ToLOVEる 御門涼子
「ふいー…さびー…」
音もなくやってきた冬の寒空は黒々と仄暗さを帯びて、街の色彩を奪うようにスチールグレーの風景を見せる。
銀色の虚空は刺すような冬の寒さを表現する刃のようだ。
吹きすさぶ木枯らしに当てられて、身を縮こめた男達の纏うぼろきれが、なんとも寂しげにバタバタとなびく。
彩南町の一角にある公園。
児童も遊びに来る事の多いこの公園で、男達は薄っぺらいテントの下、飢えをしのぐ日々を送っていた。
いわゆるホームレスと呼ばれる彼等。
根の真面目な者は日雇いの肉体労働や廃品回収の仕事などに勤しみ日銭を稼ぐも、地位だけでなく精神までも堕落してしまった者は働く事さえしない。
毎月、生活保護を受け取って日夜惰眠を貪る、出来る限り楽をしようとする怠惰で無気力な人間。
勿論、出来る限り楽をしようとするのは人間の性だ。
しかし、時に、その怠惰な性質は思わぬ狡猾さを生み出す事もあるのだ。
ぐび…ぐび…と音をたてて、生ぬるいカップ酒が乾いた喉を潤す。
今日も十数人、多くの男達が働く事もせず、昼間から暖をとっていた。
彼らが囲んでいるガスコンロは他のホームレス仲間が働いて買った物。
他人に依存しなければ生きていけないような状況に、彼らは情けなさも恥ずかしさも感じない。
「あー、暇だなあ」
やる事のない彼らは、公園に子供を連れてきた母親を漁るような視線で物色する。
「おい見ろよ…女だぜぇ?」
「うへへ…っ、年頃のイイ女ばっかじゃねえか」
「ヤリてえなぁ…」
抜けた歯を見せて、淀んだ瞳を細めながら、母親を視線で舐め回す。
子供の身の危険を感じたのか、一人の女性として危険を感じたというのもあるだろう、
母親達はそそくさと各々の子供を連れて、そこかへ去ってしまう。
「…チッ」
興が覚めたと言うべきか、機嫌を損ね舌打ちを鳴らす男達。
酒、博打、風俗…
堕落した人間には堕落した人間で、溜まった欲をぶつける場所がなければそれはいつか爆発してしまう。
金のない彼らにはそれら人間として通常持っている欲を解消する事すらままならないのだ。
行き場をなくした欲求の塊が、たまたま近くにいた若い女を見回すだけで満たされる訳がない。
容貌は薄汚く朽ちていく一方で、本能という名の牙は鋭利に研がれていくのであった。
せっかちな冬の夕暮れはいそいそと夜闇の天幕を下ろし、鉄のように冴えた冷たい空気が夜の街並みを支配する。
まだ夜の6時だというのに、辺りはもう真っ暗。
からりとした朝の澄み渡った空気に墨汁でもぶちまけたかのような夜の暗闇。
吐く息が墨を溶かす真水のようによく映えた。
いくら地球人より頑丈な宇宙人とはいえ、寒いものは寒いものだ。
彩南高校の保健医として勤めている御門涼子は帰路につきながら凍えていた。
まさか地球の冬がこんなに寒いとはね。
銀河でも優秀な医師として名の通っているドクター・ミカドもこれは想定外だった。
(今度から車で来ようかしら…)
肩をひそめて、白衣の上から纏った毛皮のコートに身を埋める。
音の無い小夜。
遠くで鳴り響く車の走る音やクラクションが時折聞こえてくるだけで、この公園の周りは街の喧騒とは無縁だ。
それ故に、『音の無い音』とでも言うべきか…本来は聞こえてこないはずの音が聞こえてきたりもする。
そう近くにいないはずの人間の息遣いや骨や肉が鳴らす些細な音。
まるでそれは、獲物を待ち伏せている獣が鳴りを潜めているようでさえあった。
異様な雰囲気だった。
休日、街中で通り過ぎる人々から見られているのとはまるで違う質の視線。
体中に粘り付くように執拗で、負の感情を感じさせられるような、嫌な視線。
それは冬の寒さなんかよりもずっとタチの悪いものだ。
「…」
自然と御門の歩調も速くなる。
ちらっと辺りを見遣るとぎらりと光る二つの視線と出くわした。
荒野に潜むハイエナのように、しっかりと獲物を見つめて離さない視線。
そういえば郊外にある大きな公園が開発で潰れて、そこに住んでいたホームレスが辺りの公園に散らばった、という話を耳にしていた。
(これはちょっと…考えものね)
車で学校まで通いたいが、駐車場にも限りがある。
行こうとしてもすぐに行けるものではないだろう。
それまでは帰路のルートを変えるべきか?
