※この作品はR-18です。

廃人ネカマのロールプレイング   作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会

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 休日なんで書き上げたよ。今回も一万字越えだよ。長くてごめんね。内容は大したことないから、長いだけだよ。新しい伏線や伏線回収はけっこう散りばめてるけどね。




第十四話、始まりと堕落。

 朝の目覚めとは快適であるべきだ。ましてやベッドの上。いくら安宿とはいえ、ベッドの上で目覚めるのだから、その目覚めは快適でなければならない。でなければ何のために宿を取ったかわからないというものだろう。

 しかし、この日の目覚めは酷いものだった。冒険者モモン一行に加わって最初の朝は、傾けられたベッドから落とされるというあまりにも乱暴なもの。多少寝酒が過ぎたかもしれないが、いくら起き出すのが遅いからといって、起こし方というものがあるだろう。

 

「さっさと起きろ、ウジ虫」

 

 挙句にこの台詞。昨夜、洞窟の入り口で出会った時からずっとこの態度だ。

 

「痛っ・・・てぇ・・・。顔も頭も痛てぇ・・・・・・」

「早く支度をしなさい、ウジ虫。冒険者組合(ギルド)へ行く時間です」

「俺はブレイン・アングラウスだって。覚えてくれよ・・・」

「知ったことではありません。早くしなさい」

 

 ベッドから落とされた拍子に強打した顔をさすりつつ、酒が残っている頭を恨めしく思う。そうして起き上がって見るのは、ベッドを片手で持ち上げているナーセットの姿。

 モモンの旦那の相棒をやっているだけあってこの女、魔法詠唱者(マジックキャスター)なのに身体能力が高い。いや実に並外れてやがる。大の男(オレ)が寝ているベッドを片手で持ち上げて傾けるなんぞ、あの細腕のどこにそんな力があるのやら。旦那(モモン)と同じで、何かカラクリがあるのだろう。2人の強さに何か秘密があるというのなら、是非とも教えてもらわなくっちゃな。

 

「はいはい。すぐ支度しますよ・・・っと」

 

 そう、モモンに鍛えてもらうためにも、今は一緒に行動しなければならない。そのためにも、モモンやナーセットと同じ冒険者にならなければ。信用を勝ち取らない内からものを教えてもらうなんて出来ないからな。

 

 そういうわけで、手早く身支度を済ませる。支度と言っても俺は荷物が少ない。服を着替えて腰に刀を差し、財布を持つくらいだ。

 ナーセットのあとをついて、宿屋の一階に降りる。夜に宿屋へ入った時には何人いるか分からなかったが、朝はそこそこの人数が一階に集まっていた。皆それぞれのテーブルで朝食を取っている。まさに安宿の朝、といった光景だ。

 

「オヤジ、パンをくれ。野菜と玉子を挟んで。それと水筒も」

 

 カウンターに小銭を置きながら言い、俺も注文を済ませる。朝食を抜くと体に悪いからな。しかし、足を止めて振り返ったナーセットが怒りを隠しもしない目で俺を睨んだ。急いでいるのはわかってるが、食うもの食わなきゃ動けないだろうが。それにこっちは朝の小便もまだなんだぞ。

 

「これも支度の内さ」

「チッ・・・」

 

 見事な舌打ちを聞き流し、トイレを済ませに裏手へ出る。今日はやけに太いウンコが出た。人生に新しい道が拓けた記念すべき最初の朝に相応しい快便だ。いや、目覚めは酷いもんだったが。しかし快眠快便は武芸者の嗜み。常に身体を健康に保つのは当然だ。

 

 トイレから戻ると、カウンターにはちゃんとパンと水筒が置かれていた。

 

「いただくよ」

「おう。今日も頑張んな」

 

 愛想のこもっていない機械的な返事を背中で受けて、宿を出る。半分に切られたパンには刻んだ緑野菜と炒り玉子。マヨネーズとマスタードの風味は目を覚ますのにピッタリだった。

 

「で、モモンの旦那とはどこで合流するんだ?」

 

