※この作品はR-18です。

廃人ネカマのロールプレイング   作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会

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 遅くなったのは鬱が激しいからです。ごめんね。
 で、偶然にも区切り良く十話でナザリックから視点が動いたので、これからサブタイトルも変わっていくよ。まあ物語の変化に伴って色々と変えていかなきゃね。
 でまた今回も長いよ。ごめんね。今日追加で500字くらい足したんだけど、実はさらに千字くらい足す予定だったのね。でもあまりに長すぎるってんで、区切りつけたの。
 次からようやくカルネ村の動向や王国や帝国の対応に移れるよ。ようやくだよ、やっとだよ。




第十話、樹立と議決。

 

 ナザリック闘技祭が終わり、ナザリック地下大墳墓は第9階層「パーティー・ホール」にて立食会が開かれた。『鎮魂の儀』の予定にはなかった急遽の催しだが、先の闘技祭で負傷したパールンレヴァクやシャルティア・ブラッドフォールンの治療のために時間を作るのが理由だと分かっているため、思いがけず得られた一息つける時間を有り難く思い、ほとんどのシモベは一時の団欒(だんらん)を楽しんでいた。

 

「本当に凄かったわね!」

「もういつ心臓が破裂するかと!」

「気付いたら喉がカラカラ! ホントーに緊張したわ!」

 

 手早く料理や酒を並べ終えたメイド達も会話に花を咲かせる。

 

「感服ノ一言ヨ・・・」

「イヤ正シク。生涯忘レ得ヌモノデアッタ・・・」

「畏敬ノ念ガ深マルバカリヨ」

 

 種族や管轄でいくつかのグループに分かれる中、コキュートスの部下達は一様に同じ言葉を呟いている。シャルティアの部下である吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)達は身体をくねらせて至高の存在やシャルティアの勇姿を讃える。

 そんな中、ニコリとも笑わず、思いふける様子もない2人がいた。

 

「見たか、あれ」

「ああ、見たよ」

「流石だな」

「流石と言うしかないな」

 

 第九階層の階層守護者、悪鬼の双子、ツインズである。

 

「今でも信じられんよ」

「手も足も出ないなんてな」

「それが杖の結果じゃないというのだからな」

「聞いてはいたが、この眼で見ても信じられん」

「あの御方が負けるなんてな」

「でもあの御方はきっと」

「『当然の結果』だ」

「なんて言うんだろうな」

 

 全く同じ声色で、全く同じ声量で、全く同じイントネーションで喋っているものだから、まるで1人で喋っている独り言のように聞こえる二人の会話。第三者が聞けば、その違和感を気持ち悪いと感じたであろう。そんな会話の中に、臆せず立ち入る一人がいた。配属が第九階層であるためツインズの副官に位置するナザリックの執事長、セバス・チャンである。

 

「セバス」

「どうだ」

「問題ありません。ひとまず料理は行き渡りましたし、酒のほうも満遍なく。メイドの半分は待機させ、10分毎に交代するように指示いたしました」

「それでいい」

 

 簡素な返事を返して、ツインズはまた正面を向く。ツインズの二人の動作は寸分違わず同じ速度なものだからまるでアンドロイドか機械のようで、とても気味が悪い。しかし、その得体の知れなさ、気味の悪さを目の当たりにしても、セバス・チャンは下がらない。「もういいから下がれ」と言われたも同然の突き放しかたであったにも関わらずだ。

 

「まだ」

「なにか」

「あるのか」

 

 片方の言葉を引き継いで喋るせいで合成音声のような不快感。しかし、ツインズの悪魔らしい意地悪をどこ吹く風と、セバスは口を開く。

 

「お二方のご意見を伺いたく思いまして」

 

 セバスが言うところ、先のナザリック闘技祭のメインイベント、至高の存在の戦いについての意見を求めてのものであろうことは明白。しかし、ツインズは互いに顔を見合わせると、頬を歪ませて薄気味悪い笑みを浮かべた。そして、揃ってセバスの方を向き、揃って左手の人差し指を立てて、言った。

 

