1話 首がないの巻
月曜午前6時
朝の目覚めの前にいつものうるさい目覚まし時計が悲鳴を上げるその瞬間に、まる子は覚醒した。
どうやらいつもの音で、つまり姉の目覚まし時計である。
まる子はこの音が大嫌いであり、夢の世界が一瞬にして消え去る絶望感で目を覚ました。
「お姉ちゃんそれうるさい」
まる子はそういうとむくっと起きると布団の上に座る。
「あらそういつものことじゃない?」
姉はそのように言うと布団を片付け始めた。
姉妹の一日の始まりである。
顔を洗い歯磨きを済ませるが、まだ眠いまる子はダラダラしていた。
「ちょっと!さっさとしなさい!遅刻するわよ!」
まる子の母親はそう言いながら朝食の支度をしている。
「二人とも朝飯をさっさと食べちゃいなさい!」
いつもの母親であるが、まる子にはその母親のありがたみというものを理解できないお年頃である。
「わかったようるさいなぁ」
そういうと食事を済ませて学校へ行くまる子だが、彼女は自分の通う小学校で陰惨な連続殺人事件が起こることをまだ想像することすら困難なほど日常にどっぷりとつかっていたのである。
学校正門前
本日は晴れていた。まる子はたまちゃんと一緒に学校へ到着した。
「どうやら今日は余裕そうだねw」
まる子はそういうと穂波たまえを見る。
「ねえまるちゃん!ホームルームにはまだ時間があるけどさっさと入室しようよ」
たまちゃんはまじめな性格で五分前行動を忠実に守る逸材で、彼女と登校する日はほとんど遅刻しないまる子であった。
二人が校門を通る道の脇にずぶ濡れの少年が立っていた。
西村たかし君である。
彼はいつものようにクラスのいじめっ子たちにいじめられていた。
関口と佐々木は彼にホースで水をかけていた。
「昨日遅刻した罰だ俺たちが下してやるぜ!」
そういうと関口は彼に水をかけた。
「やめて冷たい!」
さらに佐々木は追い打ちをかける。
たかし君が背負っているランドセルに蹴りを入れたのだ!
「くらいやがれ!」
ガンッ!
孝志君は苦しそうな悲鳴を上げる。
「ぐはぁ!」
そういうと孝志君はうずくまると、口から吐瀉物をまき散らす。
「おえーっ!」
びちゃびちゃびちゃ
当たりに彼の嘔吐物が広がる。
どうやらベースは牛乳のようで、彼は苦手な牛乳を克服するために毎朝飲んでいるのである。
「うっわきったねえ俺たちが掃除してやるよ!」
そういうと関口は、ホースから出る水をさらにたかし君へと放水する。
「ちょっとあんたたちやめな!」
まる子がそいう言った瞬間に後方から1人の少年が佐々木につかみかかる。
そう山根である。
彼も牛乳が苦手でたかし君とは牛乳苦手友達なのだ。
「やめろ!こんなことをしても!君たちのためにも彼のためにもよくない!いじめはやめるんだ!」
彼の勇気ある心がその行動を行わせたのである。
「うるせえ虚弱体質!」
そういうと佐々木は山根を羽交い絞めにする。関口はその山根の腹に拳を打ち込んだ。
「山根君!」
山根は腹を抱えると跪いて口を開いた。
「うぐぐっ胃腸がうううっ」
山根君が腹部を抱えてそういった瞬間チャイムが鳴る。
「やっべえ遅刻するぞ!」
傍観者たちも一斉に校舎へ向けて走り出す。
その校舎のひとつ三年生の教室の窓から永沢君はじーっと一連の様子を藤木君と眺めていた。
「なあ藤木君!きみならどうする?山根みたいに、たかし君を助けるかい?」
「いや僕には無理だよ~!」
「ふん!わかってるさ!君は卑怯者だからね・・・!」
永沢君はそういうと席に戻ろうとする。
「だがね!今回ばかりは僕も同感さ!殴られたくないからねw」
お互いは所詮見て見ぬふりの同類であることを内心で確認すると無言で席に着いた。