 朝の街を歩きながら空っぽの胃袋に水を流し込んで覚醒させ、パンをかじる。

 

「モモンさ・・・ーんは既に憲兵詰め所を出て、冒険者組合の前でお待ちです。急ぎなさいウジ虫。あの方を待たせてはいけません」

「へいへい・・・」

 

 昨晩、俺とナーセットを宿へ案内してすぐ、モモンは憲兵の詰め所へ向かった。その際「先に寝ていろ」と言われたが、いざ部屋に入ってみるとベッドが2つしかないし、ナーセットは隠しもしないで服を着替え始めるしで、もう訳がわからなかった。荷袋を投げ出し、逃げるように部屋から出て、夜番を終えて就眠しようとしている店主を掴まえて酒を買った。そうしてモモンが戻るまでと思い寝酒をやっていたが、一向に帰ってこない。諦めた俺は深酒にならないうちにと部屋へ戻り、仕方なく空いているベッドへ潜った。朝起きるのが遅かった理由はそれだ。だからモモンがどこでどうしていたかは分からない。

 しかし結局、モモンはあのあと宿へ戻ったのだろうか? 戻ったとして、何処で寝たのか? 不思議に思うが、聞くに聞けない。男2人で一つのベッド、なんて想像したくもないし。もし別のベッドだったら、それを聞いたとたんに張り手(ビンタ)が飛んできそうだ。どうやらナーセットはモモン(リーダー)をとても尊敬しているようで、時々「モモン様」と呼びそうになっている。実際に一度そう呼んで、たしなめられている。そんなナーセットに昨晩の事を聞くのは、やはり躊躇われるな。

 

 アホな事を考えながらパンを食べ終わると、ぴったり冒険者組合の前に到着した。冒険者組合から近い立地にあるから、冒険者御用達の宿なのは当然の話なのだが。

 

「遅くなってすみません、モモンさ・・・ーん」

「まだ抜けないのか、その間延びした敬称・・・」

 

 モモンの旦那は昨日と変わらなかった。声に疲れが出ている様子はない。そこはひとまず安心だが、ほんとにいつ寝たんだこの人は。あんな全身鎧(フルプレート)で一晩歩き回ったってのに、こんなに朝が早くて問題ないってのか。どんなタフネスだ。

 ともかくさっさと挨拶を済ませて、懸念事項を確認しよう。いや、憲兵が朝イチで宿屋に踏み込んで来なかったのだから、大丈夫のはずなんだが。

 

「モモンの旦那」

「ああ、ブレイン。おはよう」

「おはようさん。今日もよろしく頼むわ——・・・で、憲兵達はどうだって?」

「やはり、女達は何も覚えていなかった、と。“これで一安心”、だな」

「だな。心置きなく冒険者稼業を始められるってわけだ」

「では、さっそく入るとしよう」

 

 モモンとナーセットの後に続いて、初めて入るエ・ランテルの冒険者組合。出迎えるのは大勢の視線。朝というだけあって、食い扶持にありつこうという木っ端冒険者が大勢詰めていた。

 一応見渡してみるが、誰も彼も大したことはない。銀等級(シルバー)が1人で、ほとんどが鉄等級(アイアン)と銅等級(カッパー)ばかり。食いっぱぐれないようにと朝一番で仕事を求めるのは、下位冒険者である以上は仕方のない話か。

 

「モモンだ」

「ええ、覚えておりますよ。昨日、登録されたばかりの方ですよね。本日はどういったご用件でしょうか?」

 

 モモンと受付嬢の受け答えを聞いて、昨晩の言葉が事実であった事を知る。山賊の隠れ家(アジト)襲撃なんて依頼は銅等級が受けられる範囲を逸脱している。モモンは本当に依頼を受けずにアジトを襲撃したのだ。それも、先輩冒険者の敵討ちでもなく、知り合いの馬車が襲われそうになった報復という理由だけで。いやまあ、あの腕前なら可能だが。というか実際にやってのけたのだが。やはりモモンはどこか普通じゃないな、と改めて思う。

 

 さてさて、さっさと登録を済ませてしまおう。

 

