※この作品はR-18です。

ようこそ性欲至上主義の教室へ   作:デスイーター

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 原作9巻で予想通り一之瀬のバックグラウンドが説明されたので、予定を変更してこちらを更新します。
 kyorochanさん、forest&さん、KーRLさん、オトゥールさん、cojoitaさん、川尻 降さん、評価付けありがとうございました。
 高山流水さんは評価コメントと、何度も誤字報告ありがとうございました。助かっています。


16時間目~一之瀬帆波の時間Ⅰ

「お、お邪魔します」

「ああ、入ってくれ」

 

 俺は玄関口に立った少女、一之瀬帆波をそう言って部屋に招き入れる。一之瀬は若干緊張した様子で靴を脱ぎ、部屋に足を踏み入れた。

 そのまま奥の寝室へ通すと、ちょこんと床に座り込んだ。俺は一之瀬の正面の位置に座り、部屋の中をキョロキョロ見回す一之瀬に声をかけた。

 

「俺の部屋が珍しいか? 何もないつまんない部屋だろ」

「あ、ご、ごめん。男の子の部屋に入るの初めてだったから、つい……」

 

 部屋を見回していた事を指摘された一之瀬は頬を赤らめ、そう答えた。一之瀬は確かに人気者で交友関係も広いが、女子が男子の部屋に入る経験など恋人でもいなければ早々あるものでもないだろう。

 

 櫛田や堀北は関係を持っていない頃から俺の部屋に出入りしていたが、あれは彼女達の肝が据わっていた事も理由の一つではあるのだろう。もしくは、その時の俺が男として認識されていなかったかのどちらかだ。

 

 まあ、今となっては二人共競うように俺の部屋を訪れ、関係を持っているのが現状なのだが……二人がかち合った時にはお互い対抗心を剥き出しにして奉仕してくれるので、大変満足した事を覚えている。

 

「……? なんだろう? 今なんか、ちょっとイラっとしたような……」

「……気の所為じゃないか?」

「そうかな? そう、だよね……」

 

 どうやら俺が邪な想いというか不謹慎な思考を巡らせていたのを直感で感じ取ったのか、一之瀬の顔が少々険しいものになった。俺の相槌に納得しようとしているあたり、無自覚ではあるようだが。

 

「それで、今日はどうしたんだ? 話があるって事だったが……」

 

 取り敢えず、俺は一之瀬に本題を告げるよう促した。今日一之瀬がこうして俺の部屋を訪れたのは、日中に一之瀬からメールで『話したい事があるから部屋に行ってもいいか』と聞かれ、それに応じたからだった。

 

 俺のみたところ、どうやら一之瀬はその『本題』を話す事を迷っている様子だった。

 この部屋に来た当初から視線は右往左往しているし、俺の顔をチラチラ見ては俺と眼が合うと俯く、といった事を繰り返している。普段の一之瀬からは、考えられない程の挙動不審ぶりだった。

 

 暫く一之瀬は黙り込んだまま俯いていたが、やがて決意が固まったのか、顔を上げて口を開いた。

 

「その……綾小路くんが坂柳さん達とそ、その……え、えっちしてるって、本当……?」

「……誰にその事を……?」

 

 俺は一之瀬の質問にすぐには答えず、そう質問を返した。確かに俺は複数の女生徒と関係を持っているが、その事を知る者は限られている。少なくとも、Bクラスの生徒にはいない筈だった。

 

 この様子では、一之瀬は誰かから直接話を聞かされてこうして俺に尋ねる事にしたのだろう。そうでなくば、わざわざ俺の部屋に来てまで尋ねる事はしない筈だ。

 

 彼女に情報を漏らした存在には何人か心当たりがいる。一之瀬と悪くない関係を築いている堀北、交友関係が広く一之瀬とも友達になっている櫛田、そして……

 

「……坂柳さん……」

「……あの女……」

 

 俺は一之瀬からその名前を聞き、思わず溜め息を吐いた。俺と関係を持ってからある程度態度が軟化しているようだが、その性根は相変わらずのようだ。

 

「昨日坂柳さんが私の部屋にやって来てね。こういう話をしたんだ……」

 

 そう切り出すと、一之瀬は坂柳とのやり取りを語りだした。

 

 

「ごきげんよう、一之瀬さん。元気そうで何よりです」

「あはは、あんな事があった後でもそう言ってくれるんだ。まあ、私としても良い機会にはなったから別にいいけど」

 

