廃人ネカマのロールプレイング 作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会
今回は説明回なので面白くありません。
たぶん次回もそうなる。
「うわぁぁあああ!!!」
真っ暗な闇の世界を落ちていく。先ほどまでベッドで一緒だったシャルティアの姿は無い。落ちているのは自分だけ。何も無い暗闇を一人で落下し続けている。いつから落ち始めたのか、そしてこの闇は何なのか、何も分からない。分からないが、漠然とした恐怖だけが確かにあった。
どれだけ落ちただろうか。突然、"底"という感覚を感じる。そして地面とは思えない無機質な闇に墜落する。
「だはっ・・・!? はっ・・・、あっっつぅ・・・・・・?」
物理法則の世界でないことは理解した。かなりの時間を落下したのに、五体が砕けるはずの着地の衝撃が無かったからだ。まったく見当もつかない謎の世界、謎の空間にいる事は明らか。
「どこだ、ここ」
見渡そうにも、一面が闇では無意味。足をつけている地すら、地と認識できない闇。自分以外は何も存在しない世界。このような所で何をどうする事もできない。メッセージの魔法を使おうとも思ったが、直感が無駄だと告げていた。事実、そうなのだろう。魔法が届くとは思えなかった。
その何もない闇の世界で突然、
「
一目みて理解した。この竜が
「私が召喚したのよ。伝えるべき事を伝えるために」
見るまでもなく声で理解する。この淫魔が
「器には程遠き魂よ。我が
存在が自己証明であるかのような凄まじい"圧"で理解する。神性の
自分がそう名乗ったのだ、自分で付けた名前なのだ、『パールンレヴァク』と。自分で考え、自分でキャラクター設定に組み込んだ、自分というアバターを構成する存在たちなのだ。しかし、自分自身ではない。創造したアバターは自分自身ではない。
そうだ。俺はまだ"パールンレヴァク"ではないのだ。俺は自分で作ったアバターに憑依しただけ。パールンレヴァクの身体を持つだけの、俺だ。
そうか、そういうことか。
———
ここはパールンレヴァクの心象世界。何も無い真っ暗闇なのは、主人が居ないからだ。パールンレヴァクという自意識が無い、それが心象世界の太陽の不在なのだろう。
暗闇の世界で、一人の男が自身と向き合う。
男に相対するは三体の根源、パールンレヴァクという巨大を構成する三柱。
世界が今、その存在の意義を問う。
パールンレヴァクを構成する最も芯なる本質は
を所持するキャラクターであった。そこに「
「我らが正しい形となる時が来た。そういうことよ」
男の目に朧げな影として映る
男は腕を広げ、全てを受け入れると言わんばかりの姿勢を見せる。男には既に解っているのだ。自分がどの程度の"人間"でしかなく、このまま人間であり続ければどうなってしまうのかを。故に、男は受け入れる。何も、何一つとして、未練は無い。
朧げな影の淫魔が男の身体と重なる。
「ぅぅうおぉぉぉぉおおおお!!!」
もはやそこに男の姿はなく。真に形を得た淫魔だけがあった。
淫魔は眼前にある二体を睨む。もう朧げではない竜と亜神を。
かつての脆弱な魂が遂に完成するために。
真のパールンレヴァクとして、邪悪な欲望の神として在るために。
—————
ナザリックに震撼走る。
事はモモンガがパールンレヴァクとの協議を求め、彼女の私室へアルベドを送って始めて知れた。部屋の前で待機するメイドからシャルティア・ブラッドフォールンの入室と漏れる嬌声の話を聞き、あわよくばその中に混ざろうと考えたアルベドが強引に部屋へと入り、昏倒している2人を不思議に思って身体を調べ、ようやく事態が発覚。ペストーニャ・S・ワンコを始めとする各医療担当が診断した結果シャルティアは無事であり、時間がたてば目を覚ますであろうと判断される。が、肝心のパールンレヴァクがいっこうに目覚めない。
