決意の内心
その少女は焦っていた。その原因は、今回の儀式で花子さんが本当に召喚されたと思い込んでいるからに他ならない。すでに死んでしまった望月の時点で花子さんが出現するのは計算違いであった。おそらく花子さんは儀式を行った人物をターゲットにしているに違いない。
「はやく生贄を捧げないと・・・」
彼女はそうつぶやくと、自室から出ると朝食を軽く済ませ学校へ登校する。お気に入りのチャコールブラウンのランドセルの中には、自宅から持ち出したカッターナイフを入れていることについて、彼女は誰にも話していない。もちろんそのナイフの使い道は、護身用などではなく生贄を屠殺するための道具に過ぎないのである。
「とりあえず自分の身代わりを探さないと・・・」
どうしても本日中に探さないといけない焦りを胸に、その小さな体には不釣り合いな精神的な重みを彼女は感じていた。
学園パート
技術棟にまる子のクラスはある。一応ほぼ全員が出席している状況だが、まばらに欠席者が目立っている。
「最近欠席者がおおいよね」
たまえはまる子にその話をぼそりと語りかける。
「そうだよね最近事件が多いからね」
まる子はそう言いながらノートに何か文字を書いている。
「ねぇまるちゃん何やってるの?」
「ああこれ?今年に入って事件や事故に巻き込まれた生徒をメモしてんの」
そう言いながらまる子は、メモを書きながらたまえと話す。
まる子のメモの内容
山根強→首と胴体が切断される不審死事件で首が見つかってない☆
内田恵子→こっくりさんの途中に机の角に頭をぶつける。入院中
石原やすこ→前田さんに刺され現在入院中
佐々木洋子→前田から逃げる途中階段を踏み外して全身打撲によるショック死
前田ひろ美→こっくりさんにとりつかれて錯乱精神病院に通院中だが最近復学
吉田吉男→山根の父に襲われ廃人化
佐々木智行→山根の父に殺害される急性薬物中毒による呼吸不全
関口しんじ→西村たかしに殺害される
西村たかし→事件を起こしたが身寄りがなく児童福祉施設へ入所
小川まちこ→行方不明
野村ゆう子→毛留男に姦淫されさる
望月よし子→花子さんに殺害された?☆
長山治→毛留男に投げ飛ばされて腕が折れる←いまここ
まる子はたまえにメモを見せると指をさす。
「たまちゃんいまここだよ!最近事件が多すぎるおかしいとあたしゃー思うんだよ!」
「どれもひどい事件事故だったね特に毛留男の件は許せないよ」
「ほんとだよねソれにしてもおかしいのが山根と望月さんの事件だよ」
まる子は、その星マークが書かれた被害者を指さす。
「この二つの事件はまだ解決してないんだよ」
まる子はそう言うとノート編集をおわった。
キーンコーンカーンコーン♪
担任の戸川が教室に入ってくるといつものように一同は朝礼をする。
「おはようございます!」
「はい、皆さんおはようございます」
戸川はそう言うと出席簿を取り出す。そういつものように彼は、出席を取るのだ。その日常は何気なく過ぎていくが、まる子は技術棟校舎から見えるともえ川を見ながらあくびをする。
「穂波、花輪、丸尾、浜崎、富田、永沢、藤木、野口、みぎわ、山田笑太、大野、杉山、小杉、長山。土橋、冬田、城ケ崎、笹山、前田、山田佳代子、長谷川、石橋、南野、河堀、美和、川上、小長谷、野村、横田、牧村、青木、高宮。上杉、野村、西村さち子、山田のぞみ、遠藤、小川、加藤、小島、さとう、山田よし子、荒井、加藤、土田」
クラスメイトの名前を読み上げるが、いつもより出席者が少ないようである。
「こんな日常が続けばいいのに・・・」
「さくらまる子」
「あーい」
「元気がないですねそれでは午前の授業をはじめます」
戸川は、そう言いながら道徳の教科書を取り出し内容を読み上げ始めた。
後半へつづく
お昼休みも終わり、穏やかな秋晴れが広がる校庭で午後の授業も終わり下校の時刻になっていた。何気ない日常に思われたが一つ変わったことが起こる。戸川は、帰りのホームルームで皆に語り掛ける。
「みなさーん突然ですが山田よし子さんを見ませんでしたか?」
「いいえ」
「おれたちは見てないぜなぁ」
「そうだブゥよし子がどうしたんだブゥ」
ブー太郎は先生に向かい手を挙げて質問する。
「はーいだブゥ朝の会には出席してたブー」
ブー太郎はけたたましくブーブーとしゃべり始めるが、一同はそれを軽くスルーし続けている。
「それがですね体育の授業の後行方がわからなくなっているんですよ」
「知っている人がいましたら先生は職員室にいますので教えてくださいね」
そう言うと戸川は教室を出ていった。
クラスメイトはざわついている。
「どうしたんだろう」
「山田って何人かいるからね」
「ねえ山田さんは知ってることない?」
隣の席にいるとし子ちゃんが俯いて震えている山田のぞみに声をかける。
