※この作品はR-18です。

みなも-Minamo-   作:おこそとのほもよろを

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第二十五局:明星対策

 信越大会の様子を、まこは自宅が経営する雀荘のテレビで見ていた。

「余裕で一回戦突破じゃ!」

 次の瞬間、信越大会が終わった。超高速時間跳躍が発動したのだ。

 

 優勝は、清澄高校。二回戦では先鋒に優希、次鋒に数絵、中堅に和、副将にみなも、大将に咲のオーダーで、中堅までで他校をトバして終了。決勝戦では、先鋒に優希、次鋒に栄子、中堅に数絵、副将にみなも、大将に咲のオーダーで、副将までで他校をトバして終了した。

 準優勝は風越女子高校、3位は射水総合高校、4位は小針西高校(新潟県)で、この4校が春季大会に出場することになった。

 

 そして時は流れ、3月になった。

 まこは、実家の雀荘を継ぐ前提で、都内の大学への進学を決めた。一応、経営学を学ぶつもりで、できれば大学院まで進学し、経営学修士(MBA)を取りたいと思っていた。

 そして、まこの卒業式も終わり、いよいよ、みなも達は春季大会出場のため、東京に向けて出発した。

 部内全体が意気揚々とする中、補員の栄子は、少し寂しげな表情を見せていた。

 栄子は、この大会を最後に転校することが決まっていた。父親の転勤で仕方がなかったのだ。

 ただ、表向きは、部員達は誰も知らないことになっていた。栄子の申し出で、閑無と恭子が内密にしていたからだ。

 クラスメートにも話していなかった。栄子は、このことを知られることで、麻雀部のみんなの心の負担になることを危惧していた。それで、大会が終わってから、みんなには正式に話す予定でいた。

 しかし、レギュラーメンバー達は、それを知っていた。職員室前の廊下で、栄子の転校の話を優希が偶然聞いてしまったからだ。

 

 春季大会は、各地方大会を勝ち抜いた32校により行われる。一回戦から準決勝戦まで、上位2校が次の試合に勝ち進む。

 昨年覇者の清澄高校は、第一シード。昨年2位の龍門渕高校は春季大会には出ていないため、第二シードは昨年3位の阿知賀女子学院、第三シードは白糸台高校、そして、第四シードは姫松高校だった。

 ただ、シードとは、強豪同士が潰し合わないように振り分けることであった、一回戦免除を意味するものではない。

 春季大会のルールでは、ダブル役満以上が認められていた。しかし、大明槓による責任払いは発生しなかった。また、インターハイや昨年秋季大会とは違い、二家和(ダブロン)、三家和(トリロン)が認められていた。

 一回戦は、先鋒戦、次鋒戦、中堅戦、副将戦、大将戦の、いずれも半荘1回ずつの計5半荘での戦いで、二回戦から5人が前後半戦の半荘2回ずつを戦うようになる。

 スケジュールは、大会初日の抽選の後、すぐにAブロックの一回戦が二試合同時に開始され、それが終了した後、Aブロックの残りの一回戦二試合が行われる。

 大会2日の朝、Bブロックの一回戦のうち、二試合が同時にスタートし、それらが終了した後、残る二試合が行われる。

 二回戦は大会3日目にAブロックの二試合が、大会4日目にBブロックの二試合が、それぞれ同時に行われる。

 大会5日目は、準決勝の二試合が同時に行われ、大会6日目に決勝戦が開催される。

 その翌日、個人戦の予選が行われ、大会8日目に個人戦決勝トーナメントが開催されることになっていた。

 

 清澄高校は、Aブロック第一試合のため、抽選の後、すぐに控室に入った。

 閑無からオーダーが発表された。

「史上初の夏春夏春の4連覇を狙う。オーダーは、先鋒、和。」

「わ…私ですか?」

「そうだ。色々考えたが、他校の様子を見て、デジタルの化身と言われる和を先鋒にするのが良いと判断した。頼んだぞ。」

「は…はい!」

「次。次鋒は、優希。」

「はい、だじぇい!」

「ここで、一気に差をつける。いくら和でも、先鋒では大量リードは難しい。だから、ここで稼ぐ。東風の神の力、思う存分発揮して来い!」

「わかったじぇい!」

「中堅、数絵。南場の鬼神。ここで終わらせるつもりで頼むぞ。」

「はい。」

「それから、和、優希、数絵。副将には回さず、この3人だけで、どこかをトビ終了させろ。それだけの力が、お前達にはある。」

「「「はい(だじぇい!)。」」」

「次。副将は、みなも。北欧の小さな巨人。そして、大将は、嶺の上の女王、咲。2人には、特に言うことはない。もし回ってきたら、全部ゴッ倒せ!」

「「は…はい!」」

「以上。頼んだぞ!」

 和がエトペンを片手に抱え、対局室に向かった。

 