半日が経ち、シャルティアが意識を取り戻しても、パールンレヴァクは目を覚まさなかった。問い詰められるシャルティアは「2人きりでいい雰囲気になり、多大な寵愛を受けた」としか言えずに肩身を狭くし。アルベドは愛する至高の存在を失うかもしれないという恐怖に激怒し、至高の存在に不敬を働いたとしてシャルティアの処断をモモンガへ進言するほど。なぜパールンレヴァクの目が覚めないのかが知れない緊急事態に、ナザリックが揺れていた。
そして何も出来ないままに迎えた朝。泣き疲れて眠ってしまったアルベドは
アルベドは第一階層を抜けて、外界への扉を開けて、地上へ出る。暖かい陽光に眩み、目を塞ぐ。背後に駆け上がってくる
「アルベド・・・? お前も来たのか。・・・・・・なあ、見てみろ。清々しい—————"朝"だぞ」
アルベドの目の前には、そこには確かに、
「もう・・・・・・心配させないでくださいまし・・・、パールンレヴァク様・・・!」
涙するアルベドの頭を撫で、階段を登ってきたモモンガ達を見て、パールンレヴァクは確かに微笑む。それはまさに、ナザリックに産み落とされた全ての命が望む、慈愛に満ちた笑みであった。
—————
ナザリックと共に異世界へと転移して三日目。突如として昏睡し、しかして目覚めたパールンレヴァクはその雰囲気を変えていた。モモンガはその変容に疑問を覚えたが、話す言葉はいつもと変わりなく、探りを入れても異常は感じられないため、気のせいだと断じる。
2人して
「モモンガ、外の世界を見てみたくはないか」
願ってもない言葉に、モモンガは喜びを隠せない。元々、モモンガはユグドラシルという不透明で謎だらけの世界を旅するプレイが大好きだった。アインズ・ウール・ゴウンの初期メンバー"
久しく忘れていた探究心に心がざわつき、モモンガは喉から手が出る思いで賛同する。
「いいですねえ! どのみち、ナザリックの維持にはコストが掛かる。もう全部が電子データじゃないんです。自給自足とはいきませんから。いずれは外に出なきゃと思っていたんですよ!」
ゆったりと構えて座るパールンレヴァクはモモンガの楽しそうな声に微笑み、足を組み替える。
「ニグレドに直接見せてもらって分かったが、やはりこの世界はユグドラシルではない。全くの、未知なる世界だ」
「そうです! そうなんですよ! いやあ・・・、わくわくしてきますねえ。この世界にはいったい何があるんだろうか・・・」
「幸いな事に、この周辺に我らと同等レベルの存在はない。危険を犯すことなく行動できよう」
「でもですよ?
モモンガの懸念はその言葉に尽きる。至高の存在であるモモンガが未知の世界に赴くなぞ、シモベ達にとって看過できる事ではない。露払いでも何でも、まずはシモベをぶつけて確実な安全を確保してから。そう進言される事は火を見るより明らかであり、そう言われては支配者然と振る舞う者として配下の忠義を無下にはできない。
悩むモモンガを見て、パールンレヴァクの助け舟。
「有無を言わせなければよい」
「でもそれはちょっと強引な・・・」
「ちょうどよいものがある。文字通り火急の要件がな」
パールンレヴァクが遠隔視の鏡を反転させて見せる中に、鎧を着た男たちに襲われている小さな村の存在が見えた。斬り殺され、突き殺され、老人も女も子供も関係なく死んでいく虐殺の映像。人が死んでいる、その事実を見せられて、どうしてか心が動かない。自分は本物のオーバーロードになってしまったのか。言葉にできない喪失感と不快感に困惑するモモンガ。
だが、そんなモモンガの不安を消し飛ばすパールンレヴァクの言葉。
「地上進出の第一歩として、現地人を助けて恩を売り、それを切欠としてあの村を足掛かりとしようじゃないか———大昔、侍が腰に刀を差していたような頃、新しい橋が出来上がった時、領主が初めに渡って完成の儀となったという。今がその時だ。ナザリックが地上で初めて行う事は、ロード・モモンガ、貴方がやるべきなのだ」
パールンレヴァクの力強い瞳と言葉は、モモンガに決意を抱かせる。モモンガとパールンレヴァクが未知の世界に転移して三日目、ついにこの日、ナザリック初の地上進出が決行される。
エロいのはしばらくお預けかー。
しょうがないね。