※この作品はR-18です。

みなも-Minamo-   作:おこそとのほもよろを

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第四十八局:みなもvsみなも

 みなもは、対局室を出ると、まずトイレに向かった。

 そして、個室に入り、便座に腰を降ろすと、さっきの対局を思い出していた。

 具体的には、マホが使ったコピーの確認だ。

「順に、優希、久、和、淡、明星、咲、数絵、臼沢さん、愛宕さん、石戸霞さん、照お姉ちゃんか。これらは、後半戦では出てこないか。結構、色々な人の能力を使っているけど、まだ他にもたくさんあるな。」

 日本人だけでも、北から、

 獅子原爽、真屋由暉子、

 姉帯豊音、小瀬川白望、

 辻垣内智葉、東横桃子、弘世菫、渋谷尭深、亦野誠子、

 副路美穂子、池田華菜、天江衣、竜門渕透華、井上純、妹尾佳織、

 荒川憩、園城寺怜、江口セーラ、清水谷竜華、

 上重漫、末原恭子、

 高鴨穏乃、新子憧、

 花田煌、白水哩、鶴田姫子、

 神代小蒔、薄墨初美、十曽湧、藤原利仙…

 メジャーどころが、まだたくさん残っている。

 その後、現れた能力者としては、園田栄子、椋真尋、神代蒔乃、宇野沢美由紀、寺崎弥生、石見神楽などもいる。

 プロまで含めると、膨大な数だ。

 それに、マホはドイツに渡り、世界の選手を相手に戦いを繰り広げてきた。そこで、新たな能力を確保している可能性すらある。

 恐らく、マホは、彼女達の能力コピーを駆使して、後半戦に望むだろう。

「結構、まだ嫌な選手が残ってるな。特に…。」

 そう。ここに、あって欲しくない名前が一つある。

『龍門渕透華』

 彼女だけは、みなもでも怖い。

 治水状態での、あの絶対的支配力。あれに打ち勝つことはできない。

 結果的に、みなもは透華には勝っているが、それは、透華が治水状態でいられる限界を超えたためであり、治水状態での彼女を打ち破ったわけではない。

 恐らく、みなもを止めるための最終手段として、マホは透華のコピーを使ってくるだろう。格段に、やりにくい相手だ。

 しかし、みなもの心の中では恐怖以外に、何故か嬉しい気持ちが見え隠れしていた。強い相手との戦いを楽しみたい面もあるのだ。

 

 みなもは、トイレから出ると、手を洗い、今度は自販機コーナーに向かった。

 そこで、つぶつぶドリアンジュースをスルーして、マンゴージュースを購入して糖分補給し、再び対局室に向かった。

 

 みなもが対局室に入った時、既に、マホ、ダヴァン、郝の3人は、卓に付いていた。

 場決めが行われた。

 起家は郝、南家がマホ、西家にダヴァン、みなもは今回も北家になった。

 東一局、郝の親。

 マホの目の色が変わった。いきなり、強力な能力を降ろしてきたのが、みなもには、手に取るように分かった。

 捨て牌から、マホが萬子に染めているのが分かる。

「(神代小蒔か!)」

 みなもは、早々に、その正体に気付いた。

 小蒔とは昨年のインターハイ個人戦決勝で、みなもは戦ったことがある。

 あの試合は、結果的に、みなもが小蒔に勝利している。しかし、九連宝灯は一回和了られている。

 二度目の九連宝灯は和了られなかった。しかし、それを潰したのは、みなもではなく咲である。

 半荘全体を通じてなら、みなも単独の力でも小蒔対策の活路を見出せるだろう。

 しかし、単発で、いきなりヤラれたら、なかなか対応策が取れない。

「ツモ。8000、16000。」

 結局、止める手立ても取れないまま、マホに純正九連宝灯をツモ和了りされた。

 

 大将後半戦東二局、マホの親。

 ここでは、マホは、

「ポン!」

 鳴きに出た。姉帯豊音か、新子憧か、亦野誠子か、それとも末原コーチか?

 それとも、長野の代表的魔物、天江衣か?