いや、ルートを変えようとすると遠回りになってしまう。
あれやこれや考えている内に公園を抜けた御門は、色硝子のような街の灯りの中に呑み込まれていった。
『アンッ!アンッ!アンッ!アンッ!』
新春の透き通った外気には不似合いな甘い嬌声。
駅へ向かう勤め人が見えなくなった午前10時、男達は人目も憚らずAV鑑賞を楽しんでいた。
「おぉぉ…」
廃品の中から漁り出したTVとAVで男達は性欲を満たすのが日課となっていた。
食べる物も着る物も、彼らは劣悪な物しか手に入れられなかったが、こと『AVを液晶で見る事』に関しては一般人と同等にこなす事ができた。
数少ない人生の喜び。
しかし、そんなかけがえのない時間に、彼らはどこか気の抜けたような表情で呆然としているようにさえ見えた。
それどころか、AVが終わると男達は苛立ちを見せ始めた。
行き場のない性欲が溜まり過ぎて、フラストレーションになってしまっているのだ。
「ヤリてえな~クソッ!風俗行けりゃあよぉ」
「あー、もういっそその辺の女捕まえて犯っちまうか」
「そういえばよ、昨日の女…ありゃあ別嬪さんだったなぁ!?」
誰かがその話題を切り出すのを待っていたかのように、興奮しながら口火をきりだす男達。
「あの夜の女だろ?ありゃーイイ女だったなぁ…暗くてよく見えなかったが、ありゃ明らかに美人だった」
「年頃のネーチャンって感じでさあ、一瞬外灯で顔が見えたんだけど、すげえ美人でよお!」
「遠くからだったんでよく見えなかったけど、スタイルも良かったぜ。まるで女優みたいだったなぁ…」
口々に、昨夜たまたま彼らの住居を通りがかった女性、御門に対する想いを語り出す男達。
それだけ御門を初めて見た時のインパクトが強かったという事だろう。
AVを見ている時にも腑抜けた表情をしていたのは、おそらく御門の印象が頭の中から離れなかったからだ。
「死ぬまでによ、あーいう女と一発ヤってみてえよな…」
「てかヤっちまわね?冗談じゃなくて」
一人の男がなんとなく呟いた願望に、もう一人の男が真剣味を帯びた表情で返事を返す。
他の男達も真剣な眼差しで頷いた。
なにせ彼らは罪に問われて懲役を受けたとしても、失うものがこれ以上もうないのだ。
実際に女をレイプした事のある者も男達の中には何人もいる。
強引に、理不尽に、女性を辱めて己の欲求を満たす悦びを彼らは知っていた。
「努力不足だ」「自業自得だ」
ホームレスという身分を聞いて、世間一般の人間はこう冷やかな言葉を彼らに浴びせる。
だが、それは本当に努力不足なのだろうか。
勿論、部分的に努力不足だという事も言えるだろう。
しかし、中には幼い頃から家庭内暴力を受けてきて、貧困な家庭に育ち、まともな教育さえ受けられずに今日ここまで生き長らえてきた者も多い。
努力する舞台すら与えられなかった者を努力不足だと笑えるだろうか。
世の中は不平等だ。
自分達の与り知らぬ事情で発生した戦火の中で生まれ育ち、己の夢や希望を抑えつけられながら大人になっていく者もいれば、親の七光りの下不自由なく生まれ育ち、酒池肉林をあおる快楽に堕落した大人になっていく者もいる。
五体満足に生まれてきた者もいれば、そうでない者もいる。
当然、それらは彼らが望んだ結果ではない。
子は親を選べないのだ。
レイプはそうした彼らの体中にこびり付いた垢、つまり世の中の穢れのようなものを押し付けているような快感に躍らせてくれるのだ。
社会に対する怒り、不満、悔恨…それら負の感情を何不自由なく育ってきた連中に擦り付ける、この上ない方法。
復讐、とまではいかなくとも、男達はこれ以外に自分達の抱えた負の感情を発散させる方法を知らなかった。
自分達の出生そのものが理不尽なのだから、他人が理不尽な目に遭っても構わないだろうと、彼らは自分達を正当化していた。
男達が富や名誉に欠ける凹だとしたら、世間一般の人間はそれらを持つ凸だ。
二つが合わされば世の中の不均衡はなくなる。
そうだ、それで良いんだ!
自分達の欲望と快楽を充たす事で、世の中の不均衡も正される。
俺達のやろうとしている事は正しいのだと、男達は自ずと勝手に色めき立つ。
あの夜、たまたま近くを通りすがったあの女。
あれは良い女だ。
コートを纏っていたせいで体はよく分からなかったが、遠目に見ても細身ですらりとした自由闊達に発育した体をしているのが分かった。
顔は文句なしの美人だ。
あんな美人な女、40、50年生きてきた男ですらも初めて見た、と言う程。
どんな職業に就いているのかまでは分からないが、おそらく社会的にも認められるような輝かしい地位にいるのだろう。
生まれ持った比類なき美貌に、誰もが望む輝かしい社会的地位。
それだけ『持ってる』女からであれば、俺達『持ってない』男共が何か盗んだ所で問題ないだろう。
男達はすぐに、今夜に向けての準備をし始めた。
結局、今日もこの道で帰ってきてしまった。
まあ、車で学校まで通うのは来週からで良いだろう。
もしかしたら朝の弱い自分には少し難しいかもしれない。
それが御門の出した結論であった。
それに、保健医というのはなかなかに暇な職業だ。
というのも、体育教師なんかとは正反対で、体を動かす機会にほとんど恵まれないからだ。
体調の悪い生徒が来れば診察をする務めはあるが、それ以外は保健室にずっと籠りっぱなしで退屈とも言える。
出勤・帰宅時くらい歩いて、体を動かした方が健康的で良いのかもしれない。
だが、それを踏まえてもこの夜の公園というのは不気味だ。
歩く度にヒールが鳴らすカツカツという音だけがこの空間を支配し、月明かりの無い夜は街灯の光だけが頼り。
遠回りしてでも帰路を変えた方が良いのかもしれない。
風さえも凍りついてしまうような寒さも相俟って、不安な気持ちが徐々に膨らんでくる。
「おい…来たぞ…」
草陰でもぞもぞと蠢く不穏な影。
数は10人前後といったところであろうか、御門が近付くにつれてその動きは大きくなっていく。
「うへへっ…やっぱりイイ女だ…」
「ハァハァ…たまんねえなぁ」
「オイ、ホントにヤんのかよ!?」
街灯に御門の美貌がライトアップされると、男達は興奮気味にヒソヒソと喋り出す。
やはり昨日見た通り、とびっきりの美人だ。
期待の斜め上を行く獲物の魅力に、男達の口から引いた涎の糸がぎらりと光る。
その様はまるで、夜闇に手ぐすね引いて待ち構える蜘蛛の糸のようだ。
「シッ!うるせえ、聞こえんだろが」
「ここまで来てビビってんじゃねーよ」
もう後に引く事はできない。
アドレナリンに満ち満ちた男達は妖しげに眼光を煌めかせる。
股間の努張はズボンを突き破るような勢いで膨れ上がり、荒い息遣いは視線の先の御門にまで届いてしまうのではないかというくらい熱を帯びていく。
勿論、その不穏で異様な雰囲気は御門にも伝わっていた。
昨日感じたものなんかよりも、ずっと粘っこくて湿っぽい嫌な視線。
時折聞こえてくる不特定多数の人間が喋る音。
暗闇の中で茂みががさがさと鳴る様は本物の獣に狙われているようだった。
(…やっぱり帰るルートを変えるべきだったわ)
はぁ、と吐いたため息が白くなって消えていく。
後悔先立たず、とは正にこの事。
あまりにも異常な雰囲気に圧されて、ついに御門は動き出した。
カッ!カッ!
