廃人ネカマのロールプレイング 作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会
ま、対して面白味はないけど、必要な話だからね。
しかしてエ・ランテルは今日も変わらず平常運転。いつものように活気付き、人の往来が絶えることはない。その中で、冒険者というのは一番忙しい職業と言えた。貿易都市であるエ・ランテルは常の事ながら人手に飢えており、傭兵に等しい冒険者というのは都合のいい
しかしながら、その昇級に待ったをかける
「いきなり
「いいじゃねえかよ、旦那。組合長さんがこう言ってんだぜ?」
「しかしなあ・・・」
事の起こりは、ブレイン・アングラウスの冒険者の証明であるプレートを受け取りに、そして新しい仕事を請けようと冒険者組合へ顔を出した時に、受付で止められたのが切っ掛けであった。受付嬢は「この場でお待ちください」とだけ言うと奥へ引っ込み、何事かとモモンとブレインが顔を見合わせていると、現れたのは一目で歴戦の風格を知らしめる体格の良い中年男性、エ・ランテル冒険者組合の現組合長、プルトン・アインザックその人であった。
組合長アインザックの述べたところは簡潔にまとめると、他の低級冒険者の邪魔になるからさっさと昇級させてしまう、というものだった。実際は丁寧な説明であり配慮も充分な言い回しであったが、言わんとするところは同じである。
というのも、アインザックは当初『ブレイン・アングラウスという行方不明の天才剣士が突然エ・ランテルに来て冒険者登録をしていった』などという話を信じていなかったのである。しかし自分の目で実際に見極めて、それが事実である事を知ってしまう。そうなると組合長としてはやっかいな話で、なにせ未だに人の記憶に残る天才剣士が最下級の
「モモンくん、これは悪い話ではないはずだ。それに君は、登録初日に
「ほら、こう言ってるぜ?」
「しかしなあ・・・」
モモンことアインズが渋るのには理由がある。それはズルをしているような罪悪感と、周囲の反応への懸念だ。確かに冒険者初日、現地の文字が読めないのでいい加減に掴んだ依頼書が分不相応な階級のものだったという“うっかり”をやらかしてしまったが、それはそれ。地道に
しかし早く階級を上げて難しい
メッセージの差出人はセバス・チャン。慌てたアインズは時間を求めて、組合長に解答の作成を投げつけた。
「ならば、皆が納得のいく形にしてもらいたい。組合長、貴方が
「そ、それはいい案だ。しかし君の実力は我々の知るところではなく、加減というものが——」
「すまないが急用がある。詳細は後で聞こう。では失礼・・・」
「——ああ、ちょっと!?」
足早に冒険者組合を出て行く漆黒の
(よーし、うまく切り抜けられたぞ! しかしこれは咄嗟の思いつきとはいえ、なかなか良い方法では? ナザリックのみんなにも使えるんじゃないかな。問題も解答も自分で用意させて、俺は動くだけ・・・。うん、よさそうだ。)
アインズは自画自賛もほどほどに、無理に抜け出した理由であるセバスとの会話に応じる。当然ナザリック内の会話を聞かれるわけにはいかない部外者、ブレインから距離を取ったうえでだ。
「セバスか、どうした?」
『アインズ様の
(いまなんて?)
「・・・・・・・・・うむ、そうか。だがな、前にも言ったが、過度な言い回しは不要だ。我らは主人と臣下である以前に、ナザリックの家族なのだ。もっと気楽に構えよ。堅苦しくて敵わんぞ」
『これは失礼いたしました。以後、改めます。また、プレアデスにもアインズ様の今の御言葉を伝えておきたいと存じます』
「ああ、頼む——それで、なんの用だ?」
『はい、現状のご報告でございます。パールンレヴァク様の資金援助により、土地の購入とそれに伴う建築の確保が叶いました。営利商業の法的権利の問題もクリアーしました。今は建物を改装しているところでして、三日以内には開店に漕ぎ着けられるかと』
「よし、ではそのまま計画を進めてくれ。私が冒険者として必要な物を仕入れるためにも、王国の貴族や冒険者から情報を得るためにも、店を開くのは必要な事だからな」
『心得ております』
アインズはそう言ったが、これはパールンレヴァクの受け売りであり、アインズにはどうしてナザリックが地上でお店を開くのかが分かっていなかった。言われてみればそんな気もするが、武器も装備も
パールンレヴァクの言葉は説明不足であり、アインズが勘違いするのも無理はない。実際はナザリック製の強力な武具や高級な宝石を売ることで市場を乱し、経済を狂わせ掌握し、後の征服を容易にする事がまずひとつ。王国の冒険者では強力な武具を以ってしても倒せないほどのモンスターを放つ事で、それを撃ち破った冒険者モモンの名を上げるという計画もある。そのほか複数の理由と思惑が存在するのだが、議会の場で小難しい言葉で交わされる質疑応答を追いきれず、話が耳を通り抜けてしまっていたアインズにはさっぱりわからなかったのである。
そしてセバスからの現状報告を受け取りほっと一息ついた時。またもアインズの下へメッセージが届く。今度の差出人はオーメンダール。中間管理職の忙しさに納得しつつ、アインズは応えた。
「オーメンダールか。どうした?」
『陛下の宸襟を騒がせ奉り、恐縮で御座います——』
(お前もか!)
