廃人ネカマのロールプレイング 作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会
お、おまたせ・・・。アニメ4期の報を聞いて戻ってみたら、離れてたうちに三巻も伸びててビックリ。アニメ観ながら14、15、16巻を読みました。復活してくれて本当に嬉しい。ありがてえ。
そんなわけでオバロ熱も戻ってきて、ようやく続きが書けましたとさ。難産は難産でしたけどね。
相手は王国戦士長、広告塔としてなんら不足の無い人物。故に、この商談は必ず成功させねばならぬ。そう意気込み、話がスムーズに進み、上機嫌のガゼフ・ストロノーフを見て安堵する。そんなセバス・チャンに、冷や水を掛けるかの如き命令が下る。
「セバス! 何をしているの! せっかくモモン様がいらして下さったのよ、アナタが応対しなくてどうするの!」
気位の高いワガママ令嬢ソフィアこと、ソリュシャン・イプシロンの合図。暗号なぞ用いるまでもなく、アインズ様がセバスを呼んでいると伝えている。しかしこれは異例の事態。そも、一般客との接客中にアインズ様がアインズ様としていらした場合、ソリュシャンがアインズ様に対応し。社会的地位の高い客が相手であった場合は、相手にいらぬ疑いや不快感を与えぬよう、ソリュシャンはソフィア嬢として演技を続けながら接客し、セバスがアインズ様に対応する。そういう取り決めだったはず。それがどうして、二人が同時に、アインズ様のお相手をしなければならないのか。
考えるまでもなく、それが急を要する事態、セバスもソリュシャンも欠けてはならぬ重要案件であると、セバス・チャンは即座に理解する。アインズ様ほどの御方が、ルールを曲げてまで、伝えようとする話があるのだと。
「彼女が貴方の主人ですかな?」
セバスの顔から微笑みが消えて真剣な面持ちになったのを、何やら誤解してくれたようで、ガゼフ・ストロノーフは同情的な苦笑いを浮かべていた。セバスはこれ幸いとその態度に乗っかり、ワガママなお嬢様に振り回される老執事を演じる。
「・・・・・・ええ、ソフィアお嬢様で御座います。幼い頃からずっと見守って来ましたが、あの周囲を顧みない性格だけは、どうにも・・・・・・」
「ははは・・・・・・。いやいや、お気になさらず。私としてもオーナーの機嫌を損ねたくはない。せっかく見つけたこの剣を売ってもらえないなんて事になったら、泣くに泣けんからな。どうぞお構い無く。私は、向こうに居る知り合いと話をしていますから」
「大変申し訳ありません。お客様にそのような気を使わせてしまって・・・・・・」
「構いませんとも。それより早く行かないと、お嬢様がお怒りになられるのでは?」
「お気遣い、感謝致します・・・・・・」
セバスの脳内で、ガゼフ・ストロノーフという男の性格が事前情報と重なる。平民出身であるために、王族と貴族に振り回され、気苦労の絶えない立場にいる、王国の現王国戦士長。セバスは想う、その気配り、目端の良さ、柔軟な対応力。どれを取っても優秀な、ただ戦うだけの者ではない、ガゼフ・ストロノーフは人間としての“厚み”を持った男であると。
(王国戦士長との
セバスは自分の仕事に満足を覚えつつ、また、至高の存在の慧眼に感嘆を覚えつつ、確かな足取りで二階へと続く階段を登る。しかし、その上機嫌は、次の瞬間に恐怖へと変わった。階段を登り終える直前、二階の廊下、応接室の扉の前に佇む、“ソリュシャン・イプシロン”の姿を見てしまったからだ。
