※この作品はR-18です。

みなも-Minamo-   作:おこそとのほもよろを

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第四十一局:点棒の支配者

 泉が、マホ達を見つけた。

 そこには、マホとニーマンとアレクサンドラの3人の姿があった。

 泉が、そこに駆け寄ろうと思ったその時、優希がマホに話しかけてタコスを取り出そうとしていた。その後には、和達がいる。

 和達に姿を見られたくないからか、泉は、一旦、建物の影に隠れた。そして、マホ達のやり取りを聞いていた。

 突然、マホが激しく泣き出した。

「マホは、もう死んじゃったほうがいいくらい悪いことをしてしまったんです。」

「それって、いったい…。」

「能力移植を受けた人は、能力を得る代償に命を大きく縮めるんです。」

「命って…。」

「普通は、1年間で10年分の命を縮めます。ただ、泉先輩だけは、能力が強力ですので半年で10年分くらい縮めることになるんです。多分、あと3年くらいで…。」

「ちょっと待ってくれ。じゃ…じゃあ、移植の解除方法とかは、あるのかな?」

「マホには、その方法は分かりません。マホにも解除ができないんです…。」

 衝撃の言葉だった。

 さすがに、これは、泉としても、

『わーショックー』

 では済まない。

「(うちが、あと3年の命?)」

 泉は、その場から逃げるように走り出した。

「(うちは、ただ麻雀が強くなりたかった。ただ、それだけなのに…。)」

 この時、泉の心の中に、春季大会で愛宕雅恵と交わした会話が甦ってきた。

『ああ、そう言えばですね、例えばですけど。』

『なんや?』

『麻雀が強くなる薬なんてものがあったら、監督は飲みますか?』

『なんか、けったいな話やな。どこからそんな話が出たん?』

『いえ、なんとなく思っただけです。そんなんがあったら、怪物相手でも勝てるんではないかって思いまして…。』

『そりゃぁ、飲んでみたいわ。ただし、副作用がなかったらの話やがな…。』

 今回、泉は薬を飲んだわけではない。麻雀が強くなる魔法を受けた。そして、それは、とんでもない副作用を持っていた。

「(副作用がなかったらの話か…。まさに、監督の仰るとおりでしたわ…。)」

 もう、自分は短い期間で麻雀に勝ち続け、知名度を上げ、華々しく散る。これ以外に道はない。

 泉は、失意のまま、ホテルに戻った。余命3年を言い渡されたのだから、無理もないだろう。

 

 一方、みなも達は、泣き叫ぶマホを前に、どうすることもできなかった。解決手段がないのだ。

 突然、眩いばかりの光が一面を覆いつくした。そして、その光が消え去ると、そこには小蒔と霞の姿があった。テレポーテーションしてきたのだ。便利である。

 小蒔が、マホのほうに近づいてきた。

「あなたが、マホちゃんですね。」

「ひっく。はい、あなたは…、ひっく、神代小蒔さんですね。」

「そうです。私は、今日、神の導きでここにきました。能力移植の解除法を伝えるためにです。」

「で…できるんですか?」

 マホは、すがる思いで聞いた。

「はい。方法は三つあります。一つ目は、九面の神の力で解除する方法です。ただ、今回の件に対して、神は、たいそうお怒りです。せいぜい1人しか神も対処してくれないでしょう。」

 これを聞いて霞が、

「(そんな話って、あったかしら小蒔ちゃん?)」

 と小蒔にテレパシーを送った。すると、

「(九面の神からは、反省を促すため、こう言うように言われています。)」

 と小蒔は、霞にテレパシーを送り返した。

 真実はともかくとして、1人しか解除できないと聞くと、誰を解除すべきかの話が当然出てくる。

 ニーマンは、

「では、ローザを。」

 アレクサンドラは、

「たのみます、ニーナを。」

 と懇願し始めた。

 ただ、この展開を小蒔は読んでいた。

「自分や自分の身内だけ良ければいい。そう言った姿勢にも、神はお怒りです。そもそも、今回の問題は、何の努力もせずに麻雀に強くなりたい。そんな心が作り出した事件でもあります。ですので、極力、神の力を使わずに解決すべきかと思います。それで、二つ目の方法ですが、これは、地球外生命体の力を借りること…。」

