南入した。
親は絹恵、ドラは{⑤}。{[⑤]}とドラが重なった局。
玄の配牌は、
{二四[五]八⑤⑤[⑤]179東發中}
既にドラ5の手だった。
玄は、晴絵のアドバイスを思い出していた。
「(玄は、{78}とか{79}、{68}とあった場合、そこを待ちとして残していることが多いけど、結局赤ドラを引くわけだから、{78}なら{8}、{79}なら{9}、{68}なら{8}を序盤で切ったほうが良くないか? 後から出すと狙われるだけだから…。)」
「(そうだった。みなもさんを見て緊張して、すっかり忘れてた。準決勝までは、今までの打ち方、決勝では、進化した私を見せるんだった。)」
玄は、1巡目、ツモ{④}、打{八}。
次巡、ツモ{③}、打{9}。
次巡、ツモ{[5]}、打{1}。
次巡、ツモ{六}、打{東}。
次巡、ツモ{發}、打{中}。
次巡、最高のところ、すなわちツモ{6}。そして、打{二}。
ムダヅモなく、流れるように聴牌した。
{四[五]六③④⑤⑤[⑤][5]67發發}
待ちは{②[⑤]發}の変則三面聴。
{②[⑤]}はリーチをかけないと出和了りできないが、{[⑤]}は玄ならツモれそうだ。
それに、もし、みなもから{發}が出れば大金星だ。
場に出ている玄の待ち牌は{發}と{②}が1枚ずつ。
しかし、玄の聴牌直後、麻里香が{發}を捨てた。玄は、
「ロ…。」
和了りかけた。しかし、ここで麻里香から高い手を和了ってしまったら、麻里香をトビに近づける。みなもを有利にするだけだ。ここでは、玄は和了を見逃すしかなかった。
次巡、玄のツモは{北}。ツモ切り。
しかし、その次巡、ドラの支配者ならではのツモがきた。
「ツモ! ドラ8。4000、8000です。」
倍満をツモ和了りした。
南二局、玄の親。
玄は、さっき、和了った分の一部を、4位の絹恵に分け与えなければならないと考えていた。しかし、今まで自分が和了ることだけを考えていたため、差し込みなんてやったことがなかった。
しかし、もともとガードが甘い。
「ロン! 3900。」
結果的に玄が絹恵に振り込んだ。
南三局、麻里香の親。
麻里香からすれば、ここでは、玄の、みなもへの直撃はOKだが、ツモ和了は控えて欲しいところだった。しかし、
「ツモ! タンヤオ一盃口、ドラ8。6000、12000です!」
玄が、ここ一番の和了りをツモってしまった。
オーラス。みなもの親。
阿知賀女子学院控室では、晴絵の顔が青ざめていた。
南場に入ってから、みなもは、おとなしくしていた。ムリに和了らなくても、玄がツモ和了りすれば、姫松高校と白糸台高校は削られる。玄が絹恵と麻里香に高い手を差し込めるとも思えない。何故なら、絹恵と麻里香にはドラがないから…。それで、和了り放棄していた。
玄は、晴絵のアドバイスを思い出し、如何にしてみなもから点を奪い、他校に分け与えるかを考え始めた。しかし、みなもは、これを逆手に取っていた。
これに、晴絵は気がついた。
そもそも、玄の考えは、南場だけで行うのは難しい。しかも、玄は、親番で、さっさと絹恵に振り込んでしまった。これもマズイ。これは、和了った絹恵にも問題があるが…。
冷たい透華のやったことを再現するのであれば、玄は、絹恵の親の時に絹恵に安手を連続で振り込んでから、自分の親でツモ和了りで稼ぎ、この麻里香の親で麻里香に再び安手を連続で振り込む必要がある。そして、みなもの親で高い手を親かぶりさせなければならない。
しかし、玄は、そこまで器用ではなかったし、絹恵も、そこまで考えが及ぶタイプではなかった。
急に、みなもの雰囲気が変わった。
「(この親で、一気にいく!)」
ただ、ドラがこない以上、いきなり高い手を和了るのは難しかった。
「ツモ。500オール。」
クイタンのみの早和了りだった。
この感じを、絹恵はどこかで経験した記憶があった。それもそのはず、これは、恭子に鍛えられた早和了りだった。
オーラス一本場、ここでも、
「タンピンツモ。1400オール」
みなもの手は早かった。
そして、二本場。ここでも、
「ツモタンヤオ三色。3900オールの二本場は、4100オール。」
