廃人ネカマのロールプレイング 作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会
おまたせー。
書き忘れてたんだけど、一部設定を原作から変更してるのよね。装備の話。原作ではクラスが合ってないと装備できないし使えない、モモンガ様が普通の剣を振ろうとしたら手から勝手に溢れ落ちるっていうアレね。あの設定を変更させてもらってるから、そこんとこよろしく。
あとまたエッチなシーンが遠のいたんで、そこも謝っとくね。ごめんよ。
ナザリックの
だがしかし、至高の存在のまとめ役、ナザリック地下大墳墓の最高支配者、アインズ・ウール・ゴウンと名乗られるモモンガ様が、「過度な労働を禁止する」と宣言した以上、適度な休息を取らなければいけなくなってしまった。シモベ達も、不敬とは思いつつも、ナザリックのために働ける時間が減った事に不満を持っている。しかしながら、アインズ様がお留守の間、ナザリック全体の管理を任されるほどにシモベの中で地位が高い存在、階層守護者統括たるアルベドが率先して休息を取っているために、下位のシモベ達もそれに倣い、不満を漏らさず休む時は休んでいる。
して、休息の際、アルベドはいったい何をしているのか?、多くのシモベがそう疑問に思っていた。ナザリックに奉仕することを命題とし、そのために生み出されたシモベ達にとって、ナザリックのために働かない時間なぞは暇でしかなく、働く以外にやりたい事を見つけられない者も多く、無聊の苦しみに悩まされている。そんな中、アルベドは休息の時間をどのように使っているのか。
「ん・・・、あっ・・・あんっ」
その答えはシモベ達の想像の域を超えたもの。アルベドは休息の時間中、ずっと自慰に耽っていたのだ。
モモンガ様に抱き締められた時を思い出して、自らの身体を愛撫する。パールンレヴァク様に可愛がっていただいた時の事を思い出して、秘所や豆を弄って情欲を慰める。そうして思い出しオナニーに没頭して、シーツに愛液を垂らす毎日。
(この前の“お仕置き”は最高だったわ・・・)
前回、パールンレヴァク様から「お仕置き」と称して可愛がっていただいた事を思い出し、アルベドはまたも情欲の昂ぶりを覚える。そして、処女だけでなく“童貞”までも捧げることが叶った喜びを思い出して、股間に魔力を集中させる。すると、パールンレヴァクがしたのと同じように、アルベドの豆が膨れ上がり、立派な男根と睾丸が出来上がる。
「くっ、ふぅ・・・・・・ぅん・・・」
シェイプシフターの能力で作ったペニスを扱きながら、秘所に指を入れて、濃厚な
ベッドの上で四つん這いになり、長い舌で秘所を犯され、牛の乳搾りの様にペニスを扱かれたお仕置き。乳で挟まれ、唇で吸われ、何度も何度も搾り取られたお仕置き。そして最後はパールンレヴァク様の熱い蜜壺に誘われて、まるで童貞の少年のように精を吐き出し続け、搾り尽くされた。
(パールンレヴァク様の柔らかい肌・・・! あの大きな胸に顔を
昂ぶる情欲を堪えきれず、今日もアルベドは自慰に没頭する。
———
リ・エスティーゼ王国で最高の冒険者チームといえば、それは『蒼の薔薇』であるという者がほとんどだろう。蒼の薔薇は王都を中心として活動するアダマンタイト級冒険者チームであり、メンバーは僅か5人という少数精鋭、そして全員が女性という珍しいチームだ。リーダーのラキュースは金髪が綺麗な貴族女性であり、伝説の魔剣を操る腕前に加えて、蘇生魔法すら行使可能という超一流の実力者であるため、男女問わず人気が高い。フードとローブに仮面まで着けて肌を隠すミステリアスな女性はイビルアイ。一見すると少女にしか見えない小柄なイビルアイだが、
そんな蒼の薔薇のメンバー、イビルアイとガガーランの二人が、王都の酒場に居た。昼間から酒を飲むなぞという自堕落な行為だが、それを言い咎める者は一人もいない。二人は王国最高の冒険者として名高い蒼の薔薇のメンバーなのだ、その辺の者では足下にも及ばない実力者、そんな者に誰が偉そうな口をきけるだろうか。もっとも、勢いよく飲んでいるのはガガーランだけで、イビルアイはコップに手をつけていなかったが。
「ほどほどにしておけよ」
「わぁーってるよ」
流石にイビルアイが小言を入れるが、ガガーランはどこ吹く風だ。そんな時、ガランと音を立てて酒場の扉を開けた者を見て、ガガーランは明るい笑顔を見せた。
「よお、童貞!」
ガガーランがそう呼んだのは、ラナー第三王女の付き人、クライムという少年であった。主人をお護りするためにと強さを求めるクライムは、その機会に恵まれた事で、蒼の薔薇と親交を持っている。その際に、高名な女戦士、ガガーランから手ほどきを受けているのだ。その関係から、ガガーランは少年を「童貞」と呼んでからかいつつも可愛がり、少年は師を「ガガーランさん」と呼んで慕っている。
「ガガーランさん、お久しぶりです。イビルアイ様も」
「おう。ちょっと遠出してたからな」