 その頃、ネリーは、みなもが副将であることを知り、監督のアレクサンドラ・ヴェントハイムに、みなもと試合をさせてもらえるよう、お願いしていた。

「ネリーを副将にして。インターハイでは、ミナモ・ニーマンと戦えなかったから、今度はどうしても戦いたい。」

 地下麻雀での忌々しい記憶が、ネリーにそうさせていた。どうしても、ミナモとの戦いに拘りたかったのだ。

 あの日、ネリーは大将で、一回も麻雀牌に触れていなかった。それなのに…。全てが先鋒戦で決められてしまった。

「そう言うと思って、ギリギリまでメンバー表を出さないようにしていた。これから書く。暫定的に書いておいたものから、副将と大将を入れ替えるだけだけどね。」

「ありがとう。こんどこそ、ミナモを倒す。あのウラミ、絶対にはらしてやる!」

 臨海女子高校は、一回戦で第四シードの姫松高校と当たることになっていた。順当に勝ち上がれば、準決勝で清澄高校と当たることになる。

 インターハイでは、永水女子高校にしてやられたが、今度こそミナモと戦う。そう思いながらネリーは、トーナメント表を見直した。すると、準決勝戦で当たるのは清澄高校だけではなかった。永水女子高校とも当たる。

 永水女子高校の石戸明星。あの1年生もネリーは叩き潰してやりたい対象だった。インターハイの恨みは忘れていない。

 ネリーがテレビをつけると、丁度、永水女子高校の出ている試合が放送されていた。

 まだ、試合は始まったばかり。先鋒戦だ。そこに、明星の姿が映し出されていた。彼女は、インターハイでは次鋒だったが、本大会では先鋒のようだ。これでは、ネリーとは当たらない。

「頼むぞ、うちの先鋒。この生意気な1年生に地獄を見せてやってくれ。」

 臨海女子高校の新しい先鋒は、ネリーの言葉に静かに頷いた。

 

 阿知賀女子学院のメンバーは、ホテルで大会の放送を見ていた。

 清澄高校の相手は、北神奈川県の東白楽高校、滋賀県の宮之尾高校、岡山県の讃甘高校だった。

 先鋒戦では、和が安定した打ち方でリードを奪い、他校のエースを抑えた。既に和の試合は終わり、画面には優希の試合が映し出されていた。

「やっぱり、片岡さんって小学校時代の憧に似てるよね。」

 穏乃は、昨年インターハイの時と同じことを言っていた。

「私は、そんな似てるとは思ってないけど、でも、私と片岡さんじゃ、麻雀のスタイルは全然違うよ。」

「まあ、たしかに憧は、あんな攻め方はしないけどね。」

 起家は優希。そして、開始早々、

「リーチ!」

 三巡目でリーチをかけた。そして、

「一発ツモ! 8000オールだじぇい!」

 いきなり親倍ツモだった。

 東一局一本場、ここでは、

「ポン!」

 下家、東白楽高校の捨てた{發}を鳴いた。そして、

「ツモ。4100オール。」

 發混一色ドラ2で和了った。

 東一局二本場、ドラは{東}。ここでは、

「ダブルリーチだじぇい!」

 もう、手がつけられない。これは、対面、讃甘高校から、

「ロン! ダブリー一発ダブ東一盃口ドラ5。」

 一発で出た。

 {③③④④[⑤][⑤]11東東東西西}  ロン{西}

 {1}と{西}のシャボ待ち。36600点の手。

 讃甘高校は、この次鋒戦東一局だけで48700点を失った。

 