「「次の機会にな」」

 

 次の瞬間、セバスが口を挟む前に、大きなベルの音が鳴り響いた。

 

『ホールの皆、玉座に集まりなさい。鎮魂の儀が再開されます。至急集まりなさい。』

 

 魔法で届けられた守護者統括、アルベドの招集である。

 セバスは表情を変えないで、姿勢正しくお辞儀をし、下がる。その後ろ姿を、ツインズは薄気味悪い笑みを浮かべたまま見ていた。

 

 

———

 

 ナザリック地下大墳墓の最奥、玉座。その荘厳な場に、至高の頂(イス)に最高支配者たるモモンガが座る。瞬間、パールンレヴァクに届けられる無詠唱化された伝言(メッセージ)の魔法。

 

『いやいやいや! やっぱキツいですよこれ!!』

 

 頭を垂れて座す数多のシモベ達から注がれる崇拝と畏敬の念にプレッシャーを感じるモモンガの悲鳴である。

 

『・・・もう慣れたものだろう?』

『どうやって! 慣れるんですか!』

『・・・・・・こちらが聞きたい。どうしてうろたえる?』

『ボロ出しちゃわないか怖いってんですよ!!』

『大丈夫。安心しろ。モモンガなら大丈夫だ』

『なんの根拠があってそんなー!?』

 

 未だ覚悟の決まらないモモンガであるが、時間は彼を見捨てた。守護者統括、アルベドが、控えるシモベ達へ頭を上げるように号令を出してしまったのだ。そしてアルベドは「準備が整いました」とでも言うようにモモンガの顔を見て微笑を浮かべるのだ。もう時間切れ。否が応でもでも是が非でも何が何でも、やらねばならない。

 

「ん、んっ・・・。ああ、皆、楽にしてくれ」

 

 楽しみにしていた地上進出、新しい冒険の始まりのため、乗り越えなければならない儀式。モモンガは半ばヤケクソじみて、駆け出すように声を発した。

 最後の離別者、ウルベルトへ。そして過去にアインズ・ウール・ゴウンを、ナザリック地下大墳墓を去って行ったギルドメンバーへ捧げる、鎮魂の、告別式。その最後。

 

「皆、よく聞いてくれ」

 

 ついに、悲しみの時が終わる。玉座の間に集まった全てのシモベが、息を飲んだ。

 

「パールンレヴァクとの永き協議の果て、ついに結論を出すことができた。我らができる事はなにか? 毎日、同じ事を考えていた。その答えをようやく、言葉として、皆に伝えられる。では、心して聞け!

 

 “我らアインズ・ウール・ゴウンは、新たな世界を征服する!”

 

 そう、世界征服、世界征服だ!その理由を説明しよう——まず、アインズ・ウール・ゴウンの起こりは何であったか? それは“たっち・みー”だ。たっち・みーの夢は何か。それは異業種の救済だ、そして弱者の庇護だ! 次に、“ブルー・プラネット”の夢は? 大自然の保護だ。“ペロロンチーノ”が愛したものは? 自由にして多様性を有する恋愛だ。“へろへろ”が求めたものは? 優秀な人材が運営する酷使や使い捨ての無い社会システムだ!」

 

 モモンガが語るのはギルドメンバーがかつて抱いた夢、そして愛したもの。それらはほぼ全てが世界規模、断言する姿を見れば、シモベ達には一切の矛盾も齟齬(そご)も妥協も許さない壮大な夢物語に聞こえた。

 モモンガの宣言は続く。

 

「ならば、どうする? 私は考えた。どうすれば、アインズ・ウール・ゴウンを作り上げた皆に恥じない働きが、皆に納得してもらえる振る舞いができるだろうかと。答えは一つ。そう、『世界征服』だ。我らがナザリックごと転移したこの新たな世界の全てを征服し、統一する! そして! 自然を守り、個々の権利を守り、弱者が怯えて暮らすような事がない世界を、異形種が排他される事がない世界を、誰もが過度な労働を知らぬ世界を、誰もが自由に愛する事のできる世界を、皆が幸せになれる世界を創るのだ! そのためには! そう・・・」