『——御報告いたしますのは、カルネ村復興の一件で御座います』
「ああ、何か問題が?」
『流石に人手が足りません。我らナザリックの人足を使えば簡単ですが、それは議会にて棄却されたこと。村人達の手による復興を助けるのが最大限の協力——なのですが、いかんせん、先のスレイン法国の工作で男手が死にすぎています。このままでは上納分の作物の収穫すら立ち行かないでしょう。何でもよろしいが、ナザリックの者ではなく、村人の下に直接付く人足が必要です』
それを聞いて、アインズが悩む。パールンレヴァクが最初に言った通り、カルネ村は地上進出の足掛かり。そして一度助けた以上、ゆっくりと滅ぶだけを無為に見ているつもりもない。シモベ達が言うように実験場としての価値もあれば、助けるのはやぶさかでない。しかしそんな都合の良い人手があったろうかと、思い返す。
「あっ」
『・・・何か?』
「あ、ああ、人手についてはアテがある。ゴブリンなんだが・・・・・・」
『なるほど。将来を見越しての、亜人への認識を改めさせる実験ですか。実によろしいかと思われます。カルネ村の者は同じ人類に滅ぼされそうになっていたのです、亜人の存在を受け入れやすい土壌と言えるでしょう』
(あ、そういう見方もあるのか)
「や、やはりそう思うか? ではその方向でいこう」
『しかしながら、外からの人間が入っている現状、衝突は避けられないものと存じますが』
「・・・・・・外からの人間?」
『はい。先日報告に上げました“ンフィーレア・バレアレ”なる人間と、それに雇われた冒険者集団です。再度申し上げますと、ンフィーレア・バレアレなる少年はアインズ様が手ずからお救いになられた少女、エンリ・エモットの知人であるらしく。彼は村の状態を見てのち、復興の手伝いを申し出て、今なお在留しております。ンフィーレア・バレアレのみならどうとでもなりますが、同伴する冒険者集団がやっかいです。ゴブリンを人足として用いるのは、彼らの反発を招きかねないものと思われますが』
それを聞いて、またもアインズは悩む。先日上げられた報告などというものがあったかどうかはこの際、記憶違いとして捨て置くにしても。将来的に全ての種族が、人間も亜人も異業種までもが手を取り合って仲良く暮らせる理想の世界を実現する実験として、カルネ村でゴブリンを使わせるという方法は悪くないと考える。手段は簡単、ガチャのハズレアイテムとして手に入った「
どうにもすぐに答えの出る問題ではないと考えて、アインズは一旦の待機を命じる。
「少し考えさせてくれ。これからパールンレヴァクとの協議に入る、お前は現状を維持するよう務めるのだ」
『御意に』
メッセージでの通信を終えて、アインズは“ほっ”と息を吐く。
———
一方で、ナザリック地下大墳墓もまた平常運転の通りであった。侵攻は無く、異常も無く、メイド達は食事を終えて仕事に精を出し、階層守護者は忙しくなく働く。いつも通りのナザリックがそこにあった。
そう、これもまたいつも通りの光景。サキュバスの女王、パールンレヴァクが性に奔放であるのはいつものこと。むしろそうでないほうがおかしいというのが、ナザリックに生まれたシモベの総意であった。
「んフ・・・、今日は随分と求めてくるのね、シャルティア」
「はぁん・・・。だってぇ、パールンレヴァク様がいけないんですよぉ? こんなにも
妖艶の極みである
「とっても可愛いわよ、シャルティア」
「パールンレヴァク様はとっても美しいでありんすえ」
パールンレヴァクの上に跨がるシャルティア・ブラッドフォールン。高身長でグラマラスなボディのサキュバスと、幼い少女も同然の真祖とでは体格の差が大きいが、それがむしろ幸いする。パールンレヴァクは上に乗るシャルティアを重たいとすら思わず、シャルティアは力強く近付いて口付けを交わす事で至高の存在への愛を示す事が出来る。
ナザリックの墳墓層に存在するシャルティア・ブラッドフォールンの私室は、二体の欲情魔が垂れ流す淫靡な空気によって、空間がピンク色に染まりつつあった。そんな空気に耐え切れず内腿を擦り合わせるのは、パールンレヴァクに同伴を許されたが部屋の隅で“おあずけ”を命じられた女、クレマンティーヌ。
