この素晴らしい「お願いカード」でいちゃラブを! 作:GA 飛びイカ
本編は2話以降となりますのでお時間がある時に合わせてお読みください。
作品時系列としては14巻で紅魔の里に行った後、セレナが現れなかった時空を想定しています。
「お願いカード?ですか」
「そうだ」
夜。夕飯を食べた後に話があると言って、めぐみんに俺の部屋に来てもらっていた。
女の子を自分の部屋に招き入れるのに妙にドキドキしながら、俺はめぐみんにあるアイテムを見せていた。
俺が懐から出した5枚2組のカード。
裏面はトランプのような柄が付いていて、色は青と赤で5枚ずつの計10枚。
ただのトランプのように見えるが表面は白紙だった。
これではまるで印刷が失敗したトランプだが、トランプとは全く違う代物だ。
「このお願いカードはその名の通り、相手にお願いごとをするカードだ。この白紙になっている方にお願いごとを書くと、相手がそれを実行したり書いたことに同意してくれるんだ。」
「なるほど、確かに契約に関する魔力を感じますね。ただのカードではなくカード型の魔道具と言ったところでしょうか。」
紅魔族のめぐみんにとって魔道具は身近な物だったのだろう。
ただのカードではなくこれが一種の魔道具と見抜いたようだ。
「ああ、でも全部のお願いごとを実行できるわけじゃない。それだと例えば「死ね」とか書いたら相手は自殺しなきゃならないしな。」
「それは・・・確かに効果として強すぎますね」
「このカードに書ける願いごとは「相手が嫌だと思わないこと」に限られている。だから突拍子のないことは書いた瞬間にカードが破れて使えなくなっちまう。」
「それにしたってかなり強力な物ですよこれは。一体どこから入手したんですか?」
カードの効果もさることながら、どこから入手したのか気になるめぐみんは俺にそう聞いた。
「いや、実はこれバニルにアイディアを出して作ってもらった新商品でな。お願いごとってのは一種の契約だから悪魔なら割と簡単に作れるみたいだったぞ。」
「悪魔の作ったカード、ですか」
めぐみんはそういって少し眉をしかめた。
悪魔の作った契約に関するカード。
確かに字面だけ見たら胡散臭いカードだろう。
だが、安全面に関してはかなり気を使って調整しているので大丈夫だ。
「このカードにはバニルの見通す力も少しだけ付与されている。さっき言った「嫌だと思う事を書かれると破れる」の他に、命に係わることや重大な損失が発生するようなことを書いても書いた瞬間に未来を見通して破れるようになっている。」
つまりこのカードは効果は強力だが、そんな大したことはできない、まぁお遊び的なカードだと説明を締めくくった。
「そんなカードを私に見せたってことは、カズマは私にそのカードを使いたいってことですか?自分で言うのも何ですが、ある程度のことならそんなカードを使わずとも聞いてしまうと思いますけど。」
そういって薄く微笑むめぐみん。
最近のめぐみんのちょろ・・献身ぶりを考えれば確かにこんなカードを使わずとも願いごとを聞いてもらえるだろう。
「それは・・・すげー魅力的な提案なんだが、俺としてはその場合どこまでOKなんだろうって心配になるんだよ。」
そこだ。
めぐみんは俺のお願いごとを聞き入れてくれると思う。
というか、無理やり何かしても最後には許してくれるような気もする。
心の中で嫌だと思っているかもしれないのにだ。
上手く言えないがそれは何か、嫌だなと感じていた。
「そもそも今の俺たちの関係って、その、中途半端だろ?」
「仲間以上恋人未満、のことですね」
「ああ、そもそも恋人ってのが良く分からないから仲間と恋人の間の関係になったんだけど、じゃあ仲間以上恋人未満ってのはどういったもんだ?って考えると分からなくなるんだよなぁ」
「ですからそれはデートしたり親密度を上げ・・」
「ストップ!そんな感じのことをこのカードに書けば親密度も上がるんじゃないか?って思ったんだよ」
俺の言葉にめぐみんはふむと頷いて見せた。
俺とめぐみんでそれぞれ漠然とした恋人像ってのは思い描けていると思う。
だが、それがどんなものかこれまであんまり口にしてこなかったように思う。
そこで、このカードに互いが願いごとを書けば、それぞれのやりたいことを満たしながら親密度も上げられるだろうと考えたわけだ。