ガガーランの言葉に、クライムは若干、顔を暗くする。クライムが信奉するラナー王女は国家を憂いる立派な王族であり、長く付き人をしているクライムをして、善人の中の善人としての顔しか知らないほど。そんなラナー王女は闇組織が蔓延る王国の現状に心を痛めており、その対策として、王国最高の冒険者チーム蒼の薔薇に秘密裏の協力を依頼しているのだ。それが、王国最大の犯罪組織「八本指」の調査と対処。ガガーランが言う遠出とは、その一環である。それが、クライムが顔を暗くした理由だ。麻薬を栽培して売り、人を攫い、脅し、賄賂で貴族を腐らせる八本指。そんな悪党どもが世にのさばり、尊敬する蒼の薔薇が戦っているというのに、自分にはなにも出来ない、何の力にもなれない。それが苦しくてしかたなく、クライムは顔を暗くする。
「どうした暗い顔して。訓練でボコられたかぁ?」
茶化すようなガガーランの言葉に、クライムは慌てて否定する。
ガガーランはアダマンタイト級冒険者である。そして、冒険者の進級には実績や成果だけではない、その人格も評価される。どんなに強かろうと、悪人では上位に進級できないのが冒険者だ。アダマンタイト級という事は、その内面もそれ相応だということ。真っ直ぐな性根の青少年が思い悩む姿を見て、なにも口出しせずにいられるような人間ではないのだ。それがガガーランという女である。
茶化すようなガガーランの言葉で思い出したかのように、クライムは最近の出来事を話し始める。王国戦士長ガゼフ・ストロノーフに稽古をつけてもらえた事、その際に放ったガガーラン直伝の大上段を褒めてもらえた事、そのほか様々な話を聞かせてもらえたなど、クライムは嬉々として語った。それを聞いたガガーランも、装備の点検を推奨したり、更に稽古に励むようにと、アドバイスを送る。
ガガーランは満足げな表情を浮かべて酒を煽ると、改めて聞いた。
「んで、ただ駄弁りに来たんじゃないんだろ? どうしたよ」
「ええ、はい。ラキュース様から言伝を預かって来ました。いつでも動けるように、準備しておいてほしい、と」
「ふぅん・・・・・・。また何か、手掛かりでも掴んだのかね」
クライムは、少し難しい顔をして酒を飲むガガーランを見て、話題を変えようとする。
「そういえばガガーランさん、『漆黒の魔剣士』というものをご存知ですか?」
「漆黒の魔剣士ぃ? なんだいその御大層な呼び名は?」
ガガーランが怪訝な声を上げると、今まで黙っていたイビルアイがフンと鼻を鳴らした。そして、どこか苛立ちのある声で言った。
「お前もミーハーだな、小僧」
「なんだイビルアイ、知ってんのかい?」
「ここ最近、急に聞くようになった話だ。なんでも、エ・ランテルで認められた新しいアダマンタイト級冒険者らしくてな。チーム名は『漆黒』で、漆黒の魔剣士と呼ばれているのはそこのリーダーらしい」
「へえ。どんな奴らだって?」
「それが、メンバーは三人だけらしい」
「たった三人!? おいおい、そりゃ随分な自信家の集まりだねぇ!」
王国一番の冒険者としての自負ゆえにだろう、悪意こそないが、ガガーランは噂の新入りアダマンタイト級を嘲笑った。そんなガガーランを見て、侮るなと忠告するかのように、イビルアイは信憑性の高い噂を、その漆黒の活躍というものを語った。
「ブレイン・アングラウスが、漆黒のリーダー、モモンを師と仰いでいるそうだ」
「なっ・・・!? ブレインって、あのブレイン・アングラウスか!?」
「そのブレイン・アングラウスだ——そしてもう一人は
驚愕を隠せないというガガーランとクライム。
「その名前は、私も聞いたことがあります。過去の御前試合で戦士長様と互角に戦った天才剣士だと」
「そうか・・・、あのブレイン・アングラウスが後ろを歩くってことは、そのリーダー、実力はあるんだろうねぇ——それで、その漆黒はどんな事を成したって?」
「噂でしかないが・・・。数十人から成るミスリル級冒険者チームを一匹で壊滅させたベルセルク・・・とかいうモンスターを討伐。ズーラーノーンの高弟が起こした誘拐事件を、被害者を無事に救出して解決。その際に召喚されたスケリトル・ドラゴンを二体、倒している。そして、脱獄したその高弟が数千のアンデッドを召喚して、エ・ランテルを襲った事件の解決。あとは、つがいで現れたギガント・バジリスクの討伐もだな」
「そ、そりゃあ・・・すげぇじゃねえか・・・・・・」
流石のガガーランも額に汗を浮かべて驚いている。蒼の薔薇でも同じ事は出来る、スケリトル・ドラゴンも、数千のアンデッドも、ギガント・バジリスクも倒せる。しかし、それは蒼の薔薇が全員揃っていればの話。漆黒のようにわずか三人だけとなると、蒼の薔薇のメンバーでは少しばかり厳しいと言わざるを得ない。
「それは・・・ガガーランさんでも難しい事なんですか・・・?」
「・・・・・・ああ。スケリトル・ドラゴンや数千のアンデッドなら問題ねえが・・・。ギガント・バジリスクが
「で、では、二匹同時というのは・・・」
「ああ。それを三人でやってのけるって事は、相当な実力者揃いだろうな」
難しい顔で腕を組み、目を瞑ってしまったガガーランに代わって。今度はイビルアイが言う。
