異形に寄生されて女へと変異したが、この身体も悪くない 作:ゲルパンマン♥山崎
…………
「ゲイルさ、神父様とセックスしてますよね」
「ヒグッ」
今日の稼ぎを終えて、丁度サイモンと二人きりになった時、唐突にそう言われた。
ゲイルは一瞬言葉に詰まる。
「フハハ、俺が? あの爺さんと?ありえねえ。そもそも俺はゲイじゃない。ゲイルだけどゲイじゃない」
「その冗談、すごく面白いですね」
サイモンは微笑みながら真っ直ぐ見つめてくる。
ゲイルは脂汗をだらだら流し、目が泳ぐ。
「嘘つくの下手ですね、相変わらず」
サイモンの態度は至って普段通りだ。怒るわけでもなく、問い詰めるわけでもなく、呆れるわけでもなく、ただ柔和に微笑むだけ。
ゲイルは早くも誤魔化すことを諦めた。
「……ああ、神父とヤッてる。……すまねえ」
「別に謝る必要なんてありませんよ。ゲイルは昔から性にはおおらかでしたし、僕も人の事言えません」
「はぁ〜、まいったな。いつから気づいてた?」
「疑い始めたのは、夕食に遅れて来た日からでしょうか。あの回復の兆しが〜とか言い訳してた日ですね。翌日から教会に行くのが夜になりましたし」
完全に始めから疑われていた事に、ゲイルの頭が痛くなってくる。
「それとこの前、教会に泊まって宿に戻ってきませんでしたよね。それでほぼ間違いないと確信して、その翌日、つまり昨日ですね。跡を付けて実際に確認しました」
「うわ……」
自分の行動も迂闊と思うが、サイモンの行動力にゲイルは少し怖くなる。
「声、外まで漏れてましたよ。行為の時は随分可愛い声で甘えるんですね。驚きました」
「うっ……」
ゲイルの顔が赤くなる。
ゲイル自身も行為中の言動を思い返すと恥ずかしくなってくるくらいだ。それを仲間から告げられ、今すぐ隠れたい気分になる。
「安心してください。パトリックはまだ気づいていません」
「あいつは……あの神父への信頼がバリ高いからなぁ」
「彼はそもそもお人好しですからね、あれで。あんまり人を疑わない人間なんですよ、あれで」
「やっぱり、知ったらショック受けるよなぁ」
「自分からは特に伝える気は有りませんよ。隠すなら隠し通して下さいね」
仲間に隠し事をしている事に、ゲイルは憂鬱になる。
逃げるように話を元に戻した。
「それで、どういうつもりなんだ? 神父との関係を断てって話でもないんだろ」
「ええまあ。ゲイルは……その……神父様を愛しているんですか?」
「ブクスッ! ないない! それはない! まぁなんだ。娼館代わりだよ」
「教会を娼館代わりですか。罰当たりですね。それを聞いて安心しました。それで、ゲイルはもう"それ"を治療する気はないんですか?」
"それ"とはつまり、女の身体のことだ。
ゲイルは少しだけ悩む。
どう答えるべきか迷ったが、正直な心境を話しておくべきだと判断した。
「……正直言うと、このままでもいいかと思い始めてる。
もう
「そうですか……治す気が全く無くなった訳ではないんですね」
「ああ」
女の快楽にドハマリのゲイルだが、男の身体に未練がなくなった訳ではない。
探索中にはやはり昔の体力が恋しくなる事は多い。
ギルドランクやクエストを最優先に考えるのならば、男が断然有利だ。以前のゲイルならば、元に戻るために全力を尽くしただろう。
だが、ゲイルは知ってしまった。女の快楽の味をすり込まれてしまった。
神父によって教え込まれたそれは、男だった頃の快楽よりも遥かに深くその身に浸透した。まるで、肉体そのものがそれを望んでいるかのように。
ゲイル自身は認めていないが、ゲイルの中の優先事項が冒険やギルドランクよりも女の快楽が上になりつつある。それを認めようとしない感情と、それに悦びを覚える感情がせめぎ合っている。
現状のその答えが、女:男が
ゲイルは気づいていない。
それまで生き甲斐だった冒険への熱意よりも、女体への執着へ傾いてしまっているという事に。それも、この短期間で。