それを説明するとめぐみんも思い当ったのかこくりとうなずいた。
「確かに最初のときも子作りとデートで食い違いましたしね」
そう言って少し責める様な目を向けた。
「いや、あれはその・・・。それにめぐみんだってこの間の紅魔の里の時に「お手伝いしましょうか?」っていきなり言いだしたし」
「あれは・・・いつもカズマが辛そうにしてたので申し訳ないって気持ちが先走ってしまっただけで・・・」
ごにょごにょと二人とも言い淀んでしまった。
まぁ、噛み合わないのも行き当たりばったりな俺達にふさわしい感じではあるな。
「・・・ってなわけで、俺達は互いに相手に求めてることが違うふしがあるし、このカードで一回自分の願いごとを相手に知ってもらった方が良いと思うんだ」
お互いが何かしようという気持ちはあるのだ。
カードを使い、相互理解を深める方向に話を切り替えた。
「なるほど、いいですよ。それに本当に嫌なことは出来ないようですし、何だかゲームみたいで面白そうですね」
めぐみんが俺から赤い柄のカードを5枚受け取った。
「5枚ということは5回お願いができる訳ですか。使うタイミングはどうしますか?」
「1日1回とかでいいんじゃないか?そんで一緒に見せあって先に出来そうなお願いから実行していけば」
1回で5枚全部使っても良いかもしれないが、今回は俺たちの関係の進展が目的だ。
毎日使っても5日分しかないし、少しずつ使っていった方がいいだろう。
「ちなみに俺は1枚目に書く願いごとを既に決めているんだが、めぐみんには説明したばっかりだしカードを使うのは明日にするか?」
「いえ、カズマからカードの説明を受けた時にもう願いごとは決めていました。今からでも大丈夫ですよ」
「マジか」
なんと、めぐみんは説明をした瞬間に願いごとを決めていたようだ。
俺なんて、どこまでOKなのかとか、1枚目だから当たり障りないことを、とか色々考えて決めたってのに。
「それじゃ記念すべき1枚目の願いごとを書こうぜ」
「どうせなら書いて見せるまで願いごとは秘密にしておきましょう。そっちの方がゲームっぽくなりますし」
見えないように壁を下敷きにしてカードにお願いを書いていくめぐみん。
俺も既に決めていた願いごとをカードに書いていく。
「書けたか?それじゃ同時にカードをオープンだ!」
「はい」
いっせーのーせでカードをオープンするとこんな願いごとが書かれていた。
「ハグがしたい」
「私の好きな所を言ってください」
・・・・・・・
あー、そう来たかー。
「常々思っていましたが、カズマは私のことだけが好きなのか疑わしく思うのですよ。それこそカズマのことが好きな人が現れたらほいほい浮気するのではないかと不安なのですが」
「いやいやいや!ちゃんとダクネスのことだって振ったし、俺はこう見えて一途で誠実な男だ!」
「一途で誠実?そういうのはダクネスの挑発に乗らない人の言う言葉ですよ!」
「その・・・すんません」
俺は流れる様なDO・GE・ZAにて詫びる。
確かに俺は惚れっぽいし浮気性なとこがあるので、ここは素直に謝ることにした。
「はぁ、まったく・・・。それでカズマのお願いですが、はぐ?とは何ですか?」
まさかの事態!ハグが通じないとは!
最近異世界ってのを忘れてしまうほどこっちの世界に慣れてしまっていたが、日本人しか転生していないのだからハグって言葉も伝わってないのかもしれないな。
「ハグってのは、こう、はぐっと親しみを込めて・・・抱き合うてきな・・」
ぐあー!伝わると思っていたから書いたのに、自分で説明するとか恥ずかしさがヤバイぞ!
「抱き合う・・・ですか」
ほんのりと顔を赤くしためぐみんはそう呟くと、ふいっと視線を横にずらした。
やばい、なんだこの恥ずかしさと嬉しさのごちゃまぜの感情は。
ラブコメの波動を感じる。
「・・・ところでカードが破れないところを見ると、めぐみん的にハグはOKなんだな?」
「だから大概の願いごとは大丈夫だと思いますよ。それに、その・・・ハグは私の求めるスキンシップに近いですし・・・」
そう言って言葉尻が小さくなりながらも上目づかいでこちらを見るめぐみん。
やばい!恥ずかしくて場が持たないからさっさと行動に移そう!
