯の親被りは、きつかったね。」

「はい。昨年は、あの高校の薄墨さんに、私が親の時に小四喜を和了られました。」

「それ、映像で見たよ。見た目も『小4』で、『喜』ばしい姿だったけどね。エロニーチャン達にとって。」

「ブッ…。」

 和が吹いた。思っていても言ってはいけない一言だろう。ただ、おおらかな小蒔は、別に仲間の中傷に対して怒るそぶりは見せなかった。それどころか、

「それ、今度、霞ちゃんに言ってみます。きっと喜びますよ。」

 と、見た目小4のネタを受け入れていた。

「それにしても、噂には聞いていたけど、永水女子の神代さん。凄い和了りだね。それと、次鋒の石戸明星さんも、特徴ある打ち方で面白い。」

 そう言いながらも、みなもの目は笑っていた。別に小蒔達をバカにしているわけではなかった。冷たい透華と対戦した時のように戦う楽しみが増えて喜んでいたのだ。

「じゃあ、和。神代さんは、もう一回大きい手がくるかも知れないから気をつけてね。」

 そういうと、みなもは対局室から出て行った。

 

 後半戦が始まった。

 起家は姫松高校先鋒、南家は泉、西家は和、北家は小蒔だった。

 東一局、姫松高校の親番。

「チー!」

 和が速攻で仕掛けてきた。そして、

「ツモ。1000、2000。」

 早和了りを決めた。これは、恭子に鍛えられて身に着けた速攻だった。姫松高校監督の赤阪郁乃としては、

「恭子ちゃんらしい教えやな。」

 そう言いながらも、少し裏切られた気分だった。

 

 東二局、泉の親。

 今度は、連荘狙いで泉が仕掛けた。

「ポン!」

 しかし、

「ツモ。1300、2600。」

 平和手を和に和了られた。

 

 東三局、和の親。

 ここでは、和が連荘狙いで鳴いていった。

「チー!」

「ポン!」

 和の手が狭くなったところで、姫松高校先鋒が、

「リーチ!」

 リーチをかけた。これは、和から和了り牌が零れるのを狙っていた。しかし、一発で小蒔が振った。

「ロ…ロン。8000。」

 一発がついて満貫になった。まだ、後半戦では、小蒔は単なる頑張り屋さんだった。ただ、この振込みで2位に後退し、結果的に清澄高校が暫定1位に上がった。

 東四局、小蒔の親。

 折角の親だが、小蒔に神は降りてきていない。この局は、和が効率良く手を進めていった。そして、

「ロン! 3900。」

 姫松高校先鋒を直撃した。

 

 南入した。

 南一局、姫松高校の親。

 後半戦でヤキトリの泉は焦っていた。しかし、この局は手が進んで、なんとか早い巡目で一向聴になった。

 ここに、

「リーチ!」

 和が先制リーチをかけてきた。

 次ツモで泉は聴牌した。浮き牌は、運良く和の安牌だった。

「(今は、ツキがあるかも…。裏ドラ期待で…。)」

 泉は、

「リーチ!」

 攻めに出た。和の一発目のツモは、ツモ切りだった。泉の和了牌でもなかった。

 そして、泉のツモ番。和了り牌が来た。

「リーチ一発ツモ平和ドラ1。2000、4000。」

 満貫ツモ和了りでヤキトリを回避した。

 

 南二局、泉の親。さっきの和了りで泉が勢い付いて…、

「ツモ! 1600、3200。」

 いなかった。姫松高校先鋒が七対子赤1をツモ和了りした。

 

 南三局、和の親番。

「リーチ!」

 4巡目で和が先制リーチをかけた。そして、

「ツモ。4000オール。」

 親満を和了った。

 そして、南三局一本場、小蒔が眠りに入った。ドラは{⑨}。

 急に場の雰囲気が変わった。前半戦東三局二本場のような感覚だった。

 小蒔が筒子、索子、字牌の順に切り出した。これと同じパターンが前半戦にあった。

 7巡目の小蒔の手牌は、

 {一二三三四五五五[五]六七七八}

 {六七九}待ちだった。ここに、{九}をツモった。

「ツモ。4000、8000です。」

 金門橋(ゴールデンゲートブリッジ)だ。米国麻雀の役満で、日本でもローカル役満として認めるところがある。

 しかし、ここでは、金門橋は役満として認められていなかった。そのため、これは、清一色面前清自摸平和赤1の倍満和了りとなった。

 

