初めての夏休み開幕
初めての夏休み…それは毎日が日曜日だった。そのことから、フィールドワークがたくさん出来そうだ。
結衣、静、いろは、小町、火憐、月火、駿河が、ゆらぎ荘で合宿をするという。仲居さんは、月2万の家賃で手を打ち、大広間を開放したようだ。う~ん、こんなことなら、夏休みはいらないかな。1日の大半が部活の予感である。
「おぉ~!ここが噂の天然温泉ですかぁ~♪」
って、いろは…いや、ここは男湯なんですけど…結衣以外、全員全裸であるし。襲ってしまいそうだよ。襲うなら、狭霧であるが…
「結衣先輩、全裸で入りましょう。マナーですよ」
って、全裸で俺の目の前で仁王立ちをしている駿河。う~ん、健康美すぎて、襲う気が起きない。
「で、どうする?」
翼が訊いてきた。
「まず、あの白浪稲荷の問題が先決だな。なんで風が無いんだ?」
風が無いと悪い気が溜まってしまう。まぁ、夏美の夜回りで、大半は消されているが、夏美で消せないのは、強敵だしなぁ。
「あの5合目辺りの休憩所が怪しいと思う」
って、千紗希。
「俺もそう思ううんだよ。他に要素は無いし。あの辺りで冷気が有り、空気が冷えて、じめじめしているような気がする」
あそこに併設されているトイレはコケだらけだったし。まぁ、風合い的には有りではあるが。
「小町といろはが集めた資料と、駿河の持って来た古地図を見ると、あの辺りは、物見の丘と昔呼ばれていて、狐が住んでいた草原だったらしい。で、稲荷のある頂上は、月見の台と言われ、町を一望出来たそうだ」
その面影は無い。もっと高く無いと、街は見えない。この場合の街は、ここ温泉街だと思われる。現在、街と呼ばれている地区は新興住宅街で有り、古地図には無いから。
「後、資料によると、滝らしき物があったらしいのだけど、見付かっていない。そもそも、あそこに神社を移築した理由がわからない。水は雨水を溜めるしか無いし。井戸の類いがあったかどうかが焦点だな。それらの探索を優先課題としてあげたい」
「先輩についていきます」
って、下級生組。同級生組も概ね了承である。概ね…問題はトイレである。仮設トイレを5基導入したのだが、ボットン式で、恥じらいを見せたい高校生組には、評判が悪いのだった。
「トイレかぁ…下水道管が無いもんな…翼、悪いけど、水道局に掛け合ってくれる?」
「いいけど…設置してくれるとしても、夏休み中は無理だよ」
「下水道の使用許可だけでいいよ。夏美に頼むから」
「あぁ、なるほど」
夏美に頼めるかどうかは、お供えの揚げの数によるが…
「問題は水だよね?」
って、夏美…
「あぁ、水が大量に使えれば、揚げを作ることも出来る」
白浪稲荷で揚げを売りながら、摘まみ食いすることを、ささやかな夢にしている夏美。商売が成り立たない気がする。いや、客がいるのか?
「そうなると、水脈の調査だな」
資料と古地図によると、川らしき物の源泉があったようなのだが…
◇
部屋に戻って、調査へ行く準備を…え?!
部屋には全裸の結衣が待っていた。どうして?ケダモノの俺の部屋に?
「ちょっと!全裸を晒しているんだよ。もっとリアクションって無いの?」
スルーをするか。ピンクトラップかもしれない。
「ねぇ、私の事って嫌いなの?」
背中に柔らかな感触…結衣が抱きついたようだ。俺のアレは反応してる。トラップだってばぁ。
「ねぇ、何かいいなさいよ!」
俺を振り向かせた結衣に唇を奪われた。彼女の舌が恐る恐る入って来たが、スルーする。これが地位や名誉を一夜にしてロストさせると言う、ピンクトラップなんだと思うから。
だけど、俺のアレは正直である。3時半くらいの角度で、結衣の股間に当たり、割れ目に飲み込まれて居る。これはこれで気持ちが良い為、さらに2時くらいの角度を目指して上昇していく。そして、結衣の湿り気というアシストを受け、スルりと侵入してしまった。
「え?いきなり、そっち?さすがケダモノね…」
いや、男のサガだと思います。
「動くなよ!」
一応注意をするが、不意に動く結衣。
「うっ!」
結衣の太股に赤い一筋の線…
「私の初めてを…ケダモノに…」
不可抗力です。
「責任取ってね♪」
責任を取らすことが、ピンクトラップの正体なのか?お姉ちゃんだけと思っていたのに…
『いや~、それは結衣ちゃんが悪いよね』
って、幽奈の声。一部始終を目撃したようだった。
◇
そして、現地調査へ。転移術で2,3人ずつ、運んでいく。夏美は、ひたぎ、千紗希と食材と共に転移して、お昼の準備を始めた。
