※この作品はR-18です。

廃人ネカマのロールプレイング   作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会

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 やっほ^^
 いやー、FGOのイベントが終わったら突然葬儀の話になったりしてもうすっげぇ忙しくて更新遅れちゃったよ。え? もう丸二カ月!? 遅れすぎだよ。
 しかしまあちょくちょく書き続けてはいたんで、いつもなら一晩で書ける量の4000字くらいだけど、今回は6000字くらいになっちゃって長いよ。目が疲れたらごめんよ。
 んでまーこれからも色々と忙しいから、次もすげぇ遅れると思うよ。


第七話、発覚。

 ふわぁ、と退屈を隠しもしない欠伸がひとつ。騎士たちの怯えで震える鎧の触れ合う音と、死の騎士(デス・ナイト)の空気を震わせる息との中で、やけに大きく響いた欠伸。

 

「つまらないわ」

 

 貴人を思わせる優雅な佇まいでありながら、パールンレヴァクは酷く無関心な態度を露わにした。

 パールンレヴァクの失意は当然と言えば当然だった。戦略はいくらでもあり、犠牲を覚悟で攻め立てれば、いくら脆弱な騎士たちでもデス・ナイトを討ち取る事は不可能ではなかった。ゲームであったユグドラシルの世界ならばレベル差が20もあれば対人戦での勝ち目はまず無くなる。しかしここはシステムやプログラムに支配されない現実世界。10レベルそこそこ、あっても20レベル未満の騎士たちとはいえ、一致団結して作戦を持てば戦えたはず。パールンレヴァクはそう考えている。

 だが現実というものは厳しい。騎士たちは国の密命を受けて不法入国しており、何の罪も無い村人たちを殺さねばならず、しかも密命の終点は最強の戦士を討ち取ること。最強の戦士と戦えば、先陣の自分達はまず殺される。潜入工作なのだから本国は知らぬ存ぜぬを貫くし、遺体は祖国へ返還されることもなく、作戦の内容上、家族には遺族年金も入らない。生きて帰る事ができても、罪無き者達を自らの手で虐殺したという記憶に苛(さいな)まれ、いったいどれだけの酒が必要になるのかわからない。覚悟なぞ出来るわけがなく、恐怖と不安ばかりで、使命感と信仰心だけが頼りだったのだ。そんな騎士たちに、パールンレヴァクの思考はいささか無茶というものだろう。

 

 絶対強者の風格を漂わせる女悪魔と、骸骨の化け物を一声で止めた不死者(アンデッド)を見て、もはや抵抗の意志すら無くした騎士たちが剣を手放す。

 その様を見て、パールンレヴァクはまたも退屈を隠しもしないため息を吐いた。

 

「その方(ほう)ら、ここに集まり伏せるがいい! 逃げる者は苦痛の中で死せる事になるだろう。だが、どうしても命を捨てたいというのならば、我が慈悲を以ってこの場で苦痛無き死を与えてやろう。さあ、選べ!」

 

 強烈な圧力を垂れ流す悪魔の言葉に心が折れ、拠り所たる信仰心も捨てて、騎士たちがひれ伏す。人間では敵わない敵(デス・ナイト)を従えるような存在を前にして、抵抗も退却も不可能ならば、それは当然のこと。

 しかしやはり不満気なパールンレヴァクは、震えて縮こまる騎士たちを一瞥すると、背後のモモンガへと振り向き声をかける。

 

「者共は静かになった。あとはごゆっくり、君主(ロード)」

 

 そうして自分の仕事は終わったと言わんばかりに、興味を失ったパールンレヴァクがその場を去ろうとする。元営業マンのモモンガなら村人との交渉も上手くやるだろうし、最大HP以上のダメージを受けても必ず一度は耐えるという特性を持つデス・ナイトに、鉄壁の防御能力を持つ護衛特化のアルベドがいるのだ、何も心配はない。あとはモモンガに任せておけばいい。この件に興味を無くしたパールンレヴァクはさっさとナザリックに戻るつもりだ。

 しかし、その腕の中に気を失った村娘を二人抱えたままで、モモンガが道を塞ぐ。どういうつもりだとパールンレヴァクが怪訝な顏をすれば、モモンガは骸骨の顏を近づけて耳打ちをする。

 