沈黙を突き破ったのはコンクリートを叩く御門のヒール。
意識を冴え渡らせていた男達も、改めてこの音に目を覚まされる。
「オイ!!追いかけるぞ!」
慌てて一人が思わず声を張り上げる。
その声に押し出されるように一気呵成に茂みの中から跳び出してくる男達。
10人を超えるホームレスの男達が一斉に御門に向かって襲い掛かる。
(一体何人いるの…!?いくらなんでも多すぎる!)
音や雰囲気で判断した上ではせいぜい5人くらいだと思っていたのが、その倍はいるように見えた。
「ウワアアア」と無意味な怒号を上げながら、跳びかかる男達。
欲望に血走ったその瞳には理性の入る余地はない。
ヒールを履いた御門にとって、履き潰したスニーカーの男達が相手では分が悪い。
すぐに追いつかれ、取り囲まれてしまう。
「くっ…!」
襲い掛かってきた男達の身なりからして、御門は一瞬で浮浪者なのだと察する。
『衣服』とは言い難いぼろきれのような物を身に纏い、くすんでいるような土色の肌からして、碌な身分の者ではないだろう。
歯の欠け落ちた口の中を見せながら、ニヤニヤと喜色ばむ男達に御門はゾッと背筋を凍らせる。
「一体何の用…?」
御門にとって良からぬ用事である事はすぐに分かる。
そして、それがどのような用事なのかも大体分かってしまう。
本能を剥き出しにした男達の体からは発情期を迎えた雄の獣の如く、濃厚なフェロモンが分泌されていた。
「へっへっへ…そんな怖いカオしないでくれよぉ、オネーサン」
「抵抗しなければ優しくしてやるから、な?大人しくおじさんのここにおいで…」
濡れた薄紙のように顔をしわくちゃにして、口角をひり上げながら四方から囲んだ御門へと迫る。
じりじりと御門との距離が詰まっていき、夜闇の中で互いの顔もはっきり見えてくる。
「美人なお姉さんだ…」
「うへへ…すげーオッパイ」
「仕事は何してるの?モデル?それとも女優さん?」
遠目から見ても分かるほどの美貌は、間近で見ても美しかった。
ワインレッドのショートヘアーは夜陰の中でも艶めき、ライムグリーンの瞳は彼女をより高貴に、ゴージャスに見せる。
厚手のコートを着ているのでプロポーションは分かりづらいが、こんな絶世の美女が貧相な体をしている訳がない。
脱がせてみてのお楽しみ、と言わんばかりに男達は期待と興奮で胸と股間を膨らませ、その肉体を目の当たりにするのを待ち望む。
「そんな格好してたら寒いだろ?俺が暖めてやるよ」
そんな女優やモデルと見紛うほどの美女を目の前にして、男達が我慢できる訳がなかった。
とうとう痺れを切らせた男が背後から襲い掛かる。
両腕の中にその細くてすらりとした躰を抱き締めた、と思ったその瞬間だった。
「あ、あれっ」
両腕を振りかぶった男が、間の抜けたような挙動でずでんと地面に倒れる。
(今よ!)
ふわりとそよ風のように身をかわした御門はそれを見下ろす暇もなく、自分を囲んでいる群衆に向かって駆け出す。
「う、うわっ!」
「バカ!何逃がしてんだ!!」
いきなり御門が自分の方に突っ走ってきたものだから、驚いて倒れてしまう男。
そして暗闇の中に消え行く御門の背中。
男達は真っ赤な血眼を光らせ、その背中を追いかける。
多勢に無勢。
だが、まさかこの人数で囲んで逃げられてしまうとは。
それも相手は華奢な女。
走りながら、男達は内心呆気に取られていた。
一人の男が御門に襲い掛かった瞬間、お楽しみが始まるものだと思っていたからだ。
欲望に醜く歪んだ笑顔は一転、強張った緊張の面持ちへと変わっていた。
あんな極上の獲物をあともう少しで美味しく堪能できるところだったのに、まさか逃してしまうのか…?
御門を初めて見た時からあんな事やこんな事をしてやろうと妄想に耽り、そして今それを実現させられる所だったのに。
こんな形で夢を取り逃がしてしまうのか…いや、そんな事は許されない。
執念に駆られた男達は、怠惰で堕落した日常とはかけ離れた、異様な熱意を燃やして、全力で疾走する。
(何なの!?あいつらは何!?)