「こちらの用紙に記入をお願いします——それで、お名前は?」

「ブレイン・アングラウスだ」

 

 俺が名乗ると待合室(ホール)がざわめいた。どうやら王国じゃあ俺の名は今でも忘れられていないらしい。あのガゼフ・ストロノーフと対等に戦った剣士、とか言われているのだろうか。そんな風に言われても、今の俺には何にもならん。モモンというはるか強者に出会ってしまった今、——自己卑下のつもりはないが——過去の名声は程度の低いものという認識しかない。

 

「・・・・・・ブレイン・アングラウスさま、ですね。筆記はどのように?」

「自分で書くよ。必要事項だけ教えてくれ」

「かしこまりました・・・。ではまず———」

 

 言われるままに記入を済ませる。これで俺も晴れて冒険者ってわけだ。

 正直な話、冒険者をやろうという考えがなかったわけではない。だが、俺はただガゼフ・ストロノーフに勝ちたかっただけだ。もう一度やつと戦って、今度こそ勝利する。そして俺こそが最強の剣士だと証明する。それさえできれば良かった。だから、俺が求めるのは対人の強さだ。モンスター相手の何でもアリな戦い方は求めていなかった。しかしその考えも改められた。モモンやナーセットという“単純に強い”存在を知ってしまった以上、考えが変わらざるを得ない。そうだ、剣一本で強くなるには限界があるのだ。人間として強くなれば、総合力で高みに昇れる。剣の腕も自然とついてくる。要は付随するものによって剣での戦いも強くなるということ。つまりは、剣に固執しすぎたために、俺は自分の成長限界を見誤っていたのだ。これからその真の意味を、リーダー・モモンから教わっていく。その始まりがこれだ。

 

「これでいいかい?」

「———ええ。記入漏れはありません。証明となるプレートの発行は明日となりますが、今からでも冒険者として活動していただけます。では登録料を」

「ああ、いくらだ」

 

 言われた通りに金を払い、手続きが完了する。さて、さっそく冒険に出掛けるとしますか! そう勇んで振り返った先には、人だかりの中心で質問責めに遭っているリーダー(モモン)の姿。人がペンを走らせている間に何をしているのやら・・・。

 近付いて話を聞いてみると、昨夜の山賊団壊滅はモモンの功績であるという話だった。

 

「銅(カッパー)なのにやるじゃねえか! ええおい!?」

「こりゃすげぇ新入りが来たもんだぜ!」

「先輩の敵討ちのためとはいえ依頼も無しに動くたあ、見上げた根性だ!」

「感謝するぜ、モモン! よくブリタの仇を取ってくれたなぁ! オレもどうにかして、あいつの・・・! うぅっ・・・」

「こいつ、泣くんじゃねえよ」

「おめえはブリタに惚れてたからなあ・・・——おう新入り! 俺からも礼を言わせてくれや!」

「そうだ酒だよ酒! おい! 何でもいいから持ってこい!」

 

 こいつぁちぃーっとばかしマズイな? 助け船を出さないと、俺まで被害を被りかねん。綿密に口裏合わせをしたわけでもないんだ。ボロが出たらそこで終わりだ。

 

「モモンの旦那! 楽しいお喋りの時間は終わりだぜ! 次の用事があるんだろ!」

 

 叫ぶように言ってやると、モモンが手を振って応えた。しどろもどろした雰囲気だったからな、こういうのは慣れてないのかも知れない。助けて正解だった。

 

「そういうわけでな・・・。すまないが、席を外させてもらう」

「おいおい、もう行っちまうのかよ?」

「せめて一杯飲んでけや! ほれ!」

「いや、酒は・・・その・・・」

「祝いの酒だぞ! 飲まねえってのか!」

 

 ナーセットの表情筋が限界に達しようとしているのを見て、群衆に割り込みモモンを連れ出す。

 

 いやはや、これじゃあ先が思いやられるな。このモモン(リーダー)、バケモノじみて強いはいいが、人の扱いに慣れてねえ。この国で、あの腕前で、このまま冒険者を続けるんなら、必ず最上位のアダマンタイトまで登り詰めるだろう。そうした時に今みたいな対応をしてたんじゃ、やっていけないぜ。

 やっぱりこの男、どこぞの貴族の坊っちゃんだったりするのかねえ?