 

 モモンガは玉座から立ち上がり、知らしめるように両手を挙げた。

 

「世界征服しかなかろう?」

 

 瞬間、玉座の間は歓声で爆発した。

 

「アインズ・ウール・ゴウン万歳!! アインズ・ウール・ゴウン万歳!!」

「アインズ・ウール・ゴウンの世界統一!! 約束されし幸福!!」

「アインズ・ウール・ゴウン万歳!! モモンガ様バンザイ!!」

「アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ!! 統一世界に栄光あれ!!」

「モモンガ様万歳!! パールンレヴァク様万歳!!」

「世界征服!! 至高の存在の悲願成就が来たる!!」

「アインズ・ウール・ゴウンが救世の形!! 全ての幸福はここにありぃ!!」

 

 シモベ達は1分近くも興奮のままに声を上げ続けた。やがてモモンガがゆっくりと着席すると、シモベ達も合わせて声を抑えた。しかし、興奮は尽きない。先のナザリック闘技祭以上に、全てのシモベが血気を煮えたぎらせていた。

 シモベ達が落ち着くのを待ってから、モモンガは演説を再開した。

 

「そう、我らアインズ・ウール・ゴウンは世界征服のため、地上に進出する。だが、それにあたって、私は考えた。“このままでいいのか?”と。それはそう、“モモンガとして”、だ。アインズ・ウール・ゴウンの全てを、夢と願いを、その全てを背負って立つのだ。ならば———」

 

 次の言葉を待ち切れず、シモベ達は眼を血走らせる。

 

「———私こそが“アインズ・ウール・ゴウン”となるしかない、そう考えたのだ。故に! これより、私は名を変える!

 我は“アインズ・ウール・ゴウン”!! 我こそが“アインズ・ウール・ゴウン”!! これより私のことはアインズ・ウール・ゴウン、アインズと呼べ!!!」

 

 再度、爆発したかのような歓声と絶叫の渦。万歳、万歳と止まぬ声の嵐。

 

「あー・・・もちろん、ナザリックでない者が聞いていない所では、今まで通り『モモンガ』と呼んでくれてよいぞ?」

 

 綺麗にオチがついたところで、歓声と笑い声が渦巻く玉座から、モモンガことアインズ・ウール・ゴウンとパールンレヴァクの二人が転移した。

 歓喜と歓声。狂喜と嬌声。ナザリックはこの日、一番の揺れを記録した。

 

 

———

 

 一時的な会議室へと改装された第十階層の執務室。巨大なテーブルの最上位に座るのは当然最高支配者、アインズ・ウール・ゴウンことモモンガ。その右手にはパールンレヴァク。続いて守護者統括、アルベド。続いて階層守護者達、シャルティア・ブラッドフォールン、コキュートス、アウラ・ベラ・フィオーラとマーレ・ベロ・フィオーレ、デミウルゴス、ツインズ。そして領域守護者「恐怖公」の後に二つの席を開けて、呼び寄せられた全員が揃う。

 モモンガ(アインズ)の両脇に控える二人を見れば、空いている席の理由は誰の目にも明らか。階層守護者も恐怖公も知らぬ二人は何者かと、空気が微妙な重さを持つ。そして、ようやく緊張に打ち勝って声を出すことができたアインズの言葉で、議会が開始される。

 

「あー・・・、んんっ・・・——着席の前に、皆に紹介したい者がいる。この議会に、そしてこれからのナザリックの助けとなってくれる有能な者たちだ。まずは『パンドラズ・アクター』、私が創造した領域守護者で、宝物庫を管理している者だ」

 

 アインズが示したパンドラズ・アクターなる者は何とも奇妙な存在であった。身に付ける軍服は古い時代の帝国を思わせる重々しさと威厳を形にしているが、全体的にどノーマルな黄色であるためにコミカルな印象もあり、“ドッペルゲンガー”の素顔である卵のように“つるん”とした頭部に埴輪(ハニワ)のごとく黒い丸が3つ付いただけの記号じみた顔が大将か元帥かという軍服の装飾とミスマッチで、服に着られているかと思えば立ち姿はそうでもなく、なんとも言語化が難しい奇妙極まりない存在だ。

