南一局三本場。
穏乃の支配は、最高状態を維持していた。
「(ただ、この状態になると穏乃の聴牌気配がなくなるのよね。差し込むのはイイけど、読みにくい。)」
今、憧のやることは、手を作ることではない。先に穏乃の安牌を切り、後々、穏乃の和了り牌になるであろう牌を溜めておくことだった。
中盤に差し掛かった。
「(そろそろ聴牌していると思うけど…。多分、下のほうの三色で、筒子か索子が和了り牌。なら、これかな?)」
多分、筒子のほうが怪しいと思い、{②}を捨てた。しかし、特に穏乃の動きはなかった。
「(じゃあ、これ。)」
続けて{③}を捨てた。これもスルー。
「(これ…かな?)」
次に怪しいのは索子。それで、憧は{3}を捨てた。すると、穏乃は、驚いた表情で憧の顔を見た。そして、手牌を表ではなく裏に倒した。つまり、牌を伏せた。
みなもも、同じように手牌を伏せた。すると、
「ロン。タンヤオドラ1。2600の三本場は3500です。」
咲が和了った。
穏乃と咲は同聴だった。ただ、憧を起点にした場合、より上家は咲になる。インターハイのルールはダブロンなしでアタマハネだった。つまり、憧からの振込みでは穏乃は和了れなかったのだ。
後半戦の、4人の点数は、
1位:宮永咲 35400 ⇒ +25
2位:高鴨穏乃 35200 ⇒ + 5
3位:宮永みなも 29700 ⇒ ± 0
4位:新子憧 -300 ⇒ -30
僅か200点差で咲が1位を取った。
よって、前後半戦の合計は、
前半戦1位:宮永みなも +35
前半戦2位:宮永咲 +28
前半戦3位:高鴨穏乃 ± 0
前半戦4位:新子憧 -63
清澄高校の2人が決勝進出となった。
ふと、この点数を見て憧はイヤなことに気付いた。
「(みなもの後半戦の点数はプラマイゼロ。穏乃の前後半戦の合計もプラマイゼロ…。もしかして、これってチャンピオンが点数調整してた?)」
憧の顔面から急激に血の気が引いていった。
咲は、まだ余力を残しているとしか思えない。
あの穏乃の山支配を受けつつ、みなもとも同卓していたのだ。まさか、その状況下で遊んでいたのか?
めまいがして、憧は、その場にしゃがみこんでいた。
「ちょっと、どうしたの? 憧。」
みなもが駆け寄った。
「ちょ…ちょっとね。恐ろしいモノをみた。と言うか、気が付いた。」
「もしかして、点数調整?」
同じことに、みなもも当然のように気付いていたようだ。ただ、憧のようにショックを受けた感じはなかった。
「やっぱり、そうなんだ。」
「まあ、私は慣れっこだけどね。でも、憧。完全に差し込もうとしていたの、咲にバレてたよ。だから、咲は穏乃と同聴にしたんだと思う。」
「そ…そうだったんだ。」
手牌の動き以外にも、様々な動きを観察する。それを、咲もみなもも恭子に鍛えられていた。
「まあ、同聴にできたのは偶然かもしれないけどね。でも、穏乃の和了りそうなところで待てば憧から出るってわかったら、やることは一つ。」
「私が差し込もうとしていた牌を狙われた。」
「そう言うことだね。その上で、さらに点数調整してるからね。」
「点数調整か…。春季の時は、本人のプラマイゼロだけだったのに。」
「本人のプラマイゼロは、和に怒られるからね。手を抜いたって言われて…。」
「だからって、他の人の点数を調整するのって………。はっ!」
憧は、最もイヤなところに気付いてしまった。他人の点数調整ができると言うことは、咲は、2位抜けさせたい人を選べるのだ。
やはり、一回戦は、2位抜けさせてもらえていたのだろう。