「しらない私は関係ない」
その言葉を聞いて後ろの席の遠藤が立ち上がり叫ぶ。
「関係ない訳ないでしょあの儀式をしたから花子さんに連れていかれたのよぉ!」
遠藤は、メガネを曇らせながら勢いよく山田に向かって怒鳴った。
それを聞くと山田が反応する。
「ああもうじゃあなんで私じゃなくてよし子さんがいなくなるわけ?」
「それは・・・まちがえたとか」
それを聞くと男子共が面白がって駆け付ける。
「おおどうしたんだ?」
「喧嘩かブゥ?」
はまじとブー太郎である。彼らとほか数名が、山田と遠藤をなだめ始める。そこへまる子が割って入る。
「ねえ喧嘩はやめなよ!それより野口さんなら何か知ってるかもねえ?」
まる子がそう言って野口の方を振り向くが野口はすでに立ち上がって例の破れた切り橋を見せる。
「もしこれの通りなら山田よし子は生贄になってる」
「それヤバいじゃん手分けして探そうよ」
たまえがそう言うと一同は手を挙げる。
「賛成!」
「ブゥ!」
「ズバリ!手分けして校内を探すべきでしょう!」
一同はそう言うと同時に校内放送が流れる。
「ゴボゴボボ」
「なんか水の音がしない?」
藤木がそう言うとスピーカーを指さす。
「なんだろこれ」
ピーンポン!急に校内放送が切り替わる。
「えー校内放送のテープがすり替えられていましたのでご連絡します」
大石先生の声である。
ほか数名の放送部員の生徒のざわつき声も同時に聞こえる。
その時であった。
「きゃあぁああああ何あれ?」
放送部員の女子生徒がそう叫ぶ。
「プールだプール急げ!」
放送室は四階にあるのだがその部屋の窓からは校庭が一望できプールもよく見える構造になっている。
男子生徒の声も聞こえる。
「なんだろいまの?」
たまえがそう言うと一同は首をかしげる。
「とにかくプールに行ってみようよ!」
まる子がそう言うと数名のクラスメイトは足早にプールへと向かい始める。
プール前
プール前には教頭、戸川ほか数名の教師が出入り口をふさいでいる。
「先生何があったんですか?」
たまえがそう言うと先生らは、困ったような顔をして答える。
「プールに生徒が浮いていて鴨志田先生が助け出したところです」
戸川がそう言った後に鴨志田がプールから出てくる。
「どうでしたか?」
「生徒の具合は?」
鴨志田は無念そうに首を横に振る。
どうやらすでに手遅れの状態だったらしく、すぐに警察が駆け付けるとプールはブルーシートで覆われた。
まる子のクラスメイトの丸尾は死んだのはよし子なのかと鴨志田に質問する。
「ズバリ死んでいたのはよし子さんでしょう?」
鴨志田は首を縦に振るがそれ以上答えたくないらしい珍しく彼の顔は青ざめていた。
警察の捜査と考察
警察官たちが駆け付けプールがくまなく調べられる。
「喪黒警部この学校やっぱりヤバくないですか?警部が独自捜査してる奴と関係があるんじゃないですか?」
宇佐美はそう言いながら缶コーヒーを飲んでいる。
「宇佐ちゃんもやっぱりそう思いますか?この学校を中心に不可解な事件が頻発してるんですよ恐らく裏写真部はこの河川流域を中心に活動してると私は推測してるんですがね」
そう言うと喪黒は写真を宇佐美に見せる。
「これ首をヒモで絞めてる写真じゃないですかどうしたんです?」
写真には被害者が複数の男に首を絞められている所を撮影された写真である。
車の中で夕日の光にかすかに照らされたその写真を喪黒はすぐに懐にしまうと答える。
「実はねこれを撮影したの裏写真部なんですよ」
「マジっすか?もしかしてこのまえの」
「ええ以前逮捕した金田に意図して教えた西村さんが絞殺された事件あるでしょう?アレの写真なんですがね犯人から送られてきたんですよ!もう誰も住んでない西村さん親子のアパートにね!」
「そうだったんですかあの事件遺書もあったんだけど筆跡が違うという事で事件として極秘捜査してますよね」
宇佐美はそう言うと警察手帳にメモを取り始める。
「宇佐ちゃん今回の事件の被害者の山田よし子さんの死因わかります?」
「首を切られたことによる失血死ですね」
「そうなんですが!害物はまずプールにつき落されて意識不明になったところで首を切られたんではないかと私は考えてますいずれ鑑識の調べで分かると思いますがなんでそんな回りくどい殺し方したんでしょうか?」
「この前の絞殺してわざわざトイレで血抜きしてた事件と同じで変質者による犯行なんじゃないですかね?」
「そう思いますか?私はこの前の事件と今回の事件犯人は別だと推測してるんですよそれこそ花子さんなんてものが本当にいるなら話は別ですがw」
そう言うと喪黒はタバコに火をつける。宇佐美は覆面パトカーにエンジンをかけると警察署に向けて車運転し始めた。
誤字脱字がありましたので編集しました。
誤字脱字を発見次第編集します。