そう、ソフィアお嬢様ではない。戦闘メイド「プレアデス」としての正式衣装に着替えた、ソリュシャン・イプシロンがそこに居た。
瞬間、セバスは自分が呼ばれた理由を悟った。全てが知られた、アインズ様に、隠し事がバレたのだと。何の価値も無い小娘一人、どうにか生かしていただけないでしょうかと、言い出す勇気を持てなかったばかりに。
冷めきった表情のソリュシャンから冷たい目線を送られるまでもなく、セバスは全身の血が凍り付くような感覚に苛まれていた。緊張で喉が渇く。肌着は次々と溢れる冷や汗を吸い取るので忙しいようだ。足はまるで鉛と化したかの如く重たく。恐怖に眩暈すら覚える。
自分はナザリックを追われるかもしれない。不忠を働き、不義に堕ちたと、非難されるかもしれない。だが、何より恐ろしいのは、失望された至高の御方々がナザリックを去るような事態になったとき、そして創造主たるたっち・みー様の名を汚してしまうこと。その恐怖をグッと堪えて、セバスは応接室の扉を開けた。
「セバス・チャン、ただいま参りました」
セバスが応接室に入るなり、四方より強烈な殺意が浴びせられた。それは常人であればその場で即死したであろうほどの圧力。セバスがいかにレベル100のNPCとて、それだけの殺意を浴びて無事では済まない。足取りは更に重みを増し、まるで液体金属に腰まで浸かっているかのように、一挙手一投足が非常な苦労を伴う。
室内にて待ち構えるは、至高の支配者たるアインズ様と、階層守護者達のほぼ全員。コキュートス。アウラ・ベラ・フィオーラ。マーレ・ベロ・フィオーレ。ヴィクティム。デミウルゴス。ツインズ。そしてアルベド。
現時点でナザリック防衛の最前線を任される最高責任者たるシャルティアが居ないのは当然としても。今まで自身が管理する階層から動くことを許されなかったヴィクティムまでもがこの場に居ること。それが、階層守護者達の本気を示している。即ち、この場でセバスが凶行に及んだとしても、アインズ様には絶対に傷ひとつ付けさせないと。そして、絶対確実に、セバスを殺し切るだけの戦力を用意したのだと。
セバス・チャンにとっては死を覚悟して然るべきこの状況、今にも張り詰めた系が切れそうな状況において。唯一平静であったのは、アインズのみであった。
「接客中だというのに、呼びつけてすまなかったな。セバス」
どこまでも平静な、いつもと変わらない、
しかしそれでも、たとえそうだとしても。最後の最後まで、創造主たるたっち・みー様の名を汚すような、見苦しい真似だけはするまいとして。セバスは気力を振り絞って声を出した。
「とんでもございません。アインズ様の呼び掛けは全てに優先します」
「そうか」
やはり平静な声の至高の存在。セバスは思う、ここは潔く、自ら罪を告白するべきか。否、それは無礼だ。ここは既に裁定の場、罪はとうに明らかになっている。沙汰を待つのみ。残るはただ、胸の内でアインズ様の温情を願うことのみ。それのみが、今の自分に許された最後の自由であると、セバスは覚悟した。
−−−−−−−−−−
裁定の時来たる。
「セバスよ、なぜこの場に呼ばれたか、分かるな?」
「・・・・・・はい。存じております」
冷たい汗を流し続けるセバスを見て、アインズはホッと、内心で胸を撫で下ろす。
(うん、充分に反省してるみたいだな。それじゃ、無い頭を振り絞って見つけた最適解。いざ実行だ!)