 この感じ。恐らく、姉帯豊音だ。

 四副露するまでには、まだ時間がある。みなもは、焦らず手を進めた。そして、聴牌すると、

「リーチ!」

 攻めに出た。もし、豊音の能力であれば、裸単騎ツモである。振り込むことは、恐らくない。そして、

「メンタンピン一発ツモドラ1! 3000、6000!」

 みなもが、ハネ満をツモ和了りした。これで、マホとの点差は22000点。

 

 東三局、ダヴァンの親番。

 ここでも、マホは、不穏な雰囲気をかもし出していた。

 今度は、誰の能力コピーを使っているのか?

 マホは、ダヴァンが捨てた{北}を、

「ポン!」

 鳴いた。

 新子憧か、亦野誠子は…、それとも…。

 次巡、今度は郝が捨てた{東}を、

「ポン!」

 マホが鳴いた。

 北家で、鬼門の位置に{東}と{北}を晒す。やはり、これは、薄墨初美だ。間違いない。ここから、{南}と{西}を揃える5巡以内に和了らないと、小四喜の餌食になる。

 ここでの、みなもの和了り役は4翻以上になる。ここから、4巡で、なんとか聴牌。しかし、5巡目では和了れなかった。そして、

「ツモ。小四喜です。8000、16000!」

 先にマホに和了られた。

 

 後半戦の現在の点数と順位は、

 暫定1位:マホ 158000

 暫定2位:みなも 96000

 暫定3位:ダヴァン 73000

 暫定3位:郝 73000

 マホが圧倒的リードを作った。

 しかも、これが25000点持ちの対局であれば、既に、この半荘はトビ終了になっている。

 恐ろしいまでのスタートダッシュだった。まるで、最高状態の優希を髣髴させる。今のマホには、それだけのパワーがあった。

 

 東四局、みなもの親番。

 とにかく、ここから連荘で稼いで、なんとか逆転したい。

 しかし、ここでもマホは、

「チー!」

 鳴いて手を進めている。この感じは、恐らく憧。鳴くと手が加速する。

 とは言え、憧の特徴は、鳴き三色同順か鳴き一気通関か、タンヤオか…。その辺りを想定して、当然、郝も捨て牌を絞ってくる。

 世界大会決勝戦の大将戦なのだから、それくらいは当然だ。

 さすがに、郝が二つ目のチーをマホにさせてくれなかった。

 ならば、みなもも焦らず手を進めてゆけば何とかなるはず。

 この局は、

「ツモ! 4000オール!」

 タンヤオツモドラ3で、みなもが和了った。

 

 東四局一本場。みなもの連荘。

 また、マホの目の色が変わった。この感じは、今まで経験したことがない気がする。ただ、異様なまでに観察されているように思える。

 恐らく、これは竜華のゾーン。みなもは、データとしては持っていたが、直接対決は一度もない。

 その優れた観察力から、全員の手牌を読み取る優れた能力。しかし、それは、宮永三姉妹では当たり前のこと。

 それに、宮永三姉妹の場合、全ての牌が透けて見える化物までいる。みなもは、その環境で鍛えられた。

 咲や照を相手に戦うことを想定すれば、竜華のゾーンには対応できる。

「ツモ! 4100オール。」

 この局も、みなもが平和タンヤオツモドラ2で和了った。

 

 東四局二本場。

 今度も、マホは、早々に鳴きを仕掛けてきた。

 この雰囲気。毎日見ている。

 これは、末原コーチ…恭子の麻雀だ。マホも、みなもを止めようと必死なのだ。

 たしかに、恭子の麻雀は、鳴きの早和了りには定評があるし、あの咲でさえ、ペースを狂わされる。

 恭子こそ、麻雀の秀才と言えるだろう。

 しかし、その麻雀と、みなもは、二年も付き合っている。当然、免疫はある。

 この局も、

「ツモ! タンピンツモ一盃口ドラ2。6200オール!」

 みなもが和了った。

 

 現在の点数と順位は、

 暫定1位:マホ 143700

 暫定2位:みなも 138900

 暫定3位:ダヴァン 58700

 暫定3位:郝 58700

 みなもが大きく追い上げて、マホの点数まで、あと5000点程度のところまで来ていた。そろそろ、マホも、みなもの連荘を止めないとマズイ。

 

 東四局三本場。

 急に卓全体が冷えてきた。妙に寒い。

「(ここで出してきたか)」

 この感じ、みなもは一生忘れない。咲以外で、みなもが勝てなかった恐ろしい相手、治水状態の透華だ。

 まさにラスボス。

 みなもの手も、急に進まなくなった。鳴くこともできない。

 静寂な場だった。

 この局は、

「ツモ。700、1300の三本場は1000、1600。」

 マホが静かに和了った。

 しかし、これで、みなもが最も苦手とする2人…咲と治水状態の透華の能力が使われたことになる。

 ここからが勝負だ。

 

