恋姫転生 作:kuzuaki
まどろみの中、ゆっくりと意識が覚醒していく。
体に密着する柔らかな女の身体。抱き枕代わりのそれに頬を寄せ、その滑らかな感触を楽しむが……どこか違和感を感じた。
だんだんはっきりと目が覚めてくる。
腕の中にある薄紅色の長い髪と、美しい褐色の肌。感じた違和感の原因は抱きしめていた相手が七乃ではなかったからだった。
(そういえば昨日は、孫権を抱いたんだったか……)
そのことを思い出す。
今まで色々な女を抱いてきたが、いつも最後には七乃を抱きしめて眠りについていた。考えてみれば、彼女以外の女と朝を迎えるのはこれが初めてだった事に気付かされる。
なんとなくバツの悪いものを感じるが、孫権は今まで遊びで抱いた女のようにやるだけやって放り出すというわけにはいかない相手だし慣れるしか無いだろう。
そもそもこれまでの女は何度も抱きたくなるような相手もいなかっただけだしな……そんなことを考えながら、俺は横たわる孫権の身体に目をやった。
横向きに小さな寝息を立てる端正な顔立ちと、閉じた瞳を飾る綺麗な長いまつげ。呼吸に合わせて豊かな胸を上下させる胸元から、柔らかくしなやかな褐色の肌が全身に広がっている。そんな彼女が、昨夜の激しい情事を表すかのように長く美しい髪をバラバラにほつれさせ、股間から太ももにかけては血の混じった精液が乾きこびり付かせている様子は、否応なく男の劣情を煽る。
朝勃ちしていただけのちんぽに、ぐつぐつと煮え滾った性欲が充填されてゆく。昨日あれだけこの肢体を貪ったというのに、呆れたことにまったく彼女の身体に飽きた気がしない。
俺は眠る彼女をうつ伏せに倒し、その素晴らしく形のいい尻を鷲掴みにして割り開く。そしてまだ注ぎ込んだ精液が中から垂れ続けているその穴に、舌なめずりしながら自分のちんぽをあてがった。
「申し訳ありません。必ず夜にはお伺いしますから……」
「あぁ……うん。気にしないでくれ……」
そして、俺は目覚めた彼女に普通に行為を拒否されていた。
「えっと……それでは、失礼します」
「あぁ」
頭を下げて、俺の寝室から出ていく孫権。
……どうしてこうなってしまったのだろうか。
いや、理由はわかっているのだ。
この時代の人間は皆太陽を基準に生活している。日の出と共に活動を始め日没と共に眠りにつくのが基本なのだ。それは単純に電気、電灯がないことに起因している。
薪、炭、油など燃料というのはどれも貴重なものでよほど裕福でなければ無駄遣いはできない。しかもそれを用いても大して明るくない上に、火災の危険を常に伴う等の問題があるのだ。
素直に太陽に従って生活する方が、圧倒的に効率が良い。
だからこそ日照時間というのは大事なもので、今の俺のように夜遅くまで遊びふけた挙句に日が高くなってから目を覚ますというのはとても放蕩な行いだとされていた。
それでも、絶対にダメという程のことではない。
慶事や祭事があれば人は夜を通して酒を飲み祝う事もあるし、そうなれば次の日は酔いつぶれる事もある。普段の日中だって、日が出ている間は休まず働けだとか休憩はもっての外だとかいう程皆が厳しく考えているわけではなかった。
ただ、日が昇れば起きて活動を始めるという常識と、皆がもう働き始めている時間に自分だけ眠りこけていたという事実が、生真面目な彼女を焦らせたのだろう。
泣きわめくでも、怒るでも無く。俺の頬に張り手を打つ様な事も無く。
眠る彼女の性器に自分勝手に挿入した俺なんかに対しても、彼女はどこまでも真摯だ。
やることが山積みなのに、こんな風に寝過ごしてしまって皆に申し訳ない。早く身嗜みを整えて、合流して謝らなくてはいけない。その上自分の不手際で俺の相手をする時間もなくしてしまってごめんなさいとまで彼女は頭を下げたのだ。
流石の俺もこんな言動を真面目に言っている相手に、嫌だ抱かせろと迫る気にはなれ無い。
それはしょうがないのだが……孫権のマンコに気持ちよく挿入し、さぁこれから腰を振るぞ!と言う所でお預けをくらった俺のチンポはいったいどうすれば良いのだろうか。
俺が途方に暮れていると、彼女が出て行った筈の扉が叩かれて音を鳴らした。
「誰だ?」
孫権が何か言い忘れたことでもあって戻ってきたのであれば、恥を捨てて泣きついてでもヤラせて貰おうか。そんな馬鹿な事を考えながら俺は扉の向こうに声をかける。
流石に女中や兵士が相手だったら、裸で勃起全開の状態で姿を見せたくはないからな
「私です、理羽様」
「ん……七乃か、入ってくれ」
「はい。失礼いたしますね」
渡りに船とはこの事だろうか。
七乃なら絶対に抱ける……そう思うと彼女の声を聞くだけで、高ぶった俺の股間が反応して震えてしまう。扉を開けた七乃は部屋に一歩踏み込み、そして俺の周囲……ぐちゃぐちゃに乱れ、愛液と精液と、そして孫権の破瓜の血で汚れた敷布をみてにこりと笑った。