そう、
「セバスよ、お前はミスを犯した。
事実を淡々と述べるだけで、セバスの顔が青ざめていく。部下の目の前で失態をいちいち上げ連ねていくなど、嫌な上司にもほどがあると自覚しているが。これも布石と思い、アインズは心を鬼にして言葉を続ける。
「“やり過ぎだな”、セバス」
「・・・・・・申し訳、ありません」
セバスが腰を深く折って頭を下げる。しかし、階層守護者達は、そんなセバスを冷ややかな目で見ていた。アインズがなんとかしたいのはこれだ。セバスに釘を刺すのに加えて、この状況を覆す必要があった。その一手が、今はその手にある。
「よい、よい。“元より、お前に腹芸が出来るとは思っていなかった”。“無理な役回りをさせてしまったな”、許せ」
「・・・・・・は?」
思わず頭を上げてしまったセバスだけではない、アインズの言葉に驚いたのは、その場に居た全員に共通する事であった。腹芸、役回り、セバスに、アインズ様の命令で。これだけの情報が揃えば、聡明な者はすぐに気がつく。
真っ先に声を上げたのはデミウルゴスであった。
「アインズ様! まさか、セバスに獅子身中の虫を演じさせたというのですか!?」
その言葉を待っていましたと、アインズは心の中でデミウルゴスに拍手を送る。
「そうだ! そのとおり! 『この私に黙って勝手な行動を、“ナザリックの害となるように見える行動“を取れ。しかしそれを気付かれないよう努力せよ』、そのように密かに命じておいたのだ。−−−−−しかし、やはりというべきか。セバスは誠実で実直な男、仲間を欺くほどの演技は出来なかった。やり過ぎと言ったのはそういう事だ、演技が“あからさま”過ぎたのだ。ソリュシャンがいよいよもってこれはおかしいと判断し、私に直接報告するに至るほどに」
セバス・チャンは裏切っていなかった。全てはアインズが仕組んだ
「しかしアインズ様、何故そのようなことを・・・?」
その場の全員−−−そこにはセバスも含まれる−−−の疑問を、アインズの側に控えるアルベドが代弁する。アインズは強く気を引き締め、脳内の台本を読み上げる。
「私は思う、お前たちの忠誠ほど嬉しいものはないと。しかし同時に、こうも思ったのだ。その忠誠心が、お前たちの眼を曇らせてはいないかと。私への信仰が故に、盲目的になってはいないかと。そう心配してしまったのだ・・・」
「『アインズ様の指示だから』、『アインズ様が選んだ者だから』、『これもアインズ様の計画のひとつに違いない』、『アインズ様が判断を誤るはずが無い』−−−−−そんなふうに考えた事は一度も無い、と言えるものがナザリックにどれだけ居るだろうか?
信仰とは人を盲目的にさせるものだ。それはつまり、私のミスひとつで、全てが終わりかねないという事。それは、組織としてあまりに脆弱すぎる。“意識改革の必要性を考えていたのだ”。
そして今回の実験では、ソリュシャンがそれに見事に応えてくれた。セバスのぎこちない演技であっても、盲目的に私を絶対視していれば、そもそも頭に浮かんだ疑問を棄却してしまっただろう。それこそ、『アインズ様の人選に間違いなし』などとな・・・・・・。よくぞ自分の意思で判断し、疑問に思うことを忘れず、事実確認を怠らなかった。ソリュシャン・イプシロンよ、褒めてつかわす!」
「勿体無い御言葉・・・! ありがとうございます!」
扉を塞ぐように控えていたソリュシャンが深くお辞儀をする。至高の存在からお褒めの言葉を頂いたという幸福感に紅潮し、思わず頬が緩むという恥ずかしい様を周囲に見られまいと、なおさら深く腰を折って。
一方、各階層守護者たちは心痛に苛まれ、皆一様に苦虫を噛み潰したかのような、苦痛の表情を浮かべていた。さもありなん。至高の存在に、ナザリック地下大墳墓の最高支配者に、“気を使わせてしまった”のだから。そも、身命を賭して一助となるべくあり、それが自身の存在価値だと認識しているのに、あろうことか足を引っ張ってしまうなどと。それが、この場に居る階層守護者たち全員の思うところであった。それは当然、先のアインズの言葉通り、『アインズ様が間違えるはずが無い』と常日頃から信じ切っていたからに他ならない。そう信じることは悪ではないが、そう信じて甘えていた自分を恥じている。主人を助けるための道具が、実は主人に縋っていたなどと。この皮肉めいた事実に気付かされ、階層守護者たちは自分自身への羞恥と怒りで震えていた。中には、己の不甲斐なさに涙を流す者までいた。
悲痛な沈黙が応接室を支配する。特に、
一方で、アインズは戦々恐々としていた。
(やっば・・・。えっ、そんな泣くほどのことか!? 別に強い言葉で叱りつけたりしてないけど!? ど、どどどどーしよ・・・! と、とりあえず、これでセバスをお咎め無しにする理由は出来たし、みんなもそれに納得してくれたよね? ね? も、もう終わりっ! これ以上は耐えらんないっ!)
