恭子が対局室に入った時、明星が小蒔に叱られていた。
「負けたのは、私と明星ちゃんが不甲斐なかったからです。他の人のせいにしては、いけないことです。」
「わ…分かりました。姫様。」
「それに、この借りは個人戦で返せば良い。それだけのことです。」
「はい…。」
六女仙にとって、小蒔の言葉は絶対だった。小蒔に言い返せるのは霞くらいだろう。
「宮永みなもさん。」
「はい?」
「明星ちゃんの無礼をお許し下さい。ただ、昨年も永水女子は、同じように清澄に敗れました。私達に何が足らないのか、よろしければお教えいただけないでしょうか?」
小蒔も、点数調整されてことは理解していた。しかし、自分達も二回戦でやったことなので、他人のことを批判してはならないことを、よく理解していた。さすが、霧島神境の姫である。
ただ、絹恵とは同点なのだから、どこかで芝棒一本分でも良いから明星が和了れていれば済んだことだ。もっと言ってしまえば、最後の局で24300点を千里山女子高校から直取りすれば、勝ち抜けできた。当然、それも分かっていた。
しかし、何故、それができなかったのか?
昨年も同じだ。霞がオーラスの親で、安手で良いから和了れていれば、2位抜けだった。
みなもは、少し困った顔をしていた。
「(言ってイイのかな?)」
すると、恭子が、
「言ってあげな。どうして、去年の石戸霞さんも、今回の石戸明星…って、苗字一緒やん。顔も似とるし、胸…。」
ついつい、大阪弁が出てしまった。
途中で恭子は話を止めた。胸の話題は、後で精神的打撃に発展しそうなので、そこは飛ばすこととした。
「ええと、霞さんと明星さんて姉妹?」
「従妹です。」
小蒔が答えた。
「昨年は、うち…やなかった、私も二回戦で清澄と戦った当事者です。今は、何の因果か清澄のコーチをしてますけど…。」
慌てて恭子は、標準語に切り替えようと必死だった。
「覚えてます。霞ちゃんと宮永咲さんと闘った人ですね。」
「覚えてもらっていて嬉しいですわ。で、みなも。」
「はい?」
「去年の石戸霞さんと今回の石戸明星さんが、何故勝ち残れなかったか。言えるか?」
「まあ、能力に頼り過ぎってことかな。自分で打ってない。打たされてるって感じ。だから、その能力の特性に合った局面、例えば、早和了りでなくても良いから高い打点が欲しい場合は有効だけど、とにかく1000点で良いからさっさと和了りたい局面では勝てない。去年の霞さんが良い例だと思う。それに、能力で押すだけだから対策もしやすい。」
痛いところを突かれた。これを聞いて、小蒔は、自分達に足りない部分を理解した。
「なるほど。たしかにそうですね。私達は、修行の一環で麻雀を打っておりました。ただ、麻雀に特化した能力を持つ者達には勝てないと決め付けておりましたが、どうやら、それは思い違いだったようです。自分で打つ。能力は、武器であって、それに振り回されるものではない。当たり前のことですね。巫女としても、そうあらねばなりません。」
小蒔達は、各自何らかの能力を持って生まれた。ただ、自分達が成すべき本業が目的であって、能力は、それを成し遂げるための手段の一つである。目的と手段が入れ替わってはならない。
今更ながら、小蒔は、それを再認識させられた気がした、
小蒔は、一礼すると明星を連れて対局室を後にした。
みなもが恭子と目を合わせた。
「今日は、あの姫松の次鋒の人、漏らさなかったね。」
「漏らしたって?」
「春季大会の時にね…。私とやった後に…、ダムが決壊して黄金色の湖が足元に誕生していた。」
「あの時、絹恵は漏らしてたんかい!」
「黙ってたけどね。放送されなかったみたいだし。」
恭子は、今日初めて絹恵が、真祐子、いちご、美幸に続く4人目の人物であることを知らされた。