「ううぅ・・・、どうしておあずけなのよぉ・・・」
クレマンティーヌはパールンレヴァクの悪魔的な意地悪の犠牲となっていた。その腹で妖しく光るのは「淫紋」。元は『呪いの刻印』と言い、サキュバスの上位スキルとして存在する呪いの一種。ゲーム中では相手に解除困難なステータス異常を付与するものでしかなかったそれが、この新しい世界では劇的な変化を遂げ、好きなように呪いを刻む事が出来るようになっていたのだ。パールンレヴァクはそれを用いて、『自慰では快感を得られず絶頂もできない』という呪いの淫紋をクレマンティーヌの腹に刻んだのである。それもわざわざ子宮の上に位置するところへ。
クレマンティーヌは垂れ流されるマザー・サキュバスの吐息のせいで発情してしまうが、自分で弄っても気持ち良くなれず、そもそも部屋に備え付けの拘束具で両腕を吊るし上げられているため、内股を擦り合わせるくらいしかできない。そうして涎を垂らしながら、パールンレヴァクとシャルティアのペッティングを見つめるしかなかった。
「あらぁ? この“ぬめり”はなにかしら?」
「んぅ・・・。そういうパールンレヴァク様もこんなに固くなってますよぉ、乳首ぃ・・・」
そうしてまたも交わされる口づけ。「ちゅぷちゅぷ」と淫靡な水音を立てて、唇の端で唾液が泡立つ。シャルティアがパールンレヴァクの長い舌から唾液を吸えば、パールンレヴァクはシャルティアの白いお尻を「パチン!」と叩く。そのあまりに“そそる”光景に、クレマンティーヌが声を飲み込む。
そんな空気になっているとは思ってもいないアインズからの
「ロード・アインズ。どうしたというのだ?」
『ちょっと相談したい事があって・・・。今、時間いいですか?』
「ああ、構わんよ。シャルティアとイチャイチャしていただけだ」
瞬時に支配者としての口調を取るパールンレヴァクだが、その手は未だにシャルティアの尻を撫で回しており、その目は快感でうっとりと溶けるシャルティアの顔を眺めていた。
そしてアインズより持ちかけられた相談について、パールンレヴァクはすぐさま答えを出した。
「ああ、それなら気にしなくていい。私が直接カルネ村へ赴き、現場の指揮を取ろう」
『えっ、いいんですか!? パールンレヴァクさんも用事があるんじゃあ・・・』
『それはどうとでもなるさ。それに、アインズの案は実に良い。『
『そう言ってもらえると安心です。じゃあ、カルネ村に関してはお任せしていいですか?』
「ああ、任せてくれ。この後すぐに向かうよ」
お互いが納得し、メッセージが切れる。それと前後して、もう一度ねっとりと濃厚なキス。淫魔の長い舌が真祖の口内を蹂躙し、シャルティアの唇がパールンレヴァクの舌を吸う。
—————
バハルス帝国。新興でありながら最盛の勢いを持つ国。このバハルス帝国が大陸において一番の繁栄を誇るのは、その国家運営の
そのように猛勢の国を動かす者、つまり王の立場にある者というのは、とても忙しくなるものである。世情は刻一刻と動くものなのだ。市場の動きは常に監視して適度に調整せねば貧富の差が決定的となるのに時間を必要とせず、不穏分子の排除にも気を配らねばならず、諸外国との外交は特に気を付けねばならない事柄だ。休む暇なぞないと、現バハルス帝国皇帝、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスは今日も疲れた息を吐くのであった。これが昨今の帝城の平常運転であった。
「次の用件は?」
「はっ。王国戦士長、ガゼフ・ストロノーフの動きに関する御報告です。資料はこちらに」
「ふぅん・・・———これ以上の進展は望めんな。では例の辺境の村の・・・・・・、なんといったか、・・・そう、カルネ村だ。カルネ村の調査に当たっているチームに合流して情報を統合したのちに、お前のチームはいったん解散してよい。再度の招集に対応できるよう、連絡を怠るなよ。では下がれ」
「失礼いたします」
またひとつ用事を片付け、ジルクニフは水を含む。ぐちゅぐちゅと音を立てて口内をすすぎ、喋り疲れて粘ついた唾液を喉奥へ流し込み、切り分けられたフルーツを食べて糖分を補給する。
「そなたで最後か、ようやくだな・・・。用件は?」
