大会3日目が終わった。
Aブロックの準決勝戦進出校は、清澄高校、永水女子高校、臨海女子高校、粕渕高校の4校に決まった。
大会4日目は、Bブロック二回戦が行われ、白糸台高校、朝酌女子高校、阿知賀女子学院、新道寺女子高校の4校が準決勝戦に進出した。
大会5日目、AブロックとBブロックの準決勝戦が同時に行われた。
清澄高校の先鋒は和、永水女子高校の先鋒は明星、臨海女子高校の先鋒は、かつて長野県で活躍した東横桃子であった。父親の転勤で都内に引越し、その戦績から喜んで臨海女子高校に迎え入れられた。粕渕高校の先鋒は、春日井真深の姪、1年生の春日井真澄だった。
場決めがされ、起家は桃子、南家は和、西家は真澄、北家は明星になった。
東一局、桃子の親。当然のことだが、まだ桃子のステルスは始まっていない。
まずは立ち上がりで様子見の局。
「ツモ。1000、2000。」
この局は、30符3翻の手で真澄が和了った。
そして、東二局、和の親の時も、
「チー!」
真澄が速攻で和の捨て牌を鳴き、
「ツモ。1000、2000。」
真澄が早和了りを決めた。
東三局、真澄の親番。ドラは{9}。
明星の雰囲気が変わった。どうやら、スイッチが入ったようだ。
序盤から{2}、{④}、{六}と、国士無双でも狙っているかのようなチュンチャン牌の捨て牌が続いた。そして、
「ツモ。七対ドラ3。3000、6000。」
明星がハネ満をツモ和了り。赤牌1枚とドラの{9}を対子で持っていた。
東四局、明星の親。
ここでも、明星は、チュンチャン牌から切り出した。しかし、
「ツモ。」
和のほうが、早かった。
「2000、3900です。」
この時、明星と真澄は、何か違和感を覚えた。どこか、いつも打つ麻雀と違うのだ。
昨年のインターハイ個人戦で、9位から12位を決める卓で明星は桃子と打っていた。ただ、あの時は、淡と明星が東場で高い和了りを連発して、東場で数絵がトンで終わってしまった。そのため、明星は、桃子のステルスを経験できずにいた。
今、まさに明星は、ステルス初体験だった。
この時点では、2人とも、その違和感(ステルス)が何なのか、分からないでいた。
南入した。
南一局は、桃子の親番。ドラは{6}。
彼女は、比較的早い巡目で聴牌した。
{一二三四④[⑤]⑥22789北北}
「リーチ!」
桃子は、打{横一}でリーチをかけた。
和は、すぐさま手を崩して{一}を切った。一発回避の安牌切りだった。
親の先制リーチに対して三向聴から勝負を仕掛けるようなことは、和は絶対にしなかった。降り確定である。
しかし、真澄は、
{三四[五]六六八⑤⑥24688}
ここに{[5]}のツモ。
ノーケアーで{2}を切った。
「ロン。リーチ一発赤1。7700っす。」
「えっ?」
真澄は、信じられない顔をしていた。
「リーチの発声はしていないんじゃ?」
「してたっすよ。だから、清澄のおっぱいさんは、私のリーチ宣言牌に合わせ打ちしてるっす。そうっすよね?」
「はい。」
和は、桃子の主張に同意した。和には、ステルスは通じない。だからこそ、和が桃子のリーチ宣言の証人になる。
桃子の狙いは和から和了ることではなかった。明星と真澄から点を奪い、トップを取ることだった。
南一局一本場、桃子の連荘。ドラは{七}。
この局は、桃子よりも和のほうが、聴牌が先だった。
{二三四五六七七七11中中中}
しかも、{一四七1}待ちで中ドラ3の満貫手。
リーチはかけなかった。明星からの出和了りを狙うためだ。
しかし、
「ツモ。2100、4100。」
そのまま和は、和了り牌の{四}を引いてきた。結果的には、リーチが正解だったかもしれない。
南二局、和の親。
今度は桃子が先に聴牌した。明星と真澄の様子から、この2人にはステルスが効いている。
ならば、
「リーチ。」
桃子は、捨て牌を横にした。