 この日、まこは、都内の不動産屋にいた。一人暮らしするところを探していたのだ。

 丁度、清澄高校の試合がテレビに映っていた。

「あいつら、絶好調のようじゃ…じゃなくて、絶好調のようね。」

 一応、まこは、都心の大学に通うため、標準語を話す努力をしはじめた。大学合格の報告を久にした時に、『そうしたほうがイイ!』と勧められたのがきっかけだった。

 既に、中堅戦に入っていた。点数は、清澄高校の圧倒的リード、2位が東白楽高校、3位が宮之尾高校、4位が讃甘高校だった。

 讃甘高校は、既に1万点を割っていた。

 東四局、讃甘高校の親。当然、讃甘高校としては、ここで少しでも稼いで副将に回したいところだった。

 しかし、

「ロン。2600点。」

 数絵から東白楽高校が和了った。いや、正しくは、数絵が東白楽高校に差し込んだ。

 東場の数絵は守りの麻雀だが、単に守るだけではなかった。讃甘高校のトビ終了を狙って差し込む相手を決めていたのだ。2位の東白楽高校なら、安手でも和了って場を流してくると…。

 そして、南入した。場に、温かい風が吹いた。

 南一局、数絵の親。東場の守りの麻雀から一変して攻めに出た。

「リーチ。」

 4巡目で数絵が先制リーチをかけた。そして、

「一発ツモ。ドラ3。」

 優希ほど凶悪ではないが、高い手を決めた。

 南一局二本場、数絵は聴牌したが、リーチをかけなかった。そして、

「ロン。南ドラ2。7700の一本場は8000。」

 讃甘高校を直撃した。これで、讃甘高校のトビで終了となった。

 まこは、

「みなもと咲に回さずして終了とは…。凶悪じゃ。」

 後輩達の更なる成長に驚き、クセで方言が出ていた。

 

 同時に行われている永水女子高校の試合も、既に中堅戦が終わろうとしていた。

 永水女子高校は、先鋒が石戸明星、次鋒が滝見春、大将に十曽湧を置いていた。中堅と副将は、六女仙以外の選手となった。

 ただ、永水女子高校中堅は、オカルト属性ではないが、非常に巧い打ち回しを見せていた。その打ち筋は、比較的和に似ていた。

 対戦相手は、千里山女子高校、福島県の裏磐梯高校、高知県の長者野高校。

 オーラス、裏磐梯高校の親番。ここで、永水女子高校中堅が、

「ツモ。3000、6000。」

 ハネ満をツモ和了りした。

「中堅戦終了! 永水女子高校は、先鋒の石戸明星の作った圧倒的リードを、次鋒、中堅と守るどころか、さらにリードを広げました! 2位は千里山女子高校…。」

 アナウンサー福与恒子の声がこだました。

 この時、千里山女子高校監督愛宕雅恵は、

「(熊倉さんから聞いてたけど、協会の指令で、本当に清澄がダブルエースを副将、大将に置くとはな。それでも、中堅までに清澄がトブとは思えへん。如何に中堅までに清澄高校を3位にして、どこかをトバすか。それにかかっておるんやろな…。でも、何故、協会がそんなことを仕組んだんやろ?)」

 と心の中で呟いていた。

 雅恵の想定していたオーダーは、先鋒か次鋒にみなも、大将に咲だった。

 もし、この順番で来たら、まず清澄高校を落とすことはできない。みなもが絶対的リードを作るだろうし、下手をすれば、みなもにどこかがトバされる。

 しかし、今のオーダーなら、みなもを前に置かれたケースよりも、清澄高校を敗退させる可能性は少しだけだがある。勿論、和、優希、数絵を相手に、3位以下に落とすことは困難ではあるのだが…。

 この試合は、永水女子高校が1位、千里山女子高校が2位で、この2校が二回戦に進出した。

 そして、その日の午後、臨海女子高校と姫松高校が姿を現した。

 二回戦には、大方の予想通り、臨海女子高校、姫松高校、島根県の粕渕高校、兵庫県の劔谷高校が進出した。

 

 翌日、Bブロック一回戦が行われた。

 この日の午前に白糸台高校の試合と朝酌女子高校の試合が行われた。そして、阿知賀女子学院の試合と新道寺女子高校の試合が、この日の午後に行われた。

 白糸台高校、朝酌女子高校、阿知賀女子学院、新道寺女子高校は、危なげなく1位通過で二回戦に進出した。

 

 大会3日目。清澄高校の二回戦が開始された。ここからは、前後半戦の半荘2回ずつの戦いになる。

 多くの人達の興味は2点、『清澄高校の4連覇達成』、あるいは『清澄高校を敗退させるのはどの高校か』、それだけだった。

 そして、清澄高校を追い詰めることができる可能性のある高校として挙げられていたのは、阿知賀女子学院、白糸台高校、永水女子高校、臨海女子高校の4校のみだった。

 今日の清澄高校の相手は、東白楽高校、永水女子高校、千里山女子高校。待望の清澄高校と永水女子高校の対決だった。

 清澄高校の先鋒は和、永水女子高校の先鋒は明星、千里山女子高校の先鋒は泉だった。

 そして、東白楽高校の先鋒は1年生で、鈴木兒生(慕の横浜にいた頃の友人)の姪、鈴木麻衣。なかなかの巨乳の持ち主だった。ここに玄がいたら、間違いなくオモチスイッチが入ったことだろう。