何か御門自身に心当たりがある訳ではない。
男達の顔を知っていた訳でもなければ、彼らに対して不利益な事をした訳でもない。
では何故、あんな目に遭わなければならないのか。
公園を歩いていただけで、いきなり10人近い男達に追いかけられる目に。
男達の血走った眼を思い出すだけでゾッとする。
あれは獲物を狩る狼の眼だ。
御門は狼に追いかけられた事はないけれど、今なら追いかけられる獲物の気持ちは理解できる。
それほど男達の様相は狂気じみていて、野蛮に見えたのだ。
「フゥ…ッ、フゥ…ッ」
不意を突いたのが幸いした。
男達の視界から一瞬消えた隙に、物影に隠れたのだ。
走って荒くなった呼吸をできるだけ抑えながら、息を潜める。
ザッザッザッザッ…
夜の静けさをかき分けるように、雑踏がだんだん近づいてくる。
男達がこちらへ追いついてきたのだろう。
だが、隠れる姿は見られなかったはずだ。
「オッ、どこだ?どこ行った?」
「いなくなりやがった…」
御門の姿を見失って、急に狼狽する男達。
たった一つの、あれだけ執着していた獲物を見失ってしまったのだ。
大の男達が立ち往生してオロオロとうろたえるのも無理もない。
「まだ遠くに行ってないはずだ、手分けして探すぞ!」
「おう!」
今までになく息の合った男達が3、4人1組くらいに分かれて、散開する。
こうなったらもう御門の勝ちだ。
あとは散らばった男達に気付かれないようにそろりそろりとこの場を離れれば良いだけなのだから。
しかし、相手は野人同然のホームレス達、場所は夜の公園。
如何に御門の頭が良くても、イレギュラーな事は何時起こり得るかは分からない。
知性に勝る野生。
思わぬ所で御門の希望は足を掬われた。
「オイ!…なんか、イイ匂いがするぞ…」
「んん…?あぁ、なんか…」
急に足を止めて、スンスンと鼻を鳴らして辺りを嗅ぎ回る男達。
ふんわりと鼻腔の中で広がるような甘い香り。
本能的にやすらぎを覚えるこの匂いを男達は知っていた。
今日は特に香水などは付けてきてはいなかった。
しかし、御門の溢れ出るフェロモンが災いしたと言うべきか、女性特有の甘い香りが辺りに漂ってしまっていたのだ。
夜の公園に似つかわしくない、甘い香り。
そして、狩猟本能を限界まで掻き立てられた男達の研ぎ澄まされた五感。
『御門はすぐ近くにいる!』そう確信した男達に、見つけ出されるのは1分と経たなかった。
「いたぞ!ここに隠れてる!!」
「っ!」
大きな声で男が叫んだものだから、遠くまで探しに行っていた他の男達まで聞こえてしまっていた。
御門はすぐに男を押し退かし、逃げ出そうと駆け出す。
しかし、男達も学習能力が無い訳ではない。
同じ手は二度も通用せず、背後から男に抱き付かれてしまう。
「へへへっ!捕まえたぞォ!!」
勝ち名乗りでも上げるかのように、抱き付いた男が御門の肩越しに叫ぶ。
散らばって御門を探しに行っていた男達も駆け足でぞろぞろと戻ってきて、御門の若く、美しい肢体に群がるのであった。
「くっ!やめなさい!あなた達、自分が何をしているのか分かっているの!?通報するわよ!」
狼狽しながら叫ぶ御門の言葉をまるで聞こえていないかのように無視して、御門の体を貪り出す男達。
「やっぱりオッパイでけぇなぁ…」
「結構背高いね、体はほっそりしてるけど」
「顔もキレーだし、身体もエロいし…たまんねーぜ」
十数人の男達が一斉に群がって、好き勝手に御門の肢体を論評する。
隠れていた御門を見つけ出して、我先にと腰に馬乗りになった男。
黒いサイハイソックスに包まれた長く美しい脚に抱き付く男。
とりあえず体のどこかにあり付こうと、御門の手を掴んだ男。
どこにもありつけず、むさ苦しい男達に群がられた御門を見下ろして、股間を大きくする男。
長い夜はまだまだ始まったばかりだった。
「やめて…離してって言ってるでしょ!」
「ぐへへっ!こんな極上の獲物離す訳ねえだろ!」
御門のくびれた腰に跨がる男が、興奮で目を剥きながら叫ぶ。
毛深い猿のような手が御門の着ているコートの襟を掴むと、強引に引き裂いた。
ビリビリッ!
「ッ!」
息を呑む御門。
コートを破いたその中からは白衣が現れた。
「おっ…?」
一瞬、手を止めて御門の体を注視する男達。
白衣。
普段医者に行く余裕のない彼らでもそれが何を意味する物なのかくらい分かる。
いわば医者である証、象徴。
それを彼女が身に着けているという事はつまり…
「この姉ちゃん、医者かぁ?」
「ち、ちげえねえ…今仕事終えて帰ってきたんだ。そうじゃなかったら白衣なんか…」
「医者?医者って言ったら頭良くて金持ちで…」
「それもこんな美女が、医者…」
ゴクリと生唾を呑む男達。
自分達のような浮浪者には手の届かないような存在。
大学どころか高校さえも碌に卒業できなかった自分達とは全く逆の華やかな人生を歩んできたのだろう。
富、美貌、地位、誇り…
自分達の得られなかったものを全て得てきた存在。
そんな雲の上の存在を、今、己の性欲のままに汚す事ができるのだ。
男達はその白衣を見た瞬間、色めきだち、ぎらついていた瞳はさらにぎらつき、獣のようなものへと変わっていった。
「…きゃああああっ!!?」
無言で白衣を破り捨てる男達。
ピンクのブラウス一枚になった御門を満足げに見下ろすと、そのメリハリのついた美しい肢体に群がっていく。
「ぐへへっ!すごいおっぱいだあ!!」
「やめっ、痛ッ!触らないで!」
力任せに胸を揉みしだかれ、痛みに小さな悲鳴をあげる御門。
周囲の男達も御門の乳房を触らんと、押しくらまんじゅうのように迫ってくる。
「オイ!お前ばっかずりーぞ!俺にも揉ませろ!」
「うるせえ、この姉ちゃん見つけ出したのは俺のおかげだろ!もっと揉ませろ」
「はぁはぁ、軟らかそうなおっぱいだなぁ~」
胸を触れなくても、脚を触ったり、とにかく身体を触ってくる。
腰に跨がって胸を揉んでくる男の涎がぼたぼたと御門の顔へ垂れる。
黄ばんだ唾液が彼女のきめ細かい美しい肌や髪を汚し、臭くて汚くて最悪だった。
その涎を嫌そうな顔をしながら首をよじってかわそうとする様子さえも、男達に楽しまれてしまう。
「ぐへへっ!キレーな顔にきったねえ唾かかっちまうもんな!嫌だもんな!」
「さっきまでの澄ました態度はどこに行っちゃったのかなぁ~?」
普段であれば造作も無く倒せるような相手に身体を好き放題されている屈辱。
御門は奥歯を噛み締めながら、辱めに堪える。
(くそっ…このままじゃ終われない…!)