和は、桃子の現物を処理した。しかし、真澄は桃子のリーチには気付かないでいた。そのため、自分の手を進めるために不要牌を切った。
「ロン。5200っす!」
「えっ?」
真澄には、またもや理解できない振込みだった。違和感しかない。納得ができない。そんな状態だった。
南三局、真澄の親。ドラは{⑨}。
ここでも桃子が、
「リーチ。」
6巡目に打{横8}でリーチをかけた。
桃子の手は、
{二三四五六⑦⑧⑨33399}
{一四七}待ち。
この時、和は、既に聴牌していたが、明星からの振込みを期待しつつダマで待っていた。
そこへのリーチ。
和の手は、
{三四五②③④⑤⑥67778} ツモ{1}
と高くない手だった。ムリに突っ張る必要もない。それで、和は、一先ず一発回避で聴牌を崩し、現物の{8}を落とした。
真澄は、嫌な予感がした。それで、違和感が続く中、意味不明の振込みを回避する手段として、和に合わせて{8}を切った。たしかに、これなら振り込まない。
一方の明星は、丁度、{西}ツモで聴牌したところだった。
{一①①⑨⑨東東南西白白發發} ツモ{西}
それも、{一}切りで混一色混老七対子ドラ2。混老七対子を25符5翻として数えるルールだったため、リーチをかけてツモれば三倍満。さらに裏が乗れば数え役満。
待ちは字牌。明星の特性上、自分でツモれる可能性が高い。
明星は、ツモ和了り+裏ドラ期待で、
「リーチ!」
打{横一}で、捨て牌を横に曲げた。しかし、
「ロン。リーチ一発ドラ1。で5200っす。」
今度は、明星が納得のゆかない振込みをした。いつ、このリーチがかかっていたのかが分からなかったし、それ以前に、振り込んだ先の人間も捨て牌も見失っていた。
小蒔も初美も霞も、テレポーテーションすることはあっても、存在自体が見えなくなることはない。こんな麻雀は初めてだった。
オーラス。明星の親番。
この局では、明星の配牌に{①②③}の順子があった。他は、比較的ヤオチュウ牌の対子が多く、明星にとってチャンスの手だった。
「(ここは、何としてでも和了る!)」
明星は、不要なチュンチャン牌から切り出した。
いつ、見えない人間が見えない捨て牌を横に曲げるか分からない。既に曲がっているかもしれない。しかし、分からなければ対応のしようがない。
明星は、一先ず、より和了られそうな数牌を先に処理した。そして、
「ツモ! 混一チャンタツモ三暗刻! 8000オール!」
この局一番の和了りが出た。結果オーライである。これで、明星はトップに立った。
この違和感だらけの半荘を続けるべきか、一旦打ち切るべきか、明星は迷ったが、少し考えて連荘を宣言した。
「(春日井さんは、私と同じで、この対局に違和感がある。納得の行かない感じ。でも、原村さんは、なんとも思っていない。普段と変わらない気がする。なにが違うのか、できれば、この局で見極めたい。)」
しかし、この連荘は失敗だった。明星は、ステルスの存在まで考えが及ばなかったからだ。普通、ステルスなんて想像もつかない。
結局、違和感を抱えたまま、
「ツモ。2000、3900の一本場は、2100、4000です。」
先に和に和了られた。
ここで、各校の順位と点数は、
暫定1位:永水女子高校 118800
暫定2位:清澄高校 110400
暫定3位:臨海女子高校 95900
暫定4位:粕渕高校 74900
なんとか、明星がトップを守り抜いた。
休憩時間に入った。
例の如く、
「のーどか!」
みなもが対局室に入ってきた。
「さすがだね。監督が先鋒にした理由がよく分かったよ。」
恐らく、桃子対策に、ステルスが効かない和を先鋒にした。もし、先鋒が優希だったら南場で桃子に大きく削られていたかもしれない。
「別に、普段どおり打っているだけですから…。」
「東横さんは、長野県大会の個人戦で当たった記憶があるけど…。」
すると、誰も居ないはずの、みなもの背後から、
「あの時は、全局ツモ和了りされて、私も含めて全員トバされたっす。」