 南一局、郝の親。

 この局は、異常だった。

 郝もダヴァンもみなもも、序盤で一向聴まで手は進められたものの、その後、聴牌できずに終盤にまで突入した。

 間違いない。これは、衣の能力コピー。

 しかも、誰も鳴きを入れていない。そして、そのままラス一巡になった。

「リーチ!」

 マホがリーチをかけた。これは、誰かが鳴かないとマズイ。

 しかし、鳴ける牌が出ない。そして、そのまま海底牌がマホの手に渡った。

「リーチ一発ツモ海底撈月平和ドラ2。3000、6000です。」

 これで、マホが、みなもとのリードを広げた。

 

 南二局、マホの親番。ドラは{⑧}。

 みなもは、マホの親を流すため、ここは恭子に教えられた早和了りに出た。

「ポン!」

 郝から出た{發}を鳴き、

「チー!」

 ダヴァンから出た{②}を鳴いた。

 すると、ここでマホは、

「(みなも先輩、ごめんなさい。マホは、勝つために、みなも先輩に呪いをかけます。寿命の支配者(パコロカムイ)!!)」

 この局のマホの能力コピーは爽。有珠山高校の圧倒的エース。

 

 この時のマホの手牌は、

 {三四五五[五]⑧⑧⑧3334[5]}

 

 急に、みなものツモに異変が起きた。{二}、{五}、{3}、{6}ばかりが来る。これは、マホの和了り牌。それを次々と掴まされる。

 みなもは、既に二副露。ゆえに、みなもの自由になる牌は7枚のみ。いずれ、オーバーフローして、マホに振り込んでしまう。

 しかし、マホは、みなもばかりに気を取られすぎた。

 マホが{白}をツモ切りしたその時、

「ロン。面前混一色北三暗刻。12000。」

 郝が和了った。

 

 開かれた手牌は、

 {111678西西西北北北白}

 

 まさかの振り込みだった。

 しかし、まだトップを維持している。マホにとっては、このまま、この半荘を終了したいところだ。

 

 南三局、ダヴァンの親番。

 現在の点数と順位は、

 暫定1位:マホ 143300

 暫定2位:みなも 134300

 暫定3位:郝 67700

 暫定4位:ダヴァン 54700

 

 そして、前半戦との合計点数は、

 暫定1位:マホ 256200

 暫定2位:みなも 252800

 暫定3位:郝 165100

 暫定4位:ダヴァン 125900

 マホとみなもの差は、たった3400点しかない。これは、オーラスでみなもに和了られたら逆転される。

 この局、マホは積極的に和了りに行くことにした。

 ここでマホが、まとう雰囲気を、みなもは経験したことが無かった。誰が相手なのかわからない。ただ、

「リーチ。」

 攻撃的な人物であることだけは分かる。

 恐らく、これは江口セーラの攻めの麻雀。

 ただ、この局では、伏兵が聴牌していた。そして、その伏兵…ダヴァンが、

「リーチ!」

 マホにデュエルを仕掛けてきた。麻雀は、みなもとマホの2人だけの戦いではない。さらに郝とダヴァンを加えた4人での戦いだ。

 そして、そのすぐ後のツモ番で、マホがツモ切りしたその牌で、

「ロン! 12000デース!」

 マホは、ダヴァンに振り込んだ。

 二連続での振り込み。さすがに、これはマホにとって痛かった。

 ただ、これは、麻雀が2人のゲームではなく、4人のゲームであることへの配慮が、マホよりもみなものほうが上回っていたゆえだろう。マホの経験不足だ。

 

 これで、現在の点数と順位は、

 暫定1位:みなも 134300

 暫定2位:マホ 130300

 暫定3位:郝 67700

 暫定3位:ダヴァン 67700

 ダヴァンへの親満振り込みによって、マホは自ら後退し、みなもにトップを譲ることになった。

 