みなもの和了りが続いた。
この時の各校点数は、
東家:清澄高校 256900
南家:姫松高校 23300
西家:阿知賀女子学院 101900
北家:白糸台高校 17900
もし、みなもから高い手を直撃されたら、そろそろ麻里香がマズイ。絹恵もマズイ。みなもの親を、安手で良いから流さなければならない。
ただ、玄のガードの甘さが功を奏した。
オーラス三本場、麻里香が玄の捨て牌を鳴いた。そして、
「ツモ。中のみ、600、800。」
なんとか、安手ではあるが、みなもの親を流した。
しかし、まだ前半戦が終了したに過ぎなかった。
トビ終了せずにホッとしたのも束の間、絹恵と麻里香は、2万点程の点数を、後半戦で守りきらなくては、ならなかった。
みなもが、一旦対局室を出た。
自販機の前で、なしジュースを飲んでいいると、優希がきた。
「ミナちゃんにしては、珍しいじょ。前半戦で、姫松か白糸台をトバすかと思っていたけどな。」
「ドラなしだとキツイね。優希みたいに天和が和了れれば違うんだけどね。他の人は?」
「控室にいるじぇ。特に、ノドちゃんは体調不良ってことになっているから、絶対に外には出さないじぇ。」
「そうだね。」
「でも、私も騙されたじぇ。発案は、ミナちゃんだったのか?」
「うん。騙してゴメンね。」
「もうイイってことだじぇい。ノドちゃんも、さすがに10万点は稼げないし、あれで正解って言ってたしな。でも、宿舎に戻ったら全員、ドリアン刑に処す!」
「わかった。でも、ドリアン臭で、部屋が充満して、眠れなくなるかもよ。」
「それは困るじぇい!」
優希と話していて、みなもはリラックスしてきた。
「それと、コーチから伝言があるじょ。牌以外の観察も忘れずにってな。」
「そうだね。」
「特に阿知賀のドラゴンロードは、よく観察しろって言ってたじょ。親の時に、高い手を姫松と白糸台から和了れなくなるから、それが顔に出て面白いぞって。」
「性格悪いな。」
「ミナちゃんほどじゃないじぇい! それと、念のため、阿知賀に騙されるなとも言ってたじょ。ちょっと意味不明なんだけどな。」
「多分、姫松と白糸台から和了り放棄したと思わせといて、私から和了るとか、そんなとこかな。」
「そう言うことか!」
「でも、それができるほど阿知賀のドラ娘は器用じゃない。これが、久だったら余裕でやるだろうけどね。」
「納得だじぇい。」
「じゃあ、いってくる。それと、まこ部長に伝言をお願い。」
「なんだじぇい?」
「トバし役は、部長に譲るって。まこ部長にとっては、最後の大会だからね。予選から一局も打たずに団体優勝って、ちょっとね。」
「それもそうだな。」
「じゃあ。」
「おお。頑張ってこいだじぇい!」
みなもは、気を入れ直して対局室に向かった。
他校の次鋒達も、監督、コーチ、同僚などから色々と助言を貰っていたようだ。ただ、そのような中、玄だけは緊張が極度に高まっている感じだった。
晴絵から、姫松高校と白糸台高校への、高い和了の直撃禁止と、そうなった場合に顔に出さないよう言われていた。たしかに、そのとおりだ。
しかし、それが玄にやれるかと言うと、ちょっと厳しい。性格が憧みたいだったらできたのだろうが…。
場決めがされた。後半戦は、起家が玄、南家が麻里香、西家が絹恵、北家がみなもの順になった。
東一局、玄の親。
玄は、早々にタンヤオドラ7の手を聴牌した。親の倍満で24000点の手だ。
しかし、和了牌が麻里香から出た。麻里香の持ち点は19600点。これを直撃したらトビ終了で阿知賀女子学院は2位になる。これは和了れない。
案の定、玄の顔に『和了れるのに和了れない!』と言いたげな、悔しさにあふれた表情が出てきた。
みなもは、これを見逃さなかった。こういった観察を、恭子に鍛えられたし、特に今は、玄の表情観察が恭子からの指令である。
同巡に、みなもが同じ牌を捨てた。すると、玄が、
「(おもちがないくせに…。この卓で、おもちがあるのは姫松の人だけなのです!)」
みなもを睨んできた。
「(ビンゴ!)」
やはり、これが和了り牌なのだろう。みなもは、確信した。
次巡、今度は、同じ和了牌を絹恵が切ってきた。絹恵の持ち点は22700点。これも当れない。玄が、今度は涙目になってきた。