「どうした」

「そのロードって呼びかた、恥ずかしいんでやめてください」

「君主(ロード)は統率者(ロード)だろう。そなたはアインズ・ウール・ゴウンの長(おさ)、全ての上に立つ至高の存在。敬称には『ロード』が相応しかろう?」

「いや、あの、恥ずかしいんです・・・」

「何を恥ずかしがることがある。その身に相応しい敬称なのだから、堂々としておればよい」

「いやあの」

 

 モモンガがうろたえ、いったい何が不満なのかとパールンレヴァクが不思議そうにしていると、そばについていたアルベドが手にするバルディッシュを持ち上げて動いた。ひそひそ話をしていた二人が何事かと顏を向ければ、一人の村人が小走りで駆け寄ってきていた。中年を超えたであろう歳の取りかたなどから、その男性が村長なのだろうと推測していると、二人の前に立って遮るアルベドの目の前で男が膝をついて頭を下げた。

 

「危ないところを助けていただいて、本当にありがとうございます!」

 

 見るも恐ろしいアンデッドの化け物を前にして御礼を言う。村人のその行為に騎士達は驚くが、何も不思議はない。アンデッドが腕に村娘を抱えていて、その一声で剣と盾を持つ化け物(デス・ナイト)を止めたのだから、どういう理由であれ村を救おうという考えあっての事だろうとは推測がつく。そして冷静を取り戻した村長は、角を生やした女悪魔がこの場を去ろうとした時、続けてこの村を守ってもらわねばならないと考え、引き止めるために真摯な態度で訴えることを決断したにすぎない。

 

 仕事は終わったと眼で言うパールンレヴァクを諦め、モモンガは前に出て村人に応えた。

 

「うむ。ところで、この娘らは村の者か?」

「はい。エンリ・エモットとネム・エモット、間違いなくカルネ村の住人でございます。二人を助けていただいて、ありがとうございます!」

「あ、ああ。そうか。・・・それで、村長と話がしたいのだが」

「それでしたら、私が村長でございます」

 

 理性的なアンデッドで良かった、村長がそのように安心し始めている時。パールンレヴァクはひとつの疑問を抱いていた。

 

 どうしてあの村娘はモモンガの『ネガティブ・タッチ』の影響を受けないのだろう。

 

 レベル的に考えれば即死してもおかしくないはずなのに、というかそもそも『絶望のオーラ』というパッシブ・スキルも効いていないように思える。これはいったいどうした事か、物理は通るが、特殊効果は無効なのか、と。

 モモンガが村長を通じて騎士たちの捕縛を命じ、消火活動と救命活動の指示を出し終えたのを確認して、パールンレヴァクが声をかけた。

 

「モモンガ、ネガティブ・タッチが効いていなかったが、どういうことだ? あの娘らは何か特別なのか?」

 

 それを聞いたモモンガは骸骨の顏で器用に困惑を表現してみせた。

 

「・・・・・・いや、パッシブ・スキルを切ってるだけですよ?」

「切る・・・? あ、ああっ! その手があったか!!」

 

 そもそもパッシブ・スキルはオン/オフを切り替えできる。起動中にMPを消費するパッシブ・スキルもあるのだから、当然の話である。しかしパールンレヴァクは、ユグドラシルではフレンドリーファイアが無効であったため、MP消費の無いパッシブ・スキルは付けっぱなしにしており、それが無意識のままだったというだけの話。つまりはただの失念、パールンレヴァクが抜けていただけの話であった。

 

—————

 

 日が陰り始め、夕方に差し掛かろうかという頃。村人の多くは死者の埋葬を終え、風土的な鎮魂の儀を始めており。モモンガとパールンレヴァクは村長から現地の情報を仕入れ終えていた。

 周辺には事前に見た通りの国家群が存在し、通貨は概ね共通。村を襲った者たちはバハルス帝国の兵装だったが、村が属するリ・エスティーゼ王国の情勢を考えればスレイン法国の偽装工作の線もありえなくはない。村を助けたという恩義を盾に様々な情報を引き出し、2人の支配者は思考を重ねる。

 