「それで? 今の反応からして、お前は『漆黒』の事をほとんど何も知らなかったようだが。どこで噂を聞きつけたんだ、小僧?」
「いえ、それが・・・・・・。すぐ近くで暴力沙汰があったようなのですが、私が到着した時には解決しており。残った野次馬が口々に『漆黒の魔剣士だ』と噂していたので・・・」
「すぐ近く? ということは、エ・ランテルから
「それがはっきりしなくて・・・。同じアダマンタイト級ならば何かご存知かも、と思ったのですが」
その時である。突如として戦士の琴線に触れる強い気配に、イビルアイが視線を向けて、クライムが振り返り、ガガーランが目を開けた。その視線の先、酒場の入り口扉が開かれて、強い気配の正体を見る。一見して高級な物だと分かる“漆黒”の全身鎧を纏い、身の丈程もある大剣を背負う戦士。噂のニューフェイス、漆黒の魔剣士と呼ばれる男、モモンである。
———
アインズはこの日、とても不機嫌だった。
アンデッドであるアインズには精神抑制が備わっており、喜怒哀楽の感情が大きく動いた時、強制的に沈静化されて平静になってしまう。しかし、感情の振れ幅が小さければ精神抑制は働かない。それゆえに、小さな不満やストレスの積み重ねは消えることなく残り続ける。
嬉しいものもあった。パールンレヴァクが主導となって実行した、新しい偽装工作が完成したのだ。偽のステータス情報を相手に掴ませる偽装魔法を永続化して封入した、指輪タイプのアクセサリー。これがあれば、冒険者モモンは強いのか弱いのか分からない者ではなく、ちゃんと強い冒険者としての気配を放つ事ができ、それによって他者から舐められることがなくなる。デミウルゴスが見つけてくれた新しい材料により、スクロールの恒久的生産が可能になった事も実に嬉しい。パールンレヴァクが見つけてきたクレマンティーヌとかいう女が武技を使えると判り、コキュートスに与えた武技の研究が捗ると判明したのも嬉しい。が、だがそれら嬉しい報告以上に、問題も存在したのだ。
まず、パールンレヴァクの淫乱っぷりが問題だった。サキュバスなのだから多少は仕方ないとはいえ、複数のメイドや階層守護者に“手をつけている”というのは、流石に問題だ。パールンレヴァクの相手を務めた者たちは満足しているが、いけない事はいけないのだ。メイド長ペストーニャに、プレアデスのユリにルプスレギナにソリュシャン、そして複数の一般メイドたちがパールンレヴァクの毒牙に掛かってしまった。
そしてアルベドである。アルベドもまたサキュバスであるため、パールンレヴァクとの相性が良すぎた。また、その設定にビッチであると書き込まれていたために、アルベドまでもがナザリックのシモベに手を出す始末。「守護者統括が毎日のように性交渉を求めてきており、たいへん困っている」とデミウルゴスとオーメンダールの両名から打ち明けられた時の、アインズの困惑はかなりのものだった。
他にも、ナザリック周辺の警備と調査を任されているアウラが、森のモンスターを纏め上げているボスを捕まえてしまい、結果として統率を失ったゴブリンやオークをはじめとする複数のモンスターが森から出てしまい、あわやカルネ村が襲われる寸前となった事もあった。レベル100のアウラから見れば森の主なぞ雑魚でしかないのだろうが、現地の基準では英雄でもないと倒せないほどに強力なモンスターである。そして当然、そんな英雄が駐屯しているわけではないカルネ村にとっては、モンスターの群れなぞは崩壊の危機である。カルネ村からの報告を受けて初めてこの事態を知ったアインズは、事態の重要性を説き、認識の齟齬を改めることを伝え、アウラがペットにしてしまった森の主たちを解放させたのだが。今度はその森の主たちが恐れをなして、アウラの元へ戻って来てしまった。ならば仕方がないとアウラに周辺の森の監督を任命したが、そうなると大事なアウラが長くナザリックから離れる事となり、危険が伴う。「大丈夫です!」と明るく返事をしたアウラを信じてやりたいが、アインズはどうしても不安が拭えない。
しかしアインズの今一番の不機嫌の理由は、事もあろうに、ナザリックのNPCの中で最高クラスの善のカルマ値を持つ者、セバス・チャンの背反であった。心配を残しながらも冒険者ロールに戻り、モモンとなってエ・ランテルへ向かった直後、ソリュシャンから
(報連相の重要さはしっかりと何度も伝えたはずなのになあ・・・)
アインズを不機嫌にさせている感情は怒りではない、悲しみや恐怖である。なぜなら、セバスがどうして人間の女を匿って隠しているのか、その理由がはっきりと分かるからだ。セバスはナザリックを恐れている、そしてアインズの慈悲を信じ切れていないのだ。善のカルマを持つセバス・チャンは、不幸な女を見捨てられなかったのだろう。しかし、人間を下等生物と見下し、食料や玩具にしてしまう者が多いナザリックに居れば、せっかく助けた人間を死なせてしまうかもしれないと考えたのだろう。そしてその人間の助命を嘆願しても、ナザリックを至上とするアインズ・ウール・ゴウン様ならば、情報漏洩の可能性と共に切り捨てられるかもしれないと。
(俺って、実はあんまり信頼されてない・・・?)