 

「皆様、お初にお目にかかります。御紹介に預かりましたは私(わたくし)、パンドラズ・アクターでございます。これより宝物庫を出て、皆様と同じく、我が父、モモンガ様のお側で働かせていただきます! なにとぞ、よろしくお願い申し上げます!」

 

 パンドラズ・アクターのまるで舞台俳優のように声を張り上げ響かせての自己紹介に、守護者達は眉をひそめ、アインズがうつむく。というのもこのパンドラズ・アクター、モモンガのロールプレイがノリに乗っていた時期に作られた、モモンガの厨二病的趣味全開のNPCなのである。モモンガがカッコいいと思った軍服を着て、カッコいいと思ったドイツ語を多用し、カッコいいと思ったオーバーで派手なポーズを決める。当時のモモンガは本当にそれがカッコいいと思っていたが、落ち着いた今になっては自身の若気の至りをまじまじと見せられているようなもの、多くの人間がそうであるように、気恥ずかしさに身悶えしてしまうのである。

 

(うっわー・・・きっついわー・・・)

 

 これ以上は見ていられないと、アインズは次なる新顔を紹介する。

 

「そしてこちらが『オーメンダール』。パールンレヴァクが創造した執務室の領域守護者で、総務尚書(しょうしょ)でもある。アルベドやデミウルゴス、そしてパンドラズ・アクターと並ぶ知恵者にして策謀家だ。今後は尚書官としての役割だけでなく、参謀の一人としても活躍してもらうつもりだ」

 

 一歩進み出てお辞儀をするのは人間にしか見えない男。だが、いかに外見が人間のようであろうと決して隠すことの出来ない存在感、それは彼がデミウルゴスと同じ“悪魔”である事を示していた。灰のように白い肌、漆黒というべきほどに黒い髪と黒目。そして奇妙な事に、着ているのは先に紹介されたパンドラズ・アクターと同じく軍服。こちらは装飾が控えめで、黒を基調としているために落ち着いた雰囲気を思わせる装いとなっている。

 

「オーメンダールと申します。尚書官に過ぎない身ですが、身命を尽くして至高の御方々の一助となれるよう努力する所存。皆さま、よろしくお願いします」

 

 その声質、その口調、その態度、かつてのギルドメンバーのオタク同盟が声を揃えて『オーベルシュタインだよねこれ?』と言ったのも納得の模造っぷりである。

 ギルドメンバーのオタク同盟はそのもの通りオタクの集まりであり、当然のようにサブカルチャーに精通していた。しかし企業支配の極度搾取社会に生まれ育っては子供が遊びに使える金なぞまるで無く、親の親の親の代、ものによっては更にずっと昔から家にある物しか現物に触れる機会がない人間がほとんど。つまり、子供時代から親の親の親が残してくれた古ぼけた漫画やアニメのDVDにのめり込み、クラシックな価値観を持つオタクが出来上がる環境に産まれた者と、庶民的には裕福な家庭に産まれたが故に最新のサブカルチャーに触れて育った“今時のオタク”との2種類が存在していた。そして、パールンレヴァクは後者であった。

 ある時、オタク同盟の中で「銀河英雄伝説」という古典作品が話題となり、日本のSF界、とりわけスペースオペラの代表作となればパールンレヴァクも触れぬわけにはいかず、ギルメンからOVAのBlu-rayボックスを借りる事となる。そして何十年も昔の作品を観たパールンレヴァクは感銘を受けた。連日深夜までハシゴしての呆けた頭でも、感銘を受けていた。その中でパールンレヴァクが一番気に入ったのが「パウル・フォン・オーベルシュタイン」という帝国の参謀、軍務尚書であった。

 

『こんな頭のいいやつが仕事ぜんぶ代わりにやってくれたらなあ』

 