「まあ、絹恵も少しは自分で考えて打ってくれるようになると嬉しいけどな。それでだな、みなも。」
「なに?」
「姫松を残したのは、私の母校だから気を使ったんか?」
「そうじゃないって言ったら嘘かもしれないけど、でも、今の千里山は強くないよ。純粋に姫松のほうが格上だったってこと。」
「そうか。」
「でも、コーチの言うとおり、永水をここで落さないと決勝戦がキツイとは思った。ここだけの話だけど、去年の咲は、コーチじゃなくて永水を残したかったみたいだけどね。ああいった能力者相手にするほうが咲には楽みたいだから。」
「能力に頼るからか?」
「そう。それで、読みやすいし、支配しやすいんだって。」
「支配?」
さすがに、恭子も能力者が支配するとまでは思っていなかった。能力で和了るとか防御するとかは想像がついたが、それ以上のことは想像がつかなかった。
「うん。」
「むしろ末原コーチみたいな人のほうがやりにくいみたいだね。実際、私も咲も、練習ではコーチに負けることあるじゃん。」
「完全に、私の大負け越しやけどな。」
「でも、咲がコーチに一目置いているのが分かる気がする。間違いなくコーチは麻雀の秀才だよ。」
みなもも、咲と同じで恭子の実力を良い意味で認めていた。
たしかに咲もみなもも、基本的には恭子に負けない。しかし、本気でやっても全勝はできていない。やはり、恭子の対策に巧くはまって負けることもあったのだ。
これが、和や優希、数絵が相手の場合は、部内戦では多少負けることはあっても、それは、少し様子見をしている時(手加減とも言う)だけだ。本気でやった対局では一度も負けていない。
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恭子がコーチとして清澄高校に来たその日、みなもは、咲と恭子と閑無で卓を囲んだ。みなもには、特段、恭子にも閑無にも特別なものは感じなかった。
ただ、咲が萎縮している。それだけは分かった。
半荘1回勝負。起家は恭子、南家は閑無、西家は咲、北家はみなもだった。
東一局中盤、みなもは、そろそろ咲が槓をする予感がした。恐らく暗槓、そして、そのまま嶺上開花。よくあるパターンだ。しかし、その時、
「ポン。」
閑無の捨て牌を恭子が鳴いた。それでツモ順がズレて、咲に行くべき4枚目の牌が閑無に流れた。
「ツモ!」
この局は、恭子が安手を和了った。ただ、みなもには、ポンをした意味が分からなかった。もともと聴牌していた手だ。別に向聴数を減らすわけでもないし、手を高めるためのものでもなかった。
「宮永…って言うと、どっちかわからんな。咲とみなもの名前呼びええか?」
「は…はい。」
恭子に咲が答えた。
「じゃあ、咲。去年のインターハイの時と同じ癖が出とる。それ、直さんとあかんで。」
「は…はい。」
みなもには、それが何を意味しているのか、さっぱり分からなかった。
東一局、一本場。
みなもが聴牌した。次のツモで和了れる。そう思った時だった。
「チー。」
恭子が鳴いた。そして、みなもの和了牌は恭子に流れた。
数巡後、
「ツモ。」
恭子が和了った。
これも、鳴いた意義が分からなかった。別に、それで手が高くなったわけではない。単に鳴いて手を狭めただけだ。
「みなもも、癖が出てるな。」
「癖?」
「和了れる牌が分かるんだろうけど、ツモ番でもないのに無意識に山に目がいってる。それで和了らせないために鳴いた。咲も、カンできる牌が分かるんだろうけど、そこに無意識に目がいく。それで、ツモ番を狂わせた。」
みなもも咲も、相手の手牌の動きは観察していた。誰が、どの巡目で切った牌がツモ切りなのか手出しなのかも覚えていたし、手牌の何番目の牌を出したかまで記憶していた。それで、相手の手牌が透けて見えていた。
しかし、恭子は、それ以外のものまで観察していた。
