※この作品はR-18です。

廃人ネカマのロールプレイング   作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会

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 ある記念にまた筆を取ってみました。
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prologue

 栄枯盛衰、盛者必衰は世の常。如何にして栄えようとも、必ずは衰退し、滅び、忘れ去られる。千年王国は成らず、万年帝国は成らず。永きに亘って国力を高め続けたローマも、アドルフ・ヒトラーを筆頭に歴史に残る多数の天才を生んだドイツ第三帝国も、最高神の第一子にして最強の竜であったアルドゥインの竜教団も、不老不死であり神の如きフォースの魔術を操ったヴァルコリオンのシス帝国も、すべてが滅び、忘れ去られた。

 そう、全ては滅びゆく定めにある。熱力学第2法則を覆し得るものがあるとしても、それは一瞬のこと。永遠は存在しない。あらゆる全てが終わりを内包している、例外はない。

 

「だからなんだと言うんです?」

 

 それは哲学者の妄言だ、現実を揺るがすに足りぬ杞憂だと、"大災厄の魔(ワールド・ディザスター)"が嗤う。

 

「不可能を可能にしたい」

 

 "欲界の女王(マザー・サキュバス)"が言った。それは宣言にして鼓舞。成し得ぬからこそ、挑む価値がある。それは現実(・・)に苦しみ、飽き、理想を求めた者たちが挑戦すべき事柄であると。

 答えるは死の支配者、"絶対者(オーバーロード)"。

 

「言いたい事は分かります。我々は"アインズ・ウール・ゴウン" 、ユグドラシルにおいて最強のギルドです。我々が世界を動かすために尽力すれば、運営も無視できないだけの事を起こせるやもしれません」

 

 絶対者(オーバーロード)の声には熱があった。やれるなら、やってみよう。やるというのなら、やってやろう。自負とも取れる熱い想いが、骸骨のアバターから見えた。

 その声に感化されて、スライムが、翼人が、精霊種が、ハーフゴーレムが、皆が賛同し、夢を描いた。

 

 だが、そうはならなかった(・・・・・・・・・)。栄枯盛衰、盛者必衰。それはユグドラシル最強のギルド、アインズ・ウール・ゴウンにおいても同じだったのだ。

 アインズ・ウール・ゴウン設立の第一人者、"たっち・みー"の離脱を皮切りに、次々と席が欠けていった。自然を愛した男、"ブルー・プラネット"が旅行先で病を患い、治療の甲斐なく若くして亡くなった。最強の打倒を目標としていた"武人建御雷(ぶじんたけみかづち)"は"たっち・みー"が戻らない事を悟り、脱退を決意。続いて、ギルド最年長の"死獣天朱雀(しじゅうてんすざく)"が引退を宣言。オーバーワークのせいでログインできないとメールで報せて、"へろへろ"がログインしなくなった。同じく、忙しい時期だからと冗談交じりにチャットを交わした翌日から"やまいこ"がログインしなくなり、二ヶ月後には正式な引退の報せが届いた。深夜にアップデートを終えてログインした"やまいこ"は所持していた全てのアイテムをギルド長へと譲渡し、去って行った。そしてまた1人、またひとりと席が欠けていく。

 

 世界最大規模のDMMORPG、ユグドラシル。大地は腐り、雨は錆び、空気が毒と化した遥か未来の一大ムーヴメント。歴史に名を残すことは確実とされたゲームも、発売から10年以上も経ってしまえば、時代遅れの遺物に過ぎなくなる。運営はなんとか客を繋ぎとめようとバランス度外視でイベントや新要素を発表するが、それでもプレイヤーの総人口は減り続ける。終わりは避けられない。

 

 そして迎えたサービス終了日。世界の終焉、落日の果てに。この日、ギルド、アインズ・ウール・ゴウンに最後まで残った2人の呼び掛けに応じて、数人のメンバーが顔をだしていた。何ヶ月も起動せず、ログインしていなかったのだ、ゲームデータのアップデートだけでもそこそこの面倒である。ましてや人にとっては終わったゲーム、仕事や私生活よりも優先されるものではない。にもかかわらず、夜だというのにログインした者たちがいた。

 

「ちょうど暇だったから」

 

 笑顔のフェイスアイコンを表示させてそう言った"ぷにっと萌え"は、アインズ・ウール・ゴウンの思い出を語り、2時間も話し込み、そして明るい声で別れを告げてログアウトした。

 

「いやー、もう疲れちゃって」

 

 最後の最後、終了時間の間際になってログインした"へろへろ"は仕事の愚痴を零した。そしてアインズ・ウール・ゴウンを、ギルド本拠地であるナザリック地下大墳墓を維持してくれた事に深い感謝の意を示し、また会いたいと告げて、疲れた欠伸とともにログアウトした。

 

 もう1人、来る予定だったのに———へろへろを見送ったギルド長、"骸骨(モモンガ)"は失意の息を吐いた。そして、怒りにまかせ、円卓に拳を叩きつけた。皆で築き上げたナザリック地下大墳墓、皆で勝ち取ったアインズ・ウール・ゴウンの栄光なのに! どうしてそれを捨てられるのか、あの楽しかった日々は嘘だったのか! こんなことは間違っている!

