※この作品はR-18です。

廃人ネカマのロールプレイング   作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会

10 / 24
 この作品における杖ありモモンガはたっち・みーとほぼ互角です。
 なお杖無しモモンガとパールンレヴァクは6:4でモモンガ微有利です。


 夢中になって七千字書いたら深夜3時で、翌日の仕事に遅刻しました。




第九話、神域。

 何が起こったのか。まずはそこから考える。

 

 開始時。目の前、10メートル先に統括殿(アルベド)。その先、30メートル先にパールンレヴァク様。最上位の達人なら30メートル程度の距離はあってないようなもの。初動で機先を見る、などというのは不可能だと考えていた。それは事実その通りだった。

 開幕から猪突な踏み込み(ダッシュ)。最短最速、一直線のダッシュ。コンマでスキルを使用したアルベドの声。「えっ」と聞こえた瞬間に、パールンレヴァク様の姿が溶けるように霧散した。

 開始から1秒も経たぬうちに主導権を奪われて布石まで打たれた。そこまで考えたところで、側頭部に衝撃。それが次元跳躍(フェイズ・シフト)から実体化したパールンレヴァク様の蹴りによるものだと悟り、アルベドの声の理由がスキルの無効化であると知り、反撃のために最大の防御を固める。

 追撃がこない1秒を無為におくる。顔を上げて、抵抗も出来ずメッタ打ちにされている盾役(アルベド)こそがパールンレヴァク様の狙いと理解する。アルベドを助けるため、素早く踏み込む。アルベドへの攻撃の最中ならば防御も回避も出来ないタイミングが存在するはず。絶え間ない連打であろうと、見極めるのは難しくない。奪われた先手の分を取り戻すためにも、一手で可能な限りの結果が欲しかった。最速最高の一撃を見舞うため、斬神刀皇を振り上げ、同時にサイドステップ。瞬間、闇属性のエネルギーが足元から吹き上がり、動きを封じられる。

 いつの間に。そう思い、麻痺によって動けないなか。ただ、目の前で打ちのめされるアルベドを見ているしか出来なかった。やっと動けるようになった時にはもう、アルベドは数十の状態異常(デバフ)に埋もれて、死んでいないだけ、とどめを刺されていないだけとなっていた。いかに体力(HP)が残っていようが、身動きのひとつも取れないのであれば、それはやはり死んでいるのと同じだった。

 守護者の中でも最高の防御能力を持ち、最高のタフさを持つ、あのアルベドが、いまはあのざま。その事実を目の当たりにして、たったの一撃でさえまともに受ける事が出来ないという状況に思考が加速する。だが、次に見せられたのは分身と幻影の展開。

 そこからはよく覚えていない。次元跳躍(フェイズ・シフト)や上位転移(グレーター・テレポーテーション)への対抗策として、毛ほどの動きを見せた瞬間に360度の全方位へ武器を振るったのだが、手応えが無かったばかりか振り終わりに背中を殴られたのが始まりだった、と思う。後は一挙一動のたびに身体の末端を攻撃され続けた、と思う。何度か反撃したつもりだが、斬ったのが分身なのか本体だったのかは分からなかった。

 

 ただひとつ、はっきりと解るのは———

 

 

———

 

 

 パールンレヴァクは切り飛ばされた腕を拾い上げ、切断面を合わせる。肉体操作を可能とするシェイプシフターとしての能力と悪魔の基礎能力をもってすれば、傷口の癒着なぞ造作もない。

 ギルドメンバーの大半から『狂ってる』と言われたほど歪(いびつ)なビルドゆえに、100レベルとは思えないほどに最大HPが低いため、たった一撃で腕を切り落とされるなどという事が起きる。ガチビルドではない、ロマンビルドとも言えない、気ままなロールプレイと殺意の高い構築の折半(せっぱん)が偶然に導いた“異常”。それがパールンレヴァクであり、それがコキュートスとアルベドを瞬殺した戦術を生んだのであった。

 

 パールンレヴァクは砂に滴る音を聞く。コキュートスのサファイアのように艶やかな瞳から、熱い涙が滴り落ちていた。勝者の義務を弁え、パールンレヴァクはコキュートスの前へと歩み寄る。

 

「がむしゃらでも当てずっぽうでも、あの戦術の中で私に一撃を浴びせたインファイターはいなかった。お前が初めてだ。誇るがいい、コキュートスよ。お前はナザリック地下大墳墓の階層守護者に相応しい戦士である」