なんとか逃げなければこの先どうなるものか分かったものではない。
男に好き放題されて、どこかへ捨てられるのか。
それだけで済んだらまだ良い方だ。
もしそれだけで終わらなかったら…御門はその先を考えるのをやめた。
(とにかく今はどうやって逃げるかを考えないと)
複数の男に囲まれ、身動きのとれない状況。
正面から立ち向かったところで敵うはずがない。
だとすれば相手が油断した瞬間を窺うしかない。
これだけ興奮して舞い上がってるのだ。
どこかに逃げるチャンスはあるはず。
御門の心はまだまだ折れていなかった。
「へへえ…」
胸を揉んでいた男が顔を近付けてくる。
「な、何…?嫌ぁ…っ!」
男が何をしようとしているのか察して、急にもがき出す御門。
めくれ上がったタラコ唇が臭い息をぶつけながら迫ると、御門の桜色の唇を奪う。
ン゛チュッ…!ンブッ…ングッ!ふぅっ…
男の強引な口づけの前に、くぐもった声が漏れる。
情緒や趣などといったものは全く含まれない男の口づけに、御門は眉間に皺を寄せてもがく。
ちゅくっ…チュバッ!ブチュチュッ…ちゅむぅ…っ
(き、気持ち悪い…!)
唇をナメクジが這い回るような不快感に、御門は思わず嘔吐しそうになる。
臭くて汚い唾液が口腔に充満し、反射的に涙目になってしまう御門。
男は気持ちよさそうに唇を蹂躙しながら、胸を優しく揉んでいる。
「…ぶはぁっ!ぶひひっ!医者のオネーチャン、どうだった?俺とのあつぅ~いキスは」
「はぁっ…はぁっ…さいや…く?う゛ぅっ!!」
男とのキス地獄から解放された瞬間、顔を青くして横を向く御門。
身体をびくりと硬直させると、白っぽい吐瀉物を吐き始めた。
「お゛っ、おえええっ…!」
美しい顔には到底似つかわしくない声をあげながら、嘔吐し始める御門。
その様子にゲラゲラ笑い出す男達。
「うははっ!医者の姉ちゃん吐いちゃったよ」
「お前の唾が臭くて不味すぎたんだろうなっ、ハハハッ!」
「う、うるせえ!」
御門に跨がりながら口喧嘩を始める男を尻目に、御門は身体をガクガク震わせる。
もう身体が憔悴し始めて、目の前がぼうっとしつつあった。
「とりあえずよ、姉ちゃん吐いちゃったから場所を変えよーぜ」
「そうだな。あそこに連れてこうや」
ぐったりした御門を起こして連れて行った場所は、もっと吐きたくなるような場所だった。
アンモニア臭が鼻をつく。
男達にとっては慣れた臭いだった。
そこは公園内の公衆便所。
碌に掃除もされていないその便所は所々黒ずんでいて、半ば崩壊状態だった。
「よし、ここにつないで、と」
男達が女を犯す際にいつも使っているらしい。
天井から吊された錆びた鎖に両手首をつながれる。
「くっ…」
両腕を吊されて、ぶら下がるような体勢で拘束される御門。
すかさず男達が迫ってくる。
「ぐへへ…さっきは全然触れなかったから、今度は俺な?」
「ちっ」
さっきの男と大差ないくらい下品な雰囲気の男が御門に抱き付いてくる。
「へへへ…」
御門のほっそりとした身体に抱き付きながら、頬をベロベロと舐めてくる。
「キレーな顔してんなあ…良い匂いするし、たまんねーぜ」
「き、気持ち悪いっ」
そんな御門の抵抗する様子も楽しみながら、男はさらに舐めてくる。
「ぐへっ、まだ若いよなあ?彼氏はいんのか?それとももう結婚してんのか?んん?」
頬摺りしながらプライベートな質問をしてくる男。
御門は答える訳がないのだが、聞かれるだけで不快な気分になる。
自分の心に土足で踏み入られる不快感と言うべきか。
「ぐふっ、だんまりかい。つれねえなあ」
御門の巨乳を揉みながら、今度は脇を舐め始める男。
くすぐったさと気持ち悪さでぞくりと背筋を凍らせる。
「…もしよかったら、俺と結婚しねえか?お姉ちゃん器量良しだし、収入もいっぱいあんだろ?へへ、俺と結ばれてくんねえかなぁ」
何も喋るつもりはなかったが、意味不明な申し出に思わず「はぁ?」と返してしまう。
器量良しで高収入、など向こうから見た自分の魅力ではないか。
こちらから見ればホームレスの汚い中年オヤジと結ばれる理由など何一つ無い。
「俺が幸せにしてやんよぉ~」
「なんかバカな事言ってんぜ」
「ぐへへっ、姉ちゃんそんな奴と結婚するくらいなら俺としてくれよぉ~」
真面目にプロポーズし出す男を茶化す周りの男達。
またしても口喧嘩をし始める。
この連中は猿か何かか?
己の欲望のためにしか動かないから、事あるごとに揉め事を起こす。
ここで、仮に自分が「分かった、あなたと結婚するわ」とでも言えば、相手の油断を誘って逃げる事ができたかもしれない。
だが、それは御門にはできなかった。
御門のプライドが許さなかったのだ。
口が裂けても、嘘だったとしても、こんな汚くて醜くて卑怯な男に結婚するだなんてとても言えなかった。
ブチッ…ガシャン!