 その理由はとても下衆(ゲス)で、自堕落で、甘ったれたものだった。だが、それが叶う場所がある。仮想世界、ユグドラシルである。外見も中身もほとんどオーベルシュタインそのままに、とにかく優秀で目端が利いて、尚書官という一日中書類の山を切り崩し続けるような仕事も黙々とこなし、国政についての進言もしてくれて、それでいて大それた野心は持たず、いつ如何なる時も冷静沈着で冷酷、そしてなにより忠誠心が高い、そんな理想の部下として設定したNPC。面倒な仕事を全部押し付けたいというパールンレヴァクの下卑(げび)た欲望の結晶、それがオーメンダールなのである。

 

「では、紹介も済んだ事だし。皆、座ってくれ」

 

 まずアインズが着席し、次にパールンレヴァクが着席する。二人が座ったのを確認してから、残りの全員が着席する。正しく上下関係を弁えた、礼節に則った流れである。しかし、アインズにはそれが辛い。アインズことモモンガは上流階級の生まれではないし、ましてや皇族でもない。なのに、そのような振る舞いを要求されるのである。

 

『あの・・・、やっぱり、あの演説の後にほとんどぶっ続けで会議ってのは、辛いものがあるんですけど・・・』

『我慢してくれ・・・。早く冒険に出たいんだろう?』

『と申されましてもですね、当方といたしましてはですね、暗記能力のほとんど全てを演説に割いておりまして。えー、これ以上の負荷はですね、そのー精神衛生上好ましくないと言いますか、えーその、ですから』

 

 いくら悪足掻きをしようが進むものは進む。アインズの足踏みは誰にも知られず、会議は進む。

 まずナザリック地下大墳墓の外観の改装が挙がり、満場一致で可決。

 次に地上で資材や作物を得る議案が出され、森林の伐採とそれに伴い農場の開拓が可決。

 そしてアインズは頑張って聞き取ろうとしているのだが難しい話すぎてついていけない数十の議案が上の空のうちにトントン拍子で可決されていく。

 ついに地上進出の段階となったが、アインズが出る事に異論は出なかったものの、パールンレヴァクの示した下地作りの案が時間を要した。意を唱えたのはデミウルゴス。

 

「人類国家の情勢調査という点には賛成です。セバスをリーダーに据えるというのも、ソリュシャンを副官とするのも賛成です。ですが、なぜ“一年”もの時間を必要とするのでしょうか?」

 

 デミウルゴスがなにやら意見を発信しているが、アインズにとって重要なのはソリュシャンを離されたという一点である。ソリュシャン・イプシロンはヘロヘロが創ったNPC。そう、あのデスマーチを幾度となく経験してきたどブラックな会社に勤めるヘロヘロが作ったのだ、命令を下す立場でも命令を受けて動く立場でも完璧に仕事をこなす優秀な人材の体現として、ヘロヘロが求めるままに創ったNPCなのだ。そんな臨機応変が自在で演技も出来て行動力もある優秀な人材が奪われるとあっては、アインズが楽をできない。ソリュシャンはナザリックの参謀達が進言してくるアレやコレやの緩衝材として機能し、更にお供を任せるのにピッタリな人材である。そんなソリュシャンが一年も遠ざかる。これはアインズが最も避けたい事のひとつであった。

 しかし、どうにかしてソリュシャンを手元に置きたいというアインズが発言するよりも先に、横槍が入る。オーメンダールである。

 

「セバス殿は人間に対して自然体で親しく接することができるでしょうし、その容姿は人間どもに安心感を与え、違和感を覚えさせる事なく、波紋を起さずに情報収集を成し遂げることでしょう。ソリュシャンを副官として就けるのも大いに納得です。一見、セバス殿とソリュシャンでは水と油に見えますが、両者共に思慮深く己を弁えた者。セバス殿が意識の外とするものをソリュシャンが見、ソリュシャンが疎(うと)んじるものはセバス殿が拾い上げるでしょう。人選に関して、私(わたくし)はデミウルゴス様と意見を同じくいたします」

 

 オーメンダールはパールンレヴァクがグラスの水をひと舐めするのを待ってから言葉を続ける。

 