 

 パールンレヴァクの称賛の言葉を聞き終わって、コキュートスは泣き崩れた。武器を放した手は闘技場の砂を握りしめていた。蟲特有のギィィという鳴き声は嗚咽か、苦悶か。

 やがて、身体を震わせたまま、コキュートスは顔を上げた。そして、濡れた瞳にパールンレヴァクが映った。

 

「私ハ・・・・・・コンナニモ・・・・・・弱カッタノデスカ・・・・・・」

 

 その声を聞いて、観客席のシモベ達は思いを等しくする。「仕方がない」。相手はあの至高の存在(パールンレヴァクさま)。廊下のメイドが、玉座のアルベドが、至高の存在の会話を小耳に挟んでいる。曰く、「パールンレヴァクのおかげで後が楽だった』。曰く、『先陣切るならたっち・みーかパールンレヴァクかなあ』。曰く、『ウルベルトとのコンビネーションも凄いけど、モモンガさんとの組み合わせが最恐最悪だなぁ〜』。凄いらしいと聞いていた漠然とした伝説が事実だったのだ。階層守護者が成すすべなくやられても当然だと。

 

 

「私ハッ・・・!! 貴方(アナタ)ガ全力(ゼンリョク)ヲ出(ダ)シ渋(シブ)ル程度デシカナイノカ・・・!!」

 

 

 コキュートスの慟哭が闘技場全体に響いた。

 

「いま、コキュートス様は・・・なんと?」

「そんな、まさか」

「え、え、ど、どういうこと?」

「マーレ! 静かに!」

 

 実際に戦ったコキュートスだけに分かる事がある。想像の遥か先を行く言葉に、ナザリックのシモベ達が震える。

 だが、パールンレヴァクは首を振って否定した。

 

「それは違う。違うのだ、コキュートス。私は本気で戦ったし、全力を出した」

「シカシ・・・!」

「お前が言っているのは“死力(・・)“だ。そう、確かに、今以上の、数段上の力を発揮できるとも。しかしそれは”死力“。使えばお前もアルベドも殺してしまうだろうし、観客席の者も無事では済まない。もちろん、私も無事では済まない。数日は格段に弱体化する。いや、先のようなまぐれの一撃で死にかねない。そんなものを使うわけはいかない」

 

 『神』、言葉にするならそれが最も相応しい。ナザリックのシモベは皆そう思っていた。それがまさか、本当に、神域の存在であったとは。ならば、他の至高の方々も・・・。

 

「お前も、観客席に影響しないようにと、スキルや魔法を控えていただろう。同じだよ。限られた条件下で、制約下で、出せる限りの全力を尽くした。それだけなのだよ」

 

 静まりかえった闘技場内に、パールンレヴァクの声がゆるりと流れた。

 

 

—————

 

 

 息を飲む音すら大きく聞こえるほどに静まりかえった闘技場。

 血で汚れた砂は取り替えられて、負傷した2人、コキュートスとアルベドは治療を受ける。当然、至高の存在(プレイヤー)であるパールンレヴァクの後に。

 片付けられ、綺麗になったのに、闘技場内はすっかり冷え切っていた。当然と言えば当然か。シモベ達が目にしたのは神の戦いだったのだ。畏怖と畏敬に染まり、誰もが次を想う。即ち、モモンガ様の相手はどんな、可哀想な者なのかと。

 カツカツと硬い足音を聞いて、シモベ達の多くが背筋を正す。

 

 

 至高の存在のまとめ役。

 

 ナザリック地下大墳墓の支配者。

 

 死の支配者。

 

 絶対者。

 

 

 モモンガの入場である。

 

「シャルティア・ブラッドフォールンよ、私の前に立つことを許す」

 

 やはりか、と複数の声が漏れる。至高の存在のまとめ役たるモモンガ様の相手を務めるとなれば、それはもう階層守護者総合最強でもなければ他の誰にも不可能であろう。後(のち)のリスクを鑑みないのであればナザリックの秘密兵器を出すということもできるが、それは出来なくもないだけで、やっていい事ではない。つまり今、モモンガ様の相手として相応しいのは守護者最強のシャルティア・ブラッドフォールンのみ。