「(わー、ショックー。)」
一方、穏乃は、
「(私の点数、前後半戦合わせてプラマイゼロだ! すっごい偶然! 珍しいなぁ。)」
調整されていたことに気付いていなかった。
それから1時間後、昼の休憩を挟み、5位以下の決定戦が行われた。これは、半連一回勝負だった。
そして、その終了後、決勝戦が開始された。
前半戦、起家は小蒔、南家は衣、西家は咲、みなもは当然のように北家だった。
東一局、小蒔の親。
既に小蒔は、いまだに深い眠りについたままだった。多分、今夜は眠れないだろう。
衣は、
「やっと咲達と打てるな。楽しみにしていたぞ。小蒔も面白い打ち方をするし、今が満月の夜でないのが残念だ。」
喜んでいた。
まだ昼間の2時過ぎ。衣にとって不利な時間帯ではあったが、全力を出して戦える相手との対戦が嬉しかったのだ。
「ポン!」
衣が早速鳴いた。そして、
「ツモ! 南白対々三暗刻。3000、6000。」
その次巡、衣がハネ満をツモ和了りした。しかし、この直後、衣は上家から恐ろしく強烈なオーラを感じ取った。
「(なんだ、これは? 準決勝では、こんなことは無かったが、隠していたのか?)」
それは、冷たい透華がまとうオーラをも遥かに上回る。今までに出会った事のないレベルだった。
東二局、衣の親。
小蒔が降ろした神は、自らに制限をかけており、配牌は普通だった。しかし、ツモは異常で、筒子、索子、字牌の順に切り出して、どんどん一色に染めていった。それは、準決勝戦でもやってみせた大技だった。
「ツモ。九連宝灯。8000、16000。」
二度目の萬子の純正九連宝灯だった。
東三局、咲の親番。
衣は、今度は咲から強烈なオーラを感じ取った。そして、
「カン! 嶺上開花! 4000オール。」
赤牌とドラが計3枚。お約束の嶺上開花だった。小蒔に降りた神に見せ付けるような華麗な技だった。
東三局一本場、咲の連荘。
今まで静かにしていたみなもが、
「{中}、ポン!」
とうとう動き出した。
「ツモ。中南ドラ2。2100、4100。」
和了り役2翻からのスタートだった。
東四局、みなもの親。
この局、当然、みなもは連荘を狙っていた。配牌とツモが巧くかみ合い、無理に鳴かずに面前で手を進められた。
もし、ここで、みなもが和了るとすると、最低でも3翻縛りのはず。
「タンピンツモ一盃口ドラ1。4000オール。」
これで、みなもがトップに躍り出た。
東四局一本場、みなもの連荘。
再び咲が動いた。
「カン!」
{中}を大明槓した。打{1}。そして、次巡、
「カン!」
{北}を暗槓した。そして、
「ツモ。嶺上開花北中。2100、4100。」
70符3翻だった。咲らしい符ハネの手だった。
南入した。
再び小蒔の親が回ってきた。ここで小蒔…もとい小蒔に降りた神は、東二局の時と同じく筒子、索子、字牌の順に切り出した。
そして、7巡目で純正九連宝灯を聴牌した。そして、打{發}。
「ポン!」
咲が鳴いた。この時、咲の手牌は、
{12334[5]6668東} ポン{發横發發}
ここから打{東}。
次巡、小蒔は{8}をツモった。これは、咲の和了り牌だった。さっきのポンでツモが変わり、掴まされた。
仕方なく小蒔は打{八}で形式聴牌を維持した。
咲はツモ{4}、打{1}。
次巡、小蒔はツモ{6}。{七}切りで形式聴牌を維持。
咲はツモ{2}、打{[5]}。
そして、次巡、小蒔はツモ{8}。
この時の小蒔は、自分の手牌のどれが誰の和了り牌かは完全に把握できた。よって、{8}は切れないことはわかっていた。では、他の牌は?