未練が残っているのは本当だ。だが、それはあくまで"昔の体力"への未練であって、真に"男の肉体"への未練ではないという事に、ゲイルは気づいていない。
プライドを守るために"悩んでいる"というスタンスを取っているだけで、既に結論は出ている。その事にゲイルは気づけない。
そしてサイモンは、次の言葉を吐いてしまう。軽い気持ちで。
それはサイモン個人の趣味と、子供じみた小さな嫉妬心。
神父というパーティ外の人間からメンバーがなぶられるのがただ気に食わない。そんな少年のような感情からの言葉。
それが、ゲイルを更に女体へとのめり込ませる原因になるとは露知らず。
「では、明日の休み、僕とデートしてください」
「……えっ、なんで?」
ゲイルの心臓がドクンと跳ねる。
なぜそんな考えに至ったのか、ゲイルは全く理解できない。
理解できないが、嫌ではなかった。
「いいじゃないですか。今のゲイル可愛いですし。デートしましょう。僕と」
「……わ、わかった……」
ゲイルの顔が熱くなっていく。
どういうつもりで誘ったのか。からかったのか。本当にただ遊び歩くだけの可能性も否定できない。
しかし、ゲイルもサイモンももう子供ではない。普通デートと言えばその後の行為も含まれる。含まれてしまう。
誘われている。この自分が。仲間から。サイモンから。そういう目で見られている。自意識過剰だろうか。
肉体関係を。性行為を。
してしまうのだ。
サイモンと。
この話を切り出されてから、その可能性を頭の片隅でずっと考えていた。
どんな理由で迫られるのか。
脅されたり、無理やり関係を迫られる事を想像していたが、サイモンがそんな人間ではない事はゲイルもよく知っている。
予想外な方向からではあったが、結局そうなってしまった。
サイモンのたくましい腕に抱かれ、その甘いマスクと口づけし、ペニスを入れられてしまう。
顔が赤くなり、鼓動が早くなるのを実感する。
期待しているのだ。
サイモンと、セックスする事を。
「では明日、午前中には迎えに行きます。パトリックには僕から上手いこと伝えておきますね」
「あっ、ああ……」
サイモンと別れてからも、ゲイルの心臓は早鐘を打ち続け、吐息も熱いままだった。
その晩、神父に明日は来られない事を伝えると、翌日分も含めてたっぷり中出しされた。
神父に抱かれながらも、頭の中では別の男の事を考えていた。
…………
「ちょっとゲイル! 午前中には迎えに行くって昨日言いましたよね!?」
「ふわっ。やべ寝過ごした!?」
ドアをドンドン叩く音と、いつになく憤ったサイモンの声で目を覚ます。
ゲイルは慌てて時刻を確認する。まだ朝9時前だった。
「おいサイモ〜ン、午前中と言っても早すぎるだろ〜」
頭を掻きながらドアを開けて、サイモンに文句を言う。
「おはようございます、ゲイルってくっさ!ゲイルくっさ!」
「あーまぁ昨晩神父とヤッて帰ってきてそのまま寝たから……」
「バレたからって明け透けすぎですよ……格好も肌着だけですし……おっぱいぽろんしてますよ」
「いいじゃねえか、お前だし。前から気に入った娼婦の話くらいしてただろ」
「神父様を娼婦と同じ扱い出来るのはゲイルだけですよ……ちゃんと身体拭いてから来てくださいよ。下で待ってますから」
「わかってるわかってる。着替えたら行くわ」
身支度を済ませ、下で待つサイモンと合流する。
パトリックは朝から出かけているようだ。
サイモンが上手い事伝えたらしいが、一体何を伝えたのか、ゲイルは頭を捻る。
「ゲイル、いつもの格好ですね……」
「あ? これ以外の服はみんな探索装備だよ。お前は結構気合入った格好してんのな」
今日のサイモンの格好は、カジュアルでありつつ清潔感があり、その長身を活かした服装だ。
仲間の中で一番身長が低い事を気にしているゲイルには嫉妬してしまう出で立ちである。
「デートですから。たとえ相手がゲイルでも、女性とのデートであれば相応の格好をします」
「そりゃなんともかんとも」
"御苦労なこった"と思いつつも、案外満更でもないゲイルだった。