「随分と楽しまれたご様子で」
「……まぁな」
ゆうべはおたのしみでしたねってか。
しかし、この話の切り出され方はどうにもよくない。別に浮気ってわけではないのだが、孫権が抱けなかったから七乃に沈めてくれ……とは少し言い辛くなってしまった気分だ。
「健気な孫権さんを一晩中弄ばれて、さぞ理羽様も満足……と言うわけでは無いご様子で」
「あ~、いや、これはだな……」
七乃が硬くそそり立つ俺の股間に視線をやり、口元に手をやりながらにやける。
ただの朝勃ちだとでも誤魔化すか。いや、そんなことを言えばますます抱かせてくれと言い辛くなってしまう。どうするか―――
「でも、丁度良かったです」
「ん……なにがだ?」
俺の疑問に七乃は嫣然と笑ってスカートの裾を両手で摘まみ上げて答えた。
彼女の白く美しい内ももを、透明な液体が伝っていくのが見える。
腰を覆う布が静かにたくし上げられて行く。
その光景に、思わずごくりとつばを飲む。
「私のここ……もう切なくて堪らないんです。どうか七乃にも、お情けをくださいませんか?」
俺は無言で彼女を寝台の上に引きずり込んだのだ。
起きたばかりだというのに腰が抜けるほど七乃とヤってしまった。
ちょっと色に溺れすぎだろうか……いや、孫権とするのはある意味仕事でもあるからノーカンだ。役得なのは事実だが、それを除けば七乃とするのは平常運転なので問題ない。
……そんなわけがないので急いで行水して身嗜みを整える。
これから孫家一党と合同の評定があるのだから、遅れるわけにはいかない。
孫家との間に子供が生まれたら袁家の全権を譲るとしたが、まだその子供は生まれていないから……という事とは関係なく組織を移譲しようとすれば事前にやらなければ行けない事は多い。
こっちを滅ぼして更地になったところに孫家が来たってわけじゃないのだ。
南袁家の基盤をそのまま譲ろうとすればその引継ぎは中々に膨大な作業で、早々丸投げと言うわけにはいかない。これは政・軍共にそうで、孫家一党は今一刻も早くこの巨大な南袁家の組織図を掌握する為に大わらわだろう。
寝坊した孫権が慌てていたのには、そう言った背景もあっての事だった。
ちなみにこちら側の政・軍両面でのトップである為に、今最も多忙な筈の七乃だが……既に今日の評定までにやること、伝えることを全て片付けた上で彼女は俺の部屋に来たのだと言う。
二重の意味で流石だ。
七乃の優秀さが流石なのと……流石に俺ももう少し真面目に動かないとな、という意味で。
そう言うわけで、三国志好きの皆大好き評定のお時間だ。
現代日本で例えるなら幹部会議とか役員会議とでも言えばいいだろうか?
方針を俺と七乃だけで決めていると、大抵執務室か私室で話が済んでしまうのであまり活用することもなかったうちの城の評定の間だが、これからは活用されるのだろうか。
そこに、七乃を伴って到着する。
既にいるのは周瑜、陸遜、周泰か。他の人間はまだのようで、中では軍師の二人が何やら話し合っている。周泰はなんだか身の置き所がなさそうだ。
「あっ」
「あら~」
「むっ……袁術殿と張勲か。時間にはまだだが、先にこの場を使わせて貰っているぞ」
俺たちが評定の間に踏み込むと、三人がそれに気付き声を上げる。
軽い目礼と挨拶。
「気にするな。しかしそっちも早いな」
「私は丁度、穏に確認しておきたい事柄がいくつかあったのでな」
「そうなんです~。流石に袁家の皆さんは大所帯で、私たちも中々把握しきれない情報が多いですから~」
「なるほどな」
「それに、書庫の蔵書量も素晴らしくって~。私も早くそれを読みふけりたいんですけどねぇ~」
「しばらくは無理だとわかっているだろう? やることが山積みなのだからな」
「う~ん、なんとかなりませんかねぇ~?」
「はは……大変そうだな」
俺は二人の言葉に相槌を打ちながら、なんとなく小さな体に長い黒髪が特徴的な忍者っぽい娘の周泰に目をやった。
「え……な、なんですか? み、密偵衆は色々あって難しいので今出来ることが少なくてですね……わ、私は決してさぼっているわけじゃありませんよ?」
「いや、別にここにいるのにさぼりを疑ったりしてたわけじゃないが……」
彼女は焦った様子であわあわと手を振る。
そんな周泰を眺めていると、ふいに後ろから声をかけられた。
「な~に明命を虐めてんのよ」
「あっ、雪蓮様!?」
「……孫策か」
「いくら可愛いからってうちの子達にまで手を出そうとしないでくれる~?」
「そんな事はしていない……お前は俺をなんだと思っているんだ」
「美人なら手当たり次第の女好きでしょ?」
「……まぁ……なんだ」