アインズは不安に思い、そして恐怖する。ツインズやオーメンダールがそうであったように、セバスもまた忠誠を失いつつあるのではないかと。アインズから人間を隠そうとするセバスの行為は、アインズへの信頼の欠如に他ならないのだから。
ともあれ、疑念は晴らすべきであるし、事態は急を要する。アインズは冒険者モモンのままで動いた。まずはナーセットことナーベラルに状況を説明し、出立の準備をさせる。ナザリックとパールンレヴァクにも連絡を送り、セバスの真意を確かめるための人選を決める。そして、期待の篭った目をしたブレイン・アングラウスを「刀を新調させてやる」と飴で釣る。そうして雇った馬車で数時間も揺られ、王都に到着したモモンを出迎えたのは、また新しいイベントであった。
アインズは不機嫌のまま、苛立ちを堪えながら、セバスが管理する店へと向かって、初めての王都を歩いた。懐かしいと言うブレインの昔話を聞き流しつつ、セバスに対してどう接すればいいかを考えながら歩いていると、前方の路上に人だかりを見つける。何事かと近づいてみると、その中では、三人の男がうずくまった少年の腹を何度も蹴っていた。
「そこまでにしておけ」
人混みをかき分けて割り込んだ漆黒の鎧が言った。
アインズは“センチ”になっているわけではない。だが、助けなければと思ったのだ。男の一人のズボンが泥で汚れていること、男たちの頬が赤らんでいることから、「酔っ払いの服を汚してしまった不幸な少年」というストーリーも考えついたが。たとえ少年に非があろうと、見るからにやりすぎだった。だから、助けなければと思った。
セバスの事を考えているうちに、セバス・チャンを造ったプレイヤー、モモンガの恩人でもある人、「たっち・みー」を思い出していた。アインズ・ウール・ゴウンとなった今でも覚えている、忘れられるはずがない、たっち・みーが初めて言った言葉、『困っている人がいたら、助けるのは当たり前!』、それを思い出した。だから、アインズは少年を助けようと思った。アインズ・ウール・ゴウンと成ったのならば、それはたっち・みーの精神と信念を受け継ぐ事でもあると再認識したのだ。
冒険者モモンが言う。
「事情はどうあれ、やりすぎだぞ。酒が入って気が大きくなってしまったんだろう。いったん頭を冷やせ」
「な、なんだぁ・・・テメェは・・・・・・!?」
2メートル以上はある大柄な全身鎧の男、しかもかなりの実力者としての覇気を放つ者の登場に、男たちが驚く。しかし、先にモモンが言ったように、酒のせいで気が大きくなっているのだろう、酔っ払いの男たちは下がるそぶりを見せない。
「これ以上、私の機嫌を悪くさせるな。痛い目をみたくないなら、大人しく帰って飲み直せ」
全身鎧の後ろにいた青髪の男が剣に手を掛け、いかにも魔法詠唱者という格好の女に睨みつけられ、酔っ払い達は悪態を吐きながらも渋々といった様子で解散した。
「ポーションだ。飲めるか?」
モモンは呻きながらうずくまったままの少年を抱き起こし、ポーチから取り出したポーションを飲ませてやる。王国で一番の腕前を持つリィジー・バレアレのポーションは良く効き、少年の顔色は瞬時に明るさを取り戻した。そして、野次馬といっしょに居た市民から適当に数人選ぶと、金貨を数枚握らせ、魔法で治療してもらえる施設、つまり教会へと少年を連れて行くよう頼む。
しかしながら、困っていた少年を助けても、アインズの心が晴れる事はない。以前から実感しているように、アインズの精神は既に大きく変容しており、アンデッドのものに近づいている。虐げられている子供を見ても同情できないし、可哀想とも思えない。その子を助けても充実感や達成感は得られないし、幸福を感じる事もなければ、優越感すらない。
(セバスは・・・・・・セバスは人間の女を助けたとき、どう思ったんだろう・・・? 何を感じたのだろう? ・・・・・・それはきっと、こんな空虚じゃなかったはずだ・・・)
セバスが
「お見事です、モモン様。やはりモモン様は高潔でいらっしゃる」
