廃人ネカマのロールプレイング 作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会
また書き溜めしたせいで長いよ。正直目が疲れるから、こんなに長くしちゃいけないと思うんだけど。
ごめんね?
いつも、いつもそうだ。俺の夢はいつも、この濁った泥の中を漂うものだ。
いつからだろう、毎夜にこんな夢を見るようになったのは。
いつも、いつもそうだ。声が聞こえるんだ。部下達の声が。
『隊長ッ! 前線がもうっ、もちません! 後退の許可を!』
『隊長! 増援はまだですかっ!! 』
『前線崩壊しつつありー! 隊長ー! 助けてください!!』
見捨てられた部下達の声が。切り捨てられた部下の声が。
俺が救えなかった、部下達の声が。
『本国の許可はまだかッッ!!』
『現在、本国二余剰戦力ナシ。現状戦力ニテ戦線ヲ維持セヨ。・・・と』
『ふざけたことを抜かすなッ!! 火滅聖典が帰還していただろうがッ!!』
そう、思えば、あれが切っ掛けだったのかもしれない。
『我々は——国に見捨てられたのですね・・・・・・』
自分自身を裏切ってきた。あの日からずっと、自分を偽り続けていた。そうでもしなければ、狂ってしまいそうだったから。
部下を盤上の駒のごとく扱い、切り捨ててきた。信仰のためだと、命令だからと、罪無き民間人を焼き捨てた。
人が変わったようだと言われた。
そうでもしなければ生きていられなかった、自分を保てなかった。愛国心も、プライドも、全ては生き残るためであると“言い訳”をしなければ、精神を保てなかったのだ。
神の不在証明。それだけが、俺が生きている意味となった。本当に神がおわすならば“このような真似”は許すまい。俺が悪徳を積み重ねる限り、この世に神は存在せず、正義も悪も無い混沌が真理であると。故に何が裁かれる事もなく、全ては自由なのだ。
あるいは、神は全てを見ていて、全てを許しているのだろうか。悪徳も非道も人間の在り方のひとつでしかないと。
俺を裁く神が現れる時、その時に初めて、俺が成した全てが悪と断じられ、絶対の正義が示される。俺は正しく悪として裁かれ、現れし神によって正義が施行される。それを望み、それだけを望み、全てを捨てて生きている。俺という人間を許さないというのなら、神よ、どうか自分の足で裁きに来てくれ。そして正義を為してくれ。
声は止まない。
『隊長ォォ〜・・・置いて行かないでくださぁぁいぃぃ〜・・・』
『どうして・・・・・・どうして俺たちを・・・・・・』
『この裏切りものがぁぁ・・・!』
おぞましい
俺は全てを捨ててきた、時には自分自身さえも。だがそれで何が楽になった事もない。
捨てたものは依然として、俺に付き纏う。
『なにもっ! なにも悪いことはしてないのにぃぃぃ!!』
『どうして殺したんだぁぁああ!!』
『呪ってやる・・・! 呪ってやるぞぉぉ・・・!』
『我らの怨嗟がキサマの幸福を地に墜としめると知るがいい・・・!』
業の全てを背負い、ただただ歩き続ける。引き返す事はできないのだ。
呪詛が、怨嗟が、いかに纏わりつこうとも、俺はもう、進むことをやめられないのだ。
俺に残されたのは信仰心のみ。ただ伏して、神の御心に従うのみ。我は人にあらず、神の武器にすぎぬ。神が許す限り、殺し続けよう。我が行いを神が許すというのなら、そうあれかし、と。
「神よっ・・・!! 我が身を、我が魂を捧げます!」
———声が止んだ
泥の世界は澄み渡り、静寂の闇が全てにあった。
これが噂に聞く、死後に約束されし安寧の世界か。
———光が見えた
見えたのは尊大なる
声が止んだのは神の救い故か。いや、そうに違いない。この澱んだ魂を掬い上げて清めるなぞ、神の御力でなければなんだというのか。
嗚呼、
—————
モモンガの手の中で、1人の男が息絶えた。
男はニグン・グリッド・ルーインと名乗った。男は全ての罪は我が身にあると言い、部下の助命を願い、モモンガの手に掛かって、至福の表情で逝った。
モモンガの後ろで、パールンレヴァクが感慨深く歌っていた。パールンレヴァクは“自分探し”の歌を歌っていた。モモンガやパールンレヴァクの生きた時代では古典も同然の古いもので「バースデイトレイン」という歌なのだが。その曲も歌詞の意味も、この場で知るのはパールンレヴァクのみであった。
モモンガは想う。今、手の中で息絶えた男の人生を。国の暗部、特殊工作員、その部隊の隊長であっただろう男の事を。