 泉は、この3人を見て、

「(こいつら…潰す!)」

 と、どうしても麻雀以外のほうに頭が行ってしまった。仕方がないだろう。

 

 場決めがされた。起家は泉、南家は和、西家は麻衣、北家は明星だった。

 東一局、泉の親。

「(原村にも、この永水の1年にも負けられない。)」

 今の泉は、魔物以外での高2最強を目指していた。咲、みなも、淡、穏乃などの魔物には、どう考えても勝てない。しかし、そう言った特殊な人間を除いてのナンバーワンなら、なれるかもしれない。そう思うように切り替えていた。

 明星の捨て牌にはヤオチュウ牌(19字牌)が少ない。最初から能力全開だった。ただ、ある意味、クイタンなら序盤から明星の牌を鳴ける。

「チー!」

 明星の切った{五}を泉が鳴いた。これで、泉はタンヤオ三色同順の一向聴になった。

 しかし、牌効率の良い和に先を越された。

「ツモ。タンヤオツモドラ1。1000、2000です。」

 最初の和了りは和だった。

 

 東二局、和の親。ドラは{二}。

 この局は、珍しく序盤から明星は字牌を切り出していた。そして、

「チー。」

 麻衣が捨てた{②}を鳴いた。晒したのは{横②①③}。

 そして、数巡後、泉の捨てた{3}を、

「ロン。中チャンタ三色ドラ1。8000。」

 明星が和了った。

 

 東三局、麻衣の親番。

「チー!」

 麻衣が、和の捨て牌を鳴いた。連荘狙いで速攻を仕掛けてきたのだ。そして、

「ツモ。1000オール。」

 クイタンドラ1の安手だったが、これで連荘。

 東三局一本場。

 まだ和了っていないのは泉だけだった。泉は焦っていたが、とにかく落ち着くように自分に言い聞かせていた。そして、なんとか平和手を聴牌した。

 しかし、待ちが悪かった。両面待ちだが、既に和了り牌が6枚見えていた。

 リーチをかけずに手変わりを待った。頭が暗刻になったら両面待ちのところを落として一旦単騎待ちにし、その後に暗刻の隣の牌が来れば変則三面待ちになる。そんなことを考えていた。しかし、その次巡で和了り牌を引いてきた。

「(運があるんだか無いんだか…。)」

 泉は、

「ツモ。平和ツモ赤1。800、1400。」

 安手だが、これで和了った。

 

 東四局、明星の親。

 この局での明星の配牌は、ヤオチュウ牌に偏っていた。これは、能力ではなく、普通にあることだ。ただ、明星にとって、これはチャンスだった。

「(国士無双を狙う!)」

 しかし、5巡目、

「リーチ」

 和が攻めてきた。明星は、対子の字牌の片方を切り、一先ず一発を回避した。

 そして2巡後、

「メンタンピンツモドラ1。2000、4000です。」

 和が満貫をツモ和了りした。これで、和が明星を抜いてトップになった。

 

 南入した。南一局は泉の親。ドラは{九}。

 泉は、まだ一回安手を和了っただけで、ここで連荘して稼ぎたいところだった。

 明星の捨て牌には、相変わらずヤオチュウ牌が少なかった。ドラが{九}なので、ヤオチュウ牌にツモ牌が偏る明星は要注意だった。

 泉が聴牌した。浮き牌は{⑤}。普通ならここで切りたくはないが、{⑤}は麻衣の現物で、和も{②}と{⑧}を切っていた。明星は、{⑤}ならば多分問題ないはず。それで、{⑤}を持ち続けていた。

「リーチ!」

 泉が捨て牌を横に向けた。すると、

「ロン。七対ドラ3。8000です。」

 明星に直撃された。赤{⑤}単騎でドラの{九}を2枚持った手だった。待ち牌以外は全てヤオチュウ牌。自分の特性がバレているのを逆手に取った戦法だった。

 

