違法な闇賭博が犇めく地下闘技場『獄』。
その悪名は日本だけに留まらず、アジア、アメリカ、中東、ヨーロッパにまで轟く。
フランス・パリにて、自身の所有する豪邸の庭で休暇をとるDOATEC総帥エレナ・ダグラスの耳にもその悪名は届いていた。
ただ一介の地下格闘技団体に過ぎなかった『獄』が、何故それほどまでの巨大な組織になったのか。
それは、格闘技界でもタブーとされてきた"男対女"の試合を実現させたからだ。
正当な格闘技団体ではないといえ、"男対女"の試合を実現させた事は大きなニュースとなり、議論を巻き起こした。
色々な団体や組織から、やめさせるべきだという声も噴出した。
だが、やめさせる事はおろか、やめるべきだという声も次第に聞こえなくなってしまっていた。
なぜなら、『獄』のバックにはいわゆる半〇レ集団といったならず者がついていたから。
高圧的にやめさせるべきだと提唱したジャーナリストの自宅には火炎瓶が投げ込まれ、政治家達も全くこの話題には触れなかった。
…それに、"男対女"を見たくない者より、"男対女"を見たい者の方が多かったのだ。
「レディィィィィィィス!!!アンド!ジェントルメン!!!さぁ~!今日もバチバチかましていこうぜぇ!!?」
八角形の金網の中心で、サングラスにドレッドヘアーといった"いかにも"な男がマイク越しに声を張り上げる。
その声に呼応するように、ギャラリーが野卑な歓声を上げる。
透明なプラコップにビールを注いで、狭めの会場はタバコやら何やらの硝煙で軽く曇る。
とても格闘技の、スポーツをする会場とは思えない。
ドレッド頭のMCのコールに応じて現れたのは、見るからに頭の悪そうなDQN風の男と…一人の女性であった。
黒髪を束ねた妙齢の美女。
からかうようなふざけた顔つきの表情の男とは対照的に、引き締まって凛とした表情のまま向かい合う。
およそこんな場所には似つかわしくない、大和撫子風の女性。
おそらく何らかの事情があって、参戦せざるをえなかった事が見て取れる。
男はふざけた表情のまま、フェイス・トゥ・フェイスの間、何やら女性に喋りかけている。
『獄』のルールブックはA4の紙っぺら一枚だ。
・武器・防具等の使用及び持込を禁ずる。
・金網の外に逃げた場合は敗北とみなす。
・制限時間は無く、勝敗については審判にのみ委ねられる。
・グローブ、シューズの着用については任意とす。ただし審判のチェックを受けてからの着用に限る。
たったのこれだけである。
元々は血の気の荒い連中が暴れるために立ち上げた、いわば『合法的な喧嘩ができる場』である。
そんな小規模な地下格闘技団体が始めた"男対女"という一つの試みに巨額のマネーが投じられるようになり、そして———
「…この団体がM.I.S.T.からの支援を受けているというのは本当かしら?」
白い洋風の肱かけ椅子に腰かけたエレナが、傍にいた自身の部下に問いかける。
「はい。この団体のトップとみられる男達がM.I.S.T.の幹部と会食をしているのを発見しました。写真にも収めております」
差し出された写真には東京の歓楽街にて厳めしいスーツに身を包んだM.I.S.T.幹部達が派手な色の服装をした柄の悪い日本人達にどこかへ連れられる様子だった。
談笑しながら、男達が高級焼肉店に入店する所まで撮影されている。
「間違いなさそうね。巨額の収益を叩き出す地下格闘技団体に、違法な生体兵器を研究するM.I.S.T.…利害は一致しているのかもね」
