陸上部のアイドル -Second Stage- 作:Scorcher
次回は自棄となった未希の輪姦回です。そして3部のラストとなります。ちなみに慧とはしっかりと(ry
月曜日の朝。誰しもが迎えたくないであろう時の中、紋子は学校へと道を歩いていた。
「おはよー紋子。」
「うん、おはよう。」
道中で同級生と出会い、共に歩を進めていく。しかし、その最中も彼女は奇妙ともいえる感覚に陥っており、それは言い表すことが出来ない不安感へと繋がっていた。
「えぇぇっ!?それって今日出すんだったの?」
「そうよ……もう、何をやっているのよ。」
「お願い紋子!学校ついたらすぐに見させて!」
「はぁ……いいわよ、貸しにしておいてあげる。」
複数の同級生と他愛のない会話を続けて歩き続ける。その最中、彼女たちの一人が紋子に対して問いかけてくる。
「でも、陸上部って練習厳しそうよね。紋子は昨日オフだったんでしょ?やっぱり、家でゴロゴロしていたのかな?」
「えっ……そ、それは……!」
不意に目の前に広がる光景が夢のような世界となり、昨日の出来事が現実として頭を過っていく。下半身に広がった破瓜の痛みを思い出すと、彼女の全身は嫌悪にも等しい疼きに襲われるのであった。
「紋子もだけど、他の子もよくついていけるわよね。特にほら、3年生の人とか練習もかなりしてるみたいだし。」
「坂下先輩だっけ?すっごい運動神経が良くて、今度の全国大会に出るんでしょ?」
「う、うん……すごい人、だよ。もう、校内の有名人だからね。」
傷を抉られ、叫び狂いそうになるのを抑え込みつつ、彼女は同級生たちに言葉を返していく。身体の疼きすらも忘れ、彼女は平静を保つことに必死となっていた。
「まぁ紋子も学年だとライバルがいないから、次は全国大会とか狙えちゃうんじゃないの?」
「そんなに簡単じゃないわよ。短距離なんて他の学校ならもっと早い子もいるし、私は別に好きでやってわけじゃ……」
歩みを進めるに連れて、次第に小さく消え入りそうな声となっていく紋子。そして、校舎が近付いてきた時、彼女たちは複数の3年生と出くわす。その中には、紋子がよく知る顔もあるのだった。
「あっ……!」
「……アヤちゃん。」
互いの目が合ったものの、それ以上2人は言葉を交わすことが出来ずにいた。周囲の同級生はその様子を見たまま沈黙し、彼女たちの間に不穏な空気を醸し出す土壌が作られ始める。
「あ、あのっ……」
「おはよう、アヤちゃん。」
「……っ!お、おはようございます。」
訝しまれることを避けるためか、彼女は紋子に対して先に挨拶をしてくるのであった。それに対して紋子も返事を返すしかなくなり、何気ない会話の始まりとして挨拶を交わす。
「アヤちゃんが部以外の子といるのって、ちょっと珍しいかも。」
「なっ……わ、私だって普通に話すことくらい出来ますから……!」
「ぷっ……ふふっ、大丈夫。それくらい知ってるから。それじゃ、また部活でね。あっ……私は少し遅くなるかもって、誰かに伝えておいてね。」
悪戯っぽく笑みを浮かべて先を進む彼女、坂下未希に対して紋子は小さく頭を下げると、彼女はその背中を唖然として眺めていた。
「ねぇねぇ、あの人が坂下先輩?」
「う、うん……そう。」
「近くで見たの始めだけど、すっごいスタイル良くなかった?」
「ちょっと男子っぽい感じがするけど、そこもなんだか……!」
未希に対して羨望の眼差しを向ける同級生たちの中で、紋子は彼女の態度と言葉に対し不穏な気配を感じ取る。
「ねぇ紋子、坂下先輩って、どんな感じの人なの?」
「……普通の先輩だよ。滅多に怒ったりもしない、優しい先輩……だと思う。」
小さくなっていくその背中を見つめ、彼女は大きな嘘をつく。『嫌い』という一言では決して済まされぬ関係となった上級生に対して、紋子の揺れていた心は緩やかに一つの方向へと動き始めるのであった。
◇
そして、放課後の屋上。未希は一人、鉄柵に腕を乗せながら各部が活動を始める光景を眺めていた。
「…………」
傾き始めた太陽の西日が身体に照り付け、冷静さを保とうとする身体を熱くさせていく。待ち人が必ず来ることを確信して、彼女は微動だにすることなく真剣な表情で地上を見下ろしていた。
「………!」
背後から油の切れたドアの音が響き、一人の人影が出入り口から姿を現す。そこには彼女の恋人である飯山慧が、背を向けたままの未希の姿を見つけていた。
「結構、待ちました?」
「……ううん、そうでもないよ。」