 

「違う・・・そうじゃない・・・・・・。間違っているのは俺のほうだ・・・・・・」

 

 モモンガは理解していた、この怒りは自分勝手なものだと。メンバーも人間だ。ログアウトすればただの人間に戻るのだ。それぞれに家庭があり、仕事があり、人生があるのだ。そもそもアインズ・ウール・ゴウンのギルド加入条件のひとつは『社会人であること』、このような形での別れは必然だった。解っていたはずの終わりだった。

 しかしそれでも、モモンガは諦めきれなかった。なぜなら、モモンガにはアインズ・ウール・ゴウンしかなかったからだ。父を亡くし、母を亡くし、若くして独りとなった男の、遅れてきた青春。それがユグドラシル、それがアインズ・ウール・ゴウン、それがナザリック地下大墳墓なのだ。モモンガには半生を捧げてきたユグドラシル以外に自身を構成するものが無い。だから、どうしても諦めたくない。

 肩を落として落ち込んでいるひとりぼっちの室内に光が射した。開けられた大扉から姿を見せたのは、今日一日中ログインしていたメンバー、モモンガと共にナザリックの維持の為にゲーム内通貨を稼ぎ続けたプレイヤー、欲界の女王(マザー・サキュバス)のアバターでプレイする"男"、"パールンレヴァク"。モモンガはその姿を見て、希望と共に席から立ち上がる。

 

「どうでしたか!? ウルベルトさんと繋がりましたか!?」

 

 せっかくのサービス終了日だからみんなでもう一度集まりませんか、そうメールを送って返事が返ってきた1人、初期メンバーの"ウルベルト・アレイン・オードル"を待ちわびて、期待に満ちたモモンガの声。しかしそれは、パールンレヴァクの泣き声によって否定された。

 

「通話は・・・繋がったが・・・・・・」

「・・・ええ。それで」

「ログイン出来ないと・・・・・・」

「そんな! いったいどうして!?」

「怪我しちゃって・・・死ぬ寸前だって・・・・・・、だから最後に、電話に出ようと思ったって・・・・・・。声・・・、すごく苦しそうだったの・・・! だから・・・!」

 

 アインズ・ウール・ゴウン42人の中で誰よりもロールプレイに拘った男、パールンレヴァクは、それが自然体にしか見えない様子で泣いた。ネカマ特有の調整されたボイスは泣き声であっても違和感がなく、そしてこのような事態であってもネカマとしての演技は消えなかった。本当は演技なんてしていないのではないか、実は性同一性障害か、はたまた多重人格ではなかろうかと思わせるほどその声は自然そのもの。

 ウルベルト・アレイン・オードルとパールンレヴァクは大の親友であった。そもそもパールンレヴァクがアインズ・ウール・ゴウンに加入したのは、ロールプレイング仲間であったウルベルトの誘いが切っ掛けだ。たっち・みーの脱退後にアインズ・ウール・ゴウンの体質を悪の魔王殿へと誘導したのは、2人が協働しての事だった。ウルベルトがナザリックの階層守護者としてNPCを創る時は、同じように熱くなって協力した。魔王ロール全開で他のギルドに侵攻し、ワールドアイテムを略奪した時も、ウルベルトとの合体技が決め手だった。2人だけでワールドエネミーに挑み、辛くも攻略し、『2人だけで戦闘を開始し両方が生き残ること』を条件としてドロップした隠しアイテム"二十と呼ばれるワールドアイテムのひとつ"を手に入れた時なぞは今でも思い出せる。パールンレヴァクにとってウルベルトとは、このサービス終了日を一緒に過ごしたい1番の仲間だったのだ。そのウルベルトが大怪我をして、今にも死にそうだと、通話で直接聞いた。10年近くを共に遊んだ、気心の知れた友人の瀕死。今のパールンレヴァクの心痛は計り知れないものがある。

 

「ウルベルトさん・・・」

 

 それ以上は、声にならなかった。どうして、と口の中で疑問の声が消える。そして、モモンガもまた、静かに涙した。

 モモンガにとってもウルベルトは良き友人だった。モモンガ、ウルベルト、パールンレヴァク、この3人は一つの共通点を持つが故に、親密な関係を築くことができたからだ。『若くして両親を亡くしている』、この境遇を同じくする事が、3人に打ち解ける切っ掛けを作ったのだった。中二病でロールプレイは過激だし、嫌味ったらしい言葉使いのせいでメンバー同士のいざこざの発端になったり、色々と問題のある人間だったが、それでも一緒に遊んでいて楽しい仲間だったし、なにより心を開いて話せる数少ない友人だった。そんなウルベルトとの悲しい別れは、涙を堪えられなくて当然だ。