至高の存在が小さく喉を鳴らしたことで、全員の意識が話を聞く体勢になる。
「私は絶対確実な存在ではない。全知全能でもなければ、不変の真実でもない。私とて失敗する、失敗した事がある、敗北もする。事実、たっち・みーに助けられるその日まで、私は狩られる存在だったのだから−−−−−だから、これだけは覚えておいてほしい。私の言うこと成すこと全てを“私だから”と無条件で肯定してはいけない、そんな事はして欲しくない。私は暴君や暗君には成りたくない。私は、ナザリックに産まれたお前たち全ての父であり、そして指導者でありたい。お前たちの忠誠は得難く、喜ばしいが。行き過ぎた忠誠が信仰となり、信仰が者を盲目的にするのであれば、その盲目的な無条件の肯定が、私を傲慢で愚かな王へと変えるだろう・・・・・・」
この発言は、
本来、神は絶対である。シモベの創造主である至高の存在は神も同然であり、故に至高の存在は絶対である。疑うなぞ有り得ない、そもそもそんな考えが浮かぶ余地すらない。ただ黙って命令に従い、期待に応えるよう全力で以って努力する。それが自然にして当然であった。にも関わらず、「なぜ?」、「どうして?」と、神に問うこと、確かめることを許されたのである。しかもそれが『お前たち被造物を愛しているからだ』と、『お前たちに成長してほしいのだ』と暗に言われれば、その無窮の慈愛を信仰しないほうが難しいというもの。
アルベドはハッと気付く。思えば、アインズ様はもっとずっと分かりやすく、明確に示されていたではないかと。御方自ら冒険者に扮して調査に出かけ、数日ぶりに帰還された時のこと。美しく、完璧に、素晴らしい外観へと仕上げたナザリック地下大墳墓の地表部分を誉めて頂こうと、アインズ様が帰路にあると聞いてすぐ、入り口にて待機していた。そこで、アインズ様がこの身を抱き締めて、仰って下さったではないか、『私の愛しい子らよ。ナザリックの宝よ。お前たちを愛しているぞ』と。そのすぐ後の報告会でもだ。ツインズの学ぼうとする姿勢を誉めていらしたではないか。あの時点で気付くべきだった。自分は賢しいと自惚れて、成長しようなんて考えもしなかった。創造主たるタブラ・スマラグディナ様を絶対視し、信仰していたがためだ。タブラ・スマラグディナ様が自分を完成させて下さったのだと、自分は今が完全な姿なのだと、そう盲信してしまっていたのだ。
もっと直接的に至高の存在の意図に触れ、知識と経験を吸収できる、しても良いと言われた。それは、それだけの伸び代をシモベたちに見出されたということ。成長の余地有りと、見込んで下さったということ。ならば、その期待に応えることこそ、臣下の忠義ではあるまいか。ここに、守護者達の意志は定まった。守護者一同、セバスとソリュシャンも、一斉に膝をついて敬意を表し、次々に自身の不甲斐なさ、至高の存在に甘えていた未熟を詫び、そしてこれからの成長を約束した。
「・・・う、うむ、お前たちの成長を心待ちにしているぞ。・・・・・・では、セバスが“しでかしたように見せた”この国の闇組織が絡む案件だが。こちらはパールンレヴァクとの最終調整の後、伝えることになろう。皆、忙しい中、ご苦労であった。解散してよろしい!−−−−−セバス、お前には特に苦労を掛けた。この場に残れ。
そうして、至高の存在の議決の号令により、『セバス・チャン背反』の一件は解決となったのである。もっとも、アインズはというと。意識改革だの盲目的すぎるのは良くないだの、もっともらしい理屈を並べ立て、煙に巻いて、万事安心にて事を治めたつもりでいるが。この一件のせいで、何を発令するにも思考過程や意図を尋ねられるようになってしまっており、思いつきや直感で喋ることが出来なくなっている事に、アインズはまだ気付いていない。全ては浅知恵の末路、後の祭りというものである。