「と、言いますと?」
問いかける部下に、エレナが小さな端末で一本の動画を見せる。
そこには黒い髪を結んだ妙齢の女性と見るからに頭の悪そうなDQN風の男が戦っていた。
女性も格闘技経験者なのであろう、序盤は男を圧倒するも後半盛り返されてしまう。
男の眼差しはどこか、"トんでいる"ように見えた。
「…」
女性の強かな攻撃を受けても、何食わぬ顔で前進していく様はまるでゾンビのようであった。
格闘技の達人でもあるエレナにはそれが何故であるかが分かる。
それがM.I.S.T.の開発したバイオテクノロジー技術を受けてのものだと、一目で分かる。
男が馬乗りになり、女性の顔面を殴打し続ける所でエレナは端末をしまう。
「…?試合はまだ終わってないみたいですが?」
「…あとは見たければ自分で見なさい」
どこか不機嫌そうに言い放ち、立ち上がるエレナ。
連中はこうして"男対女"の試合動画を配信する事で、莫大な収益を稼いでいる。
バックがバックなだけに、誰も文句を言えないのだ。
忌むべきM.I.S.T.とつながりを持ち、資金供与し合うような組織は潰さなければいけない。
何より、女性そのものを侮辱するような組織の在り方が許せない。
エレナの拳は硬く握り締められていた。
(潜入させるとしたら男性は無理ね)
バックが如何に凶悪で巨大な存在だったとしても、エレナの経営するDOATECもまた巨大な組織であった。
犯罪に身を染めているという確たる証拠さえ握れれば、こっちのものだ。
一番手っ取り早いのは、地下格闘技場に挑戦者として女性格闘家を参加させる事だ。
噂によると、参戦する女性の中には高額のファイトマネーに目が眩んでケージに上がる者も少なくないそうだ。
白くて細い指が端末の液晶を叩く。
「…もしもし、聞こえるかしら、マリー」
"マリー"と呼ばれた人物と何やら通話し始めるエレナ。
「えぇ、そうね。下準備は全てこちらで進めておくから、詳しい場所と時間は後日伝えるわ」
腰に手をやり、遥か遠くを見据えるような目つきに変わる。
「今から東京に向かって頂戴」
「レディィィィィィィス!!!アンド!ジェントルメン!!!さぁ~!今日もバチバチかましていこうぜぇ!!?」
いつものドレッド頭のMCがマイク片手にがなりたてる。
金網の周りには気怠そうに盃を傾ける客。
そして無数のカメラと照明機材。
今宵の挑戦者を待ち侘びる。
「青コーナー!!!古の武術使い!老巧(ろうこう)!!!」
"老巧"と呼ばれて、現れたのは風が吹けば今にも倒れてしまいそうな、年老いた男。
80歳前後だろうか?体を丸め、とぼとぼと現れたその老人に、観衆は嘲笑を浴びせる。
「なんだーーーー!?ジジイィーーーーーーーー!!!」
「何しに出てきやがったんだぁ~~~!!!」
下品な歓声に応えるように被っていたニット帽を脱ぐと、既に禿げ上がった頭皮がスポットライトを反射する。
そのひなびた、いかにも情けない姿に観衆は笑いを隠せない。
ここは格闘技の会場。
いかに"男対女"をやるような不当なものとはいえ、走る事さえできないような老人はおよそ似つかわしくない。
ケージの中央に立つと、その頼りなさがより際立つ。
「え、ええーっと…それでは対戦相手をお呼びしましょう!!赤コーナー!!!"小悪魔サーバント"マリー・ローズ!!!」
"マリー"という名前からして、女が出てくるのであろう。
