---鳥井亜樹----
久しぶりのすのはら荘だ。みんな元気かな?
玄関で呼び鈴を押すと、彩花が出て来た。
「あっくぅぅぅぅ~ん」
俺の顔見て、抱きついて来た彩花。相変わらずのダイナマイトオッパイである。
「来てくれたんだぁぁぁ~」
俺に抱きつく彩花。う~ん。マイクロビーズのような触感の胸。なのに、垂れていない。奇跡である。
「他のみんなは?」
「学校ですよ。さぁさぁ、上がってください」
連れて行かれた先のドアには、何故か俺の名前のプレートが掲げられていた。
「あっくん専用の部屋なの。入ってみて」
部屋に入ると、部屋の中にドアがあった。
「ここには、リアルダッチワイフを置いて有る」
そんな物を用意してくれているのか。中に入ると、リアルダッチワイフが箱に寝かされて、4体置かれていた。それぞれに名前が付いていた。『ゆうな』『さぎり』『かりん』『つばさ』と書かれたネームプレートが箱に付いている。
「私と遊んだ後、私が意識を飛ばしている時に、それらで遊んでください」
手際良く、俺も彩花も全裸になり、スキンシップを始めた。
---雪姫---
うっうぅぅぅ…股間に十字架だと…全身に激痛が走っている。
「おい!お前はいつから、そんな腑抜けになったんだ?」
意識が飛びそうだ。なんで、こんな拷問を…何か、ヘマをしたか?
「お前の一番弟子はどこに行ったんだ?」
「一番弟子?九郎丸か?」
「話にならんぬ。この腑抜けがぁぁぁ!」
あぅごっ…お尻の穴にも十字架だと…マズい…灰になりそうだ…
「雪姫クラスでも術に嵌まっているのか…どうするかな。おい、腑抜け!亜樹に何か変わったことは無かったか?」
変わったこと…はぁ…はぁ…はぁ…目眩がしてきた。十字架からあふれ出す、聖なる毒のせいだな。
「そういえば、血液の味がまろやかになってきたか」
「うん?血液の味がまろやかだと?それはおかしいなぁ。血の味は変わらぬはずだが」
そうだな。変わるって、今考えるとおかしい。輸血や輸液をしていないの、味が変わるって…
「そうなると、亜樹が原因なのか?予定を前倒しするかな。今だと、チャンスはチャンスだし」
この鬼畜は何かをやらかそうとしているのか。
「兎に角、お前は記憶を戻せ!いいな」
十字架を取り去り、去って行く鬼畜。
---神代亘---
彩花を亜樹にまかせて、リビングダッチワイフの部屋を調べている。何かがおかしい。何がだろうか。僕の記憶まで改竄されているのか?そうだ、どこで買ったんだ、これらを。製造に関する資料を探すが。見付からない。じゃ、構造を調べるか。口と股間周りしか臓器らしき物が無い。肺や心臓などの生きる為に必要な臓器は無い。工業製品ってことかぁ?しかし、リアル過ぎる。後で、亜樹と交わって貰おうか。
---鳥井亜樹---
今日の彩花はタフである。中々、達しない。不感症か?
「あっくん、拷問プレイはリビングダッチワイフでしてね」
拷問プレイ…良い響きである。彩花でしてみる。
「えっ!私でするの…ダメ…あぁぁぁ~」
達したようだ。では、隣の部屋へ。どのダッチワイフでするかな。この『ゆうな』ってやつとするか。口に差し込むと、舌が絡み付いてきた。おぉぉぉ~!リアルよりも気持ちが良い。準備が出来、股間へ差し込む。相手の準備をしなくて良いのは便利である。穴の内部も絡み付く何かがあり、悶悶さ最高潮に達すると、勢い良く放出出来た。溜まっていた物が出たようだ。胸の感触も良いし、顔の表情も変化している気がする。先程よりも恍惚な表情になった気がする。
後の穴はどんな感じだ?こっちも気持ちが良い。どこで売っているんだ?リアルよりもいい。うちにも欲しいなぁ。
---聖域の賢者---
見つけた…ここにいたのか…まさか、人間エリアに巣くっていたとは、盲点だった。
「師匠…」
弟子が僕を見つけたようだ。だけど、今はどうすることも出来ない。どこから手を付ければいんだ?
「師匠…」
何度も僕に声を掛ける弟子。汚染したまま、助ける訳に行かない。どうするかな。
『自力で這い上がって来い。タイムリミットがあるんだよ。タイムリミットを超えたら、僕は君と出会わない人生になる。いいな、天狐…』
「いつですか…」
『3月15日がリミットだ。それまでに、亘の封印を解け!』
「亜樹君は…どうなるんですか?」
『天狐と亘に関わりのないことだ。気にするな』
「気にしますよ…」
天狐の言葉をスルーする。
---湯ノ原幽奈---
師匠が去って行くと、またアイツらが湧き出して、私を快楽の沼に引き釣り込んでいく。気持ちがいい…もっと欲しい…全身を何かの精液につけ込まれる。魂が汚れていく。戻れなくなりそうだ。亘君…私はここにいる…気づいて…汚れきる前に…
胸が蕩けていく。このままでは、身体を維持できそうに無い。どうする。今、何月何日だ…リミットまでどの位あるんだろうか…
闇の中で藻掻く。見えない奴らが私の身体に愛撫している。思考力が衰えていく。自分を保つことが難しい状況だ。
『見つけた…』
誰かに見付かったようだ。誰に?
『亘と幸せになって…天狐さん…』
天狐?私の名前だっけ?亘って、誰?