 神が降りた状態で、小蒔の親が回ってきた。オーラスだ。

「チー。」

 珍しく小蒔が{1}を鳴いた。副露牌は、

 {横123}

 だった。

 その数巡後、

「ツモ。6000オールです。」

 小蒔の和了り手は、

 {123[5]778899}  チー{横123}  ツモ{5}

 これは、一色双竜会と呼ばれる役だった。中国麻雀なら役満級である。日本でも、ローカル役満として認めるところもある。

 しかし、ここでは、単なる清一赤1として扱かわれた。

 

 小蒔が目を覚ました。ここでは認められていないとは言え、役満を二連続で和了ったことで、神は満足したのだろうか、小蒔の身体から抜け出していったようだ。

 オーラスで小蒔が連荘した。一本場。

 しかし、頑張り屋さんに戻った小蒔は、

「ロン! 12300。」

 姫松高校先鋒にハネ満をプレゼントしてしまった。

 

 各校の得点は、

 暫定1位:永水女子高校 133900

 暫定2位:清澄高校 119000

 暫定3位:姫松高校 86100

 暫定4位:千里山女子高校 61000

 牌に愛された子の一人に挙げられる小蒔が1位、それを清澄高校が追う形となった。

 

「「「「ありがとうございました!」」」」

 先鋒戦が終了した。

 次は、みなもの出番である。

「(永水女子の次鋒は、ちょっと厄介だな。牌譜を見たけど、あれを決勝に連れて行ったら、あれと憧のところのドラ娘の両方を一度に相手にすることになる。んー。さすがに、それは、ちょっと勘弁かな…。)」

 みなもが対局室に入った。

 そこには、既に姫松高校次鋒の愛宕絹恵と永水女子高校次鋒の石戸明星が来て場決めの牌をめくっていた。絹恵が起家、明星が西家だった。

 2人とも、胸が非常に大きい。みなもや咲とは対照的だった。

「(姫松の人は、まあ前回お漏らしさせてやったからいいとして、永水女子の子は1年でしょ。なにあれ?)」

 みなもの中で、咲と同じスイッチが入った。そして、

「(潰す!)」

 ドス黒いオーラで、みなもの全身が覆い尽くされた。

 みなもが引いたのは{北}だった。

 千里山女子高校の次鋒が対局室に入ってきて、残りの{南}を引いた。

 

 絹恵の親で次鋒戦がスタートした。

 今大会では、次鋒に強い選手を置いている高校が結構多かった。清澄高校に、みなもが入ったことで、先鋒にみなも、大将に咲が来ると踏んで、先鋒で削られた分を次鋒で取り返す作戦を考えている高校が多かったようだ。

 明星の捨て牌は、ヤオチュウ牌(19字牌)は殆ど無く、見た目、国士無双狙いのように思えた。

「(前の対局と同じだね。)」

 みなもは、恭子に言われて、今までの明星の牌譜を見ていた。

 鹿児島県大会の準決勝戦までと、インターハイ一回戦では、普通に何処にでもいる打ち方だった。それが、鹿児島県大会決勝戦と先日のインターハイ二回戦で見せた打ち方は、ともにヤオチュウ牌があまり出てこなかった。そして、国士無双や大七星などの役満和了りを見せていた。

「(この巫女…。鹿児島決勝と一昨日の二回戦では、全局通じて19字牌しかツモっていなかった。配牌は、19字牌以外もあったけどね…。)」

 明星は、上重漫の爆発時に、ある意味似たツモをしていた。

 漫の場合は、爆発時は、上のほうの牌ばかりツモる。その時によって、{七八九⑦⑧⑨789}だけだったり、{六⑥6}まで含まれたりと異なるが、基本的に下のほうの牌はこない。

 他家に、これらの牌が行かないわけでもないし、漫が他の牌を引かないわけでもない。ただ、そう言った傾向が強く出る。また、配牌まで上の牌が集中する時もあれば、普通の場合もある。

 明星の場合は、配牌まではヤオチュウ牌のみに偏るわけではなかった。ただ、スイッチが入った時のツモ牌はヤオチュウ牌のみだった。

 ただ、明星以外がヤオチュウ牌を引かないわけではなかった。回数こそ減るが、明星以外もヤオチュウ牌をツモる。

「ツモ! 混老七対子。3000、6000です。」

 混老七対子を25符5翻として数えるルールのため、この明星の和了りはハネ満として扱われた。

 