まず、トイレだよなぁ。そうそう、本殿と祠の屋根にソーラーパネルを葺いて、電気は確保している。使わない分は蓄電池で溜めている。麓から水を引き上げるポンプを、駆動する場合に使用する予定である。
ペットボトルに水を入れ、少しずつ流して、地面の傾斜を調べる。その結果、造成した平地と森の境に、少し段差があり、そこへ流れ込み、崖から下へ落ちていく。下水管はここに設置がいいな。
崖から下を見ると、トイレの屋根が見える。崖に沿って、下水管を設置かな?絵図面に書き込んでいく。
次に源泉を探す。森との境にあった段差を崖とは反対方向へと追って行く。だけど、途中で途切れていた。それの意味する物は、そこに滝があったってことだ。今は造成した平地であるけど…もっと、高い台地だった可能性はあるな。
手の空いている者には下水管となるパイプの設置を頼んだ。何でも知っていそうな翼と、ガテン系が似合いそうな静と狭霧に講師を頼み、素人集団で土木工事をしていく。
水源を見つける為L字状の針金を左右に一本ずつ持ち、探していく。眉唾的な計測方法ではあるが、結構役立つのだ。
ある場所で反応した。そこに印を付けた。位置は納骨堂と御炊きあげ場の中間辺りだ。ここで水が湧いても問題はないけど…掘削魔法で穴を開けていく。うん?探査能力で、異常を感じた場所を計測していく。地下2メートル付近にコンクリートが打ってある。無理をすると、この周辺が陥没する危険があるなぁ。
「小町!造成の計画書ってあるかな?」
「確か、ありました。えぇっと…あぁ、これかな?」
小町が書類ケースから取り出してくれた。書類類は小町に管理をまかせてある。
う~ん…コンクリートを打った記録も、打つ予定も無い…では、これはなんだ?
「どうしたの?」
翼が寄って来た。
「地下2メートル付近に、コンクリを打ってあるんだよ。地盤強化の為かな?それとも…」
「地盤強化の為なら造成計画書に載っているはずよ。無いってことは、知られたらまずいことの為だろうね」
やはり、ここには何かあるんだろうな。何があるんだ?いや、水源がジャマだったのか?
古地図を探していく。ここの詳細な絵である。月見の台…池?ふと、脳裏に浮かんだ。池の底に何かあったんだ。それを取り出すのに、水がジャマで…
建物に影響しない範囲で、掘り出していく。掘った場所の地下はコンクリートが打たれていた。コンクリが何メートル打っているかだよな…鉄筋で補強はされていないようだ。地盤強化の為では無いのは明らかである。僕の魔法だと、全部剥がれそうだなぁ。ピンポンとで撃ち抜くには…衝撃系、振動系は危険だよな…
「夏美!頼む!ここに穴を開けてくれ!」
「水はそこなの?」
「そうだ。ただ、ピンポイントで抜かないと、祠が危ない」
と、伝えた。考え込む夏美…その姿は九重様に変化していき、ビームのような光で、ピンポイントで撃ち抜いたくれた。だけど、水は出ない…あれ?どうして?
「う~む。すまぬ。抜きすぎた…岩盤まで抜いたようで、そこはほら穴のようだぞ」
そうか、ほら穴が崩落しないように、保護しているのか。
「どの位、下?」
エネルギー切れなのか、夏美の姿に戻っていく。
「うんとねぇ、あの休憩所付近かな~」
物見の丘か…古地図を探す。物見の丘の絵図である。ススキの生い茂った草原…奥の方に滝らしき物と、ほら穴らしき物が描かれている。午後から、物見の丘の調査だな。
◇
狭霧、九郎丸、夏凜と物見の丘の調査へ向かった。何が起きるか分からないので、能力者で固めてみた。
ここも空気が澱んでいる。生暖かさを感じる。絵図を描いたと思われる場所は、地面が無かった。削られたようだ。階段を作る為に…絵図から分かる広さは、今の10倍近くはあったんだろうな。今は階段を挟んで、5名くらい座れるベンチと、トイレがあるだけであるから。
ベンチ側は自然に出来た崖のようだ。階段側は、明らかに、抉ったような絶壁の崖になっている。なんで、抉る必要があったんだ?階段部分だけじゃ、ダメな理由は?
「狭霧、この崖を調査してくれ。横穴が無いかを」
「分かった」
狭霧はロープを丈夫そうな木の幹に縛り、崖を降下していった。さすが忍者系で、身軽である。狭霧がいない間に、トイレを解体していく。絵図では、この辺りに、滝と洞穴があったから。
屋根を外し、壁を外し、床と便器と柱だけになったトイレ。うん?トイレの奥だった部分にタンクがある。タンクからは、パイプが出ており、下へと伸びていた。崖下を覗き混むと、山肌に沿って麓に伸びるパイプに接続されていた。あれって、下水管で無いのか?