任務は辛いものばかりだったろう。祖国に帰れず寂しい思いをした日々もあったろう。見れば40代後半かという歳の取り方だが、実年齢はもっと若かろうと思える肌をしている。家族がいてもおかしくない、子供が産まれていてもおかしくない。それでも、男は信仰心に命を費やした。部下の助命を請い、自身の命を差し出した。モモンガのことをスルシャーナなる神であると誤認して。
『各員
モモンガは男の第一声を思い出す。
男はすぐさまモモンガの前に出て、名乗りを上げると跪いた。
『偉大なるスルシャーナ神よ。御身が
『ビビらせてやろう』と言うパールンレヴァクの言葉に乗っかって秘匿の指輪を外して登場した結果、まさか現地人の信仰する神と間違われるとは、まったくの想定外であった。モモンガは身動きひとつしないながらも頭の中では
しかし、結果、モモンガの手には罪悪感が残った。
人間でなくなってしまった。オーバーロードとしての精神性が芯となってしまった。しかしそれでも、人間であったことを忘れてしまっては、何か大切なものが消えて無くなってしまうと思った。だから側の友人、パールンレヴァクを見て、気高い男、ガゼフ・ストロノーフを見て、人間としての自分を取り戻そうとしていた。
そこに、これだ。手の中の男は至福の表情で死に絶えた。自らの手で殺したのだ。殺す必要は無かったし、殺さずにすむ方法もあったろうに、それでも殺した。殺す事に抵抗が無かったからだ。忌避感も嫌悪感も無かった、惜しいとすら思わなかった。蟻を踏み潰すほどの感慨すらなかったのだ。そんな中で、男の顔が、やけにハッキリと映った。
ニグンと名乗った男は至福の表情で逝った。前もって遠見の魔法で見ていた悪役然と振る舞う男とは違う、「憑き物が落ちた」とでもいう安らかな死に顔だった。モモンガはそこに、人間の生き様を見たのだ。自分が得られなかった一生を、自分が失いそうな人間性を、ニグンという男に見出したのだ。
「この魂は連れていく。そなたらは帰る所へ行くがよい」
縋るような救いを求める声を背にして、モモンガはゲートを開いた。
揺れる心のままに、モモンガはナザリックへと帰還した。その腕に死体を抱いて。
—————
「———そして村を謎の集団が襲い、対応した王国の部隊が全滅した後、生き残った王国戦士長なる者のみを村へと転移させ、我々は村を襲っていた者達と対峙した。するとその隊長らしき者が進み出て、なにやら申し出てな。どうやらロード・モモンガを神と勘違いしていたようだが・・・。まあそれはそれで利用できると思い、隊長の男を殺して持ち帰ったというわけだ」
「なるほどなるほど・・・」
「信仰心があるならば、復活させて利用するのも良いだろう。村長から聞いたところによると、復活魔法は結構な金額が必要のようだし、適性もあるようだ。ユグドラシルの復活魔法と同じなら、ペナルティもまた都合が良い」
「復活させた後に再教育、ということですね?」
「その通り。流石だ、デミウルゴス」
ナザリック地下大墳墓に帰還したパールンレヴァクは状況説明と認識の共有を最優先とし、階層守護者達の前で事の詳細を語った。
階層守護者達は揃って意を得たという表情をし、事の追求は無かった。何がどうしてと問われれば返答に窮したであろうモモンガはホッと安堵の息を吐き(息を吐く器官なぞ無いのだが)、持ち帰った死体の処遇は後で考えるとして凍結処置を施し、パールンレヴァクとの協議を重ねる。
—————
またひとつの夜が明け、ナザリックは慌ただしくなった。
まず、階層間の移動を簡略化するため、第八階層のヴィクティムを除いた全階層守護者と階層守護者統括にリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンが下賜された。玉座の間以外ならばナザリック地下大墳墓のどこへでも即時転移を可能とするこの指輪は
続いて、ナザリック上層部、第三階層までの警備のみが常設を許される事となった。資源や物資の自給自足が出来ない以上、維持費はかけたくないのがプレイヤーとして当然の思考である。もちろん万が一の危険を考慮すれば、忠義も厚く思慮深きアルベドやデミウルゴスは猛反発し、付帯条項としてナザリック周辺にカモフラージュを設ける案などを出す。が、「魔王が姿を隠すなぞ言語道断」とパールンレヴァクが切り捨てる。そこにモモンガが乗っかり「お前たちの活躍に期待するものである」と続ければ、反対意見は消滅した。