 これを聞いて、さすがに、みなも達は、

「(この人、電波入っちゃった?)」

 と思った。霧島神境の姫なので、神を語るのは周りから見てOKだが、さすがに地球外生命体は無い。

 小蒔は、周りからの視線から疑惑の念を感じ取った。さすがに、この話は無理にする必要は無かったと、後になって思った。

「そして、三つ目は、自分達で解決する方法です。移植された能力は人のように意志を持っています。その能力そのものと、能力移植を受けた者が、共に対局者に対して負けを認めた時、能力移植は解除されます。」

「では、マホがやったことは…。」

「みんなの力で、なんとかなるかも知れません。ただ、それができるのは日本チームだけと神から聞いております。しかも、対局するべき相手まで限定されています。いずれにしましても、ドイツチームと日本チームが決勝戦に出ることが必須です。それと…。」

 小蒔が、なにやら書き記した紙を閑無に渡した。

「決勝戦は、ここに書かれたとおりのオーダーにしてください。能力移植解除のためには、これに反することは許されません。」

 その紙を閑無が受け取った。

「分かった。それと、現状も慕に話して…。」

「白築プロには、一応、私からも話しておきます。そのオーダー表は、そこにいるニーマンに渡してください。とにかく、今は、両チームとも決勝進出を果たすこと。これに集中してください。では…。」

 小蒔と霞の身体が強烈に輝いた。そして、その光が収まったとき、2人の姿はその場から消えていた。また、どこかにテレポーテーションしたのだ。

 

 翌日、Aブロック二回戦が行われた。

 日本チームは、先鋒みなも、次鋒真尋、中堅蒔乃、副将和、大将咲で戦い、和以外の4人が勝ち星をあげて、無事三回戦に勝ち進んだ。

 ただ、この日、淡は例の呼び出しがあって不在だった。

 三日後に行われたDブロック二回戦では、ドイツチームが勝ち星5と、余裕で三回戦への進出を果たした。

 その翌日、Aブロック三回戦では、先鋒みなも、次鋒淡、中堅明星、副将咲、大将穏乃で戦い、余裕の勝ち星5で日本チームはブロック決勝戦に進出した。

 また、そのさらに翌日に行われたDブロック三回戦では、ドイツチームが勝ち星5でブロック決勝戦への進出を果たした。

 Aブロック決勝戦では、日本チームは先鋒みなも、次鋒蒔乃、中堅淡、副将穏乃、大将咲のベストメンバーで挑み、勝ち星5で決勝戦進出を決めた。

 同様に、Dブロック決勝戦でも、ドイツチームは先鋒マホ、次鋒泉、中堅ニーナ、副将ローザ、大将莉子で出場し、余裕の勝ち星5で決勝戦意進出した。

 

 そして、決勝戦当日。

 慕とニーマンは、2人一緒に大会運営に足を運んだ。互いに裏切りがないことを確かめるためだ。

 まず、慕が大会運営に日本チームのオーダーを渡した。

「これでお願いします。済みませんが、確認のためオーダーを読み上げてください。」

「はい。先鋒が宮永咲、次鋒が大星淡、中堅が高鴨穏乃、副将が石戸明星、大将が宮永みなも。これでよろしいでしょうか?」

「はい。ありがとうございます。」

 続いて、ニーマンが大会運営にドイツチームのオーダーを渡した。

「お願いします。それと、日本チームと同様に、確認のためオーダーを読み上げてください。」

「分かりました。先鋒が二条泉、次鋒がニーナ・ヴェントハイム、中堅が安福莉子、副将がローザ・ニーマン、大将が夢乃マホ。これでよろしいですね?」

「はい。」

 たしかに、互いに小蒔に指定されたオーダーである。慕とニーマンは、ともに目的は能力移植の解除であることを確信し、

「では、よろしく。」

「こちらこそ。」

 握手を交わした。

 