声が聞こえてきた。これには、はたで見ていた明星も驚いた。巫女なので、幽霊は怖くないが、得体の知れない存在は怖い。
「そうだったね。でも、色んな国の人と麻雀を打ったけど、東横さんみたいなタイプは初めてだったなぁ。まあ、ネタばらしにならないうちに、私は退散するね。一応、2人に差し入れ。」
みなもは、和と桃子に透明なコーラを渡した。
見えない桃子に対して色のないコーラを選んだのは、みなもなりの洒落のつもりだったようだ。桃子には、一応理解してもらえたようだ。
しかし、ステルスの通じない和には意味が分からなかった。
後半戦が開始された。
場決めがされ、今度は起家が真澄、南家が和、西家が明星、北家が桃子になった。
東一局、真澄の親。違和感の正体に気が付かないまま、真澄はサイを回した。
一方、明星は違和感の正体に気付き始めていた。休憩中に、誰もいなかったはずの、みなもの背後から桃子が突然現れたのがヒントになった。
桃子の試合では、相手が凡ミスで桃子への振込みを連発しているイメージが明星にはあった。桃子の過去の対局の録画を見て、そう思えたのだ。しかも、その凡ミスが、局が進むに連れて多くなる印象だった。
しかし、実際の対局を経て、それが凡ミスではなく、必然であることが、はっきりした。。
「(違和感の正体…。それは、東横さんが見えないから。)」
しかし、だからと言って対処方法まで分かったわけではなかった。そうこうしているうちに、
「ロン。5200っす。」
明星は、また桃子に振り込んだ。
東二局、和の親。ドラは{4}。
「(やっぱり、東横さんが見えない。今の私には、これを巧くかわすことができない。でも、毎回、東横さんが聴牌するとも限らない。なら、どっちの攻撃力が強いか、勝負するしかないようね。)」
明星は、開き直った。力で押す。今は、これで行くことにした。
{一三七九③⑦25東西西白白}
「ポン!」
和が捨てた{白}を、序盤から明星が鳴いた。そして、次巡、今度は真澄が捨てた{西}を、
「ポン!」
明星は鳴いた。明星のツモはヤオチュウ牌ばかりだが、他家に一切ヤオチュウ牌が行かないわけではないし、配牌までは操作できない。そのため、和も真澄も配牌時にあった不要なヤオチュウ牌を序盤に切り出してくる。そのうち、鳴けるモノを鳴いただけだ。
ここから、明星の手に来る牌は19牌と字牌のみ。その組み合わせが悪くなければ和了り形にはもって行ける。そして、
「ツモ。白東混一混老対々。4000、8000。」
開いた手は、
{一一九九東東東} ポン{西横西西} ポン{横白白白} ツモ{九}
倍満を和了った。これで2位との差を25000点以上にリードを広げた。
東三局、明星の親。
ここでも桃子は攻めに出た。ステルスが発動しているのだから当然であろう。
「リーチ!」
しかし、この発声と同時に和が牌を倒した。
「ロン。5200です。」
桃子は、
「(少し甘かったっすね。おっぱいさんには見えてるんすから…。)」
軽く、静かに深呼吸した。本来なら、ここで気合を入れ直すために了頬を叩くとかしたいところだが、それだと目立つ。せっかくのステルスを壊す可能性がある。それで、静かに気を入れ直すことにしていた。
東四局、桃子の親番。ドラは{⑨}。
桃子は、5巡目で、
{二四[五]六3334568中中} ツモ{7}
聴牌した。
打{横二}で、
「リーチ。」
捨て牌を横にした。{369中}待ち。
真澄は、このリーチに気付かなかったが、たまたま{69中}を持っていなかったし、{3}は使っていた。それで、普通に手を進めたが振り込むことはなかった。
和は、一発回避で安牌を切った。
明星は、ドラの{⑨}を抱えた高い手の二向聴だった。嫌な予感がしたが、和の捨て牌も真澄の捨て牌も明星の手牌にはなかった。
それで、手を進めるべく{9}を捨てた。
「ロン。リーチ一発ドラ1。親は7700っす。」