 

 悲しみの円卓の間に「ピピッ」という電子音が響く。予想以上に大きく響いて聞こえたように思えるそれは10分毎のアラーム、23時50分を報せる音。そう、サービス終了まで、残り10分を切ったのだ。

 モモンガは静かに立ち上がる。そして、壁に飾られた至高の一品へと向かう。それはナザリックの最奥に眠る最強の装備品、アインズ・ウール・ゴウンを象徴する物、ギルド武器"スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン"。今まで一度も使われた事のないギルド武器を手にし、モモンガは声を上げた。

 

「パールンレヴァクさん! 行きましょう! ウルベルトさんの魂に捧げるべく、ナザリックの全てを集めるんです!」

 

 モモンガの声を聞き、パールンレヴァクが肩を震わせた。立ち上がり、涙を拭き、そして前を向いた。

 

「行こう! モモンガ!」

 

 悲しみを秘めて、2人は玉座の間へと向うべく、円卓の間の扉を開けた。通路にはかつてのメンバーの忘れ形見であるNPC達が控えており、2人が近づくとプログラムに従っておじぎをした。

 

「お前達、全員付いて来い」

 

 モモンガの声に従い、NPC達はただついて歩く。

 魔王が座すべきとでもいうのか、荘厳な雰囲気を感じさせる、正に絶対者の間。玉座の間。そこに、NPCの階層守護者統括が控えていた。"タブラ・スマラグディナ"が創造せしサキュバス、アルベドである。アルベドは静かに微笑み、2人を歓迎しているかのようだった。

 パールンレヴァクはアルベドへと近づき、その美しく作られた顔に触れた。

 

「嗚呼、アルベドよ。お前には悲しいことを聞かせねばならぬ・・・」

 

 そう言って、パールンレヴァクはアルベドから離れた。ロールプレイである。誰よりもロールプレイに拘ったパールンレヴァクは、どのような時であってもスタイルを変えないのだ。

 

「モモンガ」

「ああ」

「私は宝物庫へ行く。NPC達は任せてよいな?」

「ああ、問題ない。集められるだけ集めよう」

 

 ナザリックに最後まで残った2人である。どこに何があって、どこにどのNPCを配置したかも覚えている。ナザリック維持のため、防衛のため、全てを知り尽くしておかねばならなかった2人の阿吽の呼吸で、玉座の間は共通の意志を形にしていった。

 

「やはり、これだけ並ぶと圧倒的だな・・・」

 

 モモンガが思わず声に出してしまうのも無理はない。ものの数分で集められたのは、ナザリック各階層の守護者たち、すなわち

 "ペロロンチーノ"の娘たる吸血姫『シャルティア・ブラッドフォールン』、

 武人建御雷が創りし蟲王(ヴァーミンロード)『コキュートス』、

 "ぶくぶく茶釜"が愛でし『アウラ・ベラ・フィオーラ』と『マーレ・ベロ・フィオーレ』、

 ウルベルト・アレイン・オードルの創造物『デミウルゴス』、

 そしてパールンレヴァクが産みし悪鬼の双子『ツインズ』である。

 それだけではない、それぞれの階層守護者の副官として設定されている強力な高レベルモンスターと、さらにその下に就く高レベルモンスター達までもが一様に集められ、膝をついてこうべを垂れているのだ。そしてさらに、玉座を飾るように並べられたのは、20個にもなるワールドアイテム。内5つが"二十"と呼ばれるブッ壊れワールドアイテムである。

 

 ウルベルトへと、そして去って行った仲間達へと捧げる鎮魂の集いは整った。

 

 スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを手にしたモモンガが威厳たっぷりな魔王ロールを意識して、カッコつけて玉座に腰を下ろす。サキュバスロール全開のパールンレヴァクが妖艶な仕草で玉座に寄りかかる。

 

「我が盟友、ウルベルトよ・・・———お前が手にし、築いたものは、ここに全てある」

 

 パールンレヴァクは艶のある涙声で言った。

 それに合わせて、モモンガが続けた。

 

「ああ、我らが築き上げたナザリックは、今なお健在である。ウルベルト、お前は良き友であったな・・・———願わくば、もう一度・・・・・・

 

 

   貴方の声が聞きたい    」

 

 

 終末の針が0を指した。

 

 

 

 




 頑張って自分好みなエロエロを書くぞー!(書けない)


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