 

 

———

 

 

 バハルス帝国皇帝の忠実な臣下としてその名を連ねる老練、ウィンブルグ公爵。その爵位のとおり、ウィンブルグは上流貴族であり、国家の重鎮である。そんな彼が今、心の底が冷え上がるような死を覚悟しているのは、自らの老醜が原因であった。

 バハルス帝国領内に忽然と姿を現した「邪神教」。司祭や神官を名乗る者が実際に死者を動かしているのを見せられて、ウィンブルグは黒い欲望に呑まれた。口の硬い部下に無垢な子供を攫わせて、地下の祭壇で生け贄と捧げる。何度も何度も繰り返し、殺す。殺して、血を浴び、唄う。いつか、いつの日か、あの若さを取り戻せると信じて。しかし、気がつけば悦楽と退廃に身を浸してしまっており、もはや初心はとても小さなものとなっていた。

 だが、ついに今日、その夢が叶う時が来た。ウィンブルグ公爵の眼前には、真の邪神が降臨していた。神のお力で、願いを叶えてもらえる日が、ついに訪れたのだ。

 

 邪神様は司祭の中に混じっていた若い女を裸に剥き、椅子としてその背に座り、そして幾分か明るい表情を浮かべられた。どうやら溜飲を下げて頂けたようで、多少の安堵に息を吐く。しかし、未だこの身にのし掛かる重たい重圧は消えず。邪神様が満足してない事は明白。願いを聞き届けていただくためにも、更なる贄が必要だろう。

 

「平伏せ」

 

 左手で人間椅子の頭を撫でる邪神様の声。その甘美な音色に脳がクラクラする。まるで酩酊状態。逆らう気持ちなぞ湧くはずもない。一同一斉に膝をつき、首を垂れる。

 

「余の信徒達よ、余を召喚せしめた働き、誠に大義であった———」

 

 静まり返った祭殿に、邪神様の声が響く。

 

「———堕落と悦楽を司る神、このハーヌ(Hahn)ヴル(Vul)ブリト(Brit)がそなたらに祝福を授けようぞ」

 

 その言葉に、身が震える。ついに、ついに、ついにこの日がやって来たのだ。これまでの惨虐は無駄ではなかった。あの若人たちの末路には多少の痛みも覚えたが、今となってはもうどうでもいい。いや、同じ贄で満足していただけるならば、さらに屍を積み重ねることも厭わない。なぜなら、ここに本物の神がおられるのだから。

 

「さあ、まずは其方らの願いを申してみよ——想像は付くがな」

 

 我らの老醜は既に見抜かれている。当然か。こんな老人たちが悦楽の神に願うのが、肉体的快楽であろうはずもない。見ればわかるというものだろう。そして、それを知ったうえでなお聞き届けてくださるというのなら・・・・・・。

 

「若さを! 私に若さをぉぉ!!」

「若く健康な身体に戻してください邪神様!!」

「あの頃に戻りたいのです! 邪神様! どうか私に若さを!」

「ハーヌヴルブリト様! どうか我らに若さを取り戻させたまえ!!」

 

 自分も含め、皆が口々に同じ願いを叫ぶ。そうだ、我らはそれのみを求めていたのだ。あの頃の若さをもう一度手に出来るのであれば、爵位なぞ投げ売ってもかまわん。皇帝の怒りも恐れず子供を生け贄に捧げてきたのだ。今怖れるのは邪神様の怒りのみだ。それが総意。

 

 邪神様はクスリと笑い、足を組み替えた。それを見て、全員の声が収まる。

 

「なんとも醜い足掻きよ。老醜の行き着く果てよな。だが・・・、そう、それこそが、その欲望が堕落の化身たる余を呼び寄せたのだ。その願い、叶えてやろうぞ———」

「おおぉ・・・!」

「なんと寛大な・・・!」

「感謝致します・・・・・・邪神様・・・!」

 

 ああ! ついに! ついに!