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みなもと恭子が、控室に向かう通路を話しながら歩いていた。
「最初に、コーチが咲と私と監督と打った時のこと、覚えてる?」
「まあ、結局、私と監督の負けだったな。」
「最終的にはね。でも、あれで咲がコーチに一目置いているのがわかった。去年のインターハイで、咲に『次、打ったら勝てません』って言わせたのはコーチくらいだからね。」
「それ、久からも聞いたけど、ホントなん?」
「本人から聞いたから間違いないよ。コーチを2位抜けさせたのは、咲の作戦ミス。聞いた話だけど、あの半荘で、永水の大将は、胸で牌を倒したらしいね。」
「ああ、たしかにあった。」
「それで、咲がカチンときて…、貧乳組だから分かるでしょ?」
「それは、聞き捨てならん…と言いたいけど、残念ながら分かる。」
互いに、自分の胸に手がいった。
いくら個体差とは言え、何故、世の中にこのような差が生じるのだろうか? 並ぶと別種の生物にさえ見えることがある。
「その結果、神に仕える永水女子に天罰が下ったわけ。逆転で、しかも僅差で負けるって屈辱までつけてね。でも、あんな化物の見本市の中にいて、コーチは、よくあれだけの麻雀を打ってたと思うよ。二回戦も、準決勝もね。普通なら、心が折れてサンドバッグ。結果、トビ終了だよ。」
「そんな、ほめても何も出んで。」
「それは期待していないよ…。でも、決勝は、私の特性がバレるだろうね。」
「ドラ娘がいるからか?」
「そう…。」
ドラ息子と言うと、遊んでばかりの息子と感じるが、ここでドラ娘と言っても、特段、放蕩娘とは感じない。ドラ爆の意味で通じるのは不思議だ。
「でも、バレたからって対応できるもんでもないと思うけど。宮永照も、分かってても誰も止められへんかったし、咲の槓も、結局止められへんかった。」
「まあ、咲は嶺上開花だけじゃないしね。」
「たしかに牌に愛されているだけじゃない。まさか、点棒を支配してるとは、誰も思わないだろうな。」
「でも、コーチは、それに気付いていたのは凄いよ。」
「身をもって知った。去年の準決勝で、100点差で負けたし、久も1ポイント差で個人戦3位を逃していた。後で前チャンピオンから聞いた時、やっぱりって思ったけど…。」
2人が控室に戻った。
テレビモニターには、丁度さっきまで、みなも達の試合のダイジェストが映し出されていた。それが、たった今終わり、明日のBブロック準決勝戦の予想に切り替わった。
Bブロック準決勝戦は、阿知賀女子学院、白糸台高校、朝酌女子高校、新道寺女子高校の対決だった。この戦いでの上位2校と姫松高校の計3校が、明後日の決勝戦での対戦校になる。
阿知賀女子学院は、和が中学時代に通っていた。メンバーには、和の友人である高鴨穏乃、新子憧、松実玄の名前があった。
白糸台高校は、咲とみなもの姉、照の母校である。
朝酌女子高校は閑無の母校。閑無の高校時代の同期、本藤悠彗が顧問をしていた。臨時コーチとして、閑無の小学校時代からの友人、稲村杏果が就いていた。
新道寺女子高校は、和と優希、ムロの中学時代の先輩、花田煌が先鋒を勤めていた。
いずれの高校も、今の清澄高校と繋がりがある。
「監督。戻りました。」
「おお、恭子、お帰り。みなもも、お疲れ様。永水を狙って落せるなんて、さすがプロだな。」
「アマですけど…。」
「冗談冗談。ただ、永水女子の巫女さんに、みなもがグチグチ言われそうだから、恭子に迎えにいかせたけど、大丈夫だったか?」
「はい。向こうの先鋒の人が来て、次鋒の人に説教してました。負けたのを人のせいにするなって。」
「さすが、霧島神境の姫様だな。」
閑無が、つぶつぶドリアンジュースをみなもに差し出した。
「これが清澄ではブームと聞いたんで買ってきた。慕が好きだったんだよな、これ。」