モモンガは「これだけ強力なNPCが揃っているんだし、時間稼ぎくらい楽々でしょ」という軽い気持ちで仕事を割り振ったつもりなのだが、受け取った守護者達の意はまるで異なる。至高の存在はユグドラシルではないこの地でも覇道を示すつもりである。敵は全て下郎。隠れ潜むなぞ王に非ず、ましてや支配者にあらず。そして我らはその一助として確実な役割を約束された。至高の存在の栄光を、栄えあるナザリック地下大墳墓を汚さぬよう、より一層の働きを期待されている。至高の存在に挑む価値ある者が現れるその時まで、全ての敵を最速最短にて撃滅すべし、と。守護者達の気は猛る火山の如く燃え上がり、至高の存在の期待に応えようと、更なる完璧な防御陣の構築を目指した。
守護者統括が忙しくナザリック内を駆けずり回り、シャルティアの居城たる第一、第二、第三階層が目まぐるしく改造されていくなか。2人の支配者はまたしても協議という名目の雑談を行なっていた。自身の在り方、精神の変容に困惑し、センチメンタルになっていたモモンガも、夜が明けて友との会話に口が弾めば、やがていつもの調子を取り戻していた。
そうして、ひとつの結論が出る。
「やっぱりですね、冒険がしたいわけですよ。上も下も、右も左もわからない、全てが未知の世界なんです。そりゃあね、ゲーマー魂に火がつくってもんですよ」
「し、か、し」
「そう! そうそう! それです! 階層守護者だけじゃない、セバスやプレアデスまで! みんなして『モモンガ様をお一人にするなんて!』とか、『供も連れずに出歩くなぞ見過ごせません』とか! 子供の使いじゃないってんだよ! こちとらPVPの経験なんて数え切れないくらい積んでるってのに・・・!」
「ふむ」
「だからといって、あいつらの忠義や思いやりを無下に切り捨てるのは心苦しいわけで・・・」
「ふむぅ・・・」
どうあってもモモンガは自由に冒険する事ができない。それが現状の結論。モモンガの葛藤、そして臣下達の懸念、それらを一挙に解決する策とは。
パールンレヴァクには、その策があった。しかしそれは荒治療とでもいう、あまりにも乱暴なやり口。成功は確実。階層守護者以下は全て納得し、モモンガも自分も大手を振って地上世界を出歩くことができる。しかしそれには痛みが伴う。モモンガが許すとは思えない痛みが。
「まあ、聞いてくれ。ロード・モモンガ」
しかしパールンレヴァクの意に反して、正に意外ながらモモンガはこれを承諾。
そうしてウルベルト・アレイン・オードルに捧げる鎮魂の儀の前座として、『第一回ナザリック闘技祭』が開かれたのである。
—————
ナザリックにおいて至高の42人以外が参加する事を許された初の催し。その名も「ナザリック闘技祭」。その内容は単純明解、1人の挑戦者が名乗り出て、戦う相手を指名し、どちらかが敗北を認めるか、監督役が戦闘続行不可能と認識した時点で決着というもの。範囲は闘技場内。武器も武装も制限無し。もちろん魔法もスキルもだ。特殊と言えるのは『挑戦者が指名できる人数や階級に限りが無い』という点だろう。極端なことを言ってしまえば、一般メイドが挑戦者として名乗り出て、階層守護者を指名しても良いのだ。ここまで無茶なルールを設けたのには、パールンレヴァクの思惑がある。即ち、階層守護者だろうとなんだろうと、傍らに居る必要がないほどに、モモンガとパールンレヴァクは強いのだと。それを証明し、皆を黙らせるためだ。
ナザリック地下大墳墓は第六階層の闘技場に、各階層の守護者達とその副官、あとはナザリックの僕から見て階級の高い者、即ち至高の42人に創造されし者を優先的にして、席は埋まっていた。
そして始まる暴力と戦術の宴。前座に位置する者たちは精一杯派手に戦い、観客たる上位者達の興奮を高めてから闘技場を後にする。
そして、ついに本日のメインイベント。至高の42人の中で最後まで残って下さった慈悲深き御方モモンガ様と、その盟友パールンレヴァク様の試合。ついに至高の存在の実力の一端を目にできる。シモベ達の興奮は最高潮に達していた。
最初に闘技場の砂を踏んだのは、パールンレヴァク。
「コキュートス! アルベド! 前へ出よ!」
挑戦者の指名だ。断る事はできない。が、その内容が闘技場の全員を絶句させた。
ナザリックのシモベの中でも階層守護者は格別に強い。それもそのはず、至高の42人が創りし絶対防衛戦力なのだ、強すぎるほどに強くなくては話にならない。例外は直接戦闘を度外視して造られたデミウルゴスや、死ぬ事で真価を発揮するヴィクティムくらいのものだ。