突然の事だった。
男が御門に抱き付いて愛撫していると、急に鎖が切れたのだ。
両手を拘束されていた御門は床に崩れ落ちるように解放され、自分の足で立つ事ができた。
(チャンス!)
その一瞬を、御門は見逃さなかった。
周りの男が呆然としている間に、まず目の前のプロポーズ男の勃起していた股間を蹴り上げる。
「うぼぁっ!!」
何かが炸裂したような悲鳴をあげると、御門はそれ体を押しのけて出口へと駆け出す。
「しまった!また!」
男達が反応した時には、御門の背中は公衆便所を出て行っていた。
「追いかけろ!」
既に御門の背中は夜の暗闇へ溶け込んでいた。
血相を変えて、御門を追いかけるもなかなか捕まえられない。
「くそっ、すばしっこい女め」
暗闇でも御門の姿は捉えているものの、その距離を詰める事ができない。
このままだと逃げられてしまう。
そう男達が思った瞬間だった。
「きゃっ!?」
どんっと鈍い音と共に、追いかけていた御門の悲鳴が聞こえた。
「何だ…?」
追い続けていたので、その場に御門がへたり込むのが見えた。
もしや警察か?
なら隠れないとまずい。
しかし、彼らが引き返そうとしたのは杞憂に終わる。
「ぐへへ…あんたら、自分達だけイイ思いするつもりだったのかい?」
「なんで俺達も誘ってくれなかったのかなぁ?」
そこにいたのは…自分達と同じような境遇の、ホームレス達だった。
同じ所に住んでいるのだが、気が合わないグループなので普段は別行動をしている。
ちっ、こんな時だけ出てきやがって…そんな舌打ち混じりの声が聞こえてきそうだった。
「楽しそうじゃねーか。こんな美人捕まえてよぉ。俺達も混ぜてくれよお」
一番体格の良いリーダー格の男が倒れた御門を強引に抱き上げて言う。
しかし、これで人数は先程の倍近くになってしまった。
御門からすれば、もう…逃げ道は断たれたも同然だろう。
次に連れて来られたのは廃墟。
「きゃっ」
大きめのベッドに身体を投げ出されると、ばふっというマットの音と共に、埃がむわっと舞い上がる。
「ゲヒヒヒヒッ!それじゃ、早速始めよーぜ」
大柄のリーダー格の男が言うと、それを遮るように一人の男が出てきた。
「ぜえ、はあ…ちょっと待ってくれ…」
息も絶え絶えに、下腹部を抑えながら現れたその男は、先程のプロポーズ男だった。
御門に股間を蹴られて、そのダメージはまだ残っているはずだろう。
顔色が明らかに良くない。
「ちょっと待ってくれ…俺は、そいつにチンコを蹴られたんだ…」
わっはっはっはっは、とその瞬間笑いが起こる。
男が女にやられるなんざ情けねえと嘲られながらも、男は続ける。
「腹が痛くて痛くてしょうがねーんだ…一個潰れたかも知んねえ…だから、そいつに責任をとらせてやりてーんだ」
「責任?お前が俺達に先んじてこいつとまぐわるって事か?」
それは許さんと言わんばかりの剣幕で言う。
しかし、プロポーズ男の答えは少し違った。
「そいつに、パイズリをさせてやりてえんだ…」
「ほお…」
納得のいく答えだったようだ。
セックスはダメだが、パイズリはOKなようだ。
「そいつのでっけえパイパイで挟んでもらったら一瞬で回復すると思うからよ、やらせてくれよ…」
「良いぜ。ただその代わりにセックスは俺が最初だからな」
「ちょっと待てよ!」
先程御門を止めたリーダー格の男が仕切り出すと、またしても方々からクレームが巻き起こり、諍いが起こる。
こんな知性の低い連中に手込めにされているのかと思うと、御門は自分が情けなくなってくる。
「へへへっ」
あーやこーや外野で喧嘩が起こっている内にプロポーズ男がのし掛かってくる。
「さっきの蹴り、痛かったぜえ…もう勃たないかと思っちまった」
そう言うと、ズボンを乱暴に脱ぎ捨て、屹立したペニスを見せつける。
「へへへっ、こうしてちゃんと勃ってるけどよ、実は滅茶苦茶痛てーんだ。でもアンタのその乳で挟んでもらったら気持ちよくなるだろうなぁって」
「気持ち悪い御託はもう聞き飽きたの…それとも、両方とも潰されたいの?」
「んだとォ?」
上に乗られながらも反抗的な態度を貫く御門に怒声をあげる男。
御門のブラウスを掴むと、怒りに任せて引きちぎる。
「くっ…」
「おほっ」
脱がされた勢いでぶるんぶるんと揺れる乳房に思わず魅入る。
この乳にペニスを挟んだらどれだけ気持ちいいだろうか。
想像さえもつかなかった。
「それじゃ挟んじまうか」
勇み足でパイズリを始めようとする男。
大きな乳房を掴むと、自分の腰をそちらへ引き寄せる。
「へへへっ、どれだけ気持ちイイんだろうな?うへへっ!」
興奮しながら独り言をぼやく。
御門からすれば、自分の身体をオモチャのように扱われて最悪な気分だった。
「…うほ、おおっ!!」
乳房で自らのペニスを包んだ途端、うめき声をあげながらびくりと痙攣する男。
余程気持ちよかったのだろう、痛いと言っていたペニスは御門の乳の中でむくむくと大きくなり、男の血色も一瞬で良くなった。
仮性包茎のペニスが限界まで大きくなり、亀頭が姿を現わすと、男はゆっくりと腰の上下動を始める。
「おほ…気持ち良いぞお…」
我慢に我慢した男のペニスから分泌されたカウパー液が潤滑油になって、ネッチャネッチャ…といやらしい音をたてる。
軟らかな乳房は熱く滾ったペニスを優しく包み込み、極上の快感をもたらす。
さらに、射精する先が御門の美しい顔面となれば…もう我慢できなかった。
「うおっ…出すぞっ!」
「…えっ?」
男が動きを止める。
跨がったままびくりと体を震わせると、熱い精液を発射した。
ビュウウウウッ!!ビュッ!ビュッ!ビュッ!