−−−−−−−−−−−
階層守護者統括以下、アインズとセバスを除いた全員が退室して、事の真相を知る二人だけが残った。そうして二人だけの世界で、二人だけの長い永い時間が過ぎて。また、セバス・チャンは静かに涙を流した。その瞳で尊敬と感謝をありありと示しながら。
「セバス、なぜ泣く」
アインズの言葉に対し、セバスは正直に答えた。
「
その言葉を受け止めて、アインズは心底思う、骸骨の身体で良かったと。これが生身であれば、狼狽と照れで表情と顔色が目まぐるしく変わりまくる様を見られてしまっていただろうから。
何はともあれ、事の半分は解決した。それでは仕上げに掛かるかと、アインズが脳内のメモ帳を読み直す。そう、まだ全てが解決したわけではない。まだセバス・チャンの意識を変える必要が残っている。もちろんセバスとて優秀な男、先の階層守護者たちを交えての会議で、自分がいかに愚かしい事をしたのか反省しているだろうし、次は同じ間違いを犯さないよう努力するだろう。だがそれは、極論的には希望的観測に過ぎない。それは階層守護者たちが自分自身を恥じたように、相手に甘えている事になる。「セバスならきっともう大丈夫だろう」などという甘えた考えを、アインズは捨てた。それが切っ掛けで今回の事件が起きたのだから、当然といえるだろう。
セバスが自身のハンカチで涙を拭い、話を聞く体勢が整うまで待って。アインズは語り始めた。
「セバスよ、聞け。お前がどうして私に黙って行動したのか、それは理解できる。私がその、お前が助けた人間の小娘を、情報が漏れないようにと口封じしてしまわないかと、恐れたのだろう。それは当然だ、私ならそうする。だが、道はいつでも存在する。その小娘の命を守りつつ、情報漏洩対策を行う方法などいくらでも存在する。最も簡単なものなら、その小娘をナザリックに移動させて保護するなどだな。セバス、今回お前が失敗した原因はただひとつ、感情的になり、冷静でいられなかった事だ。だから、これだけは忘れるな。『常に冷静沈着であれ』、『一人で悩むな』。今回学ぶべき教訓はこれだ−−−−−」
「はい。この胸にしかと刻みます」
「−−−−−そしてもうひとつ、他の皆には聞かせられなかったが、お前には伝えておくとしよう。セバスよ、
至高の御方から掛けられたこの上ない慈愛の言葉を受けて、またしてもセバスが涙する。感動で喜び震える身体を必死に抑えて、はしたない声が出ないように何度も唾液を飲み込んで喉を慣らして、何十秒もかかって用意を整えてからようやく、セバスは声を出すことが出来た。
「よ・・・よろしいのでしょうか? ナザリックの、至高の御方の従僕に過ぎない私が、そのような畏れ多いことを・・・・・・」
「良いのだ、セバス。お前の本心が聞きたいのだ。お前らしい言葉がな」
これ以上はないと思えるほどの幸福に浴しながら、セバス・チャンは想う。もしかすると、これが最善にして最良の道なのかもしれない、と。思えば、かつては42人いた至高の存在が、モモンガ様とパールンレヴァク様の御二方を残すのみとなって。ギルド長として全てを管理、維持されていたモモンガ様が、時折零されていた言葉の数々。
『またいつでも戻ってきてくださいね、ペロロンチーノさん・・・・・・』
『ああ・・・・・・そっか、もうぬーぼーさんも居ないんだったな・・・・・・』
『るし☆ふぁーさんがいないと静かだなあ・・・・・・。まあ、居たらいたでアレだけど』
セバスは覚えている、ひとりまたひとりと、至高の存在がお隠れになる度いつも、場を纏めようといつにも増して口数を増やしていた至高の存在のまとめ役たるモモンガ様の姿を。セバスは想う、