 

「———だが! そなたらには“飢え”が足りぬ・・・!」

 

 思いもかけない否定の言葉に、一瞬、全員の熱が霧散する。

 が、次なる邪神様の言葉に全員が納得する。

 

「そなたらは地位を、そして金を持っている。それ故に飢えておらぬ。渇望せよ! 失い、追い詰められる事が条件だ。絶えず飢えよ。求め、欲し、奪い取れ! 血眼(ちまなこ)となり、死に足掻け!——まずは金だ。そなたらの安心の拠り所たる金を捨てよ! その後(のち)にあらためて掻き集めるのだ。余は飢える者をこそ救わんとする・・・・・・」

 

 そうだ、必死の献身でなければ、神が満足しないのは当然のこと。ましてやハーヌヴルブリト様は堕落の神。金を蓄え安堵し停滞するような者に堕落の神が微笑むはずもない。ならば・・・。

 

「私の全貯蓄を献上いたします!」

「私の金を御受け取りくださいませ、邪神様!」

「私のを!」

「いや私のほうが蓄えております!」

「我が家は宝石が豊富です! すべて捧げますゆえ、どうか!」

 

 愚かな連中め、公爵家たる我がウィンブルグ家に貯蓄の量で勝てると思っているのか。願いを叶えていただくのは私だ。金を稼ぐ手段も心得ておるからな、神の恩寵は私だけが手にするものだ。

 

 

———

 

 

 信徒を帰らせ、司祭と神官を眠らせて、パールンレヴァクは一人嗤う。

 

「愚かしい連中だ。いや実に笑わせてくれる」

 

 脇に控えるツインズも同じく嗤う。悪魔から見て、人間の老醜というものはあまりにも可笑しいもの。死にゆく定めに抗おうとは、まったくの無駄でしかないというのに。

 そこで、パールンレヴァクは違和感に気付く。“椅子”が震えているのだ。

 

「クク・・・、今になって恐怖を思い出したか? 愛(う)いやつめ」

 

 静けさで正気を取り戻したクレマンティーヌは震えていた。貴族どもは帰らされた。司祭や神官は眠らされた。ならば、未だ意識を保っている自分は、いったいなんのために。恐怖は妄想を生み、妄想が恐怖を育てる。自分の椅子としての寿命はどこまであるのか、考えれば考えるほどに体が震える。“寒い”。裸だからではない、恐ろしいが故に血の気が引いていくのだ。

 

「安心せよ、娘。お前は従者(じゅうしゃ)として使ってやるゆえな」

 

 死を先延ばしにされる言葉に安堵し、涙が溢れる。それはクレマンティーヌの記憶にとても懐かしい涙だった。安心で涙するなど、何年ぶりだろうと。そしてまたも頭を撫でられ、悦楽に脳が惚(ほう)ける。

 

「あ、ありがとう・・・ございます・・・・・・」

 

 相手は神。神というのは人間の尺度で測れる存在ではない。いつその顔を変えて怒りだすかわかったものではない。故に、なんとか御機嫌を取ろうと、クレマンティーヌは意識をしっかり保って御礼の言葉を述べた。

 戦々恐々としているクレマンティーヌの秘所に、パールンレヴァクの尻尾が突き刺さる。軽い絶頂を迎えていたクレマンティーヌの秘所はその“ぬめり”のせいで抵抗できず、尻尾の侵入を容易く許してしまう。そしてうねる尻尾は膣内を舐(ねぶ)り、強烈な快感を与える。跳ね回り、掻き回し、クレマンティーヌの膣が乱暴に犯される。

 

「あヒィっ・・・! ひっ、ひっ・・・いいぃん!」

 

 どうあっても椅子としての使命を放棄する事ができないクレマンティーヌは、必死になって耐える。もしも崩れ倒れてしまえば、罰を受けるか殺されるかだろう。この神にとって価値ある者でなければならないと、歯をくいしばって快感に耐えるクレマンティーヌ。

 