 南三局一本場。ダヴァンの連荘。

 マホは、首位を取り返さなくてはならない。しかも、最終的に、みなもに5600点以上の差をつけなくては勝ち星を取れない。

 ここで、頼れる能力…。

 最大3巡先まで見ることのできる怜の能力しかない。

 マホの両目と額が緑色に輝き出した。まるで、額に第三の目があるように見える。

 体力消費は激しいが、マホは、常に3巡先を見て振り込まず、和了らせずに手を進めていった。そして、

「ツモ! 北ツモドラ2。2100、4100!」

 満貫をツモ和了りした。

 

 これで、現在の点数と順位は、

 暫定1位:マホ 138600

 暫定2位:みなも 132200

 暫定3位:郝 65600

 暫定4位:ダヴァン 63600

 マホは、みなもに6400点の差をつけ、前後半戦トータルでトップに立った。あとは、最後のみなもの親を流すだけだ。

 逆に、みなもは、オーラスで1500点を和了れば、前後半戦トータルでのトップを取り返せることになる。

 

 オーラス。みなもの親番。ドラは{4}。

 ここでマホが選択した能力は、能力コピー者として、最も正々堂々とした戦いを繰り広げるのに相応しいもの。

 それは、今の対戦相手、みなものコピーだった。

「(みなも先輩。勝負です。)」

 みなもの特徴は、和了り役の翻数上昇であるが、その一局だけに絞って考えれば、優れた観察力によって相手の手牌を読み取ることが利点であろう。殆ど全て相手の手牌が透けて見えているのと変わらない。当然、相手の手の高さも分かるし、当たり牌も分かる。

 ここは、互いに振り込まずに、みなもとマホのどちらが先に和了れるか。勝負は、その一点に絞られる。

 

 みなもの配牌は、

 {一三五七②③[⑤]467東西發中}

 ここから打{西}。

 

 一方、マホの配牌は、

 {二四五八⑦⑧158南西北白}

 第一ツモは{六}、打{北}。

 

 2巡目、みなもの手牌、

 {一三五七②③[⑤]467東發中}

 ツモ{六}、打{中}。

 

 マホの手牌、

 {二四五六八⑦⑧158南西白}

 ツモ{6}、打{西}。

 

 3巡目、みなもの手牌、

 {一三五六七②③[⑤]467東發}

 ツモ{5}、打{發}。

 

 マホの手牌、

 {二四五六八⑦⑧1568南白}

 ツモ{七}、打{南}。

 

 4巡目、みなもの手牌、

 {一三五六七②③[⑤]4567東}

 ツモ{二}、打{東}。

 

 マホの手牌、

 {二四五六七八⑦⑧1568白}

 ツモ{7}、打{白}。

 

 5巡目、みなもの手牌、

 {一二三五六七②③[⑤]4567}

 ツモ{3}、打{②}。

 

 マホの手牌、

 {二四五六七八⑦⑧15678}

 ツモ{⑥}、打{1}。

 

 6巡目、みなもの手牌、

 {一二三五六七③[⑤]34567}

 ツモ{⑤}、打{③}で聴牌。

 

 マホの手牌、

 {二四五六七八⑥⑦⑧5678}

 ツモ{二}だが、{5}、{8}が打てずに{二}をツモ切り。みなもの和了り牌を読んでの対応だ。

 

 7巡目、みなもの手牌

 {一二三五六七⑤[⑤]34567}

 ツモ{九}で、そのままツモ切り。

 マホは、もしを先に{5}か{8}を処理していれば、ここで和了りだったことを、当然分かっている。

 くやしさが、マホの表情に現れていた。

 

 マホの手牌、

 {二四五六七八⑥⑦⑧5678}

 ツモ{九}、打{二}で役なし聴牌。

 

 8巡目、みなもの手牌

 {一二三五六七⑤[⑤]34567}

 ここに、ツモ{8}。

 和了りだ。

 

「ツモ! 平和ツモドラ2。2600オール!」

 オーラスオブオーラスは、みなものツモ和了りで終了した。

 

 これで、後半戦の点数と順位は、

 後半戦1位:みなも 140000

 後半戦2位:マホ 136000

 後半戦3位:郝 63000

 後半戦4位:ダヴァン 61000

 

 そして、前後半戦のトータルは、

 1位:みなも 258500

 2位:マホ 248900

 3位:郝 160400

 4位:ダヴァン 132200

 新旧ニーマン一派エース対決は、前後半戦ともに、みなもの勝利となった。これで、日本チームが5つ全ての勝ち星を獲得した。

 