 南二局、和の親番。ドラ{北}。

 明星の配牌が、再びヤオチュウ牌に偏った。東四局と同じで、明星にとってのチャンスだった。しかも、ドラが字牌。

「(今度こそ、和了ります!)」

 自然と明星は気合が入った。

 和の手牌は、字牌が少なかったが、筋で来ているところが多く、形になるには時間がかかりそうだった。

 一方、泉と麻衣は手が軽かった。ただ、どうしても一向聴から先に進むことができずにいた。そこに、

「ツモ。混一混老七対ドラ2。6000、12000。」

 明星の和了り宣言。

 混老七対子を25符5翻として数えるルールのため、これは三倍満になった。これで、明星が逆転し、1位に返り咲いた。しかも、大量リード。この局一番の和了りを見せた。

 

 南三局、麻衣の親番。

 普通なら、親の時に三倍満をツモ和了りされたらショックはある。振り込んだわけでもないのに12000点を持ってゆかれるのだ。

 しかし、和は、それで揺らぐような人間ではなかった。

「チー!」

 すぐに切り替えて、

「ツモ。タンヤオ三色ドラ1。1000、2000です。」

 和了った。

 

 オーラス、明星の親。ドラは{白}。

 ヤオチュウ牌が偏る明星の和了りは要注意だ。泉は、とにかく安い手で良いから流すことだけを考えていた。

 4巡目、泉は聴牌。{三六}待ち。

 平和タンヤオで赤牌が1枚あるだけの安手。普通なら、先制リーチをかけて裏ドラを期待するところだが、下手にリーチをかけて、万が一、明星に振り込んだら洒落にならない。

 しかも、ドラの{白}は、場に一枚も出ていなかった。そのため、ここはダマで待った。

 そして、その直後、明星が捨てた{三}を、

「ロン。3900。」

 泉が討ち取った。

 前半戦が終了した。

 

 各校の順位と点数は、

 暫定1位:永水女子高校 128300

 暫定2位:清澄高校 102200

 暫定3位:東白楽高校 90600

 暫定4位:千里山女子高校 78900

 泉は、南3局で75000丁度まで落ち込み、25000点持ちならばトビ直前であった。

 しかし、最後に明星の親を流したのはファインプレーだった。

 この時の明星の手は、

 {一一一七九①①789白白白}

 たまたまだが、この早い巡目で、{八}待ちで聴牌したところだった。親ハネの18000点の手だ。

 {七九①③}と持っていたところ、{①}をツモり、{③}を切ったところだった。

 泉は、控室に戻った時に、これを監督の雅恵に聞かされた。

 

 和と明星は、対局室の椅子に座ったままだった。

 ここに、

「のーどか。」

 みなもが来た。

「大きいの、やられたね。」

「三倍満の親かぶりは、結構痛かったですね。」

「それにしても…、明星ちゃんだっけ?」

「私ですか?」

「敵ながら天晴れだと思ったよ。能力だけで押してくる感じじゃなくて。」

「インターハイでは、宮永…みなもさんにも咲さんにも、徹底的にやられましたので、色々考えさせられました。」

「能力に振り回されず、逆にうまく使ってるって感じがしたよ。」

「でも、インターハイの二回戦の時が、一番和了れていたと思います。それと比べますと、いま一つ…。」

「あれは、臨海のネリーが運の操作を間違えたからだね。」

「「運の操作?」」

 明星だけでなく、和も、

「(なんだそれ?)」

 といった顔を、みなもに向けた。

「うちのコーチに聞いたけど、運の波を操作する能力を持っているらしいね。最終的には自分がまくってトップを取るつもりだったんだろうけど、明星ちゃんが、あんな役満を連発する子だとは思っていなかったんだと思う。」

「はぁ…。」

「少なくとも、インターハイの時よりも強くなっていることは保障するよ。私も咲も、うちのコーチもね。」

「あ…ありがとうございます。」

「次に直接戦える時を楽しみにしてるよ。それと和はね…。」

 みなもが和に耳打ちした。明星に聞かれては困るからだ。

「明星ちゃんが高い手を和了ってくると思うけど、ツモられたらしょうがない。ただ、後半になると明星ちゃんから19牌がこぼれてくる。」

「それを討ち取ることを考えればイイんですね。」

「うん。ただ、安易に19時牌を切らないことも大事だよ。明星ちゃんに鳴かれることもあるからね。」

「そこは、明星ちゃんの手を見ながらってことですね。クイタンが明星ちゃん対策の一つなのは間違いありませんが、それだけに走ってはダメってことになりますね。」

「そうなるね。できれば1位になって欲しいけど、2位で構わない。これは、団体戦だからね。総合力で勝てばイイ。」

「そうですね。」

「永水女子は先鋒と大将は凄いけど、全体的に清澄のほうが上だよ。次鋒は、明星ちゃんのリードを守ろうと安手で流してくるだけ。多分、5万点くらい差があっても優希が逆転してくれる。中堅は巧いけど、多分数絵には及ばない。だから、大丈夫。副将のツインテールは、結構頭の良いうち方をするけど、そこまで回ってきたら私が虐殺するから。」