彼の問いに言葉を返す未希。しかし、依然として顔を合わせることはなく、彼女はグラウンドを見つめながら言葉を発していた。
「ごめんね……慧くんにも部活があるのに、呼び出しちゃって。」
「俺は大丈夫ですよ。それに……俺からも未希先輩に言いたいことがありましたから。」
慧の言葉に未希は依然、背を向けたまま耳を傾ける。だが、その前を向いた顔には覚悟が示されていて、彼の話に静かに聞こうとするのであった。
「未希先輩、俺は先輩のことが好きです。誰よりも先輩のことを大切に思っている自信があります。」
慧は再び告白する。確かめるように、何度であろうと彼は未希に対してその言葉を繰り返していく。
「陸上部で活躍をしている先輩、走り高跳びをしている時の先輩が好きです。その時の真剣な顔も、俺の前で見せてくれる笑う顔も好きです。」
「………」
彼の繰り返される言葉の前に、未希は心を引き裂かれるような思いとなる。決して顔を見せること出来はしなかった。悲痛に表情を歪ませ、その言葉の数々を黙って聞くことに必死であった。
「もちろんエロい先輩も大好きです。スタイルが良くて、俺にちょっかいを出してきて、どこでもエロいことをしてくれる先輩も好きです。その……部活でもエロいことをしているのだって、別に俺は構わないと思って……いや、本当は良くないんですけど……!」
慧の手にも自然と力が入り、握り拳が作られていく。饒舌となっていく言葉に反して自らの想いを押しとどめることが出来なくなり、沈黙を続ける恋人を前に彼の本心が曝け出されていく。
「平瀬さんに先輩との関係を聞かされた時は、驚きもしましたけど、ヘンな期待があったのも本当です。あの場所で平瀬さんの想いに流されて、あの子を傷付けたのは俺の責任です。それでも俺は……俺は未希先輩のことを……!」
「分かってるよ……!」
慧の言葉を遮るように、未希はついに閉じていた口を開き始める。背を向けていた身体をおもむろに振り返すと、彼女はさらに言葉を続ける。
「そんなこと……分かってる。慧くんが私を好きなことなんて……知ってるに決まってるでしょ……!?」
「先輩……」
「嬉しかったんだよ……初めて会って、デートに誘ってくれたとき、跳んでいる私が好きだって言ってくれて……私も、慧くんのことが好きになっていたんだから……!」
未希は走り高跳びに励んでいる自らを認めてくれる彼の存在を、初めて出会ったその時から意識していた。たとえ汚れた身体になっていようと、彼女が慧を思う心は彼と同じであった。
「デートもして、エッチもして、私がエッチなことがバレて……そのあともいっぱいエッチして、いっぱいデートもして……ずーっと楽しかったよ!慧くんが恋人で私は嬉しかった!でも……!」
それでも彼女は不安になっていた。すれ違うことに恐怖を感じ、失うことへと恐れは日を追うごとに膨らんでいたのであった。
「私は……自分が怖い。私が慧くんから離れていくのが……怖いの!学校のみんなから注目されて、私じゃない自分になっていくのが……不安になってた……!」
どれほど慧と身体を重ね、言葉を交わしていても、未希は自らを取り巻く環境が変わっていき、彼が遠い存在になることを彼女は心の底から恐れていた。そしてそれは、決して和らぐことがないまま、未希の心身を今日まで蝕んでいるのであった。
「慧くんは、跳んでいる私が好きって言ってくれよね。だから私は、いっぱい頑張っちゃったの。全国大会に行けるなんて思ってなかったけど、なんだかここまで頑張れちゃった。慧くんのおかげで、私はがんばることが出来たんだよ。」
「先輩は……それで、嬉しかったんですよね?」
ようやく声を発した慧のその問いに、未希は首を横に振る。表情は暗く、顔を俯かせたまま彼女は彼に言葉を返す。
「分からないよ……私は嬉しかったし、慧くんが喜んでくれたのも嬉しかった。でも……私が欲しかったのは、こんなことじゃなかった……!」
求めた先にある結果は、望んだものではなかった。陸上選手として事を成し遂げた未希であったが、それは彼女と慧の関係を遠いものにする要因となっていた。アイドルのような遠い存在となりつつあった未希のことを、彼は立ち止まって、追いかけることをやめていたのであった。
「すいません……でも、未希先輩が楽しくて、嬉しいと思ってくれたから、俺はなにも……」
「慧くんは……優し過ぎるんだよ。私のことを大切に思ってくれるし、アヤちゃんのことだって傷付けないように考えて……ぐすっ。」