痛い失点だった。しかも、このステルスをまとった桃子が、親を連荘する。
東四局一本場。この局も、
「ロン。7700の一本場は、8000っす。」
明星は桃子に振り込んだ。二連続だ。
そして、東四局二本場。
この局は、真澄の配牌が割りと良かった。配牌で既に一盃口が出来上がっていた。しかもドラが対子で赤ドラも1枚ある。
「ツモ。一盃口ドラ3。2200、4200。」
ようやく真澄が和了った。前半戦東二局以来の和了りであった。
南入した。南一局は真澄の親。さっきの和了りで勢いをつけたいところだった。
しかし、
「ツモ! 混一混老七対。4000、8000。」
また、明星が混老七対子をツモ和了りした。この親かぶりは、真澄には痛かった。
続く南二局は、和の親番だった。
桃子は、一盃口赤2を{①④⑦}待ちで聴牌した。しかし、ここにはステルスが効かない和がいる。そこで、桃子はダマで待つことにした。
ただ、それでも和からの振込みはなかった。
とは言え、数巡後に明星から{①}が出てきた。
「ロン。5200っす。」
これで、後半戦での明星の振込みは4回になった。しかも、全て桃子からの直撃であった。それで、後半戦で倍満を二度和了ったにもかかわらず、後半戦開始時点から4000点未満のプラスにしかなっていなかった。
南三局、明星の親。
このたび重なる振込みが、明星のツキを奪った。
ヤオチュウ牌ばかりツモることが分かっていても、運が悪ければ切った牌ばかりをツモり直す。その結果、手は全然進まなくなる。
まさに、今の明星は、そんな状況だった。
一方、この局で好配牌の好ツモだったのは真澄だった。
「リーチ!」
真澄も、違和感があるなら、いっそのこと開き直ってしまおうと考えた。それが聴牌即リーチであった。しかも、出和了りはしない。ツモにかける。
そして、
「一発ツモ! ドラ3。3000、6000!」
結果オーライだった。ただ、桃子を相手にする場合、余程運が良い時でないと、こんな勝負に出てはならない。今回和了れたのは、たまたまに過ぎないだろう。
オーラス、桃子の親。
対局開始から最も時間が経過したこの時こそ、最もステルスが強力になる。しかし、それでも和には見えていた。これでこそ、全てをゲーム画面と同じに認識するデジタルの化身だ。
ただ、この局も、
「ロン。7700っす。」
またもや明星が桃子に振り込んだ。
そして、オーラス一本場。
「ポン。」
桃子の捨て牌を和が鳴いた。これで、急に雰囲気が変わった。強力なステルスが消えたのだ。そして、
「ツモ。タンヤオドラ3。2100、4000です。」
そのまま和が和了った。
これで、先鋒戦が終了した。
「「「「ありがとうございました(っす)。」」」」
各校の順位と点数は、
暫定1位:永水女子高校 106700
暫定2位:清澄高校 106600
暫定3位:臨海女子高校 105300
暫定4位:粕渕高校 81400
上位3校が僅差となった。
「やっぱり、特殊な能力には、まだ対応できないってことみたいだね。まあ、もう少し経験を積んでもらおうかね。」
トシは、この対局を麻雀協会の一室で見ていた。
やはり明星に対する期待が大きいようだ。
世界大会まで半年以上あるが、ゆっくりはしていられない。明星の底上げをどうやって行うかがトシ達の課題であった。
真澄は、控室に戻るなり、
「あーぁ。さすが、強いわ!」
ソファーに倒れ込んだ。
「相手3人、全部がインターハイベスト16だもんね。よくやったよ。」
次鋒で1年生の坂根理沙が、そう言いながら真澄にコーヒーを差し出した。理沙は、慕たちの中学時代の麻雀部顧問、坂根千沙の娘だった。
「ありがとう。でも、次は理沙の番でしょ。」
「うん。」
「東風の神とか、アジア大会銀メダリストとか大変だけど…。」
「でも、麻雀は1人でやるものじゃないから…。それをよく分かっている巫女もでてくるしね。」