萬子を切ったら聴牌が崩れてしまう。一先ずフリ聴だが、{一四七8}の変則4面待ちに変えて{6}を切った。すると、
「カン!」
咲が大明槓してきた。そして、
「ツモ! 嶺上開花! 緑一色。32000点です。」
{6}は咲の和了り牌ではなかったため、これが和了りに繋がることを小蒔は読みきれなかった。これで小蒔は4位に転落、咲が単独トップに立った。
この時、みなもは、咲からイヤな波動が放たれていることに気付いた。
「(これ、プラマイゼロの感じじゃん。じゃあ、ここから咲は自分の点数を削るの?)」
プラマイゼロは、優勝放棄となる。しかも、和が許すはずがない。
みなもには、何故、咲がプラマイゼロオーラを出しているのか理解できなかった。
南二局、衣の親。
「ツモ! 4000オール」。
衣が親満をツモ和了りした。東一局以来の和了りだった。昼間とは言え、衣にしては、これだけ和了り数が少ないのは珍しかった。それだけ、小蒔、咲、みなもの支配力が強烈なのだろう。
南二局一本場。
みなもが4巡で面前聴牌した。咲の動きが不気味なため、リーチをかけず、一旦様子を見ることにした。そして、
「ツモ。2100、4100。」
2巡後にみなもがツモ和了りした。
南三局、咲の親番。
この段階で、各選手の点数は、
暫定1位:宮永咲 52100
暫定2位:宮永みなも 30500
暫定3位:天江衣 16700
暫定4位:神代小蒔 700
神を降ろした小蒔がトビ寸前だった。これは、永水女子高校のメンバーからすれば、ありえないことだった。
この局は、早々に咲が{①}を鳴いた。そして、数巡後、
「カン!」
加槓した。咲は、嶺上牌をツモると、それを表にして自分の前に静かにおいた。
「ツモ。800オールです。」
これで、小蒔のトビ終了だった。
各選手の前半戦の点数は、
1位:宮永咲 54500 ⇒ +44
2位:宮永みなも 29700 ⇒ ± 0
3位:天江衣 15900 ⇒ -14
4位:神代小蒔 -100 ⇒ -30
みなもは、プラマイゼロにされた。
南一局で咲が放ったプラマイゼロオーラ。あれは、みなもの点数調整のためだったのだろうか?
違う。みなもは、咲の点数を見て気付いた。
「(前部長の久に言われたやつだ。1000点持ちからのプラマイゼロ。28600から29500を稼ぐことになるから…。)」
これこそが咲の狙いだった。みなものプラマイゼロは、単なるオマケだ。
「(プラマイゼロの強制力で、神の力を押さえ込んだって言うわけ?)」
自分の姉を改めて化物だと思った。
ただ、これで震えてなんかいられない。咲に勝つ。個人優勝する。これが、今大会の、みなもの目標だ。
後半戦が始まった。
やはり、席順は前半戦と同じで、起家は小蒔、南家は衣、西家は咲、みなもは北家だった。咲とみなもが同卓すると、西家に咲、北家にみなもがなることが多かった。
東一局、小蒔の親。
小蒔は、萬子から切り出した。そして、咲の捨てた{②}を、
「ポン。」
鳴いた。2巡後、再び咲の捨てた{⑧}を
「ポン。」
を鳴いて2副露した。神の降りた小蒔にしては珍しい光景だった。そして、
「ツモ。4000、8000です。」
開かれた手は、
{④④④⑤⑥⑥⑥} ポン{②横②②} ポン{⑧横⑧⑧} ツモ{[⑤]}
清一色タンヤオ対々赤1だった。
ただ、この手は四跳牌刻と呼ばれるローカル役満であった。
東一局一本場、小蒔の連荘。
「カン! 嶺上開花。1700、3300。」
お約束の嶺上開花で、咲が50符3翻の手を和了った。
東二局、衣の親。
ここで衣は稼ぎたいところだったが、やはり昼間では支配力がいま一つだった。
「ツモ。タンヤオ面前清自摸ドラ2。2000、3900。」
結局、みなもに和了られた。
東三局、咲の親番。ここでも、
「タンピンツモ一盃口ドラ1。2000、4000。」
みなもが和了った。
そして、東四局、みなもの親番。次に和了るのは和了り役3翻以上の手。
「ポン。」
みなもは、小蒔の捨てた{東}を鳴いた。そして、数巡後、
「ダブ東チャンタドラ2。4000オール!」
珍しく、みなもの声に力が入った。これで、みなもが小蒔を抜いてトップに立った。
東四局一本場、みなもの連荘。ただ、この局は、小蒔の発するオーラが一段と強くなっていた。巻き返しを狙っていたのだ。
「ポン。」
小蒔が咲の捨てた{白}を鳴いた。そして、2巡後、