しかし、観衆の瞳からは期待や希望といった感情は失せていた。
この試合は別に注目する必要もないなと、相変わらず怠そうに酒を飲みながら、ぼーっと金網を眺望する。
だが数秒後、その呆けた眼差しがひん剥かれるような光景が広がる。
反対側のコーナーから現れたのは、長い金髪をツインテールに結んだ若い…と言うより幼い少女。
モニターのどアップで映し出されたのは、まるで精緻な人形のように整った美しい顔。
「…ヒュウウゥ~♪」
しかし最も目を引いたのは、その衣装。
青いエナメル質の素材でできた、スクール水着のような衣装。
ぷりっとした小ぶりなお尻が映え、スレンダーな細い身体のラインがくっきりと浮き出る。
肩や背中の白い肌は露出され、小さな体は無垢な美しさを漂わせる。
濃紺色の瞳はすっと前だけを向き、マリーと呼ばれた少女は静かな足取りで金網の中へ入っていく。
終始モニターでアップにされたマリーの美しい顔を見て、観衆が欲望を帯びた下卑た歓声を浴びせる。
「オォ~イ、可愛い嬢ちゃんナニしに来たんだぁ~?」
「へっへっへっへ…!俺達が可愛がってやろうかぁ?」
おちょくるような声を浴びせる観衆の方を、キッと睨むように一瞥するマリー。
(なんだか気分が悪いですね…)
エレナから話は聞いていたが、思ってた以上に悪い雰囲気であった。
100人入らないような小さな会場に、いる観衆はと言えば酒や煙草をあおる柄の悪い男達。
その割には、ごつくて厳めしい撮影機材がずらりと金網の周りには並んでいる。
そのレンズの向こうでは幾億ものオーディエンスがいると、エレナから聞いた。
(こんな小さな会場で…)
圧迫感を感じさせるような狭い箱。
とてもここで催されるイベントが全世界に向けて配信されるものだとは思えない。
しかも相手といえば。
「ふぉっふぉっふぉっふぉ…」
マリーとそう上背の変わらない、ひなびた老人。
古びた道着を着ている事からマリーとここで戦う相手だという事は間違いないのだろう。
しわくちゃの顔をさらにしわしわにしながら笑う。
「さぁぁぁ…!!それでは老巧vsマリー・ローズ!!!Are You Ready?」
向かい合った二人にグローブタッチを求めるMCの男。
一般的な格闘技の試合にある、軽いルール説明などは一切ない。
二人の手を半ば強引に合わせさせると、両者に金網の端へ行くよう指をさす。
「ぐふぉふぉ…よろしくねぇ?」
拳を軽く合わせようとしたマリーの手をぎゅっと両手で握る。
「…っ!」
下から覗き込むようにしながらそう言った老巧の言葉尻に、ねっとりとした執着心のようなものを感じて思わずぞっと悪寒のようなものを感じるマリー。
ここがどういう趣旨のイベントを行う団体であるか。
マリーも下調べの段階でそれは知っていたものの、改めてそれを実感させられる。
そんな一シーン。
「Here We Go!!!」
高らかな試合開始を告げるコールと共に、鳴り響くブザーの音。
マリーが素早さを感じさせる軽快なステップで間合いを詰めると、老巧はベタ足でゆっくりのっそりと動く。
しなやかさの欠片も感じられない動きに、マリーは内心訝しむ。
(本当にこの人戦えるの…?)
殴ってしまう事さえ躊躇うほどの弱弱しさ。
マリーもシステマという格闘技を身に着けた立派な格闘家であるのだが、目の前の老人には全く強い雰囲気を感じない。
しかし楽に倒せるのであれば、それに越した事はない。
(仕留められるのなら、早い段階で…!)
