raraさん、評価及び評価コメントありがとうございました。
「それで? 佐倉さんの事はどうするの? 貴方」
「え……?」
始まりはある日、情事を終えた後シーツだけを纏った堀北が不意にそんな事を聞いて来た事だった。俺は情事の後の気怠い余韻を引きずりながらも、堀北の声に真剣な響きを感じて振り向いた。
「貴方、佐倉さんの気持ちには気付いているんでしょう? 誰か一人と付き合ってるならともかく、複数人とセックスフレンドの関係になっている今、佐倉さんの気持ちを無視し続ける理由はあるのかしら?」
「いや、そうする以外ないだろ。愛里はあくまで、俺相手に
そう、今まで関係を持ってきた少女達は持ち前のバイタリティで倫理や常識のブレーキを自ら壊すか、そもそも最初から気にしていない曲者揃いだ。
対して愛里はコミュニケーション能力に難はあるものの、常識や倫理を飛び越せるような性格ではない筈だ。そんな彼女を今の状態で受け入れるには、無理があり過ぎる。
「まあ無理ね。そもそも、佐倉さんと付き合うとなったら多分櫛田さんが黙ってないわ。幸か不幸か今貴方と関係を持っている人達は櫛田さんとやり合っても惨敗はしないでしょうけど、佐倉さんにそれを求めるのは酷よ。彼女、やるとなれば容赦しないでしょうし」
「……だろうな」
それに、愛里では櫛田の相手は荷が重すぎる。恐らく、セックスフレンドを増やしただけであれば櫛田は文句を言って終わるだろうが、誰か一人を俺を選ぼうとすれば、櫛田は躊躇いなくその相手を追い落としにかかるだろう。
幾ら堀北との関係が軟化し、丸くなったように思えても櫛田の性根は変わっていない……しかも現在は俺に対してかなり執着を持っている為、自分の立場を脅かすような相手に容赦などする筈もない。
これが坂柳なら謀略で、恵ならその機転と度胸で対抗し、椎名はそもそも暖簾に腕押しでやるだけ無駄であろうし、堀北なら櫛田のやり口は慣れているので充分対抗出来るだろうが……そのいずれも持ち合わせていない愛里では、 櫛田に眼を付けられればそれだけで終わりだ。そういう意味でも、愛里を受け入れる事は出来なかった。
「けど、逆に言えばセックスフレンドなら櫛田さんは許容するわ。その方向で検討したらどうかしら?」
「いや、それは愛里の方が無理だろ。そもそも、愛里が俺に好意を持ったのは恐らくあの暴漢から助けた事と、俺が愛里を性的な目で見なかったからだ。そんな愛里が身体目当てとしか思われない提案を、簡単に受け入れると思うか?」
……そして、セックスフレンドにするにしても今度は愛里の方が問題になる。あの時の会話から察するに、愛里は最初に俺が自分に対していやらしい目で見なかった事から、俺への好意が生じた筈だ……そんな俺から「セックスフレンドになれ」などと言われれば、その時点で俺に対する好意は消滅する筈だ。
「……あのね。それはあくまで、好意を持った切っ掛けでしょう? 幾ら佐倉さんでも、好きな相手に対してずっと
「む……」
……しかし、それは俺の思い込みだ、と堀北は告げた。イマイチ納得出来ない部分はあるが、こと女心に関して言えば俺は素人だ……割と常識人寄りの堀北がこう言うのであれば、その意見は尊重するべきだろう。
「取り敢えず、明日部屋に呼んで現状を暴露して佐倉さんにどうするか尋ねなさい。出来ないとは言わせないわよ」
「……あ、ああ……」
堀北はそう告げると立ち上がり、シャワーを浴びる為に浴室へ向かった。俺は堀北が出て行ったドアを見つめながら、明日の事を考えて溜め息を吐いた。
「……全く、私も馬鹿ね。櫛田さんの時といい、なんで恋敵に塩を送るのかしら……我ながら、一体何を考えてるんだか……」
……だから、ドアの向こうで堀北が呟いた愚痴も、聞かなかった事にした。何はともあれ、堀北にこうまで発破をかけられたからには……佐倉との事にも、きちんと向き合わなければならないだろう。
「こ、こんばんはっ! 清隆くん! ま、待った……?」
「いや、大して待ってない。悪いな、急に呼び出して」
翌日の夜、俺は部屋にやって来た愛里をそう言って迎え入れた。昼間のうちに今夜部屋に来るように誘ったのだが、愛里は二つ返事でOKして今に至る……まあ、誘いをかけた時には相当驚いた様子ではあったが。
愛里はきちんと着替えて来たようで、割と身体の線が出るような薄い生地の白いTシャツに、チェック柄のミニスカートという出で立ちだ。愛里は他の女子と比べてもかなり胸が大きい為、凝視しないよう気を付けていても自然と胸に視線が吸い寄せられてしまう。