午前中だけで十数人の役員の報告を片付けて、これでようやく終わりかと、ジルクニフの目が最高潮の嫌気を示す。しかし、わざわざ最後まで残った役員の真剣な表情を見て瞬時に表情筋を引き締めるところが、ジルクニフが優秀たる所以であろう。
役員は神妙な面持ちで口を開いた。
「御報告いたしますのは、以前より邪教との繋がりを疑われていた、帝国貴族の調査に関するものでございます」
「ああ。何か進展があったか?」
「明朝、ロスロンド卿が死体で発見されました」
「・・・・・・詳細を」
「発見場所はロスロンド卿の自宅の自室。椅子に座らされた格好でありました。第一発見者は当家の執事です。卿の胸部は鋭利な刃物で“切り取られ”、心臓が引き千切られた痕跡がございました。血痕の跡が無いことから、死亡してから自室へと運ばれたものと見られます。また、卿の机には血で書かれた紙片が存在し、そこにはただ『罰』とだけ」
異様な殺人の報告に、ジルクニフは眉を
「それが・・・・・・」
「なんだ? 言いにくい事か?」
「いえ、その・・・。あまりに荒唐無稽で・・・」
「構わぬ。申してみよ」
ジルクニフは佇まいを直し、どこか歯が浮ついた役員に強く命じる。
「では、お許しをいただきまして、申し上げます・・・——ロスロンド卿は
「・・・・・・なに?」
「執事の証言を引用しますと、『若い頃の御主人様そのものだ』・・・と。投薬を用いて尋問しましたが、嘘をついていないという結果が出ました・・・」
「それだけではあるまい? 他には?」
「・・・はい。ロスロンド卿と同じく邪教への関与が疑われていたウィンブルグ公爵、レストレンジ伯爵、ワーレン伯爵、その他7名の貴族が二十代から三十代にまで若返っているとの報告が上がっています。これは先程上がってきた情報で再確認が取れていませんが、該当貴族の屋敷に潜入させている者から一様に同じ報告が・・・」
信じ難い報告に目眩を覚え、ジルクニフはこめかみを強く押さえる。名前を挙げられた貴族はどれも高齢、ヨボヨボの爺婆であった。それが若返り、その中でロスロンドのみが殺された。これはいったい何を意味するものか。天才の頭脳は瞬時に緊急事態を悟り、役員へ命令を下した。
「この一件は機密事項とする。任務の最高責任者をニンブルへ移行し、その補佐としてレイナースを付ける。これより両名を招くゆえ、お前は情報を纏め上げ、書類を作成せよ。お前のチームは情報を共有したのち、二人の指揮下に入れ。よいな?」
「御命令、受けたまわりました。では、下がらせていただきます」
寿命の延長ならばフールーダ・パラダインという前例が存在する。しかし若返りなどいうのは古今東西に存在しない夢物語。それが今、この帝国に現れた。死体を伴って。これは何かの凶事の起こりでないかと、そう思えてならない。
ジルクニフは手を叩き、秘書官を呼び寄せる。そして乱暴にフルーツを口に含んだ。
「緊急招集だ。激風のニンブル、重爆のレイナース、そしてフールーダ・パラダインを呼び寄せろ。今すぐだ。火急の用と伝えろ」
ジルクニフは自身の上に暗雲が立ち込めるのを幻視した。
一応補足しておくと、パールンレヴァクは大して強くないよ。ナザリックのシモベ達は噂話しかしらないから勘違いしてるけど。
パールンレヴァクは極端なステータスのせいで事故ったら終わりなピーキー型だからね。MPの最大値の伸びが良い種族(という独自設定)のサキュバスで、大量のMPにモノを言わせてデバフや状態異常を付与しながら戦う、回避と直接攻撃に極振りした魔法詠唱者混じりのモンクスタイルという、初見殺しとわからん殺し特化の構成だから。「タッチ・オブ・アンデス」みたいな直接触れるという条件を前提に強力な状態異常を付与するものと同じく、モンクの直接打撃の合間に接触デバフや状態異常を押し付けて圧殺するのが常套手段。というかそれしかない。
だから手の内がバレてる仲間内での模擬戦では自爆覚悟の攻撃で討ち取られたりする。デミウルゴスのセルフバーニングとか天敵も天敵、パールンレヴァクではまず勝てない。削りきる前にセルバで焼け死ぬからね。
しかしまあレベル120は伊達じゃなく、奥の手はちゃんと存在してるのね。前に見せたのとは別のやつが。いつか書けたらいいね。
じゃあまたね。