4
イッた後もしばらくの間抜かずにセックスの余韻に浸っていた。
優しくフランちゃんを撫でる。体格差があるのだから、いくら吸血鬼といっても相当負荷があったはずなのだ。労ってやらないと。
そんなフランちゃんは自分のへその下あたりを優しく撫でている。
「おにいさまのが、ここに入ってるんだよね」
あまりにも愛おしそうにそんなことを言うので私の方もなんとも言えない気持ちになって、
「……ありがとう」
なんて、ちょっと変な受け答えになってしまう。
とうとうやることをやってしまったのか。なんとも甘美なひとときで濃密で濃厚で官能的で、気持ちよかったし、何よりも、今のフランちゃんがより愛おしくなってしまった。可愛いとか好きとかいう軽いというか、若い好意から愛情のようなものに昇華されたように思う。そんな偉いことを言っても仕方がないが。
さて、後片付けしないと。
「抜くよ」
「うん」
自分の身体からフランちゃんを引き剥がす。赤い恥部から白濁したものがはみ出す。本当に膣内に出したんだ。吸血鬼の体構造がどうなのか知らないし、それでもフランちゃんの身体は未成熟だけど、子供のできる行為をしたんだ。
「拭いてあげる」
部屋にあったティッシュペーパーで優しく溢れた汁をとってあげる。
お返しにフランちゃんも私の陰茎を拭いてくれる。
それから特に汚れたところをウェットティッシュ(都合よく部屋にあった)で取り敢えず拭いて、お互いに惜しがりながら服を着た。
「お風呂に入らないと」
あと言うならシーツも取り替えて、匂いは換気するしかないかな。
「一緒に入ろ」
私にはこの申し出を断る理由はない。
「身体とか洗いっこしましょ」
「そうだね。たくさん汗もかいただろうし」
二人並んでお風呂場へ。替えの洋服も用意しておく。
また互いに全裸になったわけだが、単純に綺麗だなあという思いだけでまったく欲情の気持ちは湧いてこないのだった。賢者モードというやつか。なので、二人で同じ湯船に入って身体を洗いあったりしても、二回戦が始まるようなことはなかった。
憧れの金髪少女の髪をシャンプーする状況である。紅魔館の広い浴場も相まってよりそれっぽい。
「それにしても、綺麗だよフランちゃんは」
「ありがと」
「綺麗な金髪だ」
「お兄様もさっきは可愛かったわよ」
「う」
沈黙。思い返すと変に恥ずかしくなってきた。
フランちゃんもそれは同じだったようで、いや単にお風呂で身体が温まったからかもしれないが、ほんのり頬を赤くして黙り込むのだった。
これが私達の間では珍しいことに最低限の会話しかしないでお風呂を出たのだった。
5
二人で密着して一つのベッドの中に入り一つの掛け布団を共有している。
「さ、一緒に寝ましょう」
「レミリアにバレないかな」
「何を今さら言っているのよ」
「それもそうか」
一緒に寝るには狭いベッドだけどその密着感がいいな。腕にフランちゃんの頭を乗っけて、ゆったりとした時間が流れていく。激しい行為の後の落ち着いた時間。
「フランちゃんは、いつごろからあんな事をしていたの?」
「なっ、何のことかしら?」
「だって、私の部屋でオナニーしてたんじゃないの」
フランちゃんは一瞬沈黙するもすぐに認めて、
「ねえ、私のことどう思った? 変態だとか思った?」
思うわけがないし、もし変態でもそれほど気にはしないよ。ちょっと意外な気はする、体はまだ未成長なのに。
「全然、そんなに好きなんだなあって、言ってくれても良かったのに」
「言えるわけないじゃない。お兄様の気持ちも大事だし、それに、こういうのは男の人の方から誘うものでしょ」
「でも結局、フランちゃんの方から来たよね。あんなに積極的になって……」
「お兄様が鈍感だからだもん!」
顔を赤くして頬が膨れている。
「フランちゃんのこと出来るだけ汚したくなくって」
「もう、やっぱりお兄様ってマゾだったのね」
「別にマゾってわけじゃ……ただ純粋にフランちゃんのことが大事だから……」
それは誤解だ。完全に誤解なんだ。本当にフランちゃんにそういうことをするのが後ろめたいからであって──。
「必死に弁解しないでもいいわよ。私の趣味とも合ってるもの。お兄様のあの顔、たまらないわねー」
「えっ、どんな顔をしてたの?」
「言っていいのかしら、恥ずかしくなるのはお兄様の方よ」
なんというか、攻めに回ると途端に生き生きとして来たなあ。そんなフランちゃんも好きな私はやっぱりマゾなのかな? いいや、そんな分けないよな。
「分かった、言わなくていい」
「えっとねえ、お兄様は……」
「そっそんなことより、さ」
「何よ、お兄様」
「フランちゃん、苦しいとか痛いとかなかった? 結構キツかったからさ」
「あら、心配してくれるのね。大丈夫よ。何もなってないわ」
「それは良かった」
「お兄様は、とっても気持ちよさそうだったけどね。そんなによかったの?」
「だって、フランちゃんがあんなにするなんて」
「悦んでもらえてよかったわ。でも、次はもっと私のことも良くしてね」
「頑張る」
「頑張って」
フランちゃんの声がだんだんと小さくなっていく。
「フランちゃん眠いの?」
「うん、そろそろ眠るわ」
「そう」
「お兄様にくっついてると安心するから。んん」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
すぐに寝息が聞こえてくる。フランちゃんは寝付きがいいなあ。
愛する人の隣で安らかな眠りの世界へ、落ちた。
6
私は今度こそ頼んだ本が到着していることを祈って図書館の新刊コーナーに向かった。
新入荷の本棚の前に到着して私の望みの本があるかどうか端から順に見ていく。しかし、本棚を二周三周ほど検分してもその本は見当たらなかった。
「あれ? 確かに頼んでおいたはずなんだけどなあ」
後ろに黒い影が忍び寄る。
「お探しのブツは、これでしょうか」
ここまでは予想通り。
突如として視界に入り込んだのは、家族計画とタイトルされた……。
「ってなんですかこれは」
「知らないんですか。これは家族計画の本です」
「見たら分かります」
「必要なんじゃないんですか?」
このやろう。全部知ってやがるのか。いやまて、そもそも事の発端と言うかきっかけにはこいつが絡んでたような。
「もしかして、フランちゃんに何か吹き込んだんですか」
「違いますよお。私はただの恋のキューピッドですっ」
「あんたは悪魔でしょうが!」
うぜえ、変に得意げというかキャピキャピなんていう擬音が聞こえてきそうなあたりが特に……。
「で、この本どうします?」
どうせ、ここで受け取らなくたって部屋に置いてあるんだろう。
「では受け取っておきます」
「はい、どうぞ」
はあ。これもフランちゃんに見つかったらどうなることやら。
まあでも、いつかきっとそういう日が来るんだろうなあ。いくら吸血鬼の寿命が永くても、時間の流れが遅くても、フランちゃんとの関係が今のまま永遠に続くことなんてなくて、今の関係のままというわけにはいかないのだ。私がどれだけ良くても、フランちゃんが、ときには私すらも関係を深くしたりもっと色々なことをしたいと思うのだろう。
だからって、小悪魔にそそのかされて急ぐ必要もどこにもないと思うのだけれど、まあだから、男女の仲っていうのは突き詰めればそういう行為にも到達するわけで、それについて何も消極的になることはなかったのだ。
これからも、たくさんの事を経験して共有しながらフランちゃんとの関係を楽しんでいこうと、心からそう思うのだった。