以前であればそこまで女子の身体に眼を向ける事はなかったのだが、度重なるセックスを経験した影響か、油断すると性的な目を向けてしまう事があるのだ。勿論気を付けてはいるが、愛里の爆乳は相当に魅力的な為ついつい目を向けてしまいがちなのだ。
愛里は当然、そんな俺の視線には気付いている筈だ……彼女は今までその爆乳故に、男からのいやらしい視線を嫌という程浴びて来た……どれだけ巧妙に隠したとしても、俺の視線の意味に気が付かない筈がない。
……しかし、予想に反して愛里から俺に対する嫌悪や失望の感情は感じ取れなかった。不可解に思いつつも愛里を部屋の中に通し、机越しに向かい合った。
「え、えっと……その……話って、何……かな……?」
愛里は緊張した様子で俺を見つめながら、そう尋ねて来る。俺は一瞬言葉に詰まったが、此処でぐだぐだしても仕方ないと割り切り、正直に話す事を決めた。
「その、な……まず、俺の思い上がりでなければだが……愛里は、俺の事好き……なんだよな?」
「え……っ!? あ、うぇ、その……っ! は、はい……っ! 私は、清隆くんの事が好きです……っ!」
俺の質問に、愛里は飛び上がる程驚き……そのまま、勢いに任せて告白して来た。てっきり混乱して何も喋れなくなるかと思っていたが、どうやら俺は愛里の思い切りの良さを甘く見ていたらしい。
「そ、そうか……それで、だな……愛里が気になってるのは、櫛田達の事……だよな?」
「う、うん……なんだか前より距離が近いし、もしかして……付き合ってるのかな、って……」
愛里は恐る恐る、という風にか細い声でそう話した。学校での櫛田と堀北の俺に対するアプローチは、誰が見てもあからさまだ……同じクラスでそれを見せつけられていた愛里が日々を悶々と過ごしていたであろう事は、想像に難くない。
「……付き合っては、いない……けど、何もないワケじゃない。ぶっちゃければ、あいつ等と俺はセックスフレンドってやつだ」
「え……?」
だからこそ、愛里は俺の言葉に首を傾げ……次第に意味を理解して、顔を真っ赤に染め上げた。
「え、え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……っ!? せ、せ、セフレって……っ!? う、嘘、本当……っ!?」
「悪いが、本当だ……幻滅したか?」
俺は混乱する愛里に対し、努めて平坦にそう尋ねた。予想通りであれば、俺はこの時点で愛里は櫛田達と不健全な関係を結んでいた俺に失望し、逃げ出すか黙り込むかのどちらかだと思っていた。
「……ううん。幻滅なんて、しないよ」
「は……?」
──だからこそ、その愛里の言葉は予想外だった。まさか、逃げ出すでもなく黙り込むでもなく、そんな言葉を返して来るとは理解の外だったからだ。
「……愛里、まさか俺の言う事を信じてない、とか……?」
「違うよ。確かにびっくりしたけど、こんな嘘つく理由はない筈、だよね……だから、本当の事なんだろうけど……それを私に話してくれたって事は、私の気持ちにちゃんと向き合ってくれるって事だから。幻滅なんて、する筈……ないよ」
愛里の言葉に、俺はらしくもなく呆然となった。まさか、複数人と関係を持っている俺の現状を聞いて尚、こんな風に好意的に接して来るなど思いもしていなかったのだ。
「それで、その……清隆くんは、私にどうして欲しいかな。今日は、えっと……その話をする為に、呼んだ……んだよね?」
愛里は縋るような目で、俺の事を見つめて来る。俺は一瞬言葉に詰まったが……愛里が此処まで覚悟を見せた以上、俺も相応の態度で臨むべきと決心し、愛里と目を合わせて告げた。
「まず、愛里と恋人同士になる事は……出来ない。けれど、櫛田達と同じ……セフレにだったら、してもいい……我ながら最低の事を言っている自覚はあるが、返事を聞きたい」
俺は愛里に最低の告白を行い、彼女の返事を待った。今度は目を逸らす事なく愛里の事を見つめ、愛里は……笑顔を浮かべて、返事を返した。
「はい。私を、清隆くんのセフレにして下さいっ! 時々、遊びに連れて行っては……くれないかな?」
「……そのくらいなら、お安い御用だ。いいんだな? 本当に」
俺は愛里の返答に面食らい、そう尋ねるが愛里は間髪入れず笑顔のまま答えた。
「勿論……っ! これからよろしくね、清隆くんっ!