「ですが、1年という期間はあまりにも悠長。事実、単純な戦力のみでも近隣の国家群を征服可能なのですから、必要なのはロスを抑えるための工夫のみ。求められるのは詳細ではなく全体像。現状の想定だけで考えても、どれだけ長くとも三ヶ月で充分でしょう」

 

 デミウルゴスの言葉を詳しく解説したものだが、オーメンダールの進言はまったくの正論だった。ナザリックは伏魔殿であるが、国家運営へと舵を切っても問題が無いほどに人材の宝庫。守護者統括のアルベドは宰相として完璧に近い働きをするだろうし、デミウルゴスやオーメンダールがそのサポートをすれば範囲が大陸全土であろうと問題なく機能する。更にはドッペルゲンガーのアクターまで居るのだ、あらゆる事態に対応可能なのは知れたこと。そこに絶対的なカリスマとしてアインズ様が存在すれば、失敗するほうが難しいというもの。調整も補正も後からどうとでもなるのだから、事を始めるのに悠長である必要なぞない。

 が、それでは困るとパールンレヴァクのしかめっ面。パールンレヴァクがわざわざ情報収集ごときに1年という期間を挙げたのは、モモンガ(アインズ)のため。アインズには新しい世界を冒険したいという個人的な望みがある。世界征服を優先してしまうとその分だけ未知の部分が減ってしまうのだ。親友と呼んで差し支えない間柄だ、パールンレヴァクはアインズがどういう人物であるかを知っている。時に自分の意見や意思を殺してでもギルド全体を優先してきたモモンガに、自由となったナザリックで好きに遊ばせてやりたい。パールンレヴァクにはそのような想いがあった。それ故に、モモンガがこの新しい世界で自由に遊べる時間として、1年を用意しようとしたのだ。だが同時に、アインズとなったモモンガがかつての仲間(ギルメン)のためにそれぞれの夢を叶えようとするのも理解している。協議という名目の雑談の中で散々に語り尽くしたものだ。パールンレヴァクには、モモンガかアインズか、どちらを優先するべきかという答えが出せずにいる。デミウルゴスやオーメンダールの言葉を否定して期間を伸ばす理由も無い。

 

 パールンレヴァクが迷い悩んでいると、守護者達が首を動かしたのを感じた。その視線の先はアインズ。

 

「慎重すぎるという事はない。ゆっくりやっていこうじゃないか。時間だけはたっぷりとあるのだから」

 

 まさに鶴の一声。アインズの言葉は守護者達に安心感を与え、答えの無い納得をすら生み出す。アルベドも、デミウルゴスも、オーメンダールも、「しかし」とすら言わずに顎を引いて議決を認めた。

 その様を見て、パールンレヴァクは安堵で胸を撫で下ろしそうになる。そして想う、アインズ・ウール・ゴウンとなっても、モモンガはモモンガなのだと。クセの強い個性的なメンバーが揃ったナザリックを纏め上げたのは、ひとえにモモンガの存在があったからこそだと。

 そして、パールンレヴァクの心は決まった。今優先すべきはモモンガであると。

 

 




 疑問や質問があればメッセージ機能で聞いてね。

 で、一応の補足とか書こうとしたんだけど、酒のせいで何も浮かばないや。
 サントリーの「トリス クラシック」ってウイスキー、かなりいいよ。700mlで800円未満。水割りで飲む分にはジム・ビームと大差ないかな。安くて美味しくて手軽に酔える強いお酒だよ。最速デブ化を恐れないならアイスクリームに垂らすと美味いよ。でもハイボールにするならジム・ビームがいいよ、特にカナダドライのジンジャーエールでハイボールにするのがおすすめ。
 今は寒い時期だし、焼酎を熱燗なりお湯割りにするのがいいかもね。焼酎は飲んでも太らないし。焼酎なら「隠し蔵」がオススメ。安くて美味いよ。焼き鳥や味噌煮を肴に熱い焼酎を飲むのは最高に日本人って感じがして幸せだよ。

 じゃあまたね。

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