マリーの使命は『獄』の関係者に取り入って、組織の内情を探る事だ。
犯罪行為に手を染めているという明確な証拠があれば、警察も動かざるをえないだろう。
それを握るのが彼女の役目。
「…血の薔薇、咲かせてあげる」
一度参戦しただけで尻尾を掴ませてくれるような相手でない事はエレナ達も分かっている。
この格闘技イベントに継続参戦する事で隙を窺おうという寸法だった。
そのためには、まず勝たなきゃいけない。
「えぇい!!」
可愛らしい掛け声と共に放たれた掌底は老巧の顔面を弾く。
「うぶっっ!!」
情けない声を発しながら倒れる老巧。
それを見下ろすマリー。
倒れ伏せる貧弱な姿と手応えは弱った老人のものとしか思えない。
「もう終わりですか?」
浴びせられるブーイング。
「ちゃんとやれーーーー!」
「死ねーーーー!ジジイィーーーーッ!!」
普段であれば倒れた相手を追撃に行くのだが、マリーは構えたまま。
どこか困ったような表情がモニターいっぱいに映し出される。
老人を甚振る趣味などないから。
「くっ…油断、したわい…っ」
鼻血を拭いながら、ふらふらと立ち上がる老巧。
思わず手を差し伸べそうになってしまったほど、その姿は頼りない。
「まだ…やるんですか?」
ふとそんな言葉がマリーの口をついて出る。
その表情は既に勝利を確信した余裕よりも、相手に対する心配に満ちていた。
老巧は一瞬きょとんとした反応を見せるも、すぐさま「ふぉっふぉっふぉ!!!」と笑い飛ばす。
「儂も舐められたもんじゃな…お嬢ちゃん。遠慮はいらんよ?全力でかかってきなさい」
「…死んでも知りませんよ?」
挑発的な言動をするマリーに対して細く枯れたような腕を顔の前で構えて、戦う意志を見せる老巧。
しかし、ガードの空いた鳩尾にマリーの前蹴りが容赦なくめり込む。
「ふぐおぉッッ!!!」
前のめりにどさっと倒れると、真っ白いキャンバスに血を吐き出す。
流石にやりすぎたかと戸惑いを見せ、またも追撃に行けないマリー。
その判断が後悔を生む事になるとは知らずに。
「ぐふぉっ…!うぅ…」
四つん這いになって苦しむ老巧。
孫娘でもおかしくないような少女に向かって土下座するような情けない体勢でもがき苦しむ。
マリーからすればサッカーボールキックを容易に頭に叩き込んで、勝負を決する事ができたがこれでは相手が死にかねない。
苦しむその姿をわき目に、MCの方をちらりと見やるマリー。
しかし、ストップをかける様子は微塵も見られない。
それどころか、ブーイングに包まれていた会場は何故か野蛮な歓声に満ち溢れていた。
「…えっ?」
ふとモニターの方を見ると、信じられない光景に目が留まる。
自らが着用しているスクール水着のようなバトルスーツ。
それが、透けているのだ。
「え…?えっ!?」
自身の僅かな胸の膨らみが映っているのを見てゾッとするマリー。
思わず体を触り、ちゃんと服を着ているか確かめるも、やはり着ている。
モニターの方をもう一度見ると、いつもと変わらぬ自分の姿がそこに。
「…ふぉふぉふぉ、何かおかしな事でもあったかね?」
「…ッ!」
背後で立ち上がる気配を感じ、振り向きざまにすかさずサイドキックを放つマリー。
老巧の顎に直撃し、その痩躯が金網にまで飛ばされる。
ガシャーーーーンッ!
そのまま金網にもたれかかったままずるりと倒れる老巧。
(い、今のは…何…!?)
再び自分の体を見てみるも、ちゃんと服は着ている。
観客の下卑た歓声が起こった事から、自分の錯覚ではないと確信している。
じゃあ、あれは何…?
「何か…おかしな事でもあったかね?お嬢さん…」
明らかにダメージはある様子で、それでもふらつきながらマリーと相対する事をやめない老巧。
両手を前にかざし、拳法家のような構えをとる。
(明らかに、おかしい…)
自分の打撃はクリーンヒットしていて、しかもちゃんとダメージはある様子なのに。
どこから来るのだろうか、その自信は。
普通であればたとえ戦えたとしても、絶望的な実力差に戦意喪失するはず。
しかしこの老巧は何度も何度も起き上がってきては、マリーと対峙する事を辞さない。
その落ちくぼんだ眼からはぎらついた何かを感じる。
(打撃は効かない…?なら!)
軽やかなステップでふらつく老巧に迫ると、一瞬で背後に回る。
「ぐふぉっ!?」
いきなりその小さな体で老巧の背中におぶさる。
細い腕が一瞬で首元に回ると、一気に絞め上げる。
その細く今にも折れてしまいそうな首をギリギリと音が鳴りそうなほどに絞め上げて。
「ぅ、うぐぅ…っ」
気道が絞まって、ヒュー、ヒューという頼りない呼吸音が聞こえる。
老人相手に使いたい技ではなかったが、失神させるだけだと自分に言い聞かせて絞め上げるマリー。
(これで終わりです…!)
