九月に入って、小次郎の退院が決まった。
その日は朝早くから、いつもよりも嬉しそうな母が病院へ来た。いそいそと退院の準備を整えた。
医者が病室を訪れて、お祝いの言葉と、これからの生活の注意点や、今後のリハビリについて一通り説明してくれた。
手続きを済ませ、母の運転する車で病院を後にした。家までのドライブだ。一時間を超える運転の間、母の横顔にはずっと微笑みが浮かび、信号で止まるたびに俺の頭を撫でた。
「今日何が食べたい?」とか「秋物の服を買わないとね」とか、あんまり興奮しすぎて、頬を染める勢いで、あれこれと今後のことを口にした。
俺は母を一日でも早く安心させてあげられるように、助けになれるように、ともかく体の自由を取り戻し、世話をかけないようにして、それから遅れた勉強をしなくては。
そういう決意を口にすると、母は照れ笑いみたいな顔をして、
「お母さんは宏樹が手間のかかる子でも、全然かまわないわよ」
それは母の優しさだった。
無理をすることがないようにという気遣いだった。そんな心配もかけないように、一歩一歩進まないといけない。
懐かしい街並みをぬけて、ようやく我が家にたどり着いた。車庫に車を入れた母は、俺を車椅子に乗せて、一年半ぶりの玄関を開けた。
きっと俺のためにつけたのだろう手すりが廊下にあった。お礼を言おうと背後を振り返りかけたとき、玄関に男物の靴があることに気がついた。
「もしかしてお父さん帰ってるの?」
声を弾ませて訊ねると、母は当然のように、
「違うわよ」と答えた。
母は俺の靴を脱がせると、車椅子ごと家へ上がった。廊下を進んで突き当りのドアで止まった。そこはリビングルームだ。
ドアを開ける。我が家のソファにどっかりと、小太りの男が座っていた。病院で見たあの男だ。
「お母さん、この人は……?」
俺の質問には答えないで、母は一人リビングへ入って行き、男の前で正座をして、三つ指をついて頭を下げた。男は不気味な笑みをして、貪婪なまなざしで母の全身をねとりと舐めまわした。
「ただいま戻りました、岩淵様」
母のそんな姿に、頭が真っ白になる。
「ああ、おかえり」
岩淵様と呼ばれた男は、俺を気にすることもなく答えた。
「岩淵様のおかげで、息子は退院できるまでに良くなりました。感謝の言葉もございません」
母の声は震えていた。恐怖や困惑ではない。歓喜の色だった。「それで……その……」
「素直に言いなさい」
岩淵が短くそう言うと、母は跳ねるように顔を上げた。
「ご奉仕させていただいてもよろしいでしょうか」
「ああ」
「ありがとうございます」
礼を言う間にも、母は待ちきれぬというふうに、岩淵の股間へにじり寄り、ベルトを緩めて、ファスナーをおろした。それから下着までをさげて、下半身を露出させた。
黒くて、太くて、グロテスク……ナマズみたいなペニスだった。
「お、お母さん……? 何やってるんだよ……」
俺の声など届かないふうに、母は岩淵のでろりと垂れたモノに顔を近付けて、こちらにもわかるくらいはっきりと、においを嗅いだ。そしてうっとりと目を細め、ぽっと顔を上気させて、熱っぽく岩淵を見上げた。
母の白く繊細な指が、岩淵のペニスをそっと握って、ゆkっくりしごきはじめる。
「お母さん! ねえって!」
こちらを一瞬、流し目に見てから、母はしごく手を止めないまま立ち上がり、岩淵によりかかるようにして顔を近付けた。そして、こちらに見せつけるように、岩淵にキスをする。
それも触れて離れるだけではない。幾度かつつくように唇を重ねると、半開きにした割れ目から舌をちょろりとのぞかせて、岩淵の口にむしゃぶりついた。
ぴちゃ……ぺちゃ……と、くぐもった水音が部屋に広がり、
「あー……ん、むぁ……」
聞いたこともないような、母の甘ったるい声の混じった吐息が、俺の性を刺激する。それがまるで、母と岩淵が溶け合うみたいに思えて、たまらなく悔しい。
頭も心も事態が呑み込めなくて、ぐちゃぐちゃになった感情が目に浮かぶ。気持ち悪いのに、受け入れがたいのに、信じたくないのに……俺の目はその淫靡な光景から目をそらせなかった。
岩淵が母の尻を叩くと、母は名残惜しそうにゆっくりと唇を離した。二人の口の周りは唾液でテカテカになっている。
母はまた岩淵の股ぐらに顔を近付けた。
「やめて……お母さん……」
嫌な予感がした。俺が病院で何度もした妄想が頭をよぎる。
予感通りに、たっぷりと血を集めて膨れ上がった岩淵のペニスへ、愛しそうなキスをした。
「やめっ……!」
自分が歩けないことも忘れて立ち上がりかけて、俺はその場に転がった。母はこちらをちらりと見ただけで、キスをしたままさらに顔を押し付けるようにして、唇の隙間へ岩淵のペニスを刺しこんだ。
「んむっ、んっんっ、ぇろ……ん、むぁ……」
じゅぽじゅぽと音をさせて、母は岩淵のペニスを咥えたまま頭を前後に動かした。壊れてしまったのかと思うほど激しく、一心不乱だった。そうかと思えば口から出して、唾液に濡れた岩淵のペニスに舌をベロォと這わせ、舌先でちろちろと亀頭を舐める。また深くまで咥え「じゅる、じゅるる」と音をさせながら、ペニスを出し入れする。