仲間から、サイモンから女として見られている事にこそばゆい嬉しさを感じてしまう。
同時に、自分を女として見られたからこそ、サイモンを男として……異性として意識してしまう。
照れくささと共に、じわりと性的な興奮が湧いてきてしまった。
赤面してきそうな考えを頭を振って追い出し、冷静さを取り戻す。
「とりあえず朝食食べに行きましょうか」
「お、おう、そうだな。メシにしよう。うん。いつものとこ行こうぜ」
「いえ、今日は僕のオススメの店に行きましょう。宿から少し遠いですが、綺麗で良い店ですよ」
「そうか?まぁ美味けりゃいいや」
二人で取り留めのない雑談をしながら歩く。
サイモンに案内されて食事処に入り、適当な席に着く。
言われたとおり、綺麗で良い雰囲気の店だ。
いつもの店よりもワンランク上といった趣である。実際料金もワンランク上となっているが、ゲイルたちには問題ない。
「へぇ、いい店じゃないか」
「そうでしょう?まぁ時間が時間なんでメニューは限られてますけど。僕はAモーニングにします」
「じゃあ俺も同じもので」
品のいい給仕服を着た店員に注文を伝える。程なくして食事が運ばれてきた。
二人揃って食べ始める。
「ゲイルの服、サイズもぶかぶかじゃないですか」
「そりゃ昔のままだからな。おっ、高いだけあって美味いな」
「もしかして下着も昔のままですか?」
「そうだよ。別に困ってねえし。この食感……これ一度揚げてあるのか?手間がかかっている……」
「もしかして! ブラも着けてないんですか!?」
「ちょっ、おまっ、声でけえよ。……ああ、着けてねえよ。なんか照れくさいし。……ほおお、柔らかくもあり、それでいて弾力のあるパンだ……素晴らしい」
サイモンは手を頭に添えてハアーと大きなため息をつく。
「食事を終えたら服屋へ行きますよ!」
「え? いいよ別にこのままで。ん~、この味は……トマトとオリーブと、この塩は岩塩だな……なんだこのハーブは……」
「僕が嫌なんです! 服の代金はすべて僕が持ちますから!」
「まじで? やっりい。いくいく〜。……ん? このマッシュポテト……まさか二種の芋を混ぜて……?」
「その食事と同じくらい服装にも気を使ってくださいよ……」
「サイモン、この店、すげえ気に入った。にひひ」
「そうですか。まぁ喜んでもらえて何よりです」
二人で朝食を済ませ、またサイモンに案内されて服屋へ行く。
連れてこられたのは高そうなブティックだ。
当然ゲイルは今まで一度も用のなかった店である。
サイモンは堂々と入店し、ゲイルはその後をおっかなびっくり付いていく。
「あら、サイモンくん、いらっしゃい。今日連れてる女の子は……また独特ねぇ」
「はい、またお世話になりに来ました」
店に入ると妖艶な雰囲気のある中年女性が出迎えた。
老いを感じさせながらも見事に美しさと溶け込ませ、まさに"マダム"の言葉の印象直球なマダムだ。
「おい、こんな店じゃなくてよ、もっと庶民的な……しまぬらとかでいいんだが」
「ダメです。僕がお金を払うんですから、僕が選んだ店で買いましょう」
「おい……おま……」
「あら、その子がウワサの子なのね?可愛いじゃない。肌も綺麗だし、嫉妬しちゃうわねぇ」
「え? 何? 俺ウワサになってるの?」
「あはは、知らないのは本人だけってやつですね」
サイモンは微笑みながら続ける。
その表情は普段と変わらないが、ゲイルにはとても楽しそうに見えた。
「何はともあれ、まずは下着です。すいません、採寸と、いくつかブラを試着させてやって下さい。探索用に動きやすい物と、純粋に似合う物。似合う物は今この場で着けていきますね」
「は? おい馬鹿言うなよ」
「ヨーコちゃーん、お客様よ〜、採寸して差し上げて〜」
「は〜い、ただいまぁ。あ、サイモン様。いらっしゃいませぇ」
奥の部屋から店員と思われる赤いくせ毛の少女がパタパタと小走りでやってくる。
この少女もサイモンと顔見知りらしい。
「何お前常連なの?」