 真紅の鎧は強者にのみ許される威厳を備えており、その右手に握られる奇怪(きっかい)な槍はスポイトランスというブッ壊れ一歩手前の性能を持つ武器。パールンレヴァクによってコキュートスとアルベドが瞬殺された時点で、この展開を覚悟していたのだろう。シャルティアは完全武装にて闘技場の砂を踏んだ。

 シャルティアの瞳に恐縮は無い。臣下として、階層守護者として、そしてなによりペロロンチーノの最高傑作としての自負が、彼女の強靭な意志を形作っていた。決して無様な敗北はしないと、シャルティアの全身より立ち上がる闘気が力強く声を発していた。

 

「コキュートス、君の目算(もくさん)を聞きたいな」

「私も伺いたく存じます。パールンレヴァク様と手合わせをなされたコキュートス様の見るところ、非常に興味があります」

 

 上位の回復魔法による治療を受けて完全復活し、観客席に戻ったコキュートスへ。デミウルゴスとセバス・チャンが問う。コキュートスはカチカチと顎を鳴らしてから答えた。

 

「9対1、ダナ。モモンガ様ガ9ダ」

 

 TVゲームならば詰みも同然の数字。あまりにもあんまりな評価に、二人は喉を鳴らす。

 

「その根拠は?」

「スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン。アノ唯一ニシテ至高ノ武器ガ、7割ヲ占メル——ソモ、モモンガ様ハ、シャルティアノ全テヲ知ッテイル。ダガ、我々ガソウデアルヨウニ、シャルティアハ、モモンガ様ガ死霊系特化ノ魔法詠唱者(マジックキャスター)デアル事シカ知ラヌ」

「ナザリック最強の武器を持ち、敵の全てを知り尽くした、智健の策略家。ならば、モモンガ様の敗北は万に一つのみ、という事ですか」

 

 セバスはなるほどと言うように息を吸い、言葉を続ける。

 

「ですが、シャルティア様は信仰系の魔法を修めた遠近一体のハイエンドアタッカー。相性という点でシャルティア様の有利は絶対のはず。そこはどうお考えでしょうか?」

「ウム、モットモナ意見ダ。確カニ、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンガ無ケレバ、3対7ト評シタダロウ。ダガ、”アレ”ハ・・・」

 

 コキュートスがそこまで口にした所で、闘技場全体がざわついた。その理由は、モモンガが指した先にあった。

 

「パールンレヴァク、其方(そなた)の拳を私に向ける事を許す。私の前に立つがよい」

 

 その挑戦に、闘技場内は騒然となる。階層守護者総合最強、シャルティア・ブラッドフォールン。コキュートスとアルベドの2人を瞬殺した神域の存在、パールンレヴァク。この二人を同時に相手にするなどと。何かの冗談であってほしい、そう思う者すらいた。

 だが、冗談なぞどこにもなかった。パールンレヴァクは静かに飛び上がり、砂埃ひとつ立てずにシャルティアの隣へ降り立つ。その表情は真剣そのもの。目を凝らせば耳の裏に冷や汗が見えるところ、シャルティアとの二人掛かりですら勝利の確信が持てないという焦燥の顔やもしれぬ。

 

「”死力を出す“。シャルティア———10秒稼げ」

 

 静まりかえる闘技場。パールンレヴァクの声が響きもしないのは、空間に満ちる圧力のせいか。

 そして、モモンガがスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンの先を地面に叩きつけ、それが開始の合図となった。

 

 

—————

 

 最速。コンマで宙を駆け、無詠唱化した信仰系魔法の魔法陣を展開しつつ、シャルティア・ブラッドフォールンが飛ぶ。その背後、パールンレヴァクが、どうやって行使を可能としているのか異なる二つの無詠唱化した魔法陣を展開して、目視できるほどに重厚な魔力をたれ流す。そして、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンが輝く。

 

「毒の濁流(ポイズン・デリュージ)!!」

 

 モモンガの眼前の空間より突然、猛毒の濁流が溢れ出す。嵐の中の川の氾濫のごとく荒れ狂う猛毒の液体は見るもおぞましい色をしていて、もし触れればただでは済まないことは明白。そして、本来ならば魔法の位階からしてありえない規模は、『杖』の力を示していた。

 受けるは死に直結。回避は背後を見捨てるも同然。そも魔法戦で勝てるはずもないのだから、初手からの出費は視野の内。シャルティアは無詠唱化に加えて最大化、魔法位階上昇化を足して、魔法解体(マジック・ディストラクション)を放つ。瞬間、毒の濁流は固体になったように停止し、ガラスのように砕け散り、現実に否定された夢幻のごとく消え去った。そしてすかさず盾の用意。

