異形に寄生されて女へと変異したが、この身体も悪くない 作:ゲルパンマン♥山崎
「うぎ……も、もっと、そっと運んでくれぇ……」
「苦しいかもしれませんが、毒が心配です!少しでも速いほうがいいです!耐えてください!」
「いぎ……いぎぎ……」
「おい死ぬんじゃねえぞ。新しいメンバー募集とかクソ面倒だ」
「おま……いぎぎ……おま……」
俺たちのパーティは今、モンスターの巣となっている森から脱出するため走っている。
トロール殲滅のクエストを完了して気が抜けていたのだ。
俺が小便をしていると、ヤブから黒い蛇が現れてふくらはぎを咬まれてしまった。
ん……?いや……噛ま……ちが……体内に……俺の……
いや、そんなはずはない。そう、蛇に咬まれたのだ。歯型も残っている。
即座に毒を吸い出して応急処置をしたが、あえなく俺の身体は麻痺し、全身に激痛が走っている。
汎用毒消しも飲んでみたが効果はなかった。
そんなわけで、今俺は仲間のサイモンにおぶられ、パトリックの悪態を聞き流している。
男三人のむさ苦しいパーティだ。
「もうすぐ出口ですよ。森から出れば転移石を使えます。今使うべきでしょう」
「わりぃ……うぎぎ……高ぇのに……」
「これだけで今回の利益パアだぞ。ゲイル、メシ奢りな」
「まぁ赤字じゃないだけマシと思いましょう。こんな時の保険が転移石なんですから」
「が……げ……」
「おいやべぇ、白目剥いてる」
「石準備!即使用!」
「ヤー」
ううう、身体が熱い。だるい。喉が乾いた。水が欲しい。暗い。夜か。何処だここ。ベッド。宿か。水。水が欲しい。ああ、すぐそこにあった。水差しが。
「ゴクッゴクッ……ふぅー」
一息ついたがダメだ。もう力が入んねえ。寝よ。
考えるのは明日だ。
「おはよう、ゲイル。体調はどうですか?」
朝ストレッチをしていたらサイモンがやってきた。
俺たちのパーティは中々の稼ぎを持っているから、全員一部屋ずつ宿をとっているのだ。
「おう、おはよう。もう大丈夫だ。すまねぇ。面倒かけたな」
「もう起き上がって大丈夫なんですね。大事に至らず良かったです」
「いやあ焦ったわ。本気で死を覚悟したね、今回は」
「気をつけてくださいね。生き残れても、後遺症で動けなくなることだってあるんですから」
「ナハハ、わりいわりい。腹減ったわ。奢るからメシ食いに行こうぜ。パトリックは?おっと」
ドアを開けて部屋を出ようとした所を丁度パトリックと鉢合わせた。
「おう、おはようパトリック。昨日は悪かったな。メシ行こうぜ。奢るから」
「……もう大丈夫なのか。昨日の苦しみ様は凄まじかったが」
「一晩寝たら完全回復だぜ。むしろ調子が良いくらいだ。教会寄ってくれたんだろ?記憶ねえけど」
「並の回復力ではないな。無事ならそれでいい。約束通り奢って貰おうか。教会の寄付分も含めてな」
「わかったわかった。いつもの所でいいよな」
この宿のメシはマズいから取っていない。
数少ない朝もやっている食事処で朝食をとりつつ、次請けるクエストや今後の予定を話し合うのが宿で休んだ翌朝の恒例だ。
今日もいつもの食事処へ行き、いつものように相談を始める。
サイモンは騎士崩れだ。
丁寧な口調、サラリとしたブラウンの髪、優男風な顔、それに高い身長で女にモテる。
ある程度動きやすさを重視した白銀の鎧と盾、そして片手剣を使い、敵の攻撃を弾き返し、体勢が崩れた所に追い打ちをかけるのを得意とする。俺達の鉄壁のガードだ。
何をして騎士を外れてしまったのかは知らんし興味がないから訊かない。まぁそういうもんだ。
パトリックはレンジャーだ。
黒い短髪に黒いレザー装備で身を固めた、目つきの悪い男だ。こいつも身長が高くてムカつく。
斥候、周囲の警戒、罠の解除等一通りこなし、更に簡易な回復魔法が使え、敵の背後に忍び寄り短刀による急所への一撃で後衛から切り崩していくエキスパートだ。
ぶっきらぼうで口が悪いが、これで敬虔な教会信者なのだから人間わからない。
そして俺、ゲイルはキャスターだ。
サイモンとは違いくすんだ茶色の短髪で、中肉中背。身長は……まぁチビではねぇよ。チビでは。
広範囲殲滅からボス格への一点集中瞬間火力まで、火力に関することならなんでもござれ。属性も三種までカバーし、拙いながらも前衛もこなせる。天才とはまさに俺のことよ。
その分支援魔法はからっきしだけどな。
俺たちのパーティはルーク級。
ポーン→ナイト→ビショップ→ルーク→クイーン→キングと格が上がっていく。
たった三人パーティでルーク級に上がったやつなどほとんどいない。
俺たちが有能である証左だ。クイーン級もこの三人なら問題ないと信じている。
「よっし、んじゃ今日明日は俺の体調の様子見って事で、森での雑魚相手や採取をメインでいいな」
「はい」
「ま、しょうがないだろう」
転移石の損失は痛いが、俺達は焦らない。
損失を取り戻そうと躍起になって死んでいったパーティをたくさん見てきたからだ。
今回の失態は明らかに俺個人の責任だが、それでもこいつらは怒らない。そういったアンラッキーはいつだって自分に降りかかる可能性があるものと割り切っている。良いメンバーに巡り会えたと誇りに思う。
まだ金には余裕があるし、余裕がなくても最低限食うだけなら困らない実力があるのが俺たちだ。やはり金銭的なゆとりは精神的なゆとりを産む。
また一歩ずつ前進していこう。
立ち止まっている暇などないのだ!