「うぎぃ! ひ、ひぃっ! いやっ! あ・・・あぎぃっ・・・!」

 

 ついに潮を吹く秘裂。襲いくる暴力的な快感に悶え狂い、膝を震わせて、クレマンティーヌは白眼を剥いた。何度も何度も尻尾が出入りし、膣内を掻き回される。「ぐっちゅぐっちゅ」と淫靡な水音を立てて、膣が喜び震える。これは何の罰だ。それとも何かの褒美なのか。決して倒れるわけにはいかない使命の中、クレマンティーヌは快感に苦しむ。

 

 体感で何時間にも感じた陵辱が急に止まり、ようやく意識を取り戻して、クレマンティーヌは自分が泡を吹いていた事を知る。

 

「さて・・・。お前の名前を聞いておこうか、娘」

「ク・・・クレ・・・マンティー・・・ヌ・・・・・・でございます・・・・・・」

 

 クレマンティーヌがそう答えると、パールンレヴァクがゆっくりと立ち上がる。そして背中の重みが消えたのと同時に、クレマンティーヌは崩れて倒れた。

 

「ひ・・・ひぐ・・・・・・。あ・・・ぁ・・・・・・」

 

 クレマンティーヌの顔は1時間前とは比べ物にならないほど変わっていた。眼には大粒の涙を蓄え、頬は情欲で朱に染まり、全身は汗で濡れ、秘裂からは潮を吹いている。そこに元漆黒聖典の腕利きの面影は無かった。

 その様を見て、パールンレヴァクは満足げな表情を浮かべる。いい玩具(オモチャ)が手に入った、そういうサディステックな表情だった。

 

 これで全ては計画通り。パールンレヴァクは早速次なる指示を下す。もちろんクレマンティーヌにではない、ツインズに向けてだ。

 

「この玩具でしばらく楽しむつもりだ。お前たちはコイツを連れてナザリックへ帰還せよ。そしてプレアデスから2名・・・・・・そうだな、ユリとルプスレギナがいい。一般メイド10名と共に連れて来てくれ」

「了解です」

「それと、司祭達を洗脳するのにエルダー・リッチの力が欲しい。図書館に居る高レベルの者で間に合おう。こちらも一緒に連れてきてくれ」

「注文が多いですね・・・——わかりました」

 

 相変わらず忠義や忠誠といったものが見えない設定通りの態度で、ツインズは転移門(ゲート)の魔法を唱える。

 

 そうして一人きりとなった祭殿で、パールンレヴァクは伝言(メッセージ)の魔法を行使する。全てが順調、全てが計画通り。それを伝えるべき相手がいる。

 

「アインズか?」

『ええ。どうしたんですか? パールンレヴァクさん』

「事は上手く運んでいる。明日の夜には大量の金貨が手に入るぞ」

『おおー! 流石ですね、パールンレヴァクさんは手が早いっ!』

「そっちはどうだ?」

『いやぁ・・・それがですね、ナーベラルの演技指導がイマイチ進んでいないようでして。恐怖公にマナーや立ち振る舞いを教導させているんですが、なにせナーベラルのカルマ値がマイナスすぎるものですから・・・』

「まあ仕方ないな。だが前にも言ったように、ナーベラルことナーセットが他者には素っ気なく、しかし冒険者モモンにだけは真摯であれば、それを見た人間は訳ありを勘繰るはずだ。それは他者の余計な介入を許さない空気を作り、しがらみを避ける良い関係となるだろう」

『うんまあ、確かに納得はしましたけどね。それでも人間を虫扱いするあの物言いは、ちょっと攻撃的すぎないかなあと。例の法国の隊長を復活させて練習台にしているんですが、聞いていると頭を抱えるレベルですよ」

「うぅむ・・・」

『ともかく、明後日にはエ・ランテルに入りますよ! もう我慢できませんからね! 明後日がモモンの冒険者デビュー記念日ですよ!』

「ああ、楽しみにしているよ」

 

 楽しい会話が終わり、パールンレヴァクは勢いよく尻もちをつく。

 

