※この作品はR-18です。

恋姫転生   作:kuzuaki

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黄巾討伐に向けて

 朝廷から将軍位を拝命したは良いものの、それからやることは山積みだった。

 

 まず近隣の諸侯に使者を遣わして軍を出させなくてはならないし、それもただ機械的に用件を伝えれば良いと言うものじゃない。そいつらと俺達は仲良しというわけじゃなく、むしろ敵対的な関係である相手が多い中で朝廷からの命を含めてこちらに従わせ、過不足なく軍を出させるための交渉をしなければならないのだ。当然使者には相応の実力や立場が求められる。

 

 そして同時に自分達の軍も進めておかなくてはならない。

 総大将として上に立つ以上、兵数を一番出すのは当然のことながら真っ先に現地に布陣し戦の様相を整え諸侯の援軍を迎え入れると言う形を見せなければならない。

 相手の出方によってはこちらが単独のまま本格的な戦いに突入するかもしれないのだから、こちらも当然実力のある将官を置いておく必要がある。

 

 更にこうして連合軍のようにまとまる必要があるのは諸侯それぞれの兵だけでは黄巾の主力を相手取れないからだ。そして相手は単なる置物ではなく、こちらが連合するのを黙って見ている理由もない。

 

 だからこそ自分たちがまっさきに布陣して相手の動きを牽制しなければならないし、どういう行軍ルートを通りどこに陣を張り、そして諸侯の軍にどこを通って貰いどの様に合流するのか。

 諸侯がどれだけの軍を出してどこまでこちらに従うのか。またその間黄巾党はどの様に動き、それにどう対処するべきか。そう言った戦の全体予想図を描き出した上で、こちらの動きを考えなくてはならない。

 

 これには類稀な軍略の機微が求められるのだが、やはり七乃と周瑜は際立った存在感を見せた。

 特に前者は人……諸侯や黄巾党がどの様に反応し動くかと言う予想に対し深くまで切り込んだ鋭い予想を示し、後者は戦……最適な行軍路や陣の展開、敵をどう縛り味方をどう動かすべきかと言うことに余人を寄せ付けない読みを見せた。

 

 七乃も凄いが、周瑜はやはり流石だ。

 こういう議論に参加すると、やはり自分では及びもつかない知性の差を痛感させられる。

 

 

 さて全体の動きを大まかに想定したならば、次に誰をどこに使うかという事を決め無くてはならない。使者として諸侯との交渉に当たる者、うちの主軍を率い先んじて黄巾に相対する者……そして領地に残りここでの戦政を支えるものを決めるのだ。

 

 三国志なんかのマンガ等を見ているとこういう大戦の時、領地での留守番なんて無名のモブ役人にやらせておけば良いだろうなんて考えてしまうが、実際にはそういうわけにはいかない。

 いつだったかも考えたがこの時代の政務とはただのルーチンワーク的なお役所仕事ではなく、いつ緊急性の高い難事に襲われるかわからない大変なものだ……だからこそ民を顧みない領主をもつとすぐにその地が荒廃したりしてしまうのだが。

 

 史実の三国志においても、例えば曹操と呂布が戦をしている最中に蝗害が起こり両者共に深刻な食糧不足に陥ったことで停戦。更に困窮した曹操に対して袁紹から食糧援助の見返りに軍門に降りかけるところまでいくも、配下の有能な県令が独自に緊急時の為に食料を備蓄していたためそれによって難を逃れるなんてことが起きている。

 

 このように戦を主題とする読み物などではあまり描かれることがなく地味だが、本拠地の統治は戦の趨勢を左右するほどの大事で、実際にはとても疎かにできることではない。

 特に俺達の治める長江とその支流域の土地は豊かな水に恵まれ水運や漁業によって栄えているが、逆に水害も起こりやすく治水工事や氾濫への対処に手を誤ると深刻な事態に発展しうる。

 それでも平時なら民が苦しむだけで俺達貴族には関係ないと高を括ることも出来るが、戦乱の世にあって自分達の領地がそんな事態に陥れば危険極まりない為、とても前線だけに人員を全振りする事はできない。

 

 そんな中で、真っ先に決まったのが俺と蓮華の役目だ。

 子を孕み日に日に腹を膨らませる蓮華の側から俺を離さないように……などという人情人事ではなく、その結果は全くの逆。

 

「言うまでもない事ですが、今回前線の総大将は袁術殿に務めて頂きます」

「ですねぇ」

「そうね」

「えぇ」

 

 口火を切った周瑜の言葉に、皆から賛同の声が重なっていく。

 