 2位以下は、勝ち星無しのため、総合得点で順位が決められる。先鋒戦から大将戦までの合計点は、以下の通りとなった。

 2位:ドイツチーム 1003700

 3位:中国チーム 796300

 4位:アメリカチーム 732600

 

「「「「ありがとうございました。」」」」

 みなも達は、対局後、最後の一礼を終えた。

 

 決勝戦に残った4チームの、先鋒から大将までの全ての選手が対局室に集合した。これより、表彰式が行われる。

 中国チームメンバーに銅メダル、ドイツチームメンバーに銀メダル、そして、日本チームメンバーには金メダルがかけられた。

 また、日本チームには優勝カップと楯が送られ、日本チームのダブルエース、みなもと咲が、これらを代表して受け取った。

 優秀選手には泉とマホが、最優秀選手には、みなもと咲の2名が選ばれた。

 泉とマホは、準決勝戦まで他の選手を蹂躙した圧倒的な実力が評価された。

 また、最優秀選手は通常1名のみの選出であるが、今回は票が割れ、異例の2名選出となった。これは、泉とマホをさらに上回る2人に与えられる結果となった。

 今の泉には、優秀選手として選ばれるだけの能力はない。既にマホから与えられた能力のコピーは、泉の体内から抜け出てしまったからだ。

 もう、泉は、これだけの活躍を見せることはないだろう。

 しかし、この優秀選手受賞を一番喜んでいたのは、他でもないセーラだった。それ以上に、泉の無事を喜んでいたのは言うまでもないが…。

 

 

 大会が終了した。

 マホ、泉、莉子、ニーナは、日本に戻る前提で、ニーマンやローザ達とともに、一旦ドイツに戻った。特にマホには、まだやるべきことがある。

 

 

 数日後、みなもは、咲と一緒に部室で後輩指導していた。

 咲の胸は、明星が神様にお願いしてくれたのか、ワンサイズだが、たしかにサイズアップしていた。もう鉄板ではない。

 咲は、これを機に明星と連絡を取り合うようになった。今では、すっかり仲良しになった。これで、霞が胸で牌を倒して以来続いていた確執が、終焉を迎えたと言える。

 ただ、咲の姿に、みなもは、内心、

「(裏切り者!)」

 と思っていた。

 みなもは、今の咲の姿をスマホのカメラに収め、その画像を照に送った。

 暫くして照からも、

「裏切ったね、咲。」

 との返信が来た。

 

 突然、部室の隅のほうに強烈な光を放つ何かが現れた。

 そして、その光が消えると、そこには蒔乃の姿があった。テレポーテーションしてきたのだ。交通費がかからず、便利である。

「こんにちは。」

「こ…こんにちは。」

 内向的で人とのやりとりが苦手な咲は、突然のことに慌てふためいていた。

 みなもが、

「ここに来るってことは、もしかして麻雀関係で何かあったの?」

 と蒔乃に聞いた。

「はい。それで、今日は、私が姉の小蒔に代わって来ました。地下麻雀のオーナーのことは、ご存知ですか?」

「存在は知ってるけど、それが誰かは知らない。」

「そうですか。実は、彼が、ビジネス界のライバル達と、自分の経営する会社の経営権をかけて麻雀対決をするそうです。地下麻雀以外に、きちんとした会社の経営もやっているようですね。」

「そうなんだ。でも、私には、もう関係ないことだと思うんだけど。」

「直接関係は無いですね。ただ、以前、地下麻雀に所属していたと言うことで、みなもさんにお話に来ただけです。もし、何か知りたいことがありましたら、いつでも御連絡ください。」

「うん。分かった。わざわざ、ありがとう。」

「こちらこそ。では。」

 そう言うと、蒔乃の身体が強烈に輝き、再びテレポーテーションして、その場から消え去った。

 ただ、せっかく来てくれた蒔乃には悪いが、みなもは、もう、地下麻雀のことには何の興味も無かったし、関わりたくなかった。

 あれは、自分の人生の黒歴史の一つだからだ。

 今更、穿り返しされたくないことだったのだ。

「あっ!」

 そう言えば、せっかく蒔乃が来たのだ。咲のようにサイズアップできないか、頼めばよかった。

「しまった!」

 ちょっと気付くのが遅かったと、この後、みなもは後悔するのであった。

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