そして、数巡後、
「ツモ。300、500。」
みなもが面前清自摸のみの安手で流した。玄は、がっくりした表情だった。
東二局、麻里香の親。ドラは{東}。
ここでも玄は、東ドラ7を聴牌した。ここに麻里香が玄の和了牌を捨てた。しかし、ここで16000点を麻里香に直撃したら、残り点は3600点になってしまう。これも和了れない。玄は、止む無く見逃した。すると、みなもが同じ牌を同巡に捨てた。
「(うぅぅ。和了り牌なのに和了れないよぅ。)」
完全に、みなもの玄イジメであった。そして、次巡、
「チー。」
絹恵の捨て牌をみなもが鳴いた。その2巡後、
「ツモ。300、500。」
クイタンのみで、みなもが和了った。
東三局、絹恵の親番。
この局では、玄は聴牌できなかった。ドラは来てくれるが、手牌全体の巡り合わせが悪いようだ。
「タンピンツモ。700、1300。」
みなもが和了った。これで、安手ではあるが、三連続の和了りだ。
東四局、みなもの親。
玄は、ドラはくるが、手がなかなか進まない状態だった。
ようやく、向聴数が一つ減り、捨てた牌を、
「ロン。ダブ東一盃口。7700。」
みなもに振り込んだ。やはり巡り合わせが悪いとしか言いようがなかった。
東四局一本場、みなもの連荘。
「チー!」
麻里香の捨て牌を絹恵が鳴いた。そして、再び、
「チー!」
絹恵が鳴いた。
副露牌は、
チー{横三二四} チー{横②③④}
と、三色狙いと考えられる。ここまで晒したら、{2}か{3}か{4}が和了り牌である可能性が高い。
玄が、{3}を捨てた。
「ロン! タンヤオ三色。2300。」
玄がクイタン三色に差し込んだ。みなもの親を流すことを優先した。
南入した。
玄は、南一局でも親倍を聴牌した。
ドラは{9}。
{三[五]③④⑤[⑤][⑤]34[5]999}
ここに麻里香が、
「リーチ!」
{四}を切ってリーチした。これも玄は和了れない。
そして、次巡、
「メンタンピン一発ツモ一杯盃。3000、6000。」
麻里香にハネ満をツモ和了りされた。ことごとく和了放棄させられ、玄は、もう精神的に参っていた。
南二局、麻里香の親。
「ポン!」
玄の捨て牌をみなもが鳴いた。そして、
「ツモ。300、500。」
クイタンのみの安手をみなもが和了った。
南三局、絹恵の親番。少しでも多く点を残して中堅に繋げたいところだ。しかし、
「タンピンツモ。700、1300。」
みなもに早い巡目で和了られた。
オーラス、みなもの親。
各校点数は、
東家:清澄高校 269500
南家:阿知賀女子学院 82800
西家:白糸台高校 29200
北家:姫松高校 18500
ドラなしでは、まだ、簡単にトビ終了する点数ではなかった。
「(阿知賀の人への支配は、緩めても大丈夫だね。)」
みなもは、意図的に場の支配を一部緩めた。だが、その分、自分のツモ牌への支配の力が増した。
そして、ムダヅモなく手が進み、
「リーチ。」
みなもが先制リーチをかけた。
「ポン!」
麻里香が、みなものリーチ宣言牌を鳴いて一発を消した。しかし、
「メンタンピンツモ。2600オール。」
結果的に、みなもに和了り牌を送り込んでしまった。
もっとも、これは玄への支配を緩めた分、みなもが鬼ヅモ化したことによる和了りなのだが、麻里香には、自分がみなもを和了らせてしまったとしか思えなかった。
オーラス一本場。
麻里香の持ち点は26600点、絹恵の持ち点は15900点。
みなもの支配から抜けた玄は、ここでタンヤオドラ7を聴牌した。嵌張待ちで、和了り牌は1枚切れ。
そこに、和了り牌を絹恵が捨てた。しかし、16000点の手では和了れない。絹恵のトビ終了が決まってしまう。仕方なく、玄は和了りを見逃した。
すると、この和了り牌を、
「ポン!」
みなもが鳴いた。それと同時に、玄の和了り牌がなくなった。
「(うぅぅぅぅ。)」
また、玄が、みなもを睨みつけた。
「(顔に出てるなぁ。)」
みなもの、玄への素直な感想だった。
次巡、玄のツモ牌は不要な{西}。これをツモ切りした。すると、
「ポン。」