「ナーベラル・・・・・・——冒険者モモンの相棒として相応しいかと思ったが、考え直すべきかな?」

 

 パールンレヴァクは久方ぶりのため息を吐いた。

 老人貴族共を若返らせる手段は存在する。星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)という超位魔法がある。行使により複数の選択肢が選べ、即時発動するというもの。HP全回復やMP全回復、通常の手段では解除不可能な状態異常や呪いの解除、拠点として設定した場所への即時転移、一定時間の無敵状態付与など様々な選択肢があった。だが、どれもが戦闘時にしか効果のないものばかり。そこでパールンレヴァクは発想を転換した。かつてパールンレヴァクが成長限界(レベルキャップ)を解放したのはその超位魔法によるものだ。その際は、ナザリック地下大墳墓内で『強欲と無欲』という経験値(EXP)を蓄積・利用できるワールドアイテムを介しての事であった。元々戦闘時に藁をも掴む思いで使う一か八かの賭けという認識でしかなかった「星に願いを」を戦闘時以外で使ったのはパールンレヴァクが始めてであり、そしてレベルキャップ解放という効果が選択肢に上がったのは驚愕の事であった。それをこの新たな現実世界で同じ事ができないかと、モモンガに持ちかけた事があった。そうして新たな世界で変質した『星に願いを』の効果が明らかとなった。『星に願いを』は使用者が望むどんな事も叶える最高の現実改変手段となっていたのだ。これを用いれば、老人達の肉体年齢を若返らせることなど容易い。そして「強欲と無欲」に蓄えられた経験値は膨大。経験値を大量消費する『星に願いを』ですら10回は使えるほどの量が込められている。

 だがそんな事はどうでもいい。パールンレヴァクにとって問題なのは、モモンガ(アインズ)が楽しんで冒険できるかどうかという事だけだ。部下達の忠誠に根負けしてナーベラル・ガンマを冒険者モモンの従者として付けることを許可したが、それが上手くいくかどうか。それだけがパールンレヴァクの気掛かりだった。

 

 

———

 

 

 またひとつの夜を超えた。しかしこの貴族達に恐怖は無い。もはや老衰に怯える日々は終わりを告げた。神が、真なる神が、堕落と悦楽の神、“ハーヌヴルブリト“様が若さを取り戻させてくださり、そして永遠の命を与えてくださる。それを思えば、何を犠牲と思う事もない。全てを捧げる覚悟が老人達にあった。

 

「さあ! 運び出せ!」

「全部だよ! そう全部! 神様への捧げ物だよ! 丁重に扱いな!」

「宝石はちゃんと包んで保護しただろうな? よし。ならば運び込め!」

 

 老人達の目は血走っていた。それはハーヌヴルブリトと名乗るパールンレヴァクの思惑通り、まさに死に物狂いの血気。老醜の醜く歪んだ欲望の血走り。そう、これが更なる堕落の始まりであると知っていても、それを忌避(きひ)しない愚かな老人達の心を見抜いた、パールンレヴァクの策略であった。

 老人達にとって救いであったのは、確かに若さを取り戻す事が出来た事だろう。だが、それは延命措置にすぎない。貢ぎ物を捧げ続けている間だけの寿命。彼らに待ち受けているのは、皇帝による処断か、ハーヌヴルブリトによる介錯以外にないのだから。

 

 

 




 そんなわけで時系列が前後してましたとさ。分かり難くてごめんね。テンポ重視でいこうとしたらこうなっちゃったんだよ。許してね。
 んでまあニグン君がしれっと復活していて、クレマンティーヌは生存確定だね。パールンレヴァクは帝国で暗躍し、モモンとなったアインズは王国で活動する、と。主にパールンレヴァクがアインズをサポートする形だけどね。
 次回はまたエロエロな話を書きたいね。ようやく原作から大幅に乖離してきたからね、これから俺の味を出していけるってもんよ。

 んじゃあまたね。何か質問疑問があったらメッセージ機能で聞いてよね。ネタバレだってしちゃうよ。パールンレヴァクは本当に融合して元の人格を失ったのかとか、色々あるからね。

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