「ええ、そうですよ。ほらゲイル、何やってんの。向こうで服脱いで、サイズ測ってもらって。試着も」
「ちょっ、押すなよ。わかった、わかったから」
サイモンに急かされて、カーテンで仕切られた試着室に入る。試着室と言っても4畳半ほどはある小部屋だ。
大きな鏡が壁に貼り付けられている。
「では採寸いたしますので、お召し物を脱いでくださぁい」
「お、おう……」
ゲイルは上半身裸になりその乳房をあらわにする。以前教会で脱いだように男気溢れる脱ぎっぷりではなく、そこには若干の照れがあった。
流石にもう勢いで全裸になったりはしない。
「わー、お姉さんお肌キレイですねぇ。それでは測らせて頂きまぁす」
店員は見るからにまだ10代だが、その採寸の手際はかなり良い。
そこにマダムがやってきた。いくつか下着を抱えている。
「見た感じこのサイズかしら? 一応着けてみなさいね」
「あ、オーナー。胸はこれよりもワンカップ大きいですぅ」
「あら、そうなの? 耄碌しちゃったかしら」
「オーナーの目はまだ狂ってませんよぅ。お姉さんのアンダーが見た目より細いんですぅ。服もだぼだぼでしたし」
「そう? ありがと。じゃあそのサイズ持ってくるわね」
「えっ、ゲイルの胸ってそんなに大きかったんですか? 見た目からはわからないものですねぇ」
「おいサイモン、何しれっと混ざってんだ、てめぇ」
「ゲイル、また少し小柄になったんじゃありません? 身長も測ってみたらどうですか? どこまで変化するのかわかりませんから、体格は結構こまめに記録したほうがいいですよ」
「わ、わかったから。お前は向こう行ってろよ」
「はいはい。ゲイルのランジェリー姿、また後でしっかり見せてくださいね」
「チッ……」
悪態をつきながらもゲイルの顔は赤い。横にいる店員の顔も赤くなっていた。
「いくつか持ってきたわ。何二人して赤くなってるのかしら?」
「何でもねえよ」
「はわ……はわわ……また後で……しっかりって……そういう……」
「……なぁおい、ブラってどうやって着けるんだ? 外すことは出来るんだが、着け方はイマイチわからないんだ」
「あっ、はい、これはですね。胸をカップに収めて、後ろを……」
「おぉ、胸が軽い……うん、ぴったりだ。これは確かに着けていたほうがいいな」
「しっかりとカップに収める事が大事ですからねぇ。スポーツタイプでも同じですよぉ。お姉さん、形も良いんですから、ちゃんとブラを着けないと垂れてしまいますよぅ」
「垂れ乳は俺も嫌だな。デザインはどうでもいいや。これにしよう」
「どうでも良くなんかないです!」
サイモンの叫び声だ。カーテンの向こう側で聞いていたようだ。
「デザインはどうでも良くなんかないです! サイズはわかったんですね!? ゲイルがどうでもいいと言うのなら、僕が選びます! 良いですね! 後でなしとか言わないで下さいよ!」
「お、おう……」
いつになく必死なサイモンに気圧されて了承する。
カーテンを少しめくって様子を窺うと、サイモンはウキウキで下着を選んでいた。
サイモンとはそこそこ長い付き合いだが、今まで一度として見せた事の無い生き生きとした表情である。
流石のゲイルも少しキモいと思ってしまった。
サイモンが下着を選んでいる間手持ち無沙汰となり、ふと鏡を見る。
映るのはベリーショートの髪の女だ。以前のゲイルでも標準的な女よりかは高かった身長は、既に女性としても少し低めであり、ゲイルのコンプレックスが刺激される。
宿には鏡は置いておらず、未だゲイルは鏡に映るこの顔が自分だという認識が薄い。
我ながらかなり良い顔立ちだとゲイルは思う。可愛らしさと美しさが絶妙に混ざり合った顔つきだ。自分が男なら間違いなく迫っていただろう。
なんだか照れくさくなってきて、鏡の前で百面相をして遊びだすと、隣りにいた店員がくすくすと笑いだした。
「お姉さんはこういったお店には普段来られないんですかぁ?」
どうやら鏡を珍しがっていると思われたようだ。ゲイルたちにはそうでもないが、実際庶民には中々お目にかかれない代物である。