「それじゃ、その・・・ハグをしてからめぐみんの願いごとを叶える感じでいいか?」
「いいですよ。というかハグをしながらの方がいいのでは?その方が顔を見ながらよりも言いやすいでしょうし」
言いながらめぐみんは顔をこちらに向けながら微笑んで、両手を広げている。
「じゃあ、いくぞ・・・」
「はい」
ぎゅ。
俺とめぐみんは両手を背中に回して優しくハグをした。
前にも思ったけど、こいつも女の子なんだな。やわらかくて温かくていい匂いがする。
ドキドキと心臓の鼓動が早くなる。
腕にすこし力を込めると、めぐみんが「ほぅ…」と吐息をはく。
ハグを選んだ俺。グッジョブです!
しばらく無言で抱きしめあっていた俺達だが、俺の胸の部分に顔をうずめていためぐみんが見上げるように俺の顔を見てきた。
その顔は明らかにハグをする前よりも赤くなっている。
「ハグって・・・いいものですね・・・」
はぁと息を出しながらの言葉は、万感の思いを込めた一言だったようだ。
どこか夢心地といった様子のめぐみんは、しまりのない顔でそう呟いた。
「そう・・だな」
俺も俺で気のきいたことを言えれば良かったのだが、ハグの素晴らしさに震えていて言葉が出てこなかった。
これは、いいものだ。
「カズマ・・」
「ん?」
「私の好きな所・・言えそうですか・・・?」
「・・・あぁ」
めぐみんも俺とおんなじように頭が回らないのか、ぽつりぽつりと言葉を繋いでいく。
俺の願いは叶えたのだから次はめぐみんの番なのだが、好きな所、好きな所っと、あぁー・・・
「ば
「爆裂魔法以外でお願いします。」
ぐ、先に言われてしまった。というか似たようなやり取り、前にもやった覚えがあるぞ。
「・・・以前はこのあと、私がカズマの好きな所を言ってそれっきりでしたからね。今回はちゃんと教えてください・・・」
そういうめぐみんの顔は期待半分の不安半分といった感じだった。
好きなところを聞きたいけれど、好きなところなんてない、と言われるかもしれないと怯えているのかもしれない。
実際、好きなところを聞かれても即答しなかったから、そう思うのも仕方のないことかもしれないな。
「俺が・・めぐみんのどこが好きかっていうと・・えーと・・」
いや、色々思いついてはいるんだけれど、やっぱり面と向かって言うのは恥ずかしい!
そんな俺の心情を察したのか、めぐみんは軽く溜息をついて俺の背中をぽんぽんと叩いてきた。
「ゆっくりでいいですから。カズマの本当の気持ちを教えてください。」
そう言って背中をぽんぽんと叩きつつ、左右にゆっくりゆっくりと揺れ出した。
めぐみんがゆらりゆらりと揺れるので、つられて俺の体もゆらゆらと揺れる。
背中を優しく叩きながら、左右にゆらりゆらり。
なんだか子供扱いされてあやされているみたいだったが、不思議と気持ちが落ち着いてきた。
・・・なんかもう難しく考えるのはやめて、思い付いたことを言っていけばいいか。
「めぐみんは・・・顔が可愛いと思う」
「ふふ、ありがとうございます」
「それに抱き着くと柔らかくていい匂いがする」
「一緒にいると妙に安心するし、自然体でいられる」
「俺の好みに合わせて頑張ってくれてるのも、嬉しい」
「仲間想いなところもいいと思う」
「料理も上手いよな。毎日食べても飽きない味付けだし」
「黒髪なのも好きだな。俺の国の人は基本黒髪だし、無意識に目に親しんだ色なのかも」
「逆境に弱いのも見てて面白いし可愛いと思った」
「髪がサラサラしてて綺麗だ」
「紅い眼も暗闇で光って綺麗だと思った」
そう、ぽつりぽつりと。
何も考えずに言った。
「はっ!」
今俺すげー恥ずかしいことをべらべら言ってしまったのでは!?
めぐみん、めぐみんの様子は!?
気付くと背中を叩くのも、左右に揺れるのも止まっていた。
めぐみんは俺の胸に顔をうずめてぷるぷると震えていた。
その顔は耳まで真っ赤だ。おそらく眼も赤く光っているだろう。
ちなみに俺の顔も熱くなっている。
「め、めぐみん?」
「・・・素晴らしいものですね。ハグって・・・」
そう言いながら猫のように頭をぐりぐりと擦りつけてきた。
あぁ、もう恥ずかしさとかどうでもいいや。
めぐみんも満足したみたいだし。
「そうだな」
俺はらしくもない、と思いながらも右手で優しくめぐみんの頭を撫でたのだった。