口から溢れた唾液が顎を伝い、ぽたりと床に落ちた。
時々、息継ぎのような小休止を挟むたび、岩淵の反応を確かめるように熱っぽい上目遣いをする。
岩淵が気まぐれに母の頭を撫でると母は、
「んふぅ……」
と、ペニスを咥えたままに笑みを浮かべた。生まれた隙間から、また唾液がこぼれる。
とつぜん岩淵が母の髪を掴んで動きを止めさせた。母の口からペニスを引き抜いて、自分の手で軽くしごくと、ナマズの口からビュルビュルと大量の精子が噴出した。母はそれをすべて顔面で受け止めると、紅潮した顔をポーっと岩淵に向けて、肩で息をしていた。
「……お母さん」
ようやく出した声に、母は夢見心地にこちらを向く。どことなく焦点の合わない目が俺を見る。
「こちら、岩淵先生。あなたの……いえ、私たちの恩人よ」
「お母さん? なに……なにを言ってるの……?」
「おい」
岩瀬が一言そういうと、母は「はい」と返事をし、俺の体を抱き起した。母の綺麗な黒髪に、べっとりとした精液がたれている。
「ねえ……宏樹ぃ……」
妖しい声音で、母が囁いた。「どうしてあなた……ちんぽ勃起させてるの……?」
「……え?」
言われて、自分のズボンが張っていることに気付く。窮屈を感じるほどだった。
俺の体を壁に預けた母は、抵抗する間もなく、そのペニスを引き出すと、焦らすような弱さで触れた。さす……さす……と、弱い刺激の場所が動く。
「あっ……あっ……」
母の手の動きに合わせて声がもれ、ピク、ピクとペニスが跳ねる。
「お母さんが岩淵様にご奉仕するのを見て、興奮しちゃった?」
「いや、これは……!」
言い繕おうにも、言葉が出てこない。かわりにぽろぽろと涙があふれた。
どうして? なんでだよ。お父さんは? この人は、誰?
そんな俺の姿を母は、すうと温度の下がった冷たい顔で見ていた。
「正直に言えないなんて、いけない子ね……」
「どうやら混乱しているらしい。おまじないをしてやりなさい」
いつの間にか、岩淵がそこに立っていた。
「はい。でも……」
「口を開けなさい」
「はい。あー……」
かぱっと開いた母の口に、岩淵は半勃ちになったペニスを向けて、黄色い小便を出した。母は驚いて目を見開いたが、それを溢すことなく飲んでいく。岩淵は出し終えたペニスを母の髪で拭った。母はされるがままで、小便を飲み干したことを見せつけるように、岩淵に口を開いて見せた。
それから母は俺に向き直り、
「おまじない」
と、ためらいなく唇を重ねた。にゅるりと母の舌が、俺の口内へ侵入し、うねうねと這い回った。
岩淵の小便の飲んだ口で……もしかしてこれまでも……。
胃液がこみあげる。母はそれを察したのか、さっと身をかわした。吐瀉物が床に広がった。ツンと嫌な臭いがする。そんな俺を気遣うふうもなく、母は嬉しそうに笑った。
「あなたの中の悪魔が、苦しんでいるのよ。お母さんも最初は、そうだたったのよ」
「なに……何を言っているの……」
涙目になりながら母を見る。母は心底嬉しそうな、狂った笑みを浮かべていた。
「まだわからんか」
と、岩淵が母の髪を鷲掴みにして言った。「脱ぎなさい」
「はい」
母は抵抗も抗議もせずに、身にまとっていた衣服を脱ぎ捨てていく。
白いシャツとズボンを脱げば、肌の透けた赤い下着。ためらいもなくそれも脱いで、母は裸体を晒した。
こんもりと茂る陰毛が生々しい。そしてそこから漂う、強い母の香り。俺の吐いたゲロと、岩淵の出した液体の臭いにまじって、とてもいやらしく感じた。
母を求めるように、俺のペニスがぴくぴくと動き続けている。
岩淵は立ったままの母を後ろから抱くと、言葉も遠慮もなく母の胸をぐにゅりと握り、反対の手の指先を割れ目に挿し込んだ。クチュ……と湿った音。
「ふむ……濡れているな」
呟いて岩淵は、母の美しい肌に、まるでマーキングをする野生動物みたいにペニスを擦り付ける。その動きに合わせて母は「ん……ああ……」と、たまらないという感じの声を漏らした。
「お前の口から説明してやりなさい。言って聞かせられたら、ご褒美をやろう」
そう言うと岩淵は、母の体を俺の方へ向けてから、ぬぷ……ぬぷ……と焦らすように、母の中にペニスを入れていく。
「んんっ……! あ、そんなぁ……このままなんてぇ……」
「話せ」
岩淵が命令を下し、パン! と、乾いた音が響いた。
「ああッ!」
母が悲鳴を上げたかと思うと、脚の力が抜けたみたいに、ふらふらとするのを、岩淵ががっしりと腰を持って崩れるのを許さない。
ぐったりと落ちた母の上体を、岩淵が無理やりに起こして、母の顔を俺に向ける。
半開きになった口から、切ない喘ぎがもれている。鼻息をあらくして、自ら腰を振ろうとする母を、岩淵はぐっと押しとどめる。
生殺しにされた母は諦めたように話し始めた。
「あのね――」