 坂柳さんはかつて私を追い詰めた時と同じ調子で、私の顔を見るなりそう言って笑いかけて来た。その姿に私はどう反応していいか分からず、一先ずの返答としてそう答えた。

 

 坂柳さんはかつて私の『罪』を暴き立て、噂話の流布という手段を用いて私を追い詰めて来た。

 

 罪の自覚がある私はその事を誰かに相談する事は出来ず、中学三年の時のように自分から自滅の道へと転がり落ちて行った。

 

 結局、私は綾小路くんのお陰で自分の『罪』と向き合う事が出来、坂柳さんの攻撃を凌ぎきる事に成功した。

 Bクラスの皆も罪を告白した私の事を受け入れてくれて、今もこうして平穏な学園生活が送る事が出来ている。この一件で私は綾小路くんに『特別な想い』を抱く事になったのだけど、それは置いておく事にする。

 

 ともかく、そういった経緯からBクラスの生徒からの坂柳さんへの感情は最悪と言っていい。私のクラスは団結力が強い分、()()には敏感だ。

 私をあそこまで追い詰めた坂柳さんの事を、Bクラスの生徒達は目の敵にしているのだ。

 

 だからこうして坂柳さんが私に会いに来た所をBクラスの生徒に見られれば、義憤から坂柳さんを攻撃する生徒がいない保証はない。私としては、そんな事になるのは避けたかった。

 

「それで、要件は何かな? 知っての通りBクラスの皆は坂柳さんの事になると感情的になっちゃうから、あまり長い時間此処にいるのはよろしくないんじゃないかな?」

 

 だからなるべく言葉を選んで坂柳さんには早めに引き下がって欲しかったのだが、そんな私の思惑を察してか坂柳さんはくすり、と笑った。

 

「ふふ、そう警戒せずとももう貴方を攻撃したりはしませんので安心して下さい。()がきちんと私の相手をしてくれている以上、わざわざ貴方を攻撃する理由はありませんしね」

「……ふぅん……? それじゃあ何かな? あの時は、私を攻撃するメリットがあったから攻撃したって事?」

 

 坂柳さんの言葉に含む所を感じた私はそう尋ね、坂柳さんは私の疑問を肯定した。

 

「ええ、貴方を攻撃したのは()……いえ、()()()()()に、貴方を助けさせる為です。有り体に言えば、綾小路くんに構って貰う為に貴方を出汁に使った、という事です。まあ、ちゃんと構って貰えるようになったのは最近ですが、あの労力は無駄ではなかったと思っています」

「……っ!」

 

 ……そして、綾小路くんの名前が出た瞬間、私はびくり、と肩を震わせて言葉を失った。そんな私を見て、坂柳さんがくすり、と笑った。

 

「……ふふ、綾小路くんの名前に反応しましたね? やはり、私の見立ては間違っていなかったようです。一之瀬さん、貴方は綾小路くんに女性としての好意を抱いていますね?」

「……っ! それ、は……」

「答えて頂かなくとも結構ですよ。その態度が何よりも、貴方の想いを雄弁に物語っています。しかし、あの一件で好意を抱くようになったのであれば、私は意図せず恋のキューピット役をやってしまったという事でしょうか。私にそんなつもりはなかったのですが、これもまた人間関係の妙ですかね」

 

 坂柳さんに綾小路くんへの好意を指摘され、私の心臓は跳ね上がった。坂柳さんの挑発のような言葉も耳に入らず、私は思考の海に没していく。

 

 最初は、頭が切れる面白い生徒だと思った。底知れない感じはあったけど、少なくとも悪人ではなさそうだったし、彼のお陰で助かった人達もいるから、交流を深めていて悪い気はしなかった。

 

 彼に対する認識が決定的に変わったのは、矢張りあの一件だろう。坂柳さんに自らの『罪』を暴き立てられて部屋に籠っていた私の下に、綾小路くんは毎日やって来てくれていた。

 

 綾小路くんは、強引に話を聞きだす事はせず、私が罪を告白する決心が出来るまで、私の部屋に通い続けてくれていた。

 不思議と鬱陶しいとは思わず、こんな私でも心配してくれる人はいるんだと思えて、彼の来訪を楽しみにしている自分がいた。

 

 結局私は彼に自分の罪を洗いざらい話して懺悔し、立ち直る事が出来た。彼に罪を告白出来ていなければ、私はあそこで坂柳さんに潰されていただろう。

 

