異形に寄生されて女へと変異したが、この身体も悪くない 作:ゲルパンマン♥山崎
……
アランと出会ってから二日後。
その夕食時。
街のとある宿屋兼食堂は、大賑わいだった。
この店は、料理が特別旨いわけでもなく、安いわけでもなく、酒の種類が豊富なわけでもない。
昨日までは、この半分どころか五分の一も客がいなかった。
何故一晩で大繁盛したのか。
その理由は、ゲイルである。
ゲイルは、この食堂でウェイトレスをやることになってしまったのだ。
何故そんなことになったのか。
時はその前日にさかのぼる。
寝起きフェラからセックスした後の夜。
睡眠を挟んだとはいえ、15時間以上ずっと食事なしで交尾をしていた二人は、流石に空腹に耐えきれず街へ繰り出した。
腹は減っているが、快楽の余韻を引きずったままの、どこかぽやんとしたゲイルを引き連れて、アランはとある食堂へと赴く。
そこで食事をしながら、アランがウェイトレスの仕事を紹介したのだ。
ゲイルはまったく乗り気ではなかったが、アランによって無理やり承諾させられてしまった。
アランのとった行動は、今までのセックスに比べればごく簡単なセクハラでしかない。
人の目を盗んで、卑猥な言葉をささやく。太ももを撫でる。下腹部を軽くノックする。
ただそれだけで、ゲイルは押し寄せる快楽の波に逆らえなかった。
孕む可能性をささやかれると、またじわりと熱くなってくる。
太ももだけでは物足りない。もっとさわって、いじって、抱きしめて、ぶち込んで欲しくなってしまう。
下腹部をノックされるのが一番危ない。ついさっき、そのナカへと出されたものがたぷんと揺れて、甘い快感がゾクリと走ってしまう。
そうして
「この仕事請けてくれたら、この後すぐ可愛がってやるよ。なんならここの便所でも、そこの路地裏でヤッてもいい。奥までハメて、たっぷり中出ししてやるよ。どうする?」
顔が火照る。
頭がぐるぐるする。
視線が定まらない。
つばを飲み込む音がやけに大きい。
汗が首筋を伝っていく。
長い沈黙。
そしてゲイルは、契約書にサインした。
すぐに路地裏で3回中出ししてもらった。
そのまま二人でゲイルの宿へ赴き、また激しくセックスした。
昼過ぎに起きたゲイルは、また激しく後悔した。
アランとのセックスなど、取引などしなくともどうせまたヤったのだ。アランの手管に乗せられて、交換条件にすらなっていない条件を飲んでしまった訳だ。自分の事ながら頭が痛い。
とは言え、流石に今更断れない。アランの提示した「報酬」はもう受け取ってしまったのだ。これを反故にしてしまえば信用にも関わるし、相手がアランとは言え流石にゲイルのプライドが許さない。
アランが提示した条件は、あくまでも「引き受ける事を条件にセックスしてやる」のため、ウェイトレスとしての給金はきちんと出るが、ゲイルにしてみればあまりに安い金額だ。
全く持って旨味がない。あのクズを一発ぶん殴りたかったが、部屋には既にいなかった。"ちゃんと店に行くように"とメモと店への簡単な地図だけが残されている。
気乗りはしないが、これもゲイル自身の失態が招いた事だ。
気持ちを切り替えて、身だしなみを整え始めた。
……
ゲイルがバイトする事になった宿屋件食堂は、過去に一攫千金を得た冒険者が始め、息子が継いだものだ。
昔はそこそこ流行っていたらしいが、先代夫婦が亡くなってからはあっという間に寂れていった。元々先代のコネクションで成り立っていた宿なのだ。
だが現店主の息子に焦りはない。先代の遺産はまだ十分にあり、彼一人暮らしていくのならまったく問題ないのである。
ウェイトレスを募集しているが"暇すぎて退屈だし、潤いが欲しかったから"などという理由だ。手伝いが必要なほどの客は来ない。
宿泊客に至っては、最後の客がいつだったかすら思い出せない。部屋の掃除もおざなりだ。好き好んでここに泊まる人間はいないだろう。
そんな店に、突然アランが現れた。彼の悪評は店主も知っているため、あまり相手にしたくなかったが、アランは一方的に語り始めた。
"なあ、取引しないか? オレがこの店の給仕に、とびきりの女を連れてきてやる。代わりに、そいつが働く日の売上の三割をオレに寄越せ。なあ、どうだ?"
信用出来るわけがない。給仕に売上の三割など正気の沙汰じゃない。仮に、本当にイイ女が来ても、アランに騙されている可哀想な娘だ。そんな女を給仕にしても、こっちの気分が悪い。さっさと帰れと伝えるが、アランは食い下がる。
"わかったわかった。白状してやろう。連れてくる女はゲイルだ。ルーク級の、あのゲイル。あのエロい格好してるあいつだ。知ってるだろ? 同名の別人なんて手は使わねえよ。間違いなく本人を連れてくる。金も売上じゃなくて利益の三割、いや二割でいい。どうだ?"
その言葉には心が揺れた。ゲイルの事は街中で何度か見かけている。
扇情的な格好をしながらも、纏う空気は娼婦とは一線を画す、とても良い女だ。あれが昔男だったなど信じられない。
あれがウチでウェイトレスを……
あれが料理運んでくれる……
あれがコーヒー淹れてくれる……
あれがベッドメイクしてくれる……
あれが微笑んでくれる……
あれが……彼女が注文をとって、僕が料理をして、合図をすると彼女が料理を持っていって……
そんなん僕と彼女の共同作業ですやん!!
独身のまま40を過ぎてしまった店主の胸と股間が熱くなる。寄ってくる女はすべて遺産狙いだと思って警戒しすぎた結果だ。
そもそもこの店の売上などハシタ金だ。二割でも三割でも持っていけばいい。だがしかし、こいつはクズのアランだ。
ルーク級ともあろう人間が、そう簡単にクズの口車に乗り、こんな寂れた宿の安い仕事を請けさせる事が出来るのだろうか?
"へえ、そこまで言うなら売上の三割でいいよな? ならこの契約書にサインしな。"
店主は訝しむ。ここまでこちら側に損がないのだ。
店主の頭が金勘定に回り始める。元々この店の売上なんて二束三文、その上、この都市の税金は安い為、三割を取られても問題ない。計算が面倒になるだけだ。
"まだ踏み切れないのか? しょうがないな。なら金貨3枚だ。これから一週間以内にゲイルを連れてこれなかったら、金貨3枚出す。契約書にも追記してやろう。どうだ?"
ずいぶんと自信があるようだ。
金には困ってないが、貯蓄は多いに越したことはない。何もせずに金貨が入ってくるのなら受けてやってもいいだろう。その金でウェイトレスの給金をはずんでやってもいい。
契約書をじっくりと読み、罠が無いことを確認し、店主はサインしてやった。
"くくく、ありがとよ。お互いWin-Winの関係でいこうじゃないか。間違いなくゲイルを連れてきてやるから、楽しみにしてな。ああそうだ、一部屋だけでいいから、きちんと掃除して、シーツも綺麗にしておけ。使うから。くくく。"
そう言ってアランは帰って行った。
売上の三割は流石に惜しかったかも、と思うものの、まず本当にゲイルを連れてこれるとは思っていない。
どちらにしろ損はない。失敗しても金貨3枚丸儲けなのだ。
ごく低確率でも"期待して過ごす"という楽しみが増えた。
店主はそう考え、部屋の掃除の為に重い腰を上げるのだった。