たかしくんと山根君は保健室へ行き一連の事件を傍観していた連中は教室へと向かった。
翌日からこの暴行事件がきっかけとなりたかし君は不登校になる。
その影響から今度は、山根君へ虐めのターゲットがシフトしてします。
数日後
関口と佐々木は、校舎裏に山根を呼び出していた。
関口は山根につかみかかる。
「おい山根!ミマツ屋で駄菓子を万引きしてきたんだろうな?出せよ!」
「万引きは!できない!両親を裏切るなんて僕にはできない」
佐々木は缶コーラの空き缶を握りつぶすと立ち上がる。
「てめぇ!ふざけてんじゃねぇ!殴られてぇのかよ!」
関口は山根に向かって指図をする。
「おい山根ジャンプしろ!」
山根は殴られるのが嫌なのでおとなしくジャンプをすることにした。
チャリンチャリン
小銭の音があたりに響きわたる。
「やっぱりなカネ持ってるじゃねーか!早く出せよ!もっと殴られたいのか!」
そういうと山根から財布を取り上げ中を確認する。
関口が取り上げたのは200円に小銭が少し入っているだけのがまぐち財布である。
「お金借りておくぜ!佐々木山分けだ!」
そういうと関口は山根の財布から百円を佐々木に投げる。
佐々木はそれをキャッチすると財布の中へしまうと歩き始めた。
「じゃあ俺はミマツ屋に行くぜあばよ!」
関口も百円玉を取り出すと山根に財布を渡す。
「じゃあな次はもっと入れて来いよ!そうしないともっとひどい目にあうぞ」
関口はそう言葉を吐き捨てるとその場を後にした。
山根は地べたに座り込むと泣き崩れた。
一週間後
まる子とたまえらは、教室でホームルームが始まるのを待っている。
「ねえたまちゃん今日は山根が来ていないねそろそろ学芸会があるっていうのに」
「そうだねこんな調子で大丈夫かなー」
そうこうするうちに戸川先生が教室へ入ってきた。
「今日は皆さんに悲しいお知らせがあります」
そういうと手に持っている花束を花瓶に入れると山根の席へ置いた。
戸川はそのあと教壇へ戻り話の続きをする。
「皆さんのクラスメイトの山根強君が、昨晩に病院に緊急搬送されそのままお亡くなりになりました」
戸川先生が説明を言い終わると出席を取り始める。
関口と佐々木は下を向いている。
まる子はそれを見ながらもしかして山根の死と彼らには関係があるのではないかと疑っていた。
「皆さん学校がおわったら山根君におわかれをしにいきますので、出席したい人は学級員の丸尾君に連絡してください。詳しい事情は午後になりますが一応予定を立てましょう」
先生はそういうと丸尾に名簿を渡す。それを受け取った丸尾はすぐに反応したように答える。
「ずばりみんなで行くべきでしょう!」
なぜか彼はそこではりきっていたのである。
その日の授業には重苦しい雰囲気が流れその場に似つかわしくない白い花が山根の使っていた机に置かれている。
「ねえねえたまちゃん今日のクラスの雰囲気暗くない?」
「確かに暗いよね学芸会の準備もしないといけないのに大丈夫かなー」
授業が終わるとまる子たちに花輪君が話しかけてきた。
「ハァイーベイビー君たちは山根君の家に行くのかい?」
たまえが答える。
「うんそのつもりだけど!花輪君は?」
花輪君は残念そうな顔で答える。
「すまない午後から家庭教師との予定が入っていてねw」
花輪はそういうと髪をかき上げる。
「あとでヒデ爺と山根邸へ伺うつもりだよまあ邪魔にならないように気をつけたまえ」
花輪はそういうとその場を後にした。
「何しに来たんだろう?」
そのたまちゃんの質問にまる子は即答する。
「さぁ?」
一瞬の沈黙を破るように、ピンク色の物体がまる子につかみかかる。