「ポン。」
今度は、衣が捨てた{中}を小蒔が鳴いた。
衣は相手の和了牌や手の高さは判るが、鳴かれる牌までは察知できなかった。小蒔が大三元を聴牌していないから捨てたに過ぎなかった。
小蒔は、打{發}。大三元を狙うつもりは無いようだ。そして、次巡、
「ツモ。白中混老対々。6000オール。」
小蒔の手は、
{一一①①①11} ポン{白白横白} ポン{中横中中} ツモ{1}。
ローカル役満の宝紅開花だった。これも、今大会では役満として認められていないためハネ満として扱われた。
しかし、団体戦も含めると、小蒔は、二度の九連宝灯をはじめ、中車輪、金門橋、一色双竜会、四跳牌刻、宝紅開花の6種類、計7回の役満を和了ったことになる。さすが、神の力であった。
東一局一本場、小蒔の連荘。ドラは{9}。
しかし、この局では、小蒔の配牌が非常に悪く、
{一四七①④⑦269東南白發中}
字牌から切り出した。しかし、9巡目のツモ時点で、
{一一一二三四五六七八九九①9}
となった。そして、咲の手牌を見詰めた。
まだ2向聴のはず。ここで、小蒔はドラじゃないほうの牌、すなわち{①}を切った。
この時、咲の手牌は、
{①①①[⑤]⑧西西西西北北北北}
たしかに2向聴だった。ただ、これは小蒔に{①}を切らせるために、敢えて{西}と{北}を4枚ずつ持ち、暗槓せずに待っていた。当然、
「カン!」
咲が大明槓してきた。嶺上牌は{⑧}。
「もいっこ、カン!」
{北}を暗槓した。嶺上牌は、また{⑧}。
「もいっこ、カン!」
続いて{西}を暗槓した。嶺上牌は、{[⑤]}。
「ツモ。混一対々三暗刻三槓子嶺上開花赤2。24300です。」
三倍満だった。これは、小蒔の責任払いになった。
南二局、衣の親。
咲の和了りに触発されてか、衣が、
「ポン!」
早々に鳴いてきた。そして、
「ツモ! 南対々三暗刻。4000オール。」
親満をツモ和了りした。
ここで、各選手の点数は、
暫定1位:宮永みなも 27100
暫定2位:宮永咲 24900
暫定3位:神代小蒔 24300
暫定4位:天江衣 23700
僅差になった。
南二局一本場、衣の連荘。ドラは{西}。
衣は、咲の支配がどんどん強まっていくのを感じ取っていた。
「カン!」
小蒔が捨てた{北}を咲が大明槓した。そして、嶺上牌を、そのままツモ切りした。
槓ドラ表示牌は{三}。これは、みなもの手の中にある暗刻、{四四四}を、全てドラに変えた。そして、みなものツモ番。
「ツモ! タンヤオツモ一盃口ドラ5。4100、8100。」
開かれた手牌は、
{四四四③③④④[⑤][⑤]5678} ツモ{8}
これで、みなもが大量リードを奪った。
南三局、咲の親番。この局は、6巡目で咲が、
「リーチ。」
攻めてきた。しかし、
「ツモ! タンピンツモ三色ドラ1。3000、6000。」
みなもが和了った。咲は、結果的にリーチ棒分だけ余計に払うことになった。
ここで、各選手の点数は、
暫定1位:宮永みなも 56400
暫定2位:宮永咲 13800
暫定3位:神代小蒔 17200
暫定4位:天江衣 12600
完全に、みなもの1人浮き状態だった。
オーラス、みなもの親。ここで、みなもが安手でも良いから和了れば、前後半戦のトータルで咲を抜く。
しかし、
「カン!」
咲が{西}を暗槓した。そして、
「ツモ! 嶺上開花ツモ混一赤1。3000、6000。」
そのまま、当然のように咲が和了った。
これで後半戦の点数と順位は、
1位:宮永みなも 50400 ⇒ +40
2位:宮永咲 25800 ⇒ - 4
3位:神代小蒔 14200 ⇒ -16
4位:天江衣 9600 ⇒ -20
みなものみプラスだった。
そして、前後半戦のトータルは、
1位:宮永咲 +40
1位:宮永みなも +40
3位:天江衣 -34
4位:神代小蒔 -46
咲とみなもの同点優勝となった。獲得素点では咲のほうが200点上、席順でも咲が上家だったが、この大会ルールでは同点として扱われた。
「(もしかして…、咲は、これを狙った?)」
みなもは、そう心の中で呟いていた。点数調整を平然と行う姉。それと同点優勝と言うことは、本当に同点なのか作られた同点なのか分からない。
この場合、多分後者だ。ただ、咲の場合、無意識にやっていることもある。作られた同点でも故意ではない可能性がある。