意を決したセバスが、涙を拭いて、真っ直ぐな瞳で言った。
「では、御許しを戴きまして、申し上げます。アインズ様、・・・いえ、
その言葉を聞いて、アインズは−−−心の中でだが−−−満面の笑みを浮かべた。
「上出来だ。そうだ、それでいい−−−−−ああ、もちろんだとも。その嘆願を許そう、セバス。お前が望むのならば・・・・・・」
セバスは深々とお辞儀をした。
「感謝の極み・・・!」
「・・・・・・して、その娘の正式な処遇としては、セバス・チャン直属のメイド見習いという立場が相応しかろう。つまり、セバスの所有物であり、ナザリックの一員として数えられる。よって、この私、アインズ・ウール・ゴウンの名の下に、庇護を約束される。ナザリック内外の一切が、その人間の少女、ツアレに手を出す事を許さん。・・・以上だ」
言い終わり、満足な気持ちで席から立ち上がるアインズ。その内心は達成感と心的疲労の極致である。これにて問題は解決した。これでもうセバス・チャンは、ナザリックの悪の属性と自身の価値観の間で板挟みになって一人で悩んだりせず、アインズを頼って解決する方法を覚えた。実践もさせた。ソリュシャンを含めた全てのシモベに、「セバスはアインズ様のお墨付きを得て人間を助けている」と、知らせることが出来た。セバスがせっかく助けた人間−−−−−アインズからするとどうでもいい存在なのだが−−−−−を殺さずに済んだ。
後はアルベドを通じて、セバス直属のメイド見習いとして人間を迎えた事を周知させる。そして、闇組織から狙われる少女を囲ったせいで、王国内での工作に問題が生じた件か。こちらはどうしようか、と考えた出したところで、アインズはひとつ思い出した。大事な話が残っていた。これをセバスに伝えないまま帰したら、どこで広がるかわかったものではない。それはマズイ。
「では、私はこれで失礼させていただきます。アインズ様、この度はまことに・・・」
「ま、まて! セバス、ひとつだけ、どうしても言っておかねばならない事がある!」
「なんでしょうか」
「セバス、私は先ほど、『もっと私に甘えて良いのだ』と言ったが。それは分別を弁えた慎ましいお前の性格を知ってのことだ。いいか!? 他の者には、絶対に、教えてはいかんぞ!! この場だけの、私とお前だけの秘密だ! いいな!?」
「・・・は、はい! ですが、どうしてなのでしょうか・・・?」
セバスとしては、先程のアインズが語ったカバーストーリーにして、実利ある意識改革に則っての問いである。至高の御方があまりに必死なので、気になったというのもあった。不敬とは思わない、疑問に思ったら確認してもいいと言われたのだから。どうして
その答えは意外なところにあった。
アインズは誰にも聞かれていない事を確かめるように室内を見渡し、そして言った。
「これがアルベドやシャルティアに知られたりしてみろ。私はいったい
両手で頭を抱えてまるで「オーマイガー」と言いたげなオーバーなリアクションのアインズを見て、セバスはそっと笑みを見せた。
(いやはや、まったく・・・。私を気遣って下手な演技までして下さるとは。本当に、この方にお遣え出来て幸せです。“アインズ様の度量ならば、アルベド様もシャルティア様も
セバスは喜色の笑顔で約束し、退出する。さあ、仕事に戻らねば。
原作でも人気のシーンを俺流で調理しなきゃなので、まー難しいのなんの。熱はともかくとして、難産でしたわ。
それはそれとして・・・・・・
どーして聖王国編が劇場版なのよォーーッッ!!? 一番好きなエピソードなのにぃぃーーっ!!
ま、端折るトコは端折られるだろうけど、劇場版ならしっかりグロ描写してくれるだろうから、そこは期待しようかね。