「ッ…!」
(嫌!最悪!!)
口を開けたら精液が入ってしまいそうなので、心の中で悲鳴をあげる。
男のペニスは速射砲のように次々と黄ばんだ精液を発射し、御門の美しい顔や髪を汚していく。
「…ふぅ」
「へへへっ、用は済んだかよ」
振り返ればリーダー格の男が待ち切れんと言わんばかりの様子で待っていた。
ズボンを既に脱いで、屹立したペニスを見せつけながら射精を終えたばかりの男を押しのける。
「ぐへへ…休んでる暇はないぜえ?」
肥えた体で御門の華奢な体にのしかかると、両手首を掴み上げる。
「うぐっ…」
あまりの重さに苦しげな声を漏らしてしまう御門。
その様子にさえ男はご満悦なようだ。
「へへっ、どうだぁ?俺らみたいなゴミクズに捕まって好き放題されて…どんな気分だよ、美人なお医者サマ?」
「最低よ…あなたみたいな臭くて汚い豚に好き放題されて…吐きそうだわ」
男の問いに、不快感を吐露する御門。
100kg近くある男にのしかかられて抵抗したくても抵抗できない。
「豚ねえ…」
豚呼ばわりされた事に、怒りを覚える男。
見た目が豚みたいだと学生の頃から言われ続けてきた。
『豚野郎』『豚』、その体型からずっといじめられ続けた過去が蘇ってしまう。
見た目が醜く、運動も勉強もできなかった彼は取り柄がないと周囲から言われ、虐げられてきた。
「へへへっ、あんたみたいな美人は良いよなぁ、生まれつき見た目も頭も良くて…」
御門のタイトスカートをパンツごと引きちぎると、使い込まれていない綺麗な女陰が露わになる。
ヒッと息を呑む御門。
これで彼女が身に着けているものは両脚のサイハイソックスだけになってしまった。
「世の中不平等なもんだぜ…あんたみたいなのもいりゃ俺みたいな出来損ないもいる」
御門のすらりと伸びた両脚を抱えると、脚を広げたカエルのような情けない体勢をとらせる。
「い、や…!」
何をされるのかもう分かっている御門は、必死にもがくも両手足を拘束されて身動きがとれない。
(こんな豚みたいな男に犯されるの…!?私…)
見た目が醜いのは勿論、年齢的にも御門の倍以上はありそうだ。
客観的に見ずとも、自分とは不釣り合いな存在である事くらいはよく分かる。
臭い息が吐きかかり、気持ち悪い事この上ない。
「へへっ、それじゃあ一つになっちまおーぜ!医者のオネーチャン」
「嫌よ…嫌!…今なら許してあげるから、離しなさいっ!」
半ば涙目になりながら抵抗する御門。
しかし、男は辛抱ならないといった様子で、一気に御門へ剛直を突っ込む。
「…うっ、い、いやぁあああああああああっ!!!」
ズブリと男のソレを突っ込まれて、無理やり一つにさせられてしまった御門。
妖艶な見た目とは裏腹に、あまり使われていなかった御門の膣は、一気に男のペニスで穿たれる。
「あぁっ、あはっ…あぁぁっ」
感じている訳ではない。
ただ、この目の前にいる豚男に犯されているという屈辱と男の物が大きすぎたので息苦しくなっているのだ。
「あぁ~、気持ちイイぜえ…医者のオネーチャン…」
久しぶりのセックス。
それも御門のような若くて美しい女性とのものなら快楽はひとしおだ。
「あったかくって、きゅうきゅう締め付けてきた…最高だぜえ」
最初は味わうようにゆっくりと腰を動かしていたのが、徐々に動きが速くなっていく。
軽く突くだけで肋の上に乗った乳房がぷるんぷるん揺れるのがたまらなかった。
(こ、こんな男と、私…セックスしてる…嘘でしょ?)
目の前の光景を信じたくはなかった。
涎をぼたぼた垂らしながら、見るも醜い男が何やら上下動している。
そして下腹には確かな熱い感触。
御門は逃げようとして失敗した辺りから、もう意識が混濁としていた。
視界はぼやついて、頭の中も空虚になるというか…上手く物事を考えられなくなっていた。
それは目の前の屈辱を受け入れてしまったという事だろうか。
いや違う。
と、御門は思いたかった。
だが、一人の女の力には限界がある。
いきなり公園でこの浮浪者集団に襲われてから1時間以上が経つ。
必死に逃げようと抵抗を試みてきたが、もう身体は限界までに疲弊していた。
「姉ちゃん…好きだぜえ」
一方的な愛を押し付けんと、男は挿入しながらキスをしてくる。
もう御門には拒む体力はない。
男にされるがままに舌を絡め取られ、ディープキスを強引に堪能させられる。
ンチュッ…レロッ…チュパッ…
淫靡な音が廃墟へこだまする。
周りにいる他の浮浪者達は喧嘩をやめて、御門と男のセックスに見入っていた。
誰もかれも股間をいきり立たせ、次は自分の番だと色めきだっている。
どんな事をしてやろう、どれくらい気持ちいいだろう。
そんな夢幻にとらわれて、男達は犯される御門の身体を凝視する。
「あぁ…っ、くっ、はぁあ…」
「ぐひひっ!そんなエッチな声出して、感じてんのか?この『豚』の、俺のチンポで?」
「そんな訳ないでしょ!」
気持ちいい訳がない。
ただただ不快で気持ち悪くてしょうがなかった。
こんなに気持ち良くないセックスもあるものなのだと思いながら、御門は涙をこらえる。
「そろそろ一発目を出しちまおうかなっ」
「な、何を言ってるの…?」
勿論、その意味は御門にもすぐ分かる。
だが、分かりたくなかった。
男が腰の動きを緩め、苦しそうな表情をし出す。
「嫌…やめて、お願い…それだけは…!」
ライムグリーンの美しい瞳が潤んで、男に媚びるような眼差しになってしまう。
その様子に余計興奮したのか、ペニスが御門の中でさらに大きくなった。
「やめてって…げひひひっ、締め付けてんのは姉ちゃんの方だろ?こんなエロいカラダしやがって」
あくまで自分は悪くないと言い張る態度に腹が立つ。
どこまでこの男は下卑ているのかと。
そしてそんなゲス相手に何もできずにいる自分にまた腹が立つ。
「こんな気持ち良いマンコ中出ししない方が失礼だぜえ」
びくびくとペニスが今にも射精したそうに震えているのが分かる。
こんな男に精子を中出しされるなど、考えたくもなかった。
「誰かっ…誰か助けてええええええっ!!!」
妖艶な涙声で助けを求める御門。
ゲハハハハと笑い出す男達。
「誰も助けに来ねえよ…ウヘヘッ!楽しもうぜオネーチャン!」
男が御門の両脚を抱えて、がっちりとホールドすると、ついにその時が来た。
「おお゛っ…で、出るっ!!」
「う、嘘!?嫌!お願い、中はやめてっ」
必死に懇願する御門。
しかし、辛抱ならず、男は膣内に挿入したまま絶頂へ達した。
ビュビュビュビュビュビュッ!!!ビュッ!ビュビュッ!ビューッ!!!