———埃ひとつない執事服を着こなす老紳士にして、アインズの今一番の不機嫌の理由、セバス・チャンが惜しみない拍手を続けていた。
———
「ブレイン、一杯奢るぞ」
「おや、いいのかい?」
「ああ・・・・・・。店に行くのは、少し休憩してからにしよう。ナーセットも構わないか?」
「問題ありません、マスター・モモン」
アインズはとにかく時間を求めた。必要以上に歩き、歩き続けて、ブレインが「この店でいいんじゃねえか?」と言い出すまで歩いて。ようやく着いた酒場の扉を開けて、重たい腰を下ろした。
「2人とも好きに注文しろ」
感傷のせいでぶっきらぼうな言い方になってしまったが、そのこと自体に自覚がないほど、今のアインズは精神的に参っていた。
(面と向かって、何も言えなかった・・・)
何の因果か、どういう運命なのか、暴行を受けていた少年を助けた冒険者モモンの前に現れたのは、あのセバス・チャンだった。セバスは「以前に冒険者モモンを雇っていた金持ち令嬢の付き人であり、今は店の支配人」というカバーストーリーを演じながら、モモンに挨拶をし、人助けを褒め称えた。言葉を失ったモモンの後ろからブレインが声をかけて、セバスは冒険者モモンと知り合いであること、そして今は王都で店を開いていることを説明する。
『この後で、店に寄らせてもらう』
モモンが口に出せたのはそれだけだった。アインズは逃げるようにその場を去り、街を歩き続け、そして今、考える時間を求めて酒場の椅子に座っている。
アインズは悩み、そして苦しんでいる。セバスの信頼を取り戻すにはどうすればいいか、穏便に、痛みなく、ナザリックに亀裂を生まぬようにするにはどうすればいいのか。天井知らずの忠誠心を持つ守護者達は、セバスをどう思うだろうか。ナザリックが分裂するかもしれないというこの危機に、アインズは悩みに悩んでいる。
「アンタが『漆黒の魔剣士』かい?」
そんな
「
「ふーん・・・、じゃあそう呼ばせてもらおうかね——
アインズは、まるで男みたいな女だと、後ろ姿だけなら男にしか見えないだろうなと、面白い人間もいたものだと無礼なことを考えながら話を聞いて。そして、聞き終わってから驚いた。相手はアダマンタイト級の大先輩、ブレインやエ・ランテル冒険者組合の冒険者たちから教わっていた、リ・エスティーゼ王国で最高の冒険者チームと呼ばれている“蒼の薔薇”だったのだ。アインズの気分は即座に入れ替わり、ここで蒼の薔薇とお近付きになれれば、この土地の様々な情報が手に入るばかりか、冒険者としての高みからの視点、つまり今のモモンに足りないものを教えてもらえるかもしれないと、冒険者ロールの思考が加速する。
蒼の薔薇とどう接するかという考えを素早くまとめて、冒険者モモンが丁寧な口調で言う。
「これはこれは、ご丁寧にどうも。既にご存知の事とは思いますが、私からも紹介を・・・。私はモモン、このたびエ・ランテルでアダマンタイト級冒険者として認められた者です。そしてこちらがナーセット。私の右腕で、優れた
先程までの鬱屈したかのような態度から一転、急に明るく礼儀正しい男となったモモンを見て、ガガーランが驚く。そしてガガーランは気づく、目の前の男が「漆黒の魔剣士」などと呼ばれる理由を。それは間違いなく自分より遥かに強い存在であること、ガガーランでも認めざるを得ないあの王国戦士長ガゼフ・ストロノーフよりも強いのだと、鎧の中から発せられる気配だけで理解する。”そして、もうひとつ“。まさかそんな事はと思っても、ガガーランが長年続けてきた“趣味“の感知にしっかりと反応がある。町娘も茶屋女も放っておかないであろうに、さらには隣に
「アンタ・・・・・・まさか、童貞かい・・・?」
ガガーランがおそるおそるで聞いたその瞬間、ビクンと反応したモモンの鎧が揺れた。
「まさかその反応・・・」
「い、いやぁ・・・・・・ははは・・・。あー・・・まあ、なんと言いますか、えー・・・そういう機会に恵まれなかったものですから・・・」