みなもは、
「(なぜドリアン刑?)」
と思っていた。
ただ、閑無は、純粋に流行っていると勘違いしていた。
たしかに、ある意味流行ってはいるのだが…。
翌朝、Bブロック準決勝戦が開始された。
「順当に、白糸台と阿知賀かのう。」
テレビを見ながら、まこが呟いた。
次の瞬間、
「大将戦決着ぅー! 1位通過は阿知賀女子学院、高鴨穏乃! そして、2位通過は白糸台高校大星淡だー!」
超高速時間跳躍が発動した。
残念ながら、朝酌女子高校と新道寺女子高校は準決勝戦で敗退した。
そして、さらにその翌朝まで時間が飛んだ。
「和、今日の調子はどうだ?」
決勝戦を前に、布団から出られずにいる和に閑無が声をかけた。
「二日目ですので、きついです。特に今回は…。」
「じゃあ、しょうがないな。代理を出してイイか?」
「そうしてください。」
「わかった。じゃあ、優希!」
「ななな…なんだじぇい?」
「和が旗日なんだ。当然、こういうことも有り得る。と言うことで、今日の先鋒は、お前に頼む。」
「わ…わかったじぇい! でも、ノドちゃん、本当に大丈夫か?」
「大丈夫じゃありません。だから、代わってもらうんです。」
和にしては、珍しく弱々しい声だった。
「そうだったな。じゃあ、ノドちゃん。泥舟に乗った気分でいてくれだじぇい!」
「泥舟じゃなくて、大船ではないでしょうか?」
「そうとも言うじぇい!」
さすがに、『大船と泥舟は違う!』と突っ込みたかったが、優希の性格を考えると無駄だと思ってやめた。
和は、一先ず宿舎に残り、少ししてから会場に向かうこととした。
決勝戦を前に、各校レギュラー全員が決勝卓の周りを囲み、挨拶した。
この時、穏乃と憧は、和がいないことを気にかけていた。
「ねえ、みなも。和は?」
憧がみなもに聞いた。
「ちょっと、あの日なんで…。」
「代わりに片岡さんが?」
「そう。たしか、憧も先鋒だったよね。」
「そうだけど。」
「それと、憧の昔の写真を和から見せてもらったけど、優希そっくりって思った。」
「みんな、そう言うけど…。そんなに似てるかなぁ。」
「似てる似てる。」
本当は、みなもは、『今日の先鋒戦は、タコスvsアコス!』まで言いたかったのだが、後が面倒になりそうなのでやめた。
清澄高校と対戦するのは、姫松高校、阿知賀女子学院、白糸台高校の3校だった。
姫松高校は、次鋒に愛宕絹恵、中堅に上重漫の名前があった。
阿知賀女子学院は、先鋒に新子憧、次鋒に松実玄、中堅に小走ゆい、副将に鷺森灼、大将に高鴨穏乃の名前があった。ゆいは、昨年の晩成高校で、先鋒でエースだった小走やえの妹だった。
白糸台高校は、先鋒に部長の亦野誠子、次鋒に多治比麻里香、中堅に渋谷尭深、副将に佐々野みかん、大将にエース大星淡の名前があった。麻里香は、松庵女学院多治比真祐子の妹、そして、みかんは、鹿老渡高校で昨年中堅だった佐々野いちごの妹だった。
先鋒が対局室に残り、他のメンバーは控室に戻った。
「今日は、次鋒戦はこない!」
優希は、そう言いながら場決めの牌を引いた。
「起家だじぇい! 今日は、前半戦、東二局は来ない!」
いつものお約束だ。そう言いながら、毎回オーラスまで行われる。
南家は姫松高校の先鋒、西家は誠子、北家は憧だった。
東一局がスタートした。
「ダブルリーチだじぇい!」
閑無に言われて、優希は部内での対局数を制限していた。これは、久からの申し送り事項でもあった。
そして、優希自身が知らない間に、聴牌速度の波が、この決勝戦に当るように、恭子によって厳密に管理されていた。
今、それが爆発する。
「ツモ! ダブリー一発ツモタンピン三色ドラ3。12000オール!」
昨年のインターハイ決勝戦と様子が似ていた。ただ、あの時、ドラを抱える者も先鋒にいたため、ドラで打点を上げることができなかった。