「わかりました。」

「じゃあ、頼んだよ。」

「はい。」

 みなもは、右手でVサインを出すと、対局室を出て行った。ただ、これを見た和は、

「(あれは、VictoryのVでしょうか? それとも、2位狙いの意味でしょうか?)」

 そんなことを考えていた。

 

 後半戦に入った。

 場決めがされ、起家が麻衣、南家が泉、西家が和、北家が明星になった。

 東一局、麻衣の親。

 泉は、自分の配牌を見て、ヤオチュウ牌の比率が若干だが、いつもに比べて落ちる感じがしていた。明星のツモに流れる分、配牌に行くヤオチュウ牌が減っているのだろう。

「(なら、面子になってる19牌だけ残して、他は早目に切っておいたほうが良いってこと。それが、明星対策。)」

 そして、

「ツモ。平和ツモ一盃口ドラ1。1300、2600。」

 泉が和了った。

 

 東二局、泉の親番。

 泉は、ヤオチュウ牌の比率が減ることを前提に、クイタンに走った。そして、

「ツモ。タンヤオドラ2。2000オール。」

 まるで、その考えが正しいことを証明するかのようにツモ和了りした。

 

 東二局一本場。

 麻衣も、

「チー!」

 泉のようにクイタンに走り出した。そして、

「ツモ。タンヤオドラ2。1100、2100。」

 ツモ和了りした。

 

 東三局、和の親番。ドラは{3}。

 後半戦に入ってから、まだ和は鳴いていなかった。前半戦では、明星の手の進みを見ながら鳴くことはあったが、今は面前で手を進めていた。そして、

「リーチ!」

 {六}を切ってのリーチだった。

 一先ず、3人は、和の安牌を切った。一発回避だ。

 和の一発ツモ和了りはなかった。しかし、数巡後、

「ツモ。リーチツモ三色ドラ1。4000オールです。」

 開かれた手は、

 {二三四七七七九②③④234}  ツモ{八}。

 これを見て、泉は、

「(なんで{九}切りリーチじゃないんだ? 結果的にタンヤオと平和を捨ててる。まあ、親ハネが親満に下がって、こっちはラッキーだけど、原村にしては珍しいミスだな。)」

 と思っていた。

 同じことを、アナウンサーの福与恒子も思っていた。すると、解説の小鍛治健夜が、

「これは、石戸選手対策ですね。石戸選手は、ヤオチュウ牌のツモが多く、またヤオチュウ牌で待つことも多い選手です。」

 とコメントした。

 つまり、{九}を捨ててリーチをした場合、明星に鳴かれたり和了られたりする可能性が少なからずある。しかし、{九}を残してリーチした場合、筋切りで明星から{九}が出てくることもあるだろう。

 泉は、非能力者を相手にするには巧い打ち手だが、能力者の対策までは頭が回っていなかった。そう言う意味では、恭子や元鶴賀学園の加治木ゆみは、優れた感性を持っていると言える。

 東三局一本場、和の連荘。ドラは{7}。

 泉は、和の打ち方が理解できず、

「チー!」

 クイタン命で手を進めていった、幸い、赤牌2枚にドラの{7}が2枚が手の中にある。そして、

「ツモ。タンヤオドラ4。2100、4100。」

 満貫をツモ和了りした。

 

 東四局、明星の親番。

 泉は、

「チー!」

 やはり、クイタンで逃げようとした。しかし、ここで捨てた{①}を、

「ポン。」

 明星に鳴かれた。泉は、

「(スピードで負けてたまるか!)」

 麻衣が捨てた牌を、

「ポン!」

 鳴いて手を進めた。しかし、数巡後、明星のツモ番。

「ツモ! 白混一混老対々三暗刻三色同刻。12000オール!」

 開かれた手は、

 {一一一111白白發發}  ポン{①①横①}  ツモ{白}

 先鋒戦一番の和了りが出た。まさに、みなもと和の会話が正しいことを証明するかのような一撃だった。

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