老巧の抵抗が徐々に弱まっていくのを感じる。
(あんまり絞め過ぎても…!)
人殺しにはなりたくない。
がくん、と膝が落ち、マリーは自身の脚を老巧の脚へ絡め、完全に逃げられない状態へ追い込む。。
『落ちたのではないか?』という視線をレフェリーを務めるメインMCの男へ遣るも、不思議そうにマリーの瞳を覗き込んでくる。
「…?…!?!」
バックチョークの体勢で首を絞めていたはずの老巧の姿が、そこにいなかった。
「…え、…えっ!?」
消失した、と言うべきか。
つい先程まで体を密着させ、首を絞め上げていたはずのものが、目の前からぱったりと消えてしまったのだ。
ではどこに…?
必死に辺りを見回すマリー。
そこでもう一つの事に気付く。
マリーの身体が動かないのだ。
首から上だけ動き、腕や脚は全く動かない。
まるで石にでもなってしまったかのように。
「な…なんで!?どうして!嘘っ…!」
困惑するマリーに浴びせられたのは、卑猥な罵声であった。
「おぉ~い、嬢ちゃん!そんなプリケツ突き出してオレらの事誘ってんのかぁ~?」
「試合が終わったら一晩付き合うよ?マリー・ローズちゃんっ」
モニターで自分の体がどうなっているのか確認する。
そこには四つん這いになって、尻を突き出す自身の姿がアップで映し出されていた。
「やっ!?やだ!!!」
なんとか立ち上がろうとするも、身体は全く言う事を聞かない。
苦悶の脂汗を浮かべたその美しい顔を必死に振って、なんとか動こうとしているのは見て取れる。
それを背後から、マリーから見えない角度から嘲笑する老巧。
「ふぉっ!ふぉっ!ふぉっ!ふぉっ!最初の威勢はどこに行ってしまったのかね?」
「くっ…!」
見えない所から嘲られるマリー。
(くぅぅっ…!!う、動かない…なんで!?)
理由があるとすれば、老巧の仕業、それしかない。
では何故?
あの立っているだけでも頼りないような老人が、どうやってこんな事を…
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ…何やら不思議そうじゃなぁ」
背後から声が近付いてくるのが分かる。
「くっ!うッ!!」
歯を食いしばってなんとか抵抗しようと首を振るマリー。
しかし一向に体は動かず。
パチンッ
「…?あ、あれ…っ?」
いつの間にか、マリーは立ち上がっていた。
先程までの身体が鉛になったかのような感覚が嘘のように。
「ふぉっふぉっ、仕切り直しじゃな」
何事もなかったかのように、再び老巧と相対する。
(何…?何だったの?今の…)
内心驚きを隠せないまま、構え直すマリー。
金網の中を回るように、フットワークを刻む。
(なんだかよく分からないけど…チャンス。早く仕留めなきゃ!)
バチィンッッ!!!
マリーの前蹴りが老巧を襲う。
軽やかに上がった脚は老巧の顎を捉え、跳ね上げた。
「んごっっ!!?」
流石にダメージが大きかったか、そのまま後ろへ大の字になるように倒れる。
仕留める絶好のチャンスであった。
だが、なぜかマリーは追撃に行かない。
それどころか、脚を振り上げたまま、バレリーナのような体勢で固まっている。
(なに、これ…また…!)