しかし、今日の先鋒戦には玄がいない。次鋒に回った。それが、去年と大きく違うところだった。
控室に和が姿を現した。
「優希の様子はどうですか?」
旗日と言われていた割には元気だった。
「作戦成功だ。」
閑無は、笑いが止まらない感じだった。
実は、和は、仮病だった。別にチームの都合で補員を出すことはルール違反ではない。優希を最高状態にして送り込む。これが作戦だった。
「優希も出たがってましたし。一番美味しいところを持っていかれた感じはありますが、チーム戦として、これが最も効率良いことでしたら、こうするべきでしょう。」
「しかし、和が、こんな作戦を提案するとは思っていなかったぞ。」
「言いだしっぺは、みなもさんです。ただ、昨年のインターハイ決勝戦での実績を考えますと、優希に賭けてみたくなったんです。」
東一局一本場が始まった。
順に配牌を取って行った。そして、優希が14枚の牌を全て取ったその時だった。
「捨てる牌がない…。ツモ! 16100オール!」
天和だった。他のプレイヤー達は、前局で一回ツモっただけである。この局ではツモ牌すらない。それで、あわせて28100点も削られている。なんと言う理不尽さだろう。
続いて、東一局二本場が始まった。
「リーチ!」
この局も、優希のダブルリーチでスタートした。
「(一発を消さないと…。)」
憧は、そう思っていたが、鳴ける牌が出ないことには仕方がない。優希のリーチ宣言牌も、姫松高校先鋒の捨て牌も、誠子の捨て牌も鳴けずにいた。
しかし、憧が捨てた{中}を、
「ポン。」
誠子が鳴いた。
そして、憧がツモった牌は、{⑤}だった。
「(これは捨てられない。)」
{⑤}の筋を嫌い、憧は{1}を捨てた。
案の定、
「ツモ!」
優希が{⑧}でツモ和了りした。待ちは{②⑤⑧}の三面聴。
しかも、アタマが裏ドラに乗った。
「ダブリーツモ平和一盃口ドラ3。8200オールだじぇい。」
それは、まるで県予選からインターハイ準決勝戦まで控えに回って、今まで優希の中で溜まっていたフラストレーションが一気に爆発した感じだった。
東一局三本場、引き続き優希の親。
さすがに、今回はダブルリーチも天和もなかった。しかし、
「ポン!」
誠子の切った東を鳴いた。そして、
「ツモ! ダブ東ドラ3。4300オール!」
またもや優希が和了った。
東一局四本場。
ここまで、優希は三倍満、役満、倍満、満貫と和了ってきた。ここでハネ満が出れば満貫以上が全部揃う。
「リーチ。」
4巡目で優希がリーチをかけた。
姫松高校の先鋒は、安牌切り、誠子も同様だった。憧は、なんとか鳴いて一発を消したかったが、どうにもならなかった。
憧は、優希の捨てた牌の筋を切った。そして、優希のツモ番。
「ツモ! リーチ一発ツモ平和一盃口ドラ2。6400オールだじぇい!」
これで満貫以上が全て揃った。
既に、この段階で優希は241000点、他校は一律53000点と、19万点もの点数差がつけられた。昨年インターハイ決勝で、ドラを占有する玄が優希と同卓していたことは、照だけではなく、優希を走らせないためにも必要だったことが今更ながらに判る。
玄のことをドラ置場と比喩されることが多い。しかし、玄の特性は他家の高打点和了りに対する抑制剤にもなる。今回、そのことが証明されたようなものだ。
これ以上、優希を走らせてはマズイ。憧は、
「(とにかく、速攻!)」
気合を入れ直した。
東一局五本場。優希の連荘が続く。しかし、この局では、
「チー!」
ようやく、誠子の捨て牌を憧が鳴けた。そして、
「ロン! 3900の五本場は5400。」
タコス力が尽きたのか、優希が振り込んだ。しかし、これまでの稼ぎが大きかった。この段階で、235600点と、優希は、恐るべき点数を叩き出していた。