 控室には、既にメンバー達全員とコーチの恭子の姿があった。

 恭子が、穏乃に言った。

「早速だけど、穏乃のギアを上げに入る。いいね。」

「はい。」

「それじゃ、和と蒔乃と真尋で相手をお願いできるか?」

「「「分かりました。」」」

 4人は、早速卓についた。

「それと、監督から言われているオーダーは、先鋒宮永咲!」

「はい!」

「相手は、千里山の二条泉の姿をした宮永照だ。今回の使命は、ただ勝つことだけではない。宮永照の連続和了の能力ごと二条泉をひざまずかせることにある。子供の頃から宮永照が忌み嫌っていた麻雀で、相手を叩き潰せ!」

「はい。」

「次。次鋒は大星淡。」

「はい。」

「お前の相手は、ニーナ・ヴェントハイムの姿をしたお前自身だ。」

「分かっています。」

 ニーナは、マホから淡の能力のコピーを移植されていた。何の努力もなしに、楽して麻雀で勝てる能力コピーと言える。

 それに、ニーナは淡に憧れの念を抱いていた。当然といえば当然であろう。

「大星自身の能力ごと、ニーナ・ヴェントハイムには、お前に負けを認めさせなければならない。大星には、辛い戦いになるが、頼む。」

「はい。」

「それと、何故か神代から渡された紙には、試合直前にタコスと書いてあった。」

「はぁ?」

「良く分からないけど…。」

 すると、咲が、

「もしかして、タコス神優希ちゃんじゃ…。」

 と言った。ただ、咲とみなも以外、誰も意味が分からない。

 一瞬、控室の空気が重くなった。

 恭子は、

「ゴホン。」

 と咳払いをすると、話を続けた。

「先鋒後半戦が始まる頃に、清澄高校の片岡優希が、ここに持ってくることになっている。それを貰って、食べてから行くように。意味は分からなくても、今は、それが絶対と言うことで頼む。」

「はーい。」

 淡としても、さすがにタコスは意味が分からない。タコスについては、淡に能力を授けてくれた者達からも何も聞かされていない。

 それで、気の抜けた返事をした。まあ、気持ちは分からなくもない。

「次。中堅は高鴨穏乃。」

「はい!」

 穏乃は、麻雀を打ちながら返事をした。

「お前の相手は、劔谷高校安福莉子の姿をした愛宕洋榎…。安福は、二年前のインターハイ二回戦で、お前に山越しの七対ドラ2を振り込んで負けた。覚えているな。」

「はい。」

「それで、洋榎のディフェンス力のコピーを魔法少女から貰ったとされている。ただ、神代からは何かを隠している可能性が示されている。心してかかれ。」

「はい。」

「それと、安福は、唯一、ニーマンの魔法にかかっている。つまり、記憶を消されている。それを取り戻させるのもお前の仕事になる。」

「分かっています。」

 穏乃の背後に、うっすらと火焔が現れた。気合いが入っている証拠だろう。

「次は、副将だな。石戸明星。」

「はい!」

「相手は、お前の従姉、石戸霞。見た目は、ドイツ人のローザ・ニーマンだがな。」

「分かっています。」

「石戸霞の絶一門は、私も二年前に経験している。あれを、従妹のお前が打ち破ってこそ意味がある。恐らく、絶一門状態でも、石戸霞が染める色の19牌だけは、明星のところにも来ると考えているが…。」

「はい。そのとおりです。」

「恐らく、そこが狙い目になる。頼んだぞ。」

「はい。」

「そして、大将は宮永みなも。」

「はーい。」

「相手は、夢乃マホ。この試合に限っては、移植コピー解除は関係ない。ただ、日本対ドイツの真の戦いは、この大将戦になる。地下麻雀の先輩としても、夢乃に勝て!」

「勿論、勝って見せます。」

 丁度ここに、慕が入ってきた。

「オーダーは、説明してくれたみたいね。」

 これに恭子が答えた。

「はい。丁度今、終えたところです。」

「ドイツチームのオーダーには変更はありませんでした。つまり、予定通りのぶつかり合いになります。では、咲ちゃん。」

「はい。」

「宮永照を、叩き潰してきてね。」

「はい。」

「じゃあ、恭子ちゃん。」

「何です?」

「咲ちゃんを対局室までお願いね。」

「分かりました。」

 要は、迷子対策であった。

 恭子は、咲を連れて控室から出て行った。

 