階層守護者の中でも物理攻撃最強のコキュートスと、防御能力最強のアルベドを同時に指名した。単純なレベルやステータスだけを見るならば、至高の42人も階層守護者も同じ100レベルであり、ステータスも100レベルに応じたものでしかない。にも関わらず、そんな2人を同時に相手にするという。
パールンレヴァクの言葉に驚いた全ての者たちは、戦いの決着にまた驚愕することとなった。なぜなら、コキュートスとアルベドが2人がかりだったにも関わらず、“瞬殺”という結果に終わったからだ。
「私は直接戦闘には疎くてね。セバス、君の所見を聞きたいのだが」
青ざめた表情で、デミウルゴスが聞く。同じく青ざめた表情のセバス・チャンは、闘技場の砂に青い血を吐くコキュートスと、倒れたまま身動きひとつしないアルベドを見据えたまま、デミウルゴスに事の解説を始めた。
「まず初撃。主戦力となるコキュートス様を守ろうとスキルを使用したのでしょうな、アルベド様の判断は正しい。しかし、それを崩すパールンレヴァク様の“ターゲット奪取”。アルベド様がコキュートス様を守ろうとするのを、スキルを使用して自身へ標的を移す事で阻害し、瞬時に『
盾役がその役目を果たせないという事は戦術的優位を失うことであり、主戦力を削られる事は何よりも避けたいこと。アルベド様に生まれた一瞬の困惑と焦燥を利用し、コキュートス様を無視してラッシュ。瞬時に回り込んで、アルベド様を盾にすることでコキュートス様の攻撃を阻害しつつ——あの様子からすると防御貫通特性の打撃でしょうな。それをアルベド様に叩き込んで、一気に削れるだけ削った。
コキュートス様としても、アルベド様という盾を失う事は避けたかった。すぐさま横にステップして、攻撃態勢。しかしいつの間に仕掛けたものか、
今思えば、アルベド様へのラッシュにはスキルを使用していたのでしょうな。状態異常系の何かを、多重に。そうでなければ階層守護者最上位のタフさを誇り、様々な物理カウンタースキルを持つアルベド様を、数十秒程度で削り切れるはずがない。
そうして単騎となったコキュートス様を転移と次元跳躍、幻影と分身、多種多様な弱体効果で完封した。コキュートス様も一矢報いて、パールンレヴァク様の左腕を斬り飛ばしましたが・・・。直後の様子から察するに、自分が斬ったものが本体なのか幻影なのか、迷ったのでしょうな。第三者から見れば明らかに直感が導いた起死回生の一手なのですが・・・、幻惑や精神操作にも優れたサキュバスとゼロ距離・・・、コキュートス様にはもはや自分自身の感覚ですら信用できなくなっていたのでしょう。せっかくの好機に乗れず、前後左右からの打撃で沈められてしまった。と言ったところですか。いやはや・・・・・・なんと恐ろしい・・・。
私も最初は皆と同じ思いでした・・・。どうしてあのコキュートス様とアルベド様を同時に指名なさるのか、と。限られた状況で、しかもパールンレヴァク様お一人で戦うなぞ、不利が過ぎるのではないかと。今ならわかります。お二方には共同戦闘の経験が無かった。パールンレヴァク様は2人を指名する事で、急ごしらえ故のチグハグな信頼感と、打ち合わせも何もないコンビネーションの無意味さを作り出したのです・・・! それだけではない、アルベド様が倒れた時、コキュートス様に明らかに見て取れる動揺。本来単騎でプレイヤーと相対する前提の階層守護者に、『相方を失った』という動揺を強制した! 不利を有利に変える、相手を見切った上での戦い。全てはパールンレヴァク様の手の内だったのです・・・!
速いだけなら、回避能力だけなら、弱体効果だけなら、そう、それだけなら対処の仕方はあるでしょう。ですが、それらが最高のタイミングで、最高の威力を発揮されては、いかに階層守護者とて苦戦は必須。一点特化にはない相互作用と相乗効果。そして精神を揺さぶる布石の妙。それが、パールンレヴァク様の強さ、という事ですね・・・」
平時のデミウルゴスならセバス・チャンの熱すぎる語り口とあまりの早口に後ずさりしただろうが、興奮冷めやらぬ今はただ聞き入っていた。そして、震えた。自身が仕える至高の存在が、戦闘においても至高の力を持っていた事に。
「なるほど——良く分かったよ・・・」
歓喜。感嘆。興奮。驚愕。畏怖。畏敬。熱い感情に火照らされ、2人は熱気に頬を赤らめて、闘技場の中心を見つめるばかりとなってしまった。
次回は杖ありモモンガ様の戦闘シーンから始まる予定だよ。
次が何ヶ月後かはわからないけどね。
原作との相違点とか箇条書きにしようかと思ったけど、めんどくさいからやめた。
まあ何か聞きたいこととかあったらメッセージ機能で聞いてよ。あんまり無礼な人じゃなけりゃ返信するからさ。