「……俺としては城に籠もって政務に励む方が向いていると思うんだがな」

「あぁ。貴殿の将としての実力を軽く見るわけではないが、統治に置いては斬新な手法に学ばせて貰う点も多く私も個人的にはそうして欲しいが……」

「でも貴方が総大将じゃなかったら軍の名目が立たないじゃない」

「……だよな」

 

 その孫策の言葉通りで、黄巾討つべしとして将軍位を拝命したのが俺なのだからその当人が軍を率いなければ諸侯に令を発する名目が立たない。

 

「流石にどう工作しても孫策に将軍位をってのは無理だったからな……」

「当たり前でしょ。私の名前なんて地元じゃなければよほど戦に感心がある人間ぐらいにしか伝わってないんだから」

「ですね~。江東の虎等と言っても朝廷においては孫策さん達は無名も良いところですから」

「お生憎様。そんな事実を言われたって気にしないわよ。これから幾らでも漢全土に私達の名を轟かせてやる機会があるんですからね」

「あらあら、頼もしいですねぇ理羽様」

「あぁ、孫策ならできるさ」

「……当然ね」

 

 俺としても早く彼女達には名を轟かせて貰って、こういう場合に総大将を任せられるようになって欲しい所だ。

 

「となるとやっぱり俺が行かざるを得ないか」

「急病等を理由に代理の将を立てるという事もできなくもないが、やらない方が良いだろうな」

「そうですね。人の口に中々戸は立てられませんし、つまらない嘘はつくべきではないかと」

「わかってる。やるからにはきちんとやるさ」

 

 こうして総大将役は決まってしまったがこれは既定路線なので俺にも特に動揺はない。問題は他の人員なのだが……。

 

「蓮華様は身重のお体ですので、城に残り動ける間は政務に携わって頂きたく……」

「えぇ、私だってこの体で前線に出たいなんて言い出さないわよ」

「それは勿論ですが、政務に置いてもなるべく無理はせずご自愛下さい。滞りなくお子を産んで頂く事は我々にとって何より大事ですので」

「そうね……無理はしないように気をつけるわ。私もちゃんとこの子を産んであげたいもの」

 

 そう言って柔らかな笑顔で蓮華は自分のお腹に手を添えた。

 そんな彼女の仕草に俺も勿論父性的な情を抱いたりはするのだが、同時にまだ若い彼女の腹を自分が膨らませてやったと思うと何度見ても背徳感や征服感を含む仄暗い興奮を感じてしまう。

 

 おかげでボテ腹セックスが捗る捗る。

 何しろこの世界では、妊娠中の性交について特に問題視はされていない。

 どうやら経験則的に妊娠中に激しい運動等は胎児によくないと言うことはわかっているようなのだが、同時に妊娠中の夫婦が性交を繰り返しても無事に子供が生まれた事例も当然数多くあるので、結果として身体に負担のかかるような激しいセックスをしなければOKという考えのようである。

 

 俺の知識からするとうろ覚えだが妊娠初期の自然流産率の高い時期は控えて安定期になるまでは控えたほうが良いらしかった気がするが、何しろこの時代には妊娠検査薬なんてものはないので腹がはっきりと膨らみ始めるまで妊娠は生理不順や体調不良と見分けがつかない。その為俺達も薄々妊娠の可能性を感じながらも子作りをやめるわけにはいかなかったのだ。

 

 そういう経緯もあって、俺達はそのまま今でもずるずるとセックスを続けている。

 何しろすっかり体を開発されきってしまった蓮華の方から服の袖を掴まれて「あの……今日の夜は、可愛がっては貰えませんか?」なんておねだりされたらやるしかない。

 

 妊娠中は体調や精神的な好不調も不安定なこともあって頻度こそ減ったものの、激しいプレイ厳禁なこともあって逆にするときはねっとりじっくりと言う感じで大変気持ちのいいボテ腹セックスを楽しんでいる。

 激しいプレイなら別の相手と楽しんでいるし、ハーレム万歳だった。

 

 特にこうしてお腹の中の子供を意識しだんだんと母の顔を見せ始めた彼女を、ベッドの上で女の顔にしてやることを考えると滾る……と言いたい所だが、今は他に考えなければならないことがある。

 

「そうなると……出産には立ち会えないな」

 

 俺はそういってため息をついた。

 特にこの世界の行軍は呆れるほどに遅い。それは軍の規模が大きくなるほど顕著で、今回は行き帰りだけでも相当の時間がかかることは目に見えている。

 戦そのものとて即座に終わることはないだろうし、他所が苦戦していれば転戦の必要もでてくる上に戦いが終わったとしても事後処理があり、その上宮廷に報告もしなければならないだろう事から、軍の出立から帰還するまでは短くとも半年はかかるだろうと言う予想なのだ。