「……待て。何故、そこで堀北の名前が出て来る……?」
「あ……」
愛里の台詞の不自然さを指摘すると、愛里はしまった、という顔をして言葉を詰まらせた。これは、何か俺の知らない事情がありそうだ。
そもそも、愛里は此処に呼ばれた時点で俺の
そして、昨日の事を考えれば……その
「……堀北に、何か言い含められてたのか? 例えば……俺の現状を、それとなく伝えられた、とか」
「……あ、うん。実はね……今日堀北さんに呼び出されて、言われたんだ……『私は綾小路くんと肉体関係を持ってるわ。けど、貴方が彼と関係を持ちたいなら黙認する』って」
「……あいつ……」
俺は堀北の想定外の行動に、溜め息を吐いた。どうやら堀北は、自分が嗾けた手前愛里の方にもフォローを入れる事にしたようだ……入学当初の他者との接触を悉く断とうとしていた姿からは、考えられない変化だ。あいつも変わって来ているのだろうが、それがこんな形で影響するとは思ってもみなかった。
「その、私なんかが堀北さんのような美人に勝てる筈ないし……それなら、こういう関係でも構わないかな、って。セフレって言っても、清隆くんはちゃんとお願いすればデートもしれくれるって話だし……それなら、いいかなって」
「……俺から提案しといてなんだが、本当にいいのか……? 確かにそれくらい都合するが、男から身体目的で見られるのは嫌なんじゃなかったのか……?」
俺の質問に愛里は一瞬きょとん、とした顔をして……くすり、と笑った。
「あ、うん。私は
「そうか……」
どうやら、女心というものに関して俺は本当に分かっていなかったらしい。奇しくも……いや、当然の結果として堀北の言葉通りになったワケだ。
「……まあ、思う所がないワケじゃないけど……堀北さんや櫛田さんと張り合うよりは、可能性があるのは事実だし……」
「……まあ、愛里が納得してるなら構わないが……」
俺は改めて愛里を受け入れる事を決め、愛里の姿を見つめると……愛里は顔を真っ赤にして、俺の方をちらちら見つめて来る。その瞳には、覚えのある熱っぽさが宿っていた。
考えてみれば、愛里は俺の
それを察して、俺は自然と愛里の胸に視線を向けてしまう。愛里の胸は爆乳と言っていい大きさで、今まで関係を持った女子の誰よりも大きいサイズを誇っている……あの胸を好き放題に出来ると思うと、股間に血が集まって来る。
「……え、っと……今から、いいか……?」
「……うん。よろしく、お願いします……」
そして俺は愛里に声をかけ、ベッドへと誘った。俺は滾る獣欲をなんとか抑えながらも、これからの行為への期待に胸を膨らませるのだった。
1話で終わろうと思ったら終わらなかった。濡れ場は次回です。
佐倉は他の面子と比べると押しが弱いので、なんらかの後押しは必須だと思い今回も堀北さんにご足労願いました。彼女、根本的な所でお人よしなので見捨てる事は出来ないと思うんですよね。尚、作中の台詞以外でも散々煽って佐倉さんをその気にさせたようです。
というか、関係を持ってるヒロインの中でこういう事やれるキャラが彼女しかいないワケですが。櫛田さんあたり、割と容赦ない事やりそうですし。