「マジかっ!? ええっ!? ホントにぃ!?」
「嘘だろ旦那ぁ!?」
モモンの告白にガガーランだけでなく、ブレインまでもが驚愕する。まさか街の英雄となった男が、高級娼婦を買う金もあるのに、そもそも乾く暇もないくらい女たちから言い寄られる身なのに、それがまさかの童貞だと判明したのだ。
「隣にこんな美人を連れてるのに、まさかそんな・・・」
「なっ、なにを言うのです!! 私とモモン様はそのようなっ・・・!!」
そして、ガガーランの言葉に反応した
これが”つかみ“となった。最初はガガーランの少し無礼な質問から始まったが、すぐに打ち解けた関係となり、ガガーランとモモンは冒険者としての仲間意識を共通のものとした。そして仲間の非礼を詫びにきたイビルアイとも、会話の中で打ち解けた。後からやってきた蒼の薔薇のメンバー、忍者姉妹のティナとティアも加わり、酒場の空気が明るさを増す。
図らずも蒼の薔薇との親交を築けた事でアインズは上機嫌になり、会話が弾んだ。そんな中、イビルアイがモモンに聞いた。クライムが持ち込んだ最初の話題、どうしてエ・ランテルの冒険者チームである漆黒が、ここ王都に居るのかということを。
「そういえばモモン、貴方はどうして王都に? こう言ってはなんだが、王都よりもエ・ランテルのほうが、冒険者への依頼は多いはずだが?」
その時、アインズの脳裏に天啓の如く光るひとつの閃き。明るい気分になった事で思考力を取り戻した、アインズの思考が加速する。今一番の問題、セバスについての事と結びつけて、計画が練られる。
モモンは明るく答えた。
「実は私、恥ずかしながら、このブレインを鍛えておりまして」
「ほう!」
「師弟関係というわけでもないのですが、ブレインを表世界に引っ張り出したのは私ですから。その責任は遂げなければと思いまして・・・——それでこのたび、アダマンタイト級への昇格祝いも兼ねて、ブレインの武器を新調しようと考えましてね。そこで王都で店を開いた知り合いを思い出したんですよ」
その話を聞いて、ブレインが横から話に入る。
「しかしよ、モモンの旦那。俺の剣、カタナは、そんじょそこらの店じゃあ扱ってない珍しい物だ。その店、ホントにこれ以上のカタナを置いてるのかい?」
「ああ、もちろんだ。それより数段格上の刀があるぞ。今使ってるそれに愛着があるなら、無理にとは言わないが。強くなりたいなら、乗り換えたほうがいい」
「へぇ〜、そんな凄い店がこの王都にねえ」
ブレインと一緒になって話に混ざってきたガガーランが、面白そうだという声で口を挟む。その反応を待ってましたと、アインズはすかさず声を掛けた。
「そうだ、ガガーランさんもご一緒しませんか? 今日ここで会ったのも何かの縁です。私が紹介すれば、特別な品を見せてもらえるはずですから。きっと気に入る品が見つかりますよ!」
———
「この店ですよ」
「黄金の椅子、ねえ。変わった名前だね」
「黄金ってラナー様?」
「そんな話、聞いてないけど」
蒼の薔薇のガガーラン、そしてティアとティナを連れる事に成功して、アインズは心の中でガッツポーズを決める。ようやく運がこちらに寄ってきたと。
蒼の薔薇がナザリック製の武具を使ってくれれば、良い広告塔になる。そして地上では一級品とされる武具を提供する手伝いをしたとなれば、恩を売れる。王国最高のアダマンタイト級冒険者チームに恩を売れるというのは、彼女たちが抱える情報を得るチャンス。
しかしなにより、蒼の薔薇との対話の中で閃き、そして形となった発想。如何にしてセバスを傷つけることなく、事態を穏便に済ませられるかを考えついたこと。それがもっとも嬉しい。
アインズは、ウキウキと弾む気持ちがバレないように圧し殺し、静かに店の扉を開いた。すると、真っ先に目に入るのは、接客中のセバス・チャン。そして、ちらりと視線を傾けて見れば、その相手は王国戦士長、ガゼフ・ストロノーフ。
(ツイてる! ツキまくってるぞ俺!)