 

「魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)・石壁(ウォール・オブ・ストーン)!」

 

 泥土のように重たく濁った毒の濁流を放っての攻撃は地上制圧と視界阻害を目的としたもの。ならばこちらがそれを代わりにやってみせて、困惑による時間稼ぎを狙う。それがシャルティアの取った戦術。もちろんただ壁を作っただけでは目視を防ぐしか効果はない。アンデッドの探知能力も有するモモンガの前に、単なる石の壁なぞ薄手のカーテンのようなもの。石壁越しに一挙一動を見られている事を知りつつ、シャルティアは次の一手を構える。

 

(裏よ! 裏をかくのよ私(シャルティア)! そして狙うは意識の隙間! 『階層守護者が無駄な攻撃なぞするはずがない』、誰もがそう思う実利の無さが困惑を生む。そしてパールンレヴァク様が切り込むチャンスを得られる唯一となる!)

 

 「魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)! 三重化(トリプレット)最大化(マキシマイズ)」

 

 詠唱の途中で、シャルティアは地に堕ちた。起き上がれないほどの力が全身に掛かっている事から上位の重力操作の魔法が拡大化されたものであろうと判断し、もういちど魔法解体を唱えようとした時。頭上で上位魔法蓄積(グレーター・マジックアキュリレイション)の解放時特有の音を聞く。そして降り注ぐのは膨大な神聖属性。今すぐに魔法解体を発動しなければと焦って———

 

(声が出ない!? 詠唱阻害の状態異常か!? いつのまに!?)

 

———事態の深刻さに気付く。『杖』は死霊特化のモモンガに神聖属性の行使すら可能とするものと知って。視界を防いだのが裏目に出たと知って。この攻撃の後、体力が残っているのなら、玉砕覚悟で接近戦に持ち込み、スポイトランスによる直接攻撃でライフドレインを行うしか活路は無いと悟る。

 

(耐えるっ! 耐えてみせる! こんな早くに、終われないのよっ!!)

 

 歯を食いしばり、覇気を鎧として纏うかのように、シャルティア・ブラッドフォールンが堪(こら)える。そして雨と降る神聖属性の魔法が直撃する直前。

 

「死の魔の雷轟(デスエナジー・ボルテックス)!!!」

 

 恐ろしい闇の魔力が暴虐の嵐となって、降り注いだ神聖属性の魔法を打ち砕いた。

 パールンレヴァクの準備が整ったのである。

 

「よくやった、シャルティア! これでようやく始められるぞ!」

 

 魔力の嵐が消え、砕けて塵となった石壁の砂ぼこりが晴れて、パールンレヴァクがついに死力の姿を示す。頭に生えた角には浮かび上がる血管のごとく赤い魔力が走り。四肢と尾の皮膚を突き破って出た血液は結晶化しており、赤黒い黒曜石を思わせる。両手の爪は鋭く伸びて、何であれ容易く切り裂くであろう威圧を放つ。暴虐と殺意が受肉した存在、言い表すならばそうなるだろうか。これがパールンレヴァクの奥の手、自己を顧みない必勝必殺の姿。

 

 勝敗がどうなるかまるでわからない展開に、観客席のシモベ達は固唾を飲んで目を凝らす。階層守護者総合最強を軽々とあしらったモモンガ様は不動にて構え、パールンレヴァク様は覇気充填にて戦意軒昂、そしてシャルティア・ブラッドフォールンが立ち上がる。瞬きすらも許されない空間が緊張で張り詰めていく。

 

「いくぞ! シャルティア!」

 

 最初に動いたのはパールンレヴァク。膝が深く沈みこんだと思った次の瞬間には姿が消え、その脚はモモンガの前に届いていた。が、同時に突き出した手刀は空を切った。音速を遥かに超えた踏み込みが生んだ風が吹き抜けたあと、残るのは左わき腹を失ったパールンレヴァクのみであった。

 

「パールンレヴァク様ーっ!!」

 

 信じ難い光景にシャルティアが絶叫する。だが、シャルティアは動くことが出来なかった。絶叫と同時に足元から吹き上がった無闇(トゥルー・ダーク)が、一撃でシャルティアの最大HPの4割を消しとばしたのだ。あまりの衝撃にたたらを踏むと、耐性貫通の強化が施された麻痺の上乗せ。