そうして俺たちの日常は回っていく。
…………
「どぅわ!!クソ!わりぃ!そっち行った!」
「あ?問題なし。おい、前まではこんな雑魚くらい切り伏せれただろ」
「おっかしいなぁ。体調に不備はないんだが。
「キャスターでも身体は鍛えておいて損はありませんからね。明日から早朝、僕と一緒に訓練しましょう」
「うげー……嫌だけど付き合っとく。嫌だけど」
「ついでに教会にも来い」
「それは遠慮する」
…………
「あれ?ゲイル、今日の食事少なくありません?」
「ああ、なんか最近すぐ腹が膨れんだよ」
「後遺症とかやめろよ?」
「んだよ、俺は今日も絶好調だっつの。食欲がないわけでもないしな」
「冒険者家業は体力が命ですよ?土壇場で力がでないとかやめてくださいね」
「大丈夫大丈夫。体調はいいんだよ。むしろ燃費が良くなって好都合だ」
「そうですか。まぁ問題がないのならいいんですけどね」
…………
「我が魔力は灼熱。昏き底より溢れ、煮えたぎり、喰らい尽くせ。我こそ深淵なり。我こそ奥底なり。爛れ、溶かし、侵食せよ。――――捧げる」
「退避!」
「――ボルケイノ!!…………ふはは。さすが俺。見ろよこれ。ハッキリ境界線がわかるぜ。森で火炎使って延焼なしだぜおい」
「ゲイル、なんか少し声変わりました?」
「そうだな。少し高くなったか?」
「いやおいそんなことより俺の見事な魔力操作を見ろよおい。そして褒めろよ」
「あーはいはいすげえすげえ」
「素晴らしい火力ですね。火力だけなら随一ですよ」
「おいこれ本当にめっちゃ難しいんだからな?わかってる?」
…………
「あん?ゲイル、今日も娼館には行かないのか。良い心がけだ」
「おう、なんかそんな気分じゃねぇ。あと別に宗教は関係ねぇ」
「あの毎日通ってたゲイルが……僕は行きますけど、パトリックもたまにはどう?」
「地獄に落ちるがいい。性交は生涯ただ一人だけと決まっている」
「あはは……ま、そうだよね。じゃあ僕だけで行ってきます」
「おう、行って来い。いい女が入ってたら教えてくれ」
「あ、興味はあるんですね。わかりました。では行ってきます」
「フン……おいゲイル。お前ちょっと立ってみろ」
「え?なんだよ」
「いいから。立て」
「はいはい……っと。これでいいか?」
「やっぱり……お前少し縮んでるぞ」
「うええええちょっやめろよ!お前の勘違いだろ!高身長だからっていい気になるなよ!」
「縮んでいるというよりも、全体的に小柄になったような……いや、むしろ……」
「な、なんだよ」
「……いや、なんでもない」
…………
「……おいゲイル」
「なんだ?」
「お前、今の自分の姿に何も疑問を感じないのか?」
「なんだよ。唐突に。あー?いつも通りの俺じゃん」
「教会に行くぞ!おいサイモン!手伝え!」
「はい!」
「んな?おい、やめろ。俺はどこも悪くねぇって」
「はいはい。病人はみんなそういうんです。むしろまったく自覚がないのが問題ですね」
「めんどくせぇ。肩に担いじまえ。丸太のように」
「はい。よいしょ。うわ、軽くなりましたね、ゲイル。なんか柔らかいし、匂いも……なんか……」
「おいっクソ、なんだお前ら!」
「騒ぐな。教会で診てもらうだけだ」
「やっぱり、あの時の毒か何かですかね。治るといいんですけど」
「薄々気づいてはいたんだが……もっと早くから行動するべきだったな。本人が元気なのが裏目に出た」
「俺はどこも悪くねぇっ!俺はどこも悪くねぇっ!」
そうしてゲイルは担がれ、教会へと運ばれた。