これも、みなもが鳴いた。そして、
「ツモ。混一対々。4100オール。」
みなもが親満をツモ和了りした。
オーラス二本場。みなもが次に和了るとしたら、出和了りで5翻。12600点以上。面前でのツモ和了りなら6200オール以上。
麻里香の持ち点は22500点、絹恵の持ち点は11800点。
そろそろ絹恵がマズイ。
そのような中で、玄は、また聴牌した。タンヤオ三色一盃口ドラ8。三倍満。24000点の手だった。これは、麻里香にも絹恵にも直撃できない。
案の定、和了り牌を麻里香と絹恵が切った。また、涙目になる玄。
そして、同巡に、玄の和了り牌で
「リーチ。」
みなもがリーチをかけてきた。これも、和了れない。麻里香、絹恵の捨て牌を見逃している以上、同巡で和了ってはならないのだ。そして、
「ツモ! リーチ一発ツモ混一七対子。8200オール。」
ついにドラなしで、みなもが倍満を和了った。これで、麻里香の持ち点は14300点、絹恵の持ち点は3600点まで減らされた。
これで、玄のツモ和了りも厳しくなった。
この点数に、絹恵の緊張は極限に達していた。
オーラス三本場。この局でも玄は聴牌できた。しかも倍満手だった。しかし、みなもから和了り牌が出る前に、案の定、麻里香と絹恵から和了り牌が出てきた。みなもは、同じ牌を同巡で処理してくる。
玄の目には涙が溢れていた。
「(おもちがないのに、憎たらしいのです!)」
ここで、玄ができることは、他家の安和了りのサポートくらいだった。しかし、こう言う時に限って、麻里香に鳴かせられる牌がこなかった。
そうこうしているうちに、麻里香がなんとか面前で聴牌した。しかし、下手にリーチはかけられない。もし、絹恵が和了り牌を出したら見逃さざるを得ないし、そうなったら、みなもからも和了れなくなる。麻里香は、ダマで待った。しかし、次巡、
「ツモタンヤオ平和。1000、1600。」
麻里香は、和了り牌をツモってしまった。仕方なく麻里香は和了った。
次鋒戦が終了した。絹恵は、トビ終了せずに済んで、ホッとした顔をしていたが…、
「ジョー………。」
極度の緊張から開放されたからか、ダムが決壊した。絹恵は、対局中、自分のせいで負けが決まるのが余程怖かったのだろう。
「「「あ、あ、あ、ありがとうございました!」」」
みなもと麻里香と玄は、さっさと挨拶をして卓を離れた。絹恵だけが、その場に突っ伏して動けないでいた。
サッカーで鍛え抜かれた足の下には、黄金色の聖なる泉が広がっていた。高校三年生最後の夏でも豪快にやってしまった。
対局室に、恭子が入ってきた。みなもを迎えに来たのもあるが、絹恵に一言かけようとも思っていた。しかし、
「(漏らしたんかい!)」
絹恵に声をかけるのは保留した。多分、知られたくないだろう。
恭子は、みなもを連れて、さっさと対局室を後にした。
「まあ、お疲れ。」
「うん。やっぱり、終わらせられなかったね。」
「でも、あれなら、まこがなんとかするだろう。」
「そう期待してる。それにしても、派手に漏らしたね。」
「さすがに、声をかけるのやめたわ。」
「でも、さっきの次鋒戦。あれが地下麻雀だったら、観客が大賑わいかもね。」
こう言われて、恭子は想像してみた。
絹恵の鍛え抜かれた下半身から吹き出す聖水。玄の涙目。そして、地下麻雀なら間違いなく、あの2人に太いものが挿入されるであろう。
たしかに、みなもの言わんとすることがわかった。20歳前の女性が積極的に理解したいことではなかったが…。
控室に戻ると、まこが、
「おお、お疲れ。それで、なんかあったんか? 1時間休憩の後に中堅戦を行うって連絡があったけど。」
と、みなもに聞いてきた。
「うーんとね。ちょっと、事故があってね。映像には出ていなかったのかな?」
「白糸台が最後に和了ってすぐに、映像が司会席のほうに切り替わってな。」
「まあ、放送側のグッジョブだね。去年のインターハイ個人戦で、あったらしいじゃない。松庵女学院の人。」
「あの、失禁事件か?」
「その再現。」
恭子も、後輩の顔もあるし、なかなか言いにくかったようだが、重い口を開いた。