 東二局、千里山女子高校の親番。

 3巡目に絹恵が捨てた{中}を、

「ポン!」

 明星が鳴いた。そして、数巡後、

「ツモ! 中混老対々三暗刻。3000、6000です。」

 ツモ牌は{1}。{①}と{1}のシャボ待ちだった。

「(やっぱり、こういった打ち方ってことだね。では、そろそろ私も、御戸開きといきますか。コーチの言うとおり、ここで永水を落とす!)」

 恭子からの指示は、

『永水女子高校さえ落とせば、姫松高校と千里山女子高校の、どっちを2位抜けさせても良い!』

 だった。母校愛さえも、勝負事を目の前にして心の中に押し込んでいた。

 みなもの表情が変わった。様子見は、これで終わったのだ。

 

 東三局、明星の親。

 この親で一気に他家に差をつけるべく、明星は国士無双に向けて動いていた。

 手牌が全てヤオチュウ牌のみになった。ただ、まだ二向聴。

 7巡目のツモ牌は{1}だった。{1}は、既に手牌の中にある。明星が、これをツモ切りした、その時だった。

「ロン! 平和一気通関ドラ3。12000。」

 みなもの和了り手は、赤牌を3枚含んだ手だった。

 {四[五]六[⑤]⑤234[5]6789}

 {147}待ちだった。明星からの出和了りを狙っていた。

 

 東四局、みなもの親。ドラは{8}。

 みなもの配牌は、

 {二六六④[⑤]⑤688發發中中東}

 第一打牌は、{二}。そして、{⑤}と{六}と{8}を引き、{東}と{④}と{6}を処理した。{發中}のシャボ待ち。これも明星からの振込みを期待した手だった。

 明星は、

 {一一九①①11南南白白發中}

 ここに{九}を引いた。

 そして、打{中}。

「ロン! 中対々三暗刻ドラ3。24000。」

 これで、みなもが明星を逆転した。ただ、ここから、みなもがツモ和了りのラッシュを見せて、姫松高校か千里山女子高校のどちらかをトバしても、結局永水女子高校を2位抜けで決勝戦に連れていってしまう。みなもは、それを避けなければならなかった。

 

 東四局一本場、ドラ{南}。

「(咲みたいなこと、できるかな…。ちょっと、試してみるか。)」

 みなものオーラがおさまった。そして、みなもが、絹恵の欲しそうな牌…{[⑤]}を捨てた。これは、ガードが甘いと誰もが思った。

「ポン!」

 絹恵が、

 {横[⑤][⑤]⑤}

 を副露した。そして、次巡。みなもが打{南}。

「ポン!」

 すかさず、自風の{南}を絹恵が鳴いた。しかも、これで南ドラ5が確定した。またしても、みなものガードが甘い。明星の顔に苛立ちの表情が見えてきた。

 数巡後、

「ツモ! 南対々ドラ5。4100、8100。」

 絹恵が倍満を和了った。

 

 南入した。南一局、親は絹恵。

 また、みなもが甘い牌を捨てた。

「チー!」

 連荘狙いで、絹恵が速攻で鳴いた。そして、

「ツモ! 2000オール!」

 またもや絹恵が和了った。

 南一局一本場も、勢いづいた絹恵が、

「平和ツモタンヤオドラ1。2700オール!」

 ツモ和了りした。

 明星が、みなもを睨んでいた。

 さすがに、こんなヌルい打ち方をされて、『ふざけないで!』とでも言いたそうだった。

 

「(そろそろイイかな?)」

 みなもの打ち方が元に戻った。さっきまでのように、絹恵に安易に鳴かせるような打牌は無くなった。そして、明星が捨てた{九}を、

「ロン! 平和ドラ1。2000の二本場は2600。」

 みなもが討ち取った。小さな和了り手だったが、明星との点差は、これで28000点まで広がった。

 

 南二局、千里山女子高校の親番。

 現在の各校得点は、

 東家:千里山女子高校 43200

 南家:永水女子高校 110500

 西家:清澄高校 138800

 北家:姫松高校 107500

 絹恵が明星に3000点差まで詰め寄ってきていた。

 明星としては、なんとか和了って決勝進出したいところ、当然、絹恵にとっても逆転して決勝進出を決めたい。ここからの三局が勝負だ。

 しかし、

「タンピンツモドラ2。2000、4000。」

 和了ったのは、みなもだった。

 

 南三局、明星の親番。

 みなもは、早々にヤオチュウ牌を切り出した。そして、

「ツモ! タンヤオツモ七対子ドラ2。3000、6000。」

 明星からの出和了に期待せず、ツモ和了りした。

 