 

 蓮華のお腹がはっきりと膨らみ始めてから1月という所なので、現在は妊娠5~6ヶ月あたりだろうか? 臨月とされるのは妊娠から10ヶ月なので、これから軍と共に城を出れば出産までに帰ってくることは出来ないだろう。

 流石に俺にとっても初めての子供だし、自分が孕ませた妊婦を放り出していくのもなんとなくバツが悪い気持ちだが……。

 

「そうですね……」

 

 蓮華は少しだけ寂しそうな表情を見せ、しかしすぐにこちらを力付ける様に微笑んだ。

 

「ご自分の子を目が届かないところで産まれるのは理羽殿も心許ないかも知れませんが、頼りになる乳母や産婆もいます。きちんとこの子を産んで見せますのでどうか信じてお任せください」

「……あぁ。だが無理はしないでくれよ」

「はい」

 

 自分の方がよほど不安だろうに、逆にこちらを気遣わせてしまうとは。

 まぁ俺が側にいても逆に気が休まらない事もあるだろうし、せめて羽を伸ばせる時間になればいいのだが。

 

「ごほんっ!」

 

 態とらしい咳払いが聞こえ、俺と蓮華ははっとして視線を解き俯いた。

 

「二人の間に子が出来ることは……えぇ、私達にとって大変喜ばしい事だけど、今は話を進めて良いかしら?」

「あぁ、そりゃ勿論」

「あ……ごめんなさい、姉様」

 

 不機嫌さを押し殺した様な笑顔でそう言う孫策の横で、周瑜がため息をついている。

 

「あら、折角妹さんが健気に振る舞っているというのに孫策さんってば気が短いですねぇ」

「あんたね……」

 

 七乃がからかうと眉がひくひくと痙攣する。これはまずい兆候だ。

 

「いや、俺が悪かった。孫策の言う通り話を進めよう」

「はい。理羽様がそう仰るのであれば」

「はぁ……ったく、最初からそうしてよね。それで誰をどこに用いる? 誰か意見のある者は」

 

 孫策がそう言って評定の間を睥睨すると、まずは周瑜が声をあげた。

 

「ではまず新野、汝南へと遣わせる使者についてだが―――」

 

 こうして彼女の声を皮切りに議論は活発化し、主だった人員に次々と役目を配していくことになる。

 

 

 結果としては許昌から南側一帯への主要な使者としては周泰と穏を足の早い軽騎兵の一団と共に送り、留守居役には水軍の練兵がまだ半ばな事もあり、引き続き甘寧が蓮華と共に領地に留まることになった。

 

 軍の本体は総大将が俺、実質的な司令官には七乃を置く。

 そして孫策と周瑜だが……。

 

「私達を陳留に……ねぇ?」

「あぁ、すまないな。本当なら孫策に総大将を任せるべきなんだが」

「そんなことは良いわよ。でもその陳留を治めてる刺史って私達を軍から外して遣わせる程の相手なわけ?」

「そうだな……勿論出来るだけ早く軍に戻って合流して欲しいが、それでも陳留の様子は二人の目で見て来て欲しいと思っている」

「ふむ……袁術殿がそこまで言うほどの相手か」

 

 彼女たちは俺からの要望で陳留……曹操の元へ向かって貰うことにした。

 本来であれば俺達の勢力の長である孫策をこちらの要望で使者に使うような事は避けるべきなのだが、今回は彼女達が曹操のことを一早く知る事に意味があると思った俺の意図を汲んで貰った形になった。

 

「理羽様は以前からあそこの曹操さんに注目していらっしゃいましたからねぇ」

「へぇ……袁術とその曹操は面識が?」

「いえ、直接の面識は無い筈ですよ。曹操さんは色々噂には事欠かないお人のようですけれど」

「ふぅん?」

 

 眉根を寄せて横をみる孫策に、周瑜は自らの知見を披露する。

 

「一時期都ではよく噂になっていた人物だな。切れ者だが周囲との摩擦が耐えず高官から厭われ洛陽での出世の道が閉ざされ刺史になったとの事だが……確か許子將による人物評論では治世の能臣、乱世の奸雄などと言われたらしいな」

「なるほどね……そんな人間がこれから乱世を迎えそうな世の中で、許昌包囲に加われるほど軍を蓄えているわけか。確かに気になるわね」

「興味がわいたか?」

「えぇ……貴方の言う通り、どんな人物だかこの目で確かめて来てあげる」

「頼んだ」

「任せなさい」

 