「そうだね。じゃあ、よろしく頼んだよ。」
「まあ、なんとかなるでしょ。」
理沙は、そう言いながらも、楽観的と言うよりは、むしろ深刻な表情をしていた。やはり、東場での優希の爆発力を恐れていたのだ。そして、長い髪を後ろで結ぶと、
「じゃあ。」
静かに控室から出て行った。
一方、清澄高校控室では、
「イヌ。タコスくれ!」
「おお。これを持ってけ。」
「用意がいいな。さすが、できたイヌだ!」
優希と京太郎の、いつものタコス系の会話が繰り広げられていた。早速、優希はタコスを1つ頬張った。当然のように、一瞬のうちになくなった。
そして、優希は、さらに2つばかりタコスを手にするとマントを羽織り、意気揚々と控室を出て行った。
また、永水女子高校控室では、
「明星ちゃん、お疲れ。」
大将の十曽湧が明星を出迎えた。六女仙の中で、2人は最年少同学年と言うこともあり、仲が良かった。
「でも、まさか明星ちゃんが、あんなに苦戦するとは驚いたよ。」
そう言ったのは、中堅の狩宿萌。彼女は、六女仙の1人である狩宿巴の従妹で、明星たちと同じ1年生だった。
ただ、萌は特に霊力はなく、通常のデジタル打ちをする。麻雀ゲームが好きで、のどっちを崇拝しており、彼女自身は、『ノロっち』の名でゲームに参加していた。なんとなく、のどっちに似せたハンドルネームにしただけで、特に深い意味はなかった。ウイルスでもなんでもない。
「じゃあ、次は私の番。」
春が椅子から立ち上がった。
「はい、これ。」
副将の椿加々美2年生が、春に黒糖の袋を渡した。加々美は、埼玉県久喜市鷲宮地区から来たツインテールの子。修行のために半年間だけ永水女子高校に通うことになっており、この春季大会が終われば元いた高校に戻ることになっていた。頭が良く、和ほどではないが、比較的完成度の高いデジタル打ちが特徴であった。
春は、黒糖の袋を受け取ると、
「ありがとう。じゃあ、いってくる。」
控室を後にした。
この時、臨海女子高校だけは、殺伐とした空気に覆われていた。
中堅のアグネスは、ドイツからの留学生で、特に能力麻雀を打つわけではなく、デジタル打ちだった。ただ、超アンチニーマンだった。
5年前、まだミナモが地下麻雀デビューするよりも前だが、アグネスの姉が、地下麻雀が原因で心身ともにおかしくなった。それでニーマン一派を恨んでいた。
副将のネリーは、地下麻雀での恨みを晴らすため、ミナモへの復讐心に燃えていた。
そんな2人が、みなものいるチームと戦う。
当然、アグネスとネリーの2人から、激しい殺気が振り撒かれていた。殺伐とした空気になるわけだ。
次鋒の郝は、
「いってきます。」
逃げるように控室から飛び出していった。
控室に戻ってきた桃子は、
「(一先ず、消えるっす。)」
気配をマイナスにしてアグネスとネリーの視界から消えた。
一方、監督のアレクサンドラは、
「(アグネスまで、あんな風になるなんて…。アグネスのことは、何も聞いていなかったからな。)」
非常に困っていた。
この雰囲気が嫌だったのは否定できないが、それ以上に、アグネスとネリーが、正常に麻雀が打てるかどうかを危惧していた。
麻雀は、どうしても精神面が強く影響する。苛立ちはマイナスにしかならない。
しかし、どうやって宥めたら良いのか、分からないでいた。
対局室に選手達が入ってきた。
場決めがなされ、起家は当然のように優希、南家は二回戦同様に春だった。
「(狙い通り。)」
やはり、霊力か何かで、優希の下家になるように操作していた感じがする。
西家はアジア大会銀メダリストの郝、北家は理沙になった。
東一局、優希の親。ドラは{⑤}。
優希は、不要な第一打で字牌を切った。そして、二巡目で捨て牌の{横①}を横に曲げた。
「リーチだじぇい!」
いきなりフルスロットルだった。
埼玉県久喜市鷲宮地区で椿加々美ですので、元ネタは言うまでもないと思います。
大鳥居が倒壊しました。