 だから、あの一件が終わって改めて綾小路くんと向き合った時、信じられない程胸が高鳴った事を覚えている。

 

 あんな感覚、初めてだった。綾小路くんの顔を見るだけで幸せな気分になって、気が付けば彼の事ばかり考えるようになった。

 

 だって、あんなの反則だ。綾小路くんは私の罪の告白を聞いた上で私を慰める事はせず、ただ私の話を聞いてくれた。それが、何よりも嬉しかったのだ。

 

 私は、私の罪を忘れようとは思わない。過去に犯してしまった罪は何をしても消える事はなく、一生私に付いて回るだろう。

 

 けれど、今はその罪と向き合って生きる事が出来ている。それもこれも、綾小路くんが私の罪の告白を正面から受け止めてくれたお陰だ。

 

 ──もしも自分を見失いそうになったら、またオレに声をかければいい──

 

 ──その時は──そうだな。話を聞くくらいならオレにも出来る筈だ──

 

 ……その挙句に、この台詞だ。あんなタイミングでこんな台詞を聞かされて、私に抵抗なんか出来る筈なかった。

 

 この時、私の心は完全に綾小路くんの虜になった。普段大してやってなかった自慰行為も、彼への想いを抱いてからは毎晩のように行うようになった。何度、彼の名を呼んで絶頂したかは分からない。

 

 いつの間にか大きくなって煩わしいと思っていたこの胸も、彼になら好きにされたいと思った。自分の身体を好きにされたい、なんて思う事になるなんて、今まで考えた事もなかったのに。

 

「……さん、一之瀬さん、どうしましたか?」

「……へ……? あっ、私……」

 

 ……気付けば、坂柳さんが私の顔を覗き込んでいた。どうやら、考え事に夢中になって目の前の坂柳さんの事を放置してしまっていたらしい。

 私が慌てて坂柳さんに向き直ると、そんな私を見て坂柳さんは不敵な笑みを浮かべた。

 

「……ふふ、綾小路くんの事を考えてあんなに幸せそうな表情になるなんて、妬けてしまいそうです。恋は女を変える、とはよく言ったものですね」

「う……」

 

 坂柳さんの指摘に私の顔は自分でも分かるくらい真っ赤になって、何も言えなくなってしまう。綾小路くんの事を考えながら私がどんな表情をしていたか、坂柳さんには全てが見えていたであろうから。

 

 坂柳さんはひとしきり私をからかった後、すっと眼を細めて口を開いた。

 

「これならば、話した方が良さそうですね。一之瀬さん、貴方が懸想する綾小路くんですが……私を含めた複数人の女生徒と、肉体関係を持っています。それも、全員が納得づくで」

「……え……?」

 

 ……私は最初坂柳さんが何を言っているか理解出来ず、呆然と彼女の顔を見詰めた。すると坂柳さんはニィ、と口元を歪めてこう言った。

 

「だから、分かり易く言えばセフレを何人も作っているんですよ彼。その中に、私も入っているというだけの話です。ふふ、驚きましたか?」

「え、ちょ、何、言って……」

「混乱しておられるようですね。疑うのであれば、彼に問い質してみてはどうですか? きっと、答えて下さると思いますよ」

 

 坂柳さんはそれだけ言うと、用は済んだと言わんばかりに踵を返し、その場から立ち去った。私はそんな彼女の後姿を、ただ呆然と見送るしかなかった。

 

 

「……それで、居てもたってもいられずに綾小路くんに会いに来たの。ごめんね、突然こんな事話して」

「……いや、大丈夫だ。一之瀬の考えももっともだからな」

 

 俺は一之瀬から話を聞き終えて、大体の事情を悟っていた。坂柳は興味本位か何かは知らないが、一之瀬を俺に嗾ける事で俺を困らせたかったのだろう。

 

 坂柳は基本的に、好意を持つ相手を振り回す傾向がある。自分の手下のように扱っている神室の事も、なんだかんだで気に入っているからこそこき使っているのだろう。

 

 一之瀬へのかつての苛烈な攻撃も、偏に俺に構って欲しかったからこそ行ったものだ。今回のこれも、坂柳はその捻くれた好意を俺に向かって発露しただけなのだろう。

 

 もっとも、巻き込まれた一之瀬としてはたまったものではないのだろうが、そこは坂柳に関わった運の無さを諦めて貰う他ない。色々な意味で、坂柳は面倒な女なのだから。

 