「どう思います?」

「兵士の絶望は上乗せの色だった」

「どういう意味です?」

「やりたくないがやらなければならなかった、という可能性だな」

「ああ、スレイン法国の偽装の線ですか」

「しかし、ハバルス帝国が例年の戦争とやらに先駆けて始めた工作という線も太いな」

「理由としてはそっちのほうが納得できますね。収穫の時期に合わせて戦争吹っかけてるんだから、目的は国力を削ぐことでしょう。だったらわざわざ大金使って戦争しなくても、少数で辺境の生産地から潰していくほうが合理的ですよ」

「そして王国の兵が動かざるを得なくなったところで、王都や貴族領に大規模工作か? 聞くところによると王国の動きは遅いそうだが、それにしたってやけに慎重派じゃないか、帝国は。法国や竜王国の影響力を懸念しているとしても、ここまで小競り合いを重ねている状態で口を挟まない国の顔色を窺うのは引け腰というものだ」

「考えている以上にリ・エスティーゼ王国の兵力が高いとか?」

「農民から徴兵している以上、突出した個が複数いなければありえん話だが・・・」

「レベル100の我々からしたら、どれも同じに見えるもんですから・・・」

「それだな」

 

 少なすぎる情報での思考実験は現物を見なければわからないという結論で終わり、思考実験と言えば聞こえはいいが、実際はただの雑談が終わる。なんでもない話だった。しょせんはただの暇潰し。答えの無い数式を弄くり回すだけの遊び。

 なぜそんな無駄な時間を使っているのかといえば、単に時間を埋める必要があったからだ。2人は既に、遠見の魔術で周辺地域を観ているニグレドの情報を受け取っているのだ。即ち、王国軍の一個小隊がこのカルネ村へ向けて馬を走らせているという情報を。

 王国軍の小隊が既に滅ぼされた村の跡で生存者の捜索と負傷者の後送を行なっているという情報も伝わっている。後はこの国の人間に任せて、得体の知れないアンデッドと悪魔が村を救ったという当事者以外は誰も信じない話を残して、消えてしまえばいい。後の伏線の一手としては充分だろう。

 しかし、パールンレヴァクにはある予感があった。ここで王国の軍が足を止めれば、隠れている者たちが好機と見て出てくる可能性の予感を。

 

「魔法詠唱者(マジックキャスター)様!」

 

 焦った様子の村長の声が響き、骸骨(モモンガ)と女悪魔(パールンレヴァク)が振り返る。ようやく到着かと、本来なら滅んでいた村の存在に感じるところもないくせに、2人は王国軍を蔑如(べつじょ)する。

 

 

—————

 

 

 リ・エスティーゼ王国王国戦士長、ガゼフ・ストロノーフ。屈強な偉丈夫という表現が相応しいこの大男は、部下からの信頼も厚い、気高く、そして強さを備えた者である。

 一般に、王国、帝国、法国という人間国家の三大国において最強の個は誰かと言えば、それは王国のガゼフ・ストロノーフか、帝国のフールーダ・パラダインであろうと言われる。また、英雄の域を超えたとさえ言われる大魔法詠唱者フールーダだが、彼が魔法で寿命を伸ばしている超高齢である事を考慮し、圧倒的な体力と最高の装備を持つガゼフ・ストロノーフこそが単体最強と声高に謳(うた)う若者も多いほどだ。もちろん、戦士という枠組みにおいてはガゼフ・ストロノーフが比類なき最強であるという声が大多数。

 

 そのガゼフ・ストロノーフが、恐怖に震えていた。

 生物、生命(いのち)あるもので(・)あ(・)る(・)か(・)ら(・)こ(・)そ(・)感じる、驚異的な"圧"。本能が死を悟らせる。それほどまでに圧倒的な存在を、見てもいないのに感じるのだ。

 だが、ガゼフはさらにその上を視(・)ていた。

 

「感じるか」

「・・・・・・はい。こんな恐ろしいものは記憶にありません。伝説級のアンデッドでしょうか・・・?」

「違う。そ(・)い(・)つ(・)を(・)従(・)え(・)て(・)い(・)る(・)ほ(・)う(・)だ(・)」

 

 ガゼフの言葉を聞いて、傍らの副官は瞬時に青ざめた。副官もガゼフも圧倒的なアンデッドの存在を肌で感じている。しかし、生者を憎み暴虐を働くアンデッドが、どうして暴れていないのか。王国戦士長とその副官が恐怖を覚えるほどに強大なアンデッドが暴れて、どうして村が未だ形を保っていられるのか。遠く離れた位置からでも感じる国家単位の脅威が大人しい理由は、たったひとつ。それを完璧に制御(コントロール)している存在があるからだ。