「……平瀬さんにも、同じことを言われました。」
涙を零す未希を前に、慧は自らを嘲るように言葉を口にする。2人の後輩である紋子が起こした出来事は、その関係に生じていた歪みを表に出す最後の引き金となっていた。
「ぐすっ……私が帰った後の……アヤちゃんは?」
「しばらくは怒って泣いていました。でも、しばらくしたら落ち着いてくれて……」
涙を拭いながら、未希は紋子のことを彼に聞く。その答えに若干の平静を取り戻したのか、彼女は慧の顔を真っ直ぐ見つめながら、意を決したように口を開く。
「うん……よかったよ。きょう朝会ったけど……意外と、平気そうで少し安心しちゃった。」
「そう……ですか。」
涙の跡が残る顔に笑みを浮かべ、安堵の声を漏らす未希。しかし、その言葉に相槌を打った慧に対して、彼女はさらに言葉を続けていく。
「アヤちゃんのこと、大切にしてあげてね。」
「っ……!」
「きっと私と同じでエッチな女の子になっちゃけど……慧くんのことを思う気持ちだって私と同じだと思うから。私からの……お願いだから。」
未希の言葉に憤る慧であったが、彼女に声を上げることは出来なかった。自らの不甲斐なさが彼に対して重く圧し掛かり、彼女を引き留める言葉を発することは出来ないのであった。
「これからも、陸上は頑張るよ。うん……私は、私が楽しいと思うことを頑張るから。私のことを忘れてなんて言えないけど、慧くんも……もっと好きになってくれる人と一緒にいて……ね。」
「………」
そう言葉を口にしつつ、未希は慧の傍を通り、すれ違って屋上の出入り口へ向かう。呆然と立ち尽くす彼にそれ以上の声を掛けることなく、互いに背を向けあったまま2人はこれまでの関係を断ち切るのであった。
だが、その結末を望まない者が出入り口のドアを勢いよく開け、未希の行く手を遮るように立ちふさがる。そして
「………っ!!!!!」
「…………」
未希と顔を見合わせるや否や彼女、平瀬紋子は未希の頬を右の平手で打ち抜く。渇いた破裂音が響いたことで、立ち尽くしていた慧も2人の方へ向き、その光景を目の当たりにしていた。
「アヤ……ちゃん。」
「許さない……!あんたが慧先輩と別れるなんて……私は絶対に許さないんだからっ!」
「部活は……どうしたの?」
「そんなの、今はどうだっていい……!何よ……おねがいって……ふざけないでよっ!」
「……聞いちゃってたんだ。」
紋子は2人の会話を耳にしていた。そして、盗み聞きをしたまま姿を隠すことが出来ず、屋上を後にしようとした未希の前へと現れ、彼女に怒りをぶつけているのであった。
「私に先輩を譲って、勝ったつもりでいるの?満足したつもりでいるの?自分がやりたいようにするなんて嘘を付いて、私を喜ばせようっていうの……!?」
「ち、違うよ……私はもう……慧くんとは……」
「あんたって、本当に最低……!本当は慧先輩ことも、私のこともどうでもよくて、自分さえよければいいって思ってるんでしょ!?」
「………っ!?」
紋子の放つ悪辣な罵声。とりわけ慧に関する言葉は未希の琴線に触れ、彼女はついに紋子に対して感情を露にする。
「………っっ!!!」
未希は右手を大きく上げると、その平手を振り抜いて紋子の左頬を全力で打ち抜く。頬を打たれ顔をのけ反らせた紋子はすぐに正面へと向き直り、激した表情の未希を真っ直ぐに見つめる。
「ええそうよ!私は最低な女よっ!アヤちゃんのことも慧くんことだって、どうでもいいのっ!言ったでしょ……私は、私の楽しいことのためだけに生きていくの!もう誰にも……誰にも私の邪魔なんてさせないんだから……!」
そう言葉を言い放つと未希は紋子を押し退けて、校舎内への階段を駆け下りて走り去っていく。自らの言葉を顧みてしばし茫然としていた紋子であったが、痺れる痛みが広がる左頬に手を当てると、おもむろにその光景を見ていた男の元へ近づいていく。
「だ、大丈夫?」
「はい……結構痛かったですけど、平気です。」
未希の想像以上の力の平手によって、紋子の頬にははっきりと手の跡が残っていた。
「本当に……ごめん。俺と先輩の話に、君をここまで巻き込んじゃって……」
「そんなんじゃありませんよ……私だって、自分から首を突っ込んでいたんですから。だから……私は、慧先輩にも言っておこうと思うんです。」
「俺に……言っておくこと?」
訝しんで声を上げる慧に対して、紋子は小さく頷く。そして彼女は、先程までの激しいやり取りとはうって変わり、落ち着いた様子で話を始めるのであった。