その人物はみぎわ花子である。彼女は興奮した顔でまる子をにらみつける。
「さくらさん!あなたたち!花輪君と親しげに話していたでしょう!」
まる子はめんどくさそうに対応する。
「ああそれは、山根の家に行くかどうかを話していたんだよ!ねえたまちゃん?」
「そっそうだよそれだけしか話してないよね?私たちはw」
たまえもめんどくさそうにみぎわに弁解する。
「まあいいわ!信じてあげる!それよりも花輪君は山根の家に行くの?行かないの?」
「ああそれはあのー」
まる子はとっさにこたえる。
「ヒデ爺と行くらしいよ」
それを聞くと、みぎわ花子は役に立たないものを見下すような目つきで去っていった。
「花輪くーん!」
その後ろ姿を見送りながら、まったくもって迷惑な人物であると二人は心の底から実感していた。
授業終了
すべての授業が終わると先生が困ったような顔をしている。
「先生なにかあったんですか?」
穂波たまえが先生に問いかける。
「ええそうです」
「みなさん申し訳ありませんが山根君の家に行くという話は中止になりました」
一同は動揺する。
「えーっ!!!」
「先方の事情で訪問は中止になりました」
そういうと帰りのホームルームを始める。
まる子は不思議に思うと学校帰りに事情に詳しそうな人物のところに行くことにした。
ミマツ屋
まる子はミマツ屋で駄菓子を購入しながら店主にさりげなく山根の死因について質問することにした。このミマツ屋は駄菓子や日用雑貨などを販売する個人商店であるが、その裏の顔は情報屋である。
「おじさん!」
「なんだいまるちゃん!」
ミマツ屋のおやじはまる子に反応すると商売人の顔つきになった。
「山根ってしってる?」
「あああの少年か残念なことになったよね」
「おじさん詳しいこと知ってるの何か教えてよ!」
「ただじゃ教えられねえなw」
「うぐぐ」
まる子は奥歯を食いしばると財布から百円を取り出すとうまい棒を10本購入した。
「まいどあり!それじゃあサービスしちゃおうかねえ」
そういうとミマツ屋は、小声で話し始める。
「どうやら山根君自殺らしいねぇ」
「えええどうして?」
「詳しいことは知らんが父親に虐待されてたとかいろいろうわさがあってねw」
「でどうやって亡くなったの?」
まる子はミマツ屋のおやじに核心を突く質問をする。
「何か買ってくれたら教えてもいいよ」
勘違いしてもらっては困るが、このミマツ屋のおやじは子供から小銭を巻き上げるために商売をしているのではない。
「わかった!」
そういうとまる子は五十円を取り出すとさらにうまい棒を注文した。
その光景にミマツ屋もにやにやしながらうまい棒を袋に詰める。
「わかったまるちゃんには特別に話してあげるよ!じつは山根君は電車に飛び込み自殺したらしいんだ」
「えええ!」
「しーっ!」
ミマツ屋は人差し指を立てる。
「声が大きい!それでさまだ見つかってないんだってさ」
まる子は質問をする。
「見つかってないって何が?」
「首だよくーび!首がないんだよ!」
それを聞くとまる子は震えあがった。
それを払拭しようとミマツ屋は奥の部屋から塩を取り出すと店先に撒き始めた。
「さあ今日はもう店じまいだよ!!仏滅だしまるちゃんはもう帰りなさい!」
「はーい」
返事をするとまる子はうまい棒をランドセルに詰めるとミマツ屋を後にした。
この店で入手したのは、うまい棒と山根の死因と伏せられていることであった。
「先生は知っていたからあんなに困った顔していたのか!」
そういうとまる子は自宅へ歩をすすめた。
!今回のいじめから彼女らの学校で謎の怪死事件が起こる。
今後の展開にご期待ください。