 それから数分後、対局室に、咲が姿を現した。既に、そこには泉とBブロック優勝のアメリカチームの先鋒、Cブロック優勝の中国チームの先鋒の姿があった。

 ちなみに、中国チームの大将には郝の名前があった。臨海女子高校の留学生達は、祖国のメンバーとして世界大会に出場していた。

 場決めがされた。

 起家はアメリカ先鋒、南家が泉、西家に咲、北家が中国先鋒となった。

 

 東一局、アメリカ先鋒の親。

 照魔鏡を持たない泉は、この局から和了りを目指す。

 泉の配牌は、ドラなしだが対子が多かった。それで、七対子を目指した。そして、

「ロン。1600。」

 泉は、アメリカ先鋒から直取りした。

 

 東二局、泉の親。

「ロン。2000。」

 泉は中国先鋒から和了った。

 

 東二局一本場。

 ここでも泉は、

「ロン。3900の一本場は4200。」

 中国先鋒に直撃した。

 

 東二局二本場。

 泉は、

「ポン。」

 中国先鋒が捨てた{東}を鳴き、

「ロン。ダブ東赤1。5800の二本場は6400。」

 アメリカ先鋒から和了った。

 

 東二局三本場。

 そろそろ、右腕に竜巻が発生し始める。

 この局は、

「タンピンツモドラ1。2600オールの三本場は2900オール。」

 泉がツモ和了りを決めた。

 

 東二局四本場。

 泉の右腕の竜巻が本格化した。そして、

「リーチ。」

 5巡目で泉がリーチをかけた。

「ポン。」

 泉のリーチ宣言牌を中国先鋒が鳴いた。一発消しだ。

 しかし、泉のツモ番。泉は、左手で卓の向かって右端を掴んだ。そして、強烈な竜巻をまとった右手で牌をツモった。

「ツモ。リーチツモタンヤオドラ2。4400オール。」

 これで、泉が圧倒的なリードを作った。

 

 この段階での点数と順位は、

 暫定1位:二条泉 136100

 暫定2位:宮永咲 92700

 暫定3位:中国 86500

 暫定4位:アメリカ 84700

 

 続く東二局五本場。ドラ{9}。

 泉は、7巡目で聴牌した。

 手牌は、

 {四[五]①③[⑤]22667788} ツモ{④}。

 連続和了の特性上、次の和了は18000+芝棒1500点になる。しかし、今の手でダマ聴では出和了で点数が足りない。

 そこで、泉は、

「リーチ!」

 {横①}切りでリーチをかけた。

 しかし、これを待ってましたとばかりに日本最強の魔王が鳴いた。

「カン!」

 そして、嶺上牌をツモると、

「ツモ! 混一対々三暗刻小三元嶺上開花。24000の五本場は25500です。」

 今大会は、前回の世界大会とは違って大明槓からの嶺上開花は責任払いとなる。そのため、泉はリーチ棒供託と子の三倍満の支払いが課せられた。

 これで、咲が一気に泉を逆転した。

 

 この段階での点数と順位は、

 暫定1位:宮永咲 119200

 暫定2位:二条泉 109600

 暫定3位:中国 86500

 暫定4位:アメリカ 84700

 

 

 東三局、咲の親。ドラ{八}。

 泉は、能力コピーはされても、性格まで照になったわけではない。泉のままである。前局の一発逆転の責任払いで、冷静さを失っていた。

 そのためか、本来であれば既に聴牌しているはずの手が、打ち方を間違えて9巡目でも聴牌できていなかった。

 捨て牌をいくつか手牌と入れ替えれば、たしかに6巡目で聴牌している。照ならば、なかったであろうミスだった。

「カン!」

 咲が暗槓した。そして、嶺上牌を

「もいっこ、カン!」

 連続で暗槓した。しかし、次の嶺上牌をツモ切りした。

 続く中国先鋒のツモ番、

「ツモ! 平和タンヤオツモ一盃口ドラ7。6000、12000!」

 中国先鋒に三倍満をツモ和了りされた。これは、泉としても予想外だった。

 しかし、咲は、中国先鋒がツモの動作に入った段階で12000点を準備していた。全てを見通していたような動きだ。

 