反論の言葉がない。
俺が言葉につまっていると、孫策の後ろから更に続々と人が集まってくる。助かった、これでこの話題はおわる。
その中で甘寧を引き連れて入室した孫権がこちらに軽く一礼して来たので、こちらもそれに目礼を返しておく。その際にこちらを見る孫策の視線がなんとなく厳しい。
そして孫権の横に立つ甘寧もまた、こちらを見ている。
睨まれている……と言う程の剣幕ではないが、政略結婚の様な形で孫権を抱いた男など彼女にしてみれば面白くないだろうが、なんとか揉めることなく済ませたいものだ。
「揃ったみたいね……それじゃあ始めましょうか」
主だった人物が揃ったのを見計らうと、一同を見渡しながら孫策がそう音頭をとった。
それに皆が頷き、備え付けの卓を囲むように面々が集まる。
「それじゃ早速だけど……袁術?」
「あぁ」
俺は頷いて七乃と共に前に出る。
あまり主導的な立場には立ちたくないのだが、最初だけはしょうがない。
「まず俺達から説明させて貰うが、皆はこの盟を結ぶことになった経緯と……国全土を巻き込む乱が起こるだろうと言う予想については既に聞いているという認識で構わないだろうか?」
言葉を切り見渡す。
特に異論の声を上げるものはいなかったので、俺も了解の意を込めて頷く。
「うん。俺と張勲はこの乱をきっかけに、この国が群雄が覇を競う戦乱の時代になるという予想を立てた。その流れにどう対処していくべきか……と言うのがまず話の大枠になる」
「しかもよっぽど荒れるって予想でしょ? 私達と戦うことすら厭うぐらいだものね」
「……そうだな、そういうことだ」
孫策の言葉にそう答え、俺は一同を見回す。
「つまり最終的にどうするかはともかく短期的には、漢王朝を支えて世の乱れを正す……と言うような対処は
「それがたとえ今この国随一の名門と言われる袁家であっても、という事でしょうか?」
そう、周瑜が俺の言葉を補足するかのような問いを投げかけてくれる。
「そうだ。うちがどんなに名家と言ってもあくまでただの一門。諸侯が暴走を始めれば単独で対抗するのは不可能だからな」
「ええ……いかに力衰えたといえ、この国で最も強大な勢力といえばやはりまだ王朝そのものです。それが単独で権威の失墜を止められない状況にであれば、他の誰にも無理でしょう」
その周瑜の言葉に、おずおずと声をあげるたのは……孫権だ。
「単独でだめなら複数ではどうなのですか? 全員とは言わなくても、有力な家が協力して漢王朝を盛り立てる姿勢を見せるなどでは……」
「そうですね。蓮華様の言うように有力な諸侯が団結すればそれも不可能ではありませんが……」
周瑜が言葉を濁す。そうなることはないだろう……と言うのが彼女には感覚でわかるからだろう。だが孫権にはそれがわからない……しかしそれは無理もない話だった。
これは単なる知性や知識の問題ではなく、育ちの違いに起因したものだからだ。
孫家はかの孫氏の末裔を謳っているが、実質はほぼ孫堅が一代で起こした家のような物で名家と言うには程遠い。中央の政治にもほぼ関わりがなく、あくまで戦に異常に強いだけの豪族でしかなかった。
対して周瑜の実家である周家は、かつて尚書令から太尉までをも排出した事のある名門中の名門だ。当然両者の家では入ってくる情報も付き合う人種もまるで変わってくる。
この国の貴族層の一員である周家出身の彼女にとっては、諸侯が我欲を捨てて王朝をもり立てようとする空気がまるでないことが、肌感覚としてわかるのだろう。皇室に忠節や敬意を払う、と言う人間であればいないわけではないのだが……。
「それは難しいと言うのですね?」
「……はい」
「そう……では、やはり争いは避けがたいと言う事なのですね」
言葉を濁した周瑜の内心を察し、孫権は嘆息する。
「最初に予想される大乱ですら、うちだけで抑えることなんて出来ないからな。争いを避けるというよりも、まず生き残ることを考えなければならない状況だ」
「ええ、わかっています」
それでも、国の大きな乱れが避けられないと言うのは民政を重視し安定を好む彼女からすれば明るい未来予想図ではないのだろう。
そして姉妹でありながらも孫権とは異なった気質を持つ……闘争と勝利を愛する彼女が、にやりとした笑みを浮かべながら体を乗り出させて言葉を発した。
「それで? それだけ言うからにはもうかなり確かな情報を掴んでるんでしょ?」
「勿論……」
隣に立つ相手に目配せをする。
彼女はこちらに微笑みを返し、そして持参した竹簡や書簡を抱えながら一歩前へ踏み出した。
「それではこの大乱を巻き起こすと予想される存在……黄巾党について。この私、張勳からお話させて頂きますね」
孫家一党を前にして、七乃はそう言ってにっこりと笑ったのだった。