 考えたくもない。吐き気すら込み上げる思いに、副官は更に顔を青くする。

 

「しっかりしろ! たとえ何があろうと、我々は村を救わねばならんのだぞ!」

「・・・っ、・・・はい! もう大丈夫です」

 

 ガゼフの叱咤を受けて副官は意識を新たにし、腹を括った。元より覚悟は決まっていたのだ。戦士長の人柄に惚れて、その気高い意志に恭順して、ここまでついてきた。幼き日に夢見た、窮地に現れる助っ人。弱きを救う英雄に憧れて、今はその人がそばに居て、自分もそうなれると。だから、今度は自分が誰かの夢になるのだと。

 

 だが、夢とは現実の前に屈するもの。この残酷な世界では、特にそうだ。

 

 力の空白が、目の前にあるのに見えないという恐怖が、何よりも恐ろしい。

 

 明かりのない夜の闇の中で独りぼっち、幼き日に感じた未知なる世界に対する恐怖。

 

 ガゼフ・ストロノーフもまた、副官と同じく、心底恐怖していた。後ろに立つデス・ナイト(アンデッド)ではない、その前に立つ三体の事だ。"何も感じない"。そう、何も感じないのだ。強いのだろう、帝国の化け物魔法詠唱者よりもずっと、竜王よりもずっと。なのに、何も感じない。実感が湧かないのではない、脳が認識を拒絶しているのでもない。まったくもって何すらも感じ取れないのだ。それはなぜか、『世界が違う』のだと思うしかないが、そんなものを認めてしまえば、それはもう全てを諦めるのと同じだ。

 アンデッドの王、死の支配者、いや死の権化ともいうべきその姿には善の一片も見えない。あれが悪意を持って振る舞えば、世界は容易く滅ぶだろう。感じ取れないほどの高みにいる別次元の存在なのだ、自分たち人類なぞ蟻のように払われて消し飛ばされるだろう。

 隔絶した高みとしか思えず、そして善を持たないとしか思えない悪の姿に、ガゼフ・ストロノーフの脳を恐怖が支配する。次々と破滅的なビジョンが脳裏に浮かび、そして諦めの感情すら湧いた時ーーー

 

「あー・・・、どちらさまかな?」

 

 死の権化の頭蓋から呆気ない口調の声が響いた。

 

 

—————

 

 

「誠に申し訳ない!! 罪無き国民を救って下さった恩人に対して、あろうことかあのような振る舞いを! どうか、どうか非礼を詫びさせていただきたい!!!」

「いやいや、そこまでする必要はない。部下の手前もあるだろう、鎧も汚れるし、頭を上げてくれ」

 

 モモンガは王国軍の戦士長とやらに向かい合い、長い緊張の対面のせいでうっかり口を滑らせたが、何とか支配者ロールを取り戻して状況説明を終えた。

 そして、ゆっくりと馬から降りた王国戦士長が迫力のある土下座を披露した事で、モモンガの中にある困惑がついに理由を得る。

 

(そっかぁ! 地上の人たちはアンデッドを見慣れていないんだ! いやそうだよな、異業種推奨のユグドラシルじゃないんだし。それに、周辺地域は全体的にレベルが低い。上位のアンデッド(オーバーロード)なんて存在も知らないんだろう。そりゃ警戒され・・・ってか怖がられるよなあ・・・。そういや村長さんもずっと冷や汗かいてたし。)

 

 ようやく合点がいったモモンガはどうにかして怖がれないようにと考えるが、既に手遅れ。王国の兵士たちは未だに顔を青くしたままだし、ようやく土下座から頭を上げた戦士長も新たに冷や汗を掻いている。完全にビビられてしまった。このような状況になってしまった以上、もう友好的な関係は築けない。

 

(まいったなあ・・・。こんなに怖がられるんじゃ、街には入れないよ。変装でもするかぁ?)

 

 モモンガがモモンガのままで冒険するのは難しい。その事実に気付き、失意を隠せない死の支配者。モモンガの苦難はまだ始まったばかりである。

 

 

 

 




 モモンガ様を書くのすげえ楽しい
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