それも頭の上まで脚を振り上げたポーズで。
モニターに開脚した自身の股間がアップになっているのを見ると、可憐な悲鳴が会場中にこだまする。
「キャアアアアアアアーーーーッ!!!」
バトルスーツの股間の部分に汗が染み込んでいるのがはっきりと映っていた。
すかさず隠そうとするも、やはり体が動かない。
「な、なんで!?どうして動かないのっ!!?」
慌てふためいて、悲鳴のような涙声を上げるマリー。
脚を閉じようとするも、一向に体は動かない。
その様子を見て、倒れながら満足げな表情を見せる老巧。
「くふぉふぉ…そろそろ、本気を出しても良いかの?」
「…えっ」
蹴られた顎を押さえながらすっくと立ち上がると、おもむろにマリーの腹にボディブローを入れる。
「ぐぶっッッ!!!?」
体はいつの間にか動くようになっており、ボディのダメージに倒れ込むマリー。
さらに鳩尾に蹴りを入れられ、老巧の爪先がマリーの内臓へめり込む。
「が、はッッ!!!」
先程の頼りないただの老人と同一人物とは全く思えないような強かな攻撃。
体をくの字に折り曲げて、地べたに這いつくばるようにもがくマリー。
老巧はそんなマリーを嘲笑いながら、ゆっくりと追い詰める。
「ふぉっふぉっ、観念したらどうじゃ?DOATECの回し者が」
「…!?」
老巧が言い放った言葉にマリーはぎょっとした表情を見せる。
「な、んで…?」
「ふぉっふぉっ、最初から分かっておったのじゃよ。おぬしがスパイじゃという事くらい」
全て見透かしていた、と告げる老巧に口をぽかんと開けて呆けたような表情を見せるマリー。
全て分かっていた上で、あんな事やこんな事をされていたのか。
「…うぅ」
そう思うと急に悔しさがこみ上げてきて、止まらなくなった。
自身の無力さ、そして所属するDOATECに対して報えなかったという思い。
「さて、それじゃそろそろ…"させて"もらうかの?」
そう言うと、倒れているマリーの目の前でいきなり下半身を露出する老巧。
「なっっ!!?きゃあああああああっっっ!!!」
顔を真っ赤にして両手で覆うその可愛らしい仕草に、観衆の下卑た男共は歓喜の罵声を浴びせる。
「うひょおおおおおお!!!可愛いぃぃぃ———————!!!!」
「ヤっちまえよ!ジジイぃ———————!!!」
歓声に応えるように手を振りかざす老巧。
その股間はとても老人のモノとは思えないほど、天を衝くような勢いで屹立していた。
「や、やだぁッ!!!嫌ぁああああっ…!!!」
もう脇目も振らず、金網の中で逃げ惑うマリー。
その大きくなった性器を見て、自分の身にこれから何が起ころうとしているのか悟ってしまう。
「くふぉふぉ!待て待てぇ~」
もはや戦意の欠片も無かった。
得体の知れない魔法のような技を使う上に、真っ向から戦っても勝てない相手。
そんな相手にどう立ち向かえば良いのか。
マリーには分からなかった。
「おっと!逃げてはダメですよマリー選手!!」
いきなり背後からメインMCの男に抱き付かれるマリー。
「やっ!?嫌っ!!」
反則ではないのか?などと抗議する余裕もない。
身動きがとれなくなっている内に、老巧が一気に迫ってくる。
股間の、いきり立たせた性器を見せつけて。
「ふぉっふぉ、そのまま大人しくしてなさい…」
じたばたもがくマリーの脚を捕まえると、彼女の体ごと持ち上げるようにして床に倒す。
そして、獣のような力でマリーを組み伏せ、股と股とを擦り合わせると。
「儂も限界なのじゃよ。お嬢ちゃんみたいな可愛らしい娘と戦わされて」
スク水風のコスチュームの股間の部分を僅かにずらし、マリーの膣口へ自らの性器を押し付ける。
「ひっ!ひいいっ!!」
その生温かく不気味な感触に上ずった間抜けな声を上げてしまうマリー。
老巧はマリーの細い腰を潰れてしまいそうなほどに掴み上げ、自らの方へ引き寄せる。
ずぷぷぷっ…
「あっ…!」
見上げれば、温泉にでも浸かっているかのような、至福に包まれたような表情がそこに。
土色の肌でしわくちゃの顔は一見ただの老人としか思えない。
そんな老人に今からマリーは、性行為をされそうになっているのだ。