もう一度、心の中でガッツポーズ。アインズは、ガゼフを待たせて接客にやってくるセバスにバレまいと、更に気を引き締めて対応する。
「ソムリエはいるか?」
「ええ、いらっしゃいます。どうぞ奥へ」
ソムリエとは武器ソムリエであり、パンドラズ・アクターの事である。アインズがモモンとしてこの黄金の椅子で買い物をする際は、ナザリックからパンドラズ・アクターを呼び寄せる事になっていた。秘宝コレクターにして秘宝マニアという設定を持つアクターは、それ故にあらゆる武具についての知識を持つ。その知識を活かして、モモンに武器防具をお勧めするというキャラクターを演じてもらうのだ。まさに宝物庫の管理人として造られたパンドラズ・アクターならではの役割と言えよう。
アインズが勧められて奥へ行こうとすると、続いて入店したブレインとガガーランが声を上げた。
「ガゼフの旦那じゃないか! アンタも来てたのかい!」
「ガゼフ・・・ストロノーフ・・・・・・」
ガガーランにとっては戦士としてのライバル的存在。ブレインにとってはライバルにして目標。奇怪な
「知り合いですか?」
モモンとしては初対面。アインズは素知らぬ風を装って、ガガーランに聞く。もちろん、ガガーランから紹介してもらう事で、王国戦士長との繋がりを得るためだ。
アインズは奥へと向かう足を切り替えて、全員揃ってガゼフ・ストロノーフの前まで進む。そしてガガーランからの紹介で挨拶を交わす。
「ご存知、王国戦士長のガゼフ・ストロノーフさ。会うのは初めてかい、モモン?」
「そうですね——はじめまして、王国戦士長殿。私はエ・ランテルのアダマンタイト級冒険者、モモンといいます。どうかお見知り置きを」
「これはご丁寧に——私がガゼフ・ストロノーフだ。アダマンタイト級の戦士と知り合えるとは実に嬉しい。こちらこそよろしく」
挨拶を交わしながら、ガゼフは首の裏に冷や汗を流した。目の前の大剣を背負った全身鎧の戦士、モモンは、明らかに自分より格上、凄まじい強さの持ち主だと感じ取ったからである。それは当然、ナザリックで作られた偽装の指輪の効果により、レベル40の戦士としての偽のステータスを持つ今のモモンは、明らかな強者としての雰囲気を纏っているのだから。
してアインズは、挨拶の中でガゼフの目が泳いだのを見逃さず、話題を続かせる。
「私の仲間を紹介させてください。こちらはナーセット。私の相棒で、優れた魔法詠唱者です。そしてブレインですが——彼の紹介は必要ありませんかね?」
それを聞いて、ガゼフは小さく軽く、そして満足げに笑った。
「ああ、そうだな。戦士の剣は何よりも雄弁だ。あの日、あの御前試合で剣を交えて、ブレイン・アングラウスという人間の人生を知った。その才能も、努力も」
いかにライバルであり、倒すと定めた目標であっても、褒められて悪い気はしないらしい。ブレインは居心地悪そうに視線を外しながら、ボリボリと頭を掻いて照れた。その様を見て、ガゼフとブレインの関係が悪いものではない事を知り、アインズはすかさず口を挟む。
「戦士長殿。実は私たち、今日この店を訪れたのは、ブレインの武器を新調しようと思っての事なんですよ」
「ほう! なるほど、それはそれは・・・。ええ、この店ならば、ブレインに相応しい剣がきっと見つかるだろう——いや、実は私も今、素晴らしい剣に出会えたばかりでな」
と、ここで小石で足をつまずく。
(あちゃー・・・もう選んでたなんて・・・。一歩遅かったか・・・・・・。パンドラズ・アクターに選ばせた武器を、戦士長に使ってもらえるチャンスだったのに・・・。うーんまあ、あんまりがっつきすぎてもアレかな? 今日のところは蒼の薔薇の人たちに武器を買ってもらうだけで満足するとしよう)
蒼の薔薇と同じく、戦士長という立場の人間にナザリックの武器を使ってもらうという企みが一旦中止となる。しかし、次なる機会はいくらでもあると、アインズは気を持ち直す。
セバスがガゼフの接客に戻って、アインズ一行は店の奥に進む。店の奥には入り口から隠れるようにして存在するスペースがあり、そこは一台のカウンターと、壁とショーケースに様々な武具が並んでいた。そして、燕尾服を着こなす色白の紳士が立っていた。人間に化けたドッペルゲンガー、モモンガの創造物、パンドラズ・アクターである。
色白の紳士は小さくお辞儀をした。
「こんにちは。モモン様」
「やあ、ソムリエ」
ソムリエはモモンの声を聴くと微笑みを浮かべ、商品を飾ってある壁へと向かう。その中から一本の槍を手に取ると、それをカウンターに置いた。
「貴方がヘルヘイム製の武器をお好きなのは、私もよく存じておりますが。本日は是非ともオススメしたい新しい一品が御座います——こちら、ヴァナヘイム製の重槍です」
カウンターに置いて差し出されたのは、まだゲームだった頃のユグドラシルでギルドメンバーの一人が手に入れ、捨てずに保管しておいた武器であった。モモンは無造作に槍を手に取り、軽く取り回しを確認する。
「ヴァナヘイムの大海に棲む
武器自体のランクとしては中級未満。鉱石で例えると、アダマンタイトとミスリルの中間といったところ。レベル帯としては20から30台のプレイヤーが使うような物だ。だが、アインズは大剣の扱い方は教わっていても、槍はズブの素人である。アダマンタイト級がうっかり槍を落とすなんて恥ずかしい姿を見せるわけにはいかない。しかしなにより、大量のアンデッドという