 そして、オーラス、みなもの親番が回ってきた。

 現在の各校得点は、

 東家:清澄高校 158800

 南家:姫松高校 102500

 西家:千里山女子高校 36200

 北家:永水女子高校 102500

 姫松高校と永水女子高校が、まさかの同点だった。もし、同点終了の場合は、その時の半荘の起家を起点に数え、より上家の者が勝者となる。

 みなもは、ここでも早々にヤオチュウ牌を切り出した。そして、

「ロン! タンピン三色ドラ2。18000!」

 千里山女子高校の次鋒から親ハネを直取りした。

「一本場!」

 みなもは、和了りやめせず、連荘を宣言した。

 

 オーラス一本場、みなもの次の和了り役は5翻以上となる。

「ポン!」

 みなもが、明星が捨てた{⑤}を鳴いた。そして、数巡後、

「ロン! タンヤオ対々三色同刻ドラ1。18300!」

 千里山女子高校次鋒を直撃した。これで、千里山女子高校のトビ終了となった。しかもヤキトリ…。

 

 各校の順位は、

 1位:清澄高校 195100

 2位:姫松高校 102500

 3位:永水女子高校 102500

 4位:千里山女子高校 -100

 同点で、起家の絹恵が2位抜け、明星が3位となった。

 

 明星は、納得がいかなかった。東四局一本場から南一局一本場までの、みなものヌルい打ち方がなければ、姫松高校に逆転を許すことはなかった。

「ねえ、宮永さん。なんで、あんなことしたの?」

「なんのこと?」

「とぼけないで! わざと姫松高校を上げたんでしょ!」

「そう言うわけじゃないんだけど…。まあ、麻雀は4人でやるもの。自分だけ見ていれば良いってモノじゃない。これが答えかな。」

 なんか、適当なことを言って、みなもは誤魔化そうとした。

 そもそも、二回戦で臨海女子高校を落すために明星は絹恵に差し込んでいたのだから、他人のことを、とやかく言う資格はないのだが…。

 ただ、この会話は絹恵に聞こえていた。

 絹恵にしてみれば、折角の2位抜けにケチをつけられたように思えた。ただ、この時、昨年のインターハイ二回戦の大将戦のことを絹恵は思い出していた。

「(あの時も、末原先輩が倍満を和了って、結局、永水女子と500点差で2位抜けだったけど、宮永咲に点数調整されてたんだっけ。やっぱり、今回も?)」

 あの時、控室で、恭子の目には涙が溢れていた。悔しかった。咲はプラマイゼロで遊んでいて1位抜け。自分は、倍満をプレゼントされて2位。

『ナメるから倍満を和了られるんだ!』

 と、その時、恭子は思っていたが、それすら点数調整の一環。

 急に、絹恵の目に涙が溢れてきた。自分も遊ばれてたんだ。自分が怖くないから2位抜けさせてもらえたんだ。そう思えてならなかった。

 ただ、二回戦で明星に差し込まれていたことまでは気付いていなかったようだ。

 絹恵が、対局室を飛び出していった。

 控室に向かう途中の通路で、絹恵は恭子に会った。

「末原先輩…。」

「絹恵。久しぶりだな。2位抜け、おめでとう。」

「めでたくなんか、ないですわ。私が怖くないから2位抜けさせてもらえたんじゃないですか!」

「私も、去年の二回戦が終わった時、そう思った。だから、準決勝では、咲に勝つつもりで望んだ。負けたけどな。ただ、怖くないから残されたんじゃない。千里山よりも強いから残れたんだ。」

「…。」

「それと、みなもだけじゃない。絹恵なら、もっと永水女子の石戸明星を削れたはず。端牌待ちの平和手にすれば良いからな。」

「えっ?」

「決勝が終わってからでいいから、さっきの東三局と東四局の牌譜を良く見ておいて欲しい。みなもの打ち方が、石戸対策の一例だから。他にも、春季大会での、みなもの作戦。ドラ爆対策や、渋谷尭深対策とかも、きちんと確認しておいてな。」

 恭子は、極力大阪弁を控えるようにしていた。今は、清澄高校の一員であることを、より自覚するために自分で課したことだった。

「あと、永水女子を落とせば、あとはどうやってもイイと指示したのは私なんで、恨むなら、みなもじゃなくて、私にしてくれ。」

 恭子は、そう言うと、みなもを迎えに対局室に向かった。

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