とは言え、決して面白くはない。
「(次は、絶対に勝つ!)」
みなもは、そう心に誓うのだった。
表彰式が行われた。
優勝者に与えられる大きなトロフィーは、1つしか用意されていなかった。それで、咲とみなもの2人で、表彰式の間は、それを一緒に持つことになった。
トロフィーは、後日2人の家に送付される。
2人の首に金メダルがかけられた。メダルは予備があったようだ。
なお、個人戦の順位は、以下の通りになった。
1位:宮永咲
1位:宮永みなも
3位:天江衣
4位:神代小蒔
5位:荒川憩
6位:高鴨穏乃
7位:原村和
8位:新子憧
9位:大星淡
10位:石戸明星
11位:東横桃子
12位:南浦数絵
13位:多治比真祐子
14位:鷺森灼
15位:寺崎弥生
16位:愛宕絹恵
みなもと咲の同時優勝、且つ咲の夏春夏の三連覇で個人戦は幕を閉じた。
それから一ヶ月ちょっとした後、国民麻雀大会が開催された。
「わしは出られんかった。」
まこが、そう言うと、超高速時間跳躍が発動した。
ジュニアAリーグ(高校2年3年)は、長野チームの圧勝だった。
先鋒衣、次鋒みなも、中堅咲、副将数絵、大将和の順だったが、最初の2人が凶悪過ぎて、中堅まで回らずに優勝を決めてしまった。
一方、ジュニアBリーグ(高校1年中学3年)は、石戸明星と十曽湧の六女仙2人組が率いる鹿児島チームが優勝した。
国民麻雀大会が終わると、今度は秋季大会が始まる。
清澄高校では、まこが引退し、部長には和が就任した。部内では、メンバー選出のためのリーグ戦が開催されていた。
1位2位はダントツで咲とみなも、その後を和と数絵が追い、さらにその後を優希が追う形となっていた。
優希のすぐ後には栄子が、そこから少し離れてムロの名前があった。
その日、閑無は慕と電話していた。
「慕、それ、本気で言ってるのか?」
「そうだよ。もっと、清澄高校以外の選手達に奮起してもらいたい。そのために、爆弾を落として欲しい。」
「でも、そんな真似…。」
「まずは、県大会で。」
「でも、それで非難されるのは咲だぞ?」
「そこは、解説者にうまくやってもらうから。どう考えたって超偶然の産物以外ありえないことだしね。」
「そう…だけどさ…。」
「インターハイ個人戦でも、咲ちゃんは決勝卓でやってたじゃない。点数調整。」
「まあ、否定はしないけど…。」
「お願い。協会側が咲ちゃんを守ることを約束するから。ねっ、お願い…。お願い、お願い…。」
「もう、分かったよ。」
「ありがとう。じゃあ、よろしくね。」
慕からの依頼は、かなり常識を逸脱した内容だった。
閑無は、電話を切ると頭を抱えた。
「監督、どうしたんですか?」
「恭子か。実はな…。」
閑無が電話で慕に話された内容を恭子に伝えた。これには、恭子も驚いた。つい大声を出しそうになったが、一呼吸おいて気持ちを落ち着かせた。
「そんなの、完全にナメプと思われますわ。いくら麻雀協会からの依頼でも…。」
「そうなんだ。でも、普通は偶然以外ありえない。」
「まあ、普通はそうですけど…。でも、偶然じゃなくできそうな人間が、うちには1人いるってことでしょうけどね…。」
「まあな。だが、当然、偶然じゃないことを理解する人間もいるだろう。麻雀に直接携わる人達の中にね。監督とかコーチとか、選手本人とか…。」
「気乗りしませんね。」
「ああ…。ただ、協会側が咲を守ると宣言した。来年の世界大会に向けて、選手達に奮起させるのが目的のようだ。」
恭子は、ナメプをされて負ける人間の辛さが死ぬほど分かっていた。昨年インターハイ二回戦の2連続プラマイゼロで1位抜けを咲にやられた時は、悔しくて涙が出た。
それ以上のことをやらせようと言うのだ。心が痛む。
その頃、それを指示した人間…白築慕は、喫茶店で熊倉トシと話をしていた。
「熊倉さんの案。閑無は、乗り気じゃないようでしたが、多分、やってくれます。」
「まあ、あれをやらせようって聞いて乗り気でいられるほうが普通じゃないからねぇ。そりゃぁ、本当は、私も、こんなことはさせたくないんだけどね…。でも、あの映像を見ちゃうとね。日本選手のレベルアップをしなきゃって焦ってしまってね。」
意外にも、今回のナメプ指示の黒幕は、トシだった。
原作の2年生と3年生がいなくなりますと、敵キャラの大部分がいなくなります。
ちょっとキンクリが増えるかもしれません。