崖下へ転移して見た。パイプの本管部分の先端は崖に沿って、トイレに繋がっている。垂れ流しでなくて、下水に流しているのか…そんな記述は無かったが…水道局へ下水道料金を払っていないってことだな。サギで立件出来るだろうな。
警察の阿良々木警部へ通報した。暦の父親だ。父親は県警の捜査一課で、母親は所轄の生活安全課らしい。
しばらく待つと、阿良々木警部が鑑識の人間とやって来た。
「これか…確かに、トイレに伸びているな」
造成地地下のコンクリ打ちも、摘発をお願いした。
「これは悪質だな。何の為にしたんだ?」
「それを調査しているんですよ」
阿良々木警部とトイレ前に転移した。僕が魔法を行使出来る陰陽師と知っているので、驚かない。
「問題は、このタンクです」
たぶん、滝の水源はあそこなんだろう。ただ、滝だと都合が悪いから溜めているのだろう。それを有効利用する為のトイレで有り、下水管なのだろうな。
狭霧が戻って来た。
「横穴が3つくらいある。人が通れる大きさだった。中に入って調べたんだけど…ここって、金山だったみたいだ」
金の入った石を出した狭霧。そうか…金を取る為に、ジャマだったんだ…水が…
「そのうちの1つは天井から水漏れだ。たぶん、夏美が貫通した穴だろう」
その穴を埋めれば、水が湧き上がるかな?
「もう1つお願いしていいかな?あのタンクの真下に滝ツボがあると思うんだよ。そこに穴が無いか、見て来てくれるか?」
「わかった」
再度、降下していく狭霧。
「金の採掘か…そうなると莫大な財を得たのだな」
「たぶん。あんな大掛かりな工事をしたくらいだし」
「前の所有者は…雪ノ下家か…白蛇神社を建立すると言って、この辺りを寄付してもらったようだ」
タダで手に入れて、金を取り、放置か…うん?
「もしかして、白浪神社の跡地を開発したのって…」
「たぶん、バックに雪ノ下家がいるんだろうな」
『まかせろ。全財産を絞り取る』
って、賢者様の声が聞こえた。何かやらかすんだろうな…人間では理解出来ない完全犯罪を…
「おい!亜樹、ここに隠し扉があるぞ!」
夏凜が見つけた。僕が中に入るが、瘴気が酷い…
「夏凜は入るな。お前にとっては猛毒だ」
彼女は聖属性である。瘴気には特に弱い属性である。
「九郎丸もよせ…浄化出来るかやってみる」
前もって清めてある紙の札に、呪文を描き込み、壁に貼っていく。浄化のお呪いである。僕の背後から懐中電灯を手にした九郎丸が恐る恐る続く。
「九郎丸、出ろ!ここから先は危険だ。地縛霊がいる。それも怨霊系だ。外へ出て、まゆこと龍さんを呼んでくれ!」
「わかった」
僕だけなら大丈夫であるが、他の人が入ることを想定するなら、徹底的に浄化しないとダメなレベルである。
隣に青白く輝く転移陣が発言し、賢者様が転移してきた。
「これは酷いなぁ。よくも溜め込んだって感じだ」
『レミーラ』と賢者様が唱えると、洞窟内が明るくなった。
「自然に出来た穴では無いなぁ。削岩機の痕がある」
確かに…人為的に掘ったようだ。通路はL字状態で左しか行けないが、突き当たりには、木で作った格子があった。中には骨がある。
「労働者の性の捌け口をここに、幽閉したようだな。うん?この骨は…」
骨に見覚えがあるようだ。誰のだ?
「許せない…半年しか生きられないのに…こんな場所に幽閉か…」
半年しか…生きられない…誰のことだ?
「亘!ここって、物見の丘か?」
「そうですが…」
「くそっ!そうなると、アイツらもいるのか…」
アイツら?誰だ?
「この骨は預かる…正確には、人骨では無いから」
見た目人骨であるが…賢者様は、骨を聖なる布にくるみ、転移していった。そうだ。僕に出来る事をしよう。左に曲がり、先を目指す。
鉄の扉がある。ソレを開けて入ると、ディーゼル発電機がいくつも並んでいた。電気はこれを使ったんだ。大掛かりに掘る為に…
吸排気はどうなっているんだ?換気扇を探す。あぁ、これか…中央部に穴がある。これは排気かな?吸気はどこだ?壁際に小さな穴がある。これかな。中央部の穴から、地上へ向けて転移をした。
森の中に排気塔があった。二酸化炭素が豊富なせいか、木々が生い茂っていた。ここって、どこだ?歩いて来た方向へと戻っていく。しばらくすると本殿の裏手に出た。では、物見の丘へ転移するか。