 ……果たして、孫策と周瑜から見て曹操とはいかなる人物と映るだろうか。

 年若い女性であることは確かなようだが、それだけで中身まで恋姫と同じだと断ずることはできない。

 仮に例えその人間性が根本では同じものだとしても、置かれた状況が違えば振る舞いも変わってくる。史実に近い世界観を持った割と容赦なく現実的なこの世界において曹操がいかなる人物として存在しているのか……俺はそれが気にかかっていた。

 

 許昌の黄巾を包囲するのであれば丁度いい機会だと思い、孫策と周瑜に使者としての任を頼むことにしたが、本音を言えば俺が七乃を伴って直接出向きたかった程だ。総大将の立場ではそれは無理だし、かといって七乃だけを曹操の所に送り込むのはちょっと恐ろしい。

 今にして思えば子供の時にもっと洛陽を訪ねて曹操等の人間性を確かめておくべきだっただろうか……色々やることが山積みだったのもあるが、特に孫堅のシゴキがひどかったり七乃にのぼせ上がったりしていたせいでそこまで考えが及ばなかったな。

 

「では軍本体については我々が合流するまでは袁術殿と張勳に加えて祭殿……それからその新人の軍師に任せる事になるか」

「そう言うことになるのかのう」

「随分な大軍だって言うのに冥琳なしで大丈夫? なんなら使者の任ぐらい私だけで行って来たっていいのよ」

 

 その言葉と共に孫策、周瑜、黄蓋の三人の……どころか部屋にいる皆の視線が一人の人物に降り注いだ。注目を集めたその人物は緊張に体を震わせたまま、必死に口を開く。

 

「は、はいぃ。まだまだ未熟者ですが、お役目とあれば精一杯務めさせて頂きますぅ」

 

 長い袖に包まれた両手で拱手をしながら眼鏡の奥の瞳をつぶりそう答えたのは、俺が直接見出し育てている新人軍師……と言うことになってしまった呂蒙こと亞莎であった。

 彼女は孫策達の視線の圧力で今にも顔を青ざめさせそうで、可哀想になった俺は彼女の肩を叩いてその体の震えを止めてやる。

 

「あ~……そう虐めてやらないでくれ。確かにまだ経験不足なところはあるが、軍師として既に一廉の働きは出来ると見てこの場に呼んでるんだしな」

「り、理羽様ぁ」

 

 俺がそう言うと顔を赤らめた亞莎は喜色を隠そうともせずに表情を綻ばせる。

 そんな彼女の様子を見て、孫策は逆に不機嫌そうになってしまった。

 

「あら、虐めてなんかないのに随分な言いようね。そんなに弟子が可愛いわけ?」

「いや別に呂蒙は俺の弟子ってわけじゃ……」

「わ、私などが理羽様の弟子だなどと言うのは烏滸がましい事です。理羽様には未熟な私を気遣い軍師として学ぶべき事を示して頂いているばかりでして……」

「それで閨の中でも手とり足取りってわけ」

「そ、それは……あうぅぅ」

 

 赤面して言葉を失ってしまう亞莎と、それを見て不満顔の孫策。

 本来であれば彼女の身内として可愛がって貰っていた立場である筈の彼女が、俺のせいでこうなってしまった事を不憫に思って庇ったのだが逆効果になってしまった。

 

 いや違うのだ。決してやましい考えがあったわけではないのだ。

 しばらく前の事になるが、余りにも政務や軍政が忙しくなんで張昭が居ないんだよなどと愚痴が口をついて出るように成ってしまった俺は、恋姫において呂蒙が呉軍の一兵卒から見出されて軍師になるという設定だったことを思い出してその存在を探し出し、色々と能力を確かめた挙げ句すぐに登用してしまったのだ。

 儒教的な考え方が基本とされるこの時代においては登用や推挙を受ける事は大事とされ、それを成した側と成された側は深い恩顧の関係とされる世の中なのだが、一刻も早く使える軍師を増やしたかった俺はつい直接彼女を軍師候補としてねじ込み教育を与えてしまったのだった。

 

 その上なんでもこちらの言うことを素直に聞くし、全身から尊敬してます慕っていますのオーラが出まくっている彼女の魅力にやられ、俺は割とあっさり彼女に手を出してしまったのだった。

 

 いつの間にか俺の愛人枠のような目で見られることになってしまった彼女には大変申し訳無いことをしたと思っている。

 しかし亞莎であれば実力で皆に認めて貰う日はそう遠くないだろうと、俺はそう信じている……頑張れ亞莎、負けるな亞莎。

 

 お詫びに今日の閨に呼ぶ相手は亞莎、お前に決めたっ!

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