「ありがとう。しかし今日は私の武器ではなく、こっちのブレインの刀を新調しに来たのでね——それと、後でそちらの女性陣にも、何か見繕ってほしいのだが・・・」
「かしこまりました———まずは刀ですか。ではブレイン様、お腰の物を見せて頂けますか?」
「ああ、いいぜ」
ブレインが腰から引き抜いた剣を手に取り、鞘から抜いた瞬間、ソムリエは顔をしかめた。指の骨で刀身を叩き、室内灯の光を刀身に映している時も、ソムリエのしかめっ面は変わらなかった。そんな品定めは30秒で終わり、ソムリエはゆっくりと鞘へ納める。しかしソムリエは、剣をブレインには返さずカウンターに置いてしまった。そして、ソムリエは言った。
「これは紛い物、偽物です。形はよく出来ていますが・・・・・・、練り、焼き、鍛え、全てにおいて論外です。研ぎだけはなかなかのものでしたが、それも“このレベルにしては”という注釈が付きますな。そもそも四方詰鍛えではないようですし」
「良く切れるし・・・・・・それに、けっこう高かったんだが・・・・・・」
「これは刀とは呼べません。本物をお見せしましょう」
まさかの酷評にがっくりと肩を落とすブレイン。武器鑑定の専門家であるソムリエが言うのだから本当なのだろうと、ブレインも認めざるを得ない。高い買い物だったのに・・・と、愚痴が溢れるのは仕方ないだろう。実際のところは、ソムリエことアクターの目が肥え過ぎているだけで、地上世界では今のブレインの剣でも上等の部類に入るのだが。
「こちらは如何でしょう? 『
ソムリエがカウンターの下から取り出した箱の中には、見るからに歴史を感じさせる雰囲気の日本刀が入っていた。ソムリエは、まるで赤児を湯に浮かべる乳母の如き柔らかな手つきで刀を手に取ると、静かに鯉口を切り、ゆっくりと刀身を空気に晒した。
その刀身の美しさは、剣を知る者全てを魅了するかの如き、魔性とさえ思えるほどの芸術的美麗であった。刀身に浮かぶ刃紋、見ただけ解る刃の硬度、そして煌めき、全てが美しい逸品。その輝きにブレインは言葉を失い、開いた口を閉じることも出来なくなっていた。それはガガーランやティアやティナも同じ。ガガーランは「す、すげぇ・・・」と声を漏らして驚き、ティアやティナは眼を輝かせて見惚れている。
「これは業物ですよ。どうぞ、手に取ってみてください」
ブレインは震える手で差し出された柄を掴み、目に焼き付けるように、刀身を目の前に寄せた。
アインズ・ウール・ゴウンのメンバー"
問題なのは、装備条件である。武器だけでなく防具やアクセサリーにも、相応のレベルやクラス、職業や種族を条件とする物がある。この
(ま、レベルアップさせてやればいいだけだよな。レベリングの手段もあるし。)
アインズが別段問題というほどでもないと考えていると、酷い顔のブレインが振り返って、モモンを見ていた。アインズは何事かと思って、そして察する。ユグドラシルでもナザリックでも大した事はない武器でも、この土地の人間にとっては国宝クラスの超逸品に映るのだ。つまるところ、こんな高級品を買う金があるのかと、そういう心配をした顔である。ブレインの手持ちはもちろんそんな額を出せるほどではないし、足りない分をモモンから借りるにしてもどうなるか、しかし欲しいものは欲しい、いや絶対に手に入れたい、そんな期待と苦渋とが混ざってブレインは酷い顔をしまっているのだ。
ブレインを落ち着かせるように、モモンは明るい声で言った。
「金の事なら心配するな、ブレイン」
「い、いや、しかしよ・・・・・・こっこここんな、こんな名刀じゃ・・・」
「大丈夫だ。私の紹介だからな」
「そ、そうなのかい・・・?」
ブレインが恐る恐るでソムリエの顔を窺うと、ソムリエはにっこりと笑って「ご心配には及びません」とだけ言った。その時である。店の二階から、誰かが階段を降りてきて、そしてその足音が近づいて来ていたのだ。
「まあ、モモン様ではありませんか! こんなに早くいらっしゃるとは思っておりませんでしたわ」
一行が振り返ったそこに、絶世の美女が居た。ナーセットと並ぶほどの、素晴らしい美女が。そう、ソフィアという金持ち令嬢を装って王都で情報収集の任務に当たっているプレアデスの一人、ソリュシャン・イプシロンである。
モモンが軽くお辞儀をすると、お嬢様が言った。
「せっかくいらしてくださったのですもの、お茶のひとつも出さないままではいけませんわ。二階に応接室が御座いますから、そちらでお話でも聞かせてくださまし」
「お嬢様の頼みとあっては断れませんね」
モモンが明るく笑いながら言う。そう、これは織り込み済みの芝居である。二階の応接室には結界が張ってあり、中に控える階層守護者達の気配を遮断している。それはもちろん、セバス・チャンを問いただすためにだ。接客は演技派の智者、パンドラズ・アクターが受け持ち、セバス・チャンは遅れて応接室に呼ばれる、そういう段取りになっている。
「蒼の薔薇のみなさん、私は席を外しますので、暫しお待ちを。ナーセット、ブレイン、アダマンタイト級冒険者の大先輩方だ、万事仲良くな」
「かしこまりました、モモン様・・・・・・さん」
「その癖、また戻ったのか・・・」
全員に断りを入れて、モモンが席を外す。
事態を知らされていないセバス・チャンは、戦士長の接客を続けていた。
次はとうとうセバス圧迫面談編でなんだけど・・・
次の投稿が二ヶ月遅れたら察して