自身が失神しそうな勢いで中出しする男。
熱い精液は御門の膣内へと発射され、あっという間に彼女の子宮を汚す。
「嫌ぁ…嘘よ、嘘…こんなの…こんなのおおおおおっ!!!」
泣き叫ぶ御門。
医者である彼女にはそれがどれだけおぞましい事か、よく分かっていた。
目の前にいる豚のような醜い中年オヤジのDNAが自身のDNAと絡み合って、新たな生命をこの世に生み出そうとしているのだ。
御門の美しい容姿、聡明な頭脳を記録したDNAに、男の肥満体型で、顔が醜くて、頭が悪くて、運動神経も悪くて、ハゲで、臭くて、汚くて、最悪なDNAが絡みついているのだ。
二人の子供という形で。
「あぁ~、気持ち良いぜえ」
悦に入った表情でいつまでも射精を続ける男。
御門という優秀な雌を相手に子を産ませたいという本能なのだろう。
精巣に残っている精子一滴たりとも漏らさんと言わんばかりに、射精し続ける。
男は歳をとればとるほど、精子の運動量が落ちて、女を妊娠させづらくなっていくという。
これは御門にとって良い情報だ。
だが、力の衰えた精子でもし妊娠してしまえば、奇形児が産まれる確率が高くなるという。
加齢で精子の中にあるDNAが損傷するからだ。
「おい、どけよ」
射精の余韻に浸っている間もないままに、次の男達が続々と迫ってくる。
ざっと男達は20人以上はいそうだ。
その男達が俺だ俺だとまたしても諍いをし始める。
なんて下劣で下等な生き物なのだろう。
ぼやついた意識の中で、御門は男達の喧嘩を見ながら、絶望と悲しみの狭間へ落ちていった。
翌日。
「おおお…っ、まだまだワシのちんぽは現役じゃぞっ」
パンパンパンパンッ!
あの悲劇から24時間後。
悲劇はまだ続いていた。
何人もの浮浪者達が列を成す先に、薄汚い廃墟には不釣り合いな瑞々しい肢体が辱められていた。
今、御門をバックから突いているのは70歳を超えているであろう老人であった。
「おほっ、人生72年…碌な事がなかったが生きてみるもんじゃ…こんな美女とまぐわれるなんてなぁ」
「源さんすげえ…まだまだ現役じゃねえか!」
160cmにも満たないであろう小さい老人に、171cmの御門がしなやかな脚を広げさせられて背後から突かれている。
背の高い女が背の低い男に腰の位置を合わせるために、脚を曲げているという構図が、より彼女が下劣な存在に犯されている事を象徴している。
「ん、ぶぅ…っ、ふうっ…ん゛っ!ぐっ」
バックで突かれている一方で、正面から別の男のペニスをしゃぶらされていた。
青筋の立ったペニスと唇越しに苦しそうな声が漏れる。
もう御門には相手のペニスに噛み付くだけの体力も気力もなかった。
「こんな思いができるのは20年ぶりじゃあ!こんな美しい女子を前に勃起せずにはいられなかったんじゃあ!」
興奮して大きな声をあげる老人に、一同はわっはっはと笑い出す。
「まだ子供も行けるかのぉ?ワシはこんな美人なお姉ちゃんに子供を産んでもらいたかったんじゃあ…」
72歳の精子で妊娠させるのは、おそらく無理であろう。
しかし、御門からすればそんな劣悪な精子を注がれるという事自体が精神的な傷になるのだ。
抵抗する気は失せていても、嫌悪感と屈辱は延々と残り続ける。
「おぉおっ…そろそろワシの子種を出すぞ…っ!はぁ、はぁ…娘が良いなぁ、お姉ちゃんに似た美人で可愛くて頭の良い娘を…産んでくれよおっ!!」
「俺もっ、限界だっ!」
「ぐっ!…むぐっ、うっ!」
バックから突いていた男とフェラをさせていた男とが同時に絶頂を迎える。
もう何度目だろう。
口にも、膣にも、精液を出されるのは。
もうこの24時間で数え切れないくらい精子を出され続けてきた。
次から次へと浮浪者共はどこからともなく湧いてくる。
(一体、いつになったら終わるの…)
普段学校で見せているような余裕をたたえた表情はもうどこにもない。
あるのは、悲劇の終焉を願う、か弱い美女の泣き顔であった。
短篇集と言いながら結構長くなってしまった…
ちょっとした後日譚を書くかもしれないです。