 東四局、中国の親。

 ここでも咲は、

「カン!」

 暗槓した。そして、嶺上牌を

「もいっこ、カン!」

 連続で暗槓した。しかし、次の嶺上牌をツモ切りした。

 そして、次のアメリカのツモ番で、

「ツモ! タンピンツモ二盃口ドラ5。6000、12000!」

 今度はアメリカ先鋒に三倍満をツモ和了りされた。

 咲は、この時も、アメリカ先鋒がツモの動作に入った段階で6000点を準備していた。ここでも全てを見通していたような挙動を示していた。

 

 これで、点数と順位は、

 暫定1位:アメリカ 102700

 暫定2位:宮永咲 101200

 暫定3位:中国 98500

 暫定4位:二条泉 97600

 泉が最下位まで転落した。咲の点数調整に、まんまとやられた感じだ。

 

 この頃、怜、竜華、セーラ、浩子の4人は、千里山高校監督の愛宕雅恵に連れられて大会会場内の小会議室にいた。熊倉トシに呼ばれたのだ。

 小会議室では、大きなテレビモニターに対局の様子が映し出されていた。

「すげぇ。宮永妹は、泉のリードを一気に奪って、他家に配分か~。それで、場を平らにしやがった。」

 セーラは、咲の点数調整に驚きの色を隠せなかった。ただ逆転しただけではない。意図的に全員の点数を原点付近に戻したのだ。

「でも、あの表情。勝つために本気を出してるわけやなさそうや。」

 怜は、今の咲が、二年前の世界大会に向けての合宿で打った時と似た表情をしているのに気が付いた。

 あの時の咲は、勝とうとしていなかった。その結果、やられてことは、全局プラスマイナスゼロ。これはこれで、怜は、とんでもない屈辱を味わった。

 怜だけではない。その場にいた照も、憩も、衣も、爽も、智葉も、全員が屈辱を感じていたに違いなかっただろう。

「今回、宮永咲は、訳あってプラスマイナスゼロを狙ってるのさ。」

 とトシが言った。

「なんで、わざわざ世界大会でそんなことをするんですか?」

 怜がトシに聞いた。

「夢乃マホから能力コピーの移植をされた者は、寿命を縮めることが分かった。それで能力を解除するためにプラスマイナスゼロを狙う必要があるみたいだね。」

「能力解除とプラスマイナスゼロが、どう繋がるんやろか?」

 怜には、トシの言葉は意味不明だった。

 すると、雅恵が、

「神代小蒔が神から受けた掲示では、能力移植を受けた者と、その能力そのものが、共に対局者に対して負けを認めた時、能力移植は解除されるらしい。」

 と、トシに代わって答えた。

「それじゃ、泉が移植された能力の本来の持ち主。つまり、元チャンピオン(宮永照)にとって苦い思い出であるプラスマイナスゼロで、能力のコピーをひれ伏させ、その点数調整能力で泉に負けを認めさせようってことやろか?」

「そんなとこやろうな。」

 

 対局室では、既に南入していた。

 南一局、親は再びアメリカ先鋒。

 この局は、

「リーチ!」

 アメリカ先鋒が、3巡目で親の先制リーチをかけた。そして、

「一発ツモ! 6000オール!」

 これで、アメリカが一気に2位との差を大きく広げた。

 

 泉が深呼吸した。気持ちを落ち着かせるためだ。

「(東二局五本場から、宮永と中国とアメリカの三倍満三連発。そして、今打っている中で一番格下と思われるアメリカ先鋒が親ハネツモでダントツ1位。これらは、全て宮永のコントロール下でやられていることや。とにかく、連続和了で、ここから1位に返り咲いて宮永に勝つ。それが、私のやるべきことや!)」