 

「ぬがぁっ!!」

 

 瞬時に飛び掛ったパールンレヴァクがシャルティアの背後の空間へと飛び蹴りを打ち込むが、これもまた空振りに終わる。そして飛び蹴りからの着地と同時に、両足が膝の上で切断される。

 

「この私を相手に、時間を与えすぎだ」

 

 霧の中から出て来るようにして、何も無い空間からモモンガが現れる。その右手には清浄な輝きを放つ一振りの剣が握られていた。コキュートスは一目で武器の性質を見抜き、決着を幻視した。

 

「させんっ!」

 

 倒れたシャルティアへと歩み寄るモモンガの足元から鋭い一撃が伸びる。砂を潜って奇襲をかけたパールンレヴァクの尻尾である。だが、尾が貫いたのは幻影。『杖』が作り出したモモンガの虚像、パールンレヴァクの眼をもってしても見切れない上位の幻術である。

 

「あがっ・・・」

 

 完全不可知化(パーフェクト・アンノウンアブル)を解いたモモンガの一撃。シャルティアの背中に剣が突き刺さり、胸を貫いて地面まで貫通する。『杖』の力で一回限りの防具貫通を付与(エンチャント)された剣は、まるで豆腐を刺すかのようにするりと貫いた。

 

「アンデッドのスキルを封じる『帰服の剣』だ。シャルティアはもう、指一本も動かせん」

 

 モモンガが言い終わるよりも先に、パールンレヴァクの姿が消える。先の一戦で見せた次元跳躍(フェイズ・シフト)による奇襲である。たとえ両足を切り落とされようと、完全密着に持ち込めばフィジカルで戦えるパールンレヴァクに起死回生の手がある。そして悪魔の羽は健在。空中での機動力もあれば、足が無くても戦える。

 そしてパールンレヴァクの実体化。完全に存在を消してからの、背後、足元への実体化。モモンガの背後から尾による拘束で動きを封じようという策はしかし、一瞬で消えてしまった者をどうこうする事も出来ず、パールンレヴァクの尾が空を掴む。

 そしてオウム返しの如く、パールンレヴァクの背後にモモンガが実体化した。

 

「不死者の接触(タッチ・オブ・アンデス)——麻痺」

 

 パールンレヴァクの後頭部を鷲掴みにし、強力な麻痺攻撃。歪と評されるパールンレヴァクのビルドはそのもの通り極端であり、防御特性は無いも同然。故に同じサキュバスなのにアルベドの催淫効果の影響を受けたし、死力を尽くすステータス強化を発揮しても『杖』が自動で付与する強化を上回る事が出来ずに麻痺が通る。

 

「次元跳躍が出来るのはお前だけではないぞ。侮ったな、パールンレヴァク」

 

 そして、パールンレヴァクの腕が力なく垂れ下がって、監督役は銅鑼を鳴らした。

 決着である。




 書いていて気持ちが良かった(満足)
 やっとナザリック視点が一段落して、ようやくカルネ村やガゼフ視点に移れるよ。


 原作との相違点をいくつか挙げておくね。
 ・まず、ギルド:アインズ・ウール・ゴウンが原作以上にクソ迷惑な荒らしギルドになっている。ウルベルトとパールンレヴァクのせいだが。モモンガもノリノリで魔王ロールをやっていたので、魔王らしい振る舞いは出来る。
 ・アルベドの設定に手が加えられていないので、原作で最後に書き込んだモモンガの影響も無い。よって他のギルドメンバーを恨んだりモモンガ様至上主義になっていない。
 ・パールンレヴァクが第九階層に守護者を置いている。ギルド侵略や略奪でアインズ・ウール・ゴウンのギルドレベルが原作より上がった結果の事だが、大差はない。
 ・本作オリジナルの魔法やスキルが登場する。まあぶっ壊れはないので安心してほしい。
 ・ニグンのキャラ解釈が違う。無理矢理にドラマチックにしたせいでこうなった。許してほしい。(オマージュについては分かってくれたかな?)

 その他様々な捏造設定や原作改変があるが、原作をしっかり読んでいる人には「ふーん」でしかない些細なディテール変更なので、特に狂った点は無いかと思う。もし不思議に思ったり異常と感じたところがあったら、メッセージ機能で連絡下さい。感想欄には書かないでね。







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