「つまり、絹恵がやらかしたんだ。緊張から解けたからか、みなもと打って怖かったからかは知らないけど。それで、私も声をかけるのをやめた。」
つまり、会場の清掃のために、一時中断となった。
卓の下を清掃し、椅子は取り替えられた。
放送側は、この一時間の間、これまでの対局のダイジェストを流して場を繋いだ。理由は明かせないため、大会中断のクレームが殺到して、対応に一苦労だったのは言うまでもなかった。
そして、一時間後、中堅戦が開始された。
対局室に、まこが入ってきた。対するは、白糸台高校の渋谷尭深、阿知賀女子学院の小走ゆい、姫松高校の上重漫だった。
各校点数は、
暫定1位:清澄高校 312600
暫定2位:阿知賀女子学院 66900
暫定3位:白糸台高校 17900
暫定4位:姫松高校 2600
この点差で引継ぐこと自体が、まるでイジメのようにしか思えないレベルだった。昨年の有珠山高校の7000点のほうが、まだマシだった。
阿知賀女子学院、白糸台高校、姫松高校の各校後援会やOG達は、悲観的な目でテレビモニターを見詰めていた
場決めがされた。
起家は尭深、南家がまこ、西家が漫、北家がゆいになった。
東一局、尭深の親。
春季大会で、まこが見せたハーベストタイム潰しと同じことを、尭深は準決勝戦まで他校にやられていた。それで、今大会は尭深の役満が1回も出なかった。
しかし、この決勝戦は、ハーベストタイム潰しをやっている余裕は阿知賀女子学院にも姫松高校にもなかった。そもそも、今の点数のままでハーベストタイムを出せば、姫松高校のトビ終了になる。既にハーベストタイム潰しをやる必要性自体がない。
この局は、
「ツモ! 1000、2000じゃ!」
まこがクイタンドラ2でツモ和了りした。
そして、東二局、まこの親番。
漫の持ち点は、もう1600点になっていた。しかし、この追い詰められた状況でも、漫の爆発スイッチは入らなかった。
何故か?
それは、超高校級の強い相手でないとスイッチが入らないからだ。
結局、
「ツモ! 2000オールじゃ!」
まこが和了って漫がトビ終了した。
「きーまったー!」
アナウンサー福与恒子の声が会場にこだました。
ただ、会場に歓声はなかった。春季大会のような感動もへったくれもなかったのだ。
それに、宮永咲、大星淡、高鴨穏乃の姿を見ることなく終わった。別に、清澄高校の優勝が嫌だったわけではなかったが、観衆側としては、つまらない終わり方だった。
夏春夏の三連覇を成し遂げたのに、観衆のトーンダウンが起こると言う、まこには可哀相な終わり方だった。
この頃、ニーマンは地下麻雀の会場にいた。
みなもの活躍を、スマホのニュースで見ていた。
「ミナモも、まあ、立ち直ったみたいだな。来年の世界大会が楽しみだ。」
彼女の目の前では、マホが怒涛の快進撃を見せていた。
対戦国は、エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト三国であった。
既に、マホ以外の先鋒選手には、性器だけではなく肛門にまで20センチ超の棒が挿入されていた。そこに、大量の液体が注入され、棒がどんどん太くなってゆく。
しかし、まだ対戦は終わらない。マホ以外の選手の椅子は、普通の椅子ではなく、凹型をした特注品に変えられていた。前後に挿入されたものが邪魔で、普通の椅子には座れないからだ。
「ツモ! 17000オール!」
マホが容赦なく和了った。さらに、他国の選手達に挿入された棒に液体が注入されて太くなる。その様子を、変態集団の会員達は歓喜を上げながら見入っていた。
この盛り上がりを見て、ニーマンの隣にいる男性は満足げな顔をしていた。
「あの娘は、素晴らしい商品だな。もっと俺を潤わせてくれそうだ。あと一年、協力してくれれば、お前のことを許してやろう。代わりにチョンボ姫はもらうがな。」
その男は、地下麻雀運営のトップだった。
ニーマンは、この男に脅迫されていた。過去の過ち…秘密を握られていたのだ。
「(あと一年か。本当なら良いが…。)」
今は、この男の言葉を信じるしかなかった。この言葉が本当なら、ニーマンは、マホを差し出してでも、ここから逃げるつもりでいた。