 南一局一本場、アメリカの親。

 ここで泉は、

「ロン。2300。」

 アメリカ先鋒から直取りした。

 

 南二局、泉の親番。

 ここで泉は、

「ポン!」

 アメリカが捨てた{白}を鳴き、

「ロン! 白ドラ1。2900。」

 次巡にアメリカが捨てた牌で和了った

 

 南二局一本場、泉の連荘。

 泉は、今度は、

「ポン!」

 中国先鋒が捨てた{南}を鳴き、次巡に、

「ロン! 南ドラ2。5800の一本場は6100。」

 アメリカが捨てた牌で和了った。

 

 南二局二本場。

 泉は、6巡目でタンピンドラ2を聴牌した。出和了りで11600点の二本付けで12200点の手。無理にリーチをかける必要はない。

 この局、

「ツモ。4200オール。」

 泉は、ツモ和了りした。

 

 これで、点数と順位は、

 暫定1位:二条泉 115500

 暫定2位:アメリカ 105200

 暫定3位:宮永咲 91000

 暫定4位:中国 88300

 泉が1位に返り咲いた。一方の咲は3位に転落した。

 

 南二局三本場。ドラは{9}。

 泉は、ここでも6巡目で平和一盃口ドラ2を聴牌した。

 {一一二二三三①③[⑤]⑨⑨[5]6}  ツモ{④}

 しかし、今度は最低でも親ハネの和了りが必要となる。これが連続和了の宿命である。

 ここは、リーチしてツモるしかない。

 泉は、

「リーチ!」

 やむなく{横①}切りでリーチをかけた。

 これを咲が、

「ポン!」

 鳴いた。前回と違って、大明槓でなくて泉はホッとした。

 ただ、これでツモがズレた。

 次巡に泉のところに行くはずだった{7}ではなく、アメリカ先鋒のところに行くはずだった{南}を泉は掴まされた。

 これを仕方なく泉はツモ切りした。すると、

「カン!」

 咲が大明槓を仕掛けた。そして、嶺上牌である{①}を、

「もいっこ、カン!」

 加槓した。続く嶺上牌は{西}。これを咲は、

「もいっこ、カン!」

 手牌の暗刻と合わせて暗槓した。そして、次に引いてきた嶺上牌の{{⑤]}で、

「ツモ!」

 咲は和了った。

 開かれた手牌は、

 {中中中⑤}  暗槓{裏西西裏}  明槓{横南南南南}  明槓{横①①①①}  ツモ{[⑤]}

「ダブ南中混一対々三槓子嶺上開花赤1。24000の三本場は24900です。」

 これで、咲と泉の順位が入れ替わった。槓からの嶺上開花を得意とし、しかも照の連続和了を小学生の頃から見てきた咲だからこそ、なせる業だろう。

 大明槓からの連槓、嶺上開花。東場と南場で、同じことを二度やられて、泉は納得できない様子だった。

 

 南三局、咲の親。

 ここでも、咲は東三局、東四局の時と同じように、

「カン!」

 暗槓した。そして、嶺上牌を

「もいっこ、カン!」

 連続で暗槓した。しかし、次の嶺上牌をツモ切りした。

 そして、次の中国先鋒のツモ番で、

「ツモ! 平和ツモドラ6。4000、8000!」

 咲は、ドラプレゼントによる倍満をツモ和了りさせた。

 この時も、咲は東三局、東四局と同じように中国先鋒がツモ動作に入った段階で8000点を準備していた。

 

 オーラス、中国先鋒の親。

 ここでは、咲が、

「ロン。3900。」

 アメリカ先鋒に振り込んだ。

 

 これで、点数と順位は、

 前半戦1位:アメリカ 105100

 前半戦2位:宮永咲 105000

 前半戦3位:中国 104300

 前半戦4位:二条泉 85600

 泉の1人負けになった。しかも、点数調整によって作られた1人負け。思い切りナメられている。

 さすがに、泉は、ショックの色を隠せなかった。

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