「それで、その……本当、なの……?」

「ああ、坂柳の言っている事に間違いはない。確かに、俺は複数の女生徒と肉体関係を持っている」

「……そう……」

 

 俺の答えを聞き、一之瀬は息を漏らした。そんな一之瀬に対し、俺は話を再開した。

 

「それで? それが分かって一之瀬はどうするんだ? 軽蔑したか?」

「……ううん、軽蔑なんてしないよ。黙って浮気してるならともかく、皆が納得してるんでしょう? 確かに普通じゃないかもだけど、それだけ綾小路くんの器が大きいって事なんだろうし」

 

 年頃の潔癖な女子からすれば、俺の現状は決して容認出来ない類のものである筈だ。

 しかし、一之瀬は困惑しながらも俺を責める事はしなかった。むしろ、期待を込めた瞳で俺を見詰めている。

 

「……その……じゃあ、明確な恋人はいないんだよね……?」

「ああ、特定の恋人はいない。もっとも、流石に肉体関係だけじゃなく、時々一緒に出掛けたりはしてるけどな。流石に抱くだけ抱いて放置ってのはマズイしな」

「そっか──じゃあ、私が恋人に立候補するって言ったら、どうする?」

 

 一之瀬はそう告げながら、じっと俺の返答を待っている。此処の返答次第で、一之瀬の立ち位置が決まるだろう。

 一之瀬は期待と不安が織り交じった眼で、こちらを見詰めている。そんな彼女に対し、俺の返答は一つだった。

 

「セフレなら受け入れる、としか言い様がないな。勿論、一緒に出掛けたりする事も構わない……けど、明確に一人を選んでしまうと、何をするか分からない奴がいるんでな」

 

 言うまでもなく、櫛田の事だ。自身の感情を何よりも優先して行動する櫛田は、全員がセフレであるという現状だからこそ許容しているが、俺が誰か一人を選ぶ真似をしようものなら何をしでかすか予想がつかない。

 

 櫛田は一之瀬とも友人関係となっているが、一之瀬を俺が選べば友人だろうがなんであろうが一之瀬を敵視して行動を起こす筈だ。

 勿論、そこに容赦などという言葉はない。自分が満足するまで、徹底的に一之瀬を攻撃する筈だ。

 

 そういった事態を避ける為にも、此処で一之瀬を恋人にするワケにはいかなかった。後は、一之瀬がこの返答をどう解釈するかだ。

 

 普通、恋人にしてくれと言った相手からセフレならいい、と言われて愉快である筈がない。要は身体だけ寄越せと言っているのも同じなのだから、それが普通の反応である筈だ。

 

「そっか……うん、それでもいいよ。私、綾小路くんのセフレになる。たまにはデートみたいな事もしてくれると、嬉しいな」

 

 ……だが、一之瀬はむしろ満面の笑みで俺の言葉を受け入れた。どうやら、一之瀬は女子としての潔癖さや常識より、俺への好意を選んだようだ。一緒に出掛けてもいい、という言葉が効いたのかもしれない。

 

 ともあれ、そういう事であれば俺も拒む理由はない。何より、一之瀬程の美少女から此処まで好意を寄せられて、嬉しくない筈もない。櫛田への説得は、後でやっておけばいいだろう。

 

「ああ、お安い御用だ。ところで一之瀬、これから時間は……あるか?」

「……っ! う、うん。大丈夫。その……よろしく、お願いします……」

 

 一之瀬は俺が言わんとしている事を察して顔を真っ赤にするが、覚悟を決めたのか弱弱しくそう告げた。俺はそんな一之瀬の身体を引き寄せ、その唇を奪った。




 というわけで一之瀬編前半です。筆が滑って色々書いてたら前後編になっちゃいました。濡れ場は次回です。
 9巻で一之瀬も綾小路に好意を持ったみたいですから、これを利用しない手はないなと思って書きました。あそこまで明確に好意を持ったのは佐倉、恵に続いて三人目ですね。まだ自覚してるかは怪しいですが、ああいうのも可愛いですね。
 ところで、9巻表紙の神室さんのイラストは良かったですね。7巻の椎名もそうですけど、よう実の絵の女の子って太腿が特に魅力的ですよね。神室にはそこまで興味なかったんですけど、絵の効果って大きいですね。性格もよう実キャラらしい捻くれ具合ですし。
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