孫と祖父のような、傍から見れば性愛するなどあり得ない二人が。
ずぷぷっ…
「や、やだやだやだぁ!!!やめてよおぉっっ!!!!」
泣きながら悲痛な叫びを上げるマリー。
しかし、老巧は一向に越しの動きを止めない。
「今更やめられんわいっ!こんな若く、軟らかいマ○コを…ほおぉ…っ」
ゆっくりとマリーの腰を自らの腰へ近付けるようにして、そして…
ずぶっっっ!!!プチッ
「あっ——————————————」
何かが突き破られる感触。
マリーの青い瞳が見開かれる。
"何か"が侵入ってくる異物感、そして激痛。
下腹に入る痛みに苛まれながら、目の前の老巧の気持ちよさそうな顔を見ると吐き気を催した。
「ほれぇぇっ!!!」
ずりゅっ!と一気に中にチ○ポをねじ込む老巧。
「ん゛あ゛あぁぁぁっ!!!!」
純潔を奪われ、激痛と不快感に泣き叫ぶマリー。
こんなはずではなかったのに。
「ふんッ!ふんッ!ふんッ!ふんッ!まだまだ!若いモンには負けんぞぉ~!」
とても80代の老人とは思えないほどの勢いでマリーを犯す老巧。
パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!と勢い良く肉と肉とがぶつかり合う音が会場中に響き、陵辱のグルーヴを奏でる。
つい先程まで処女だったマリーの膣が穿たれ、抉られる。
マリーの小さな体の上で腰をカクカクと不格好に振る老巧。
その間抜けな姿はレンズを通して、全世界に配信されていた。
勿論その映像は、DOATCE本社…エレナのもとにも届いていて。
「ふおおおおおぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
興奮のあまりそのまま息絶えてしまうのではないかというほどの奇声を上げる。
いつの間にか下腹の辺りが透け、服だけでなく、肌の下の断面図がモニターを通して映される。
マリーと老巧がひとつになっている様が。
胎内まで丸見えにさせられた状態で犯されるマリー。
老巧の歳不相応なチ○ポがマリーの中を行ったり来たりする様が全世界に向けて配信される。
「ん゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」
モニターでマリーの泣きじゃくる表情と交互に映し出され、観客の興奮を煽る。
ズポッ…ズポッ…という淫靡な音が高機能集音マイクに吸収された。
「ふんッ!ふんッ!そろそろ…一発目を出すかのっ!?」
「えっ…」
老巧の腰の動きが徐々に緩まっていく。
その言葉が何を意味するのか、悟ったマリーは顔面蒼白に。
モニターにはマリーの膣深くまで押し拡げ、子宮口にキスをするように亀頭が最奥にへばりつく様子がアップで映し出される。
その瞬間、これから何が起ころうとしているのか悟った世界中のオーディエンスは歓喜と興奮の渦に包まれる。
「くお、ぉっ…!」
老巧の体がマリーに密着したままビクビクと震えると、チ○ポがマリーの中で痙攣している様子も同時に映し出される。
そして———
ドピュウウウウウゥッッッ!!!ドピュッ!!!ドピュッ!!!ドピュッ!!!
齢80を超えた老人の精巣が作り上げたなけなしの精子達が若く健康なマリーの子宮に向かって注がれる。
いくら老巧が強く、生涯現役と言い張っても、キ○タマを鍛える事はできない。
精子の中のDNAは欠損しており、いわば不良品とも言うべきそれがマリーの健常な金髪碧眼美白美少女卵子へ群がる。
質の悪い精子を受精してしまえば、母胎にも危険が及ぶ可能性がある。
それを本能的に悟り、青ざめた表情で泣き咽ぶマリー。
「嫌ぁあああああああっっっ!!!!!嫌ぁあああああああーーーーーーーーっっっ!!!!」
しかし泣こうが喚こうが、一度注がれた精子は己が役目を果たさんとマリーの卵子へ群がる。
モニターには老巧の精子がマリーの卵子へピクピクと纏わり付き、受精させんとする様が映し出される。
黄ばんだ白濁がマリーの子宮内を満たし、汚していく様を。
そして、ツプッ…と一匹の精子が卵殻を突き破り、新たな生命の礎となる様子も…