『お姉ちゃぁぁぁぁぁ~ん!助けて…亜樹が…抑えきれない…亜樹が…』
亘君…私はここ…
『お姉ちゃぁぁぁぁぁ~ん!』
光輝く細い糸が見える。クモの糸?アレを辿れば…待っていて…お願い、間に合って…
---鳥井亜樹---
今日も満席だ…瞳に会えない。瞳が男性客にチョコレートを渡している。
「瞳…結婚してくれ」
「えっ…私は…」
「刑事を辞める覚悟がある。だから…」
誰だ、アイツは?
『彼女の元カレだ。盗賊と刑事は一緒になれない。だから、お前を選んだのかもしれないなぁ…』
あぁ…そういうことか。殺人鬼と刑事が一緒になれないのと同じだね。
『お前はどうしたい?』
「瞳には幸せになって欲しい。蘭にも、美和子にも…みんなには幸せになって欲しい」
『ロストしてもいいか?』
「師匠、訊くまでもないことですよ。俺はいつロストしてもおかしくない、犯罪人です」
『わかった…お前の望みを叶えてやる。供物は…お前の存在だ。今日は2月の14日だ。猶予は1ヶ月…3月の14日がリミットだ』
「後28日も生きられるんですか?今すぐにでもいいですよ。亘に俺の魂を譲渡します。だから、みんなを幸せにしてくださいね、師匠…」
---神代亘---
亜樹は僕に魂を託した。最後の敵と戦う為に、後を振り返れないように、引き留められないように、リミットより早く、僕に魂を託し、最後の殺戮をしに行った。術師を殺し、召喚の議場を破壊する為に…
亜樹にはリミットなんか、必要はなかった。その日その日を、精一杯生き抜いてきたからだ。僕は知っている。ずっと、亜樹に寄り添って1年近く生きていたからだ。
3月15日で、亜樹の執行猶予は消える。だけど、リミットは14日だった。ホワイトデー…後、2週間である。記憶の歪みのお陰で、亜樹の記憶を保っていられるのは、僕だけになった。幸いなことである。別れの悲しみは、僕だけが背負えば良いのだ。
僕は僕の身体を得た。亜樹の身体だったホムンクルスは、今御炊きあげをしている。3月14日に奇跡を起こすために…大事な行事である。精一杯、亜樹の為に祈祷をしている。亜樹の生きた1年間を僕の中に刻むように…
僕は僕だ!
『そうだよ。亘は亘だ。俺は単なるシリアルキラー。忘れていいぞ、亘…』
僕の中で生きていて欲しい。3月15日まで…
---来生瞳---
賢者様に二択を迫られている。高校時代から付き合っていた内海 俊夫のプロポーズを受けるか、記憶に残っていない大切な人の想いを受け継ぐかを…リミットは3月13日である。
「姉さん、どうしよう…」
2月14日にプロポースを受けた。元盗賊である私は、刑事である俊夫の妻には相応しく無い。でも俊夫は刑事を辞める覚悟だと言う。
「瞳のしたいようにしなさい」
「記憶に残っていない彼…名前すら思い出せない。どうしてかな?」
「総てを被ってくれたんだよ。お姉ちゃんは、俊夫さんと一緒になればいいよ。私が背をうから」
その彼のことを、妹の愛は覚えているようだ。
「どんな人だったの?」
「お姉ちゃんは知らない方がいいよ」
「姉さんは覚えているの?」
「えぇ、覚えているわ。でも、瞳は気にしないでいいのよ」
なんで、私だけ覚えていないんだ?どうして…
---佐藤美和子…
高木君にプロポーズをされた。返事は3月14日にって…2月14日に、チョコなんかあげたから。あのチョコは本当は誰にあげる予定だったんだ?思い出せない。とても、大切な人のことを忘れている気がする。
なんで、私はここの警察に勤めているんだ?そこがキーだと思うんだ。温泉駅前の喫茶店の瞳さんに、その話をした。
「えっ?美和子さんも?」
瞳さんも…誰かの為に買ったチョコを、元カレに上げて、プロポーズされたそうだ。
「え?そうなんですか?私もです」
って、蘭ちゃんもだ。これって、偶然か?もしかして、同じ人物にあげようとしたのでは無いか?
三人で記憶を追い始めた。返事を出すまで、後2週間だけど…
---神代亘---
師匠の賭け…誰か一人でも、亜樹のことを想い出せば、亜樹と夏美の記憶を託そうとしていた。だけど、現状では難しいようだ。僕しか覚えていない。リミットまでに僕以外の人が思い出さない場合、僕の記憶からも亜樹と夏美の記憶は消える。
どうして、彼らがこんな目に遭うんだ。理不尽である。
『そうだよ、理不尽な動物だからな、人間って言うのは…』
結局、懸命に生きても、記憶から簡単に消え去るものなんだな。お姉ちゃんの記憶からも僕は消えるかもしれない。僕が思い出しても…手遅れなんだろう。
『どうする?天狐を出逢わない人生を生きるか?』
いえ、このままでいいんです。亜樹は…亜樹には選択の余地は無かった。困っている人々を救いたかっただけ。それだけだったと思いたいです。
『後、1週間だ…天狐の記憶からは亜樹は消えている』
そんな…お姉ちゃん…どうして…どうして、忘れちゃうのさぁ。
『亘のことを必死に忘れないようにしているからだ。天狐は、お前や亜樹の様に強く無い、単なる人間なんだ。期待をしすぎるな』
だから、お姉ちゃんは、罪を犯したんですね。
『あぁ、他の者の魂で、罪は消えない。亜樹や夏美のように、自分自身で、有効に使わないとダメなんだよ』
「師匠…湯ノ花幽奈として、付き合っても良いですか?」
『あぁ、それでもいいぞ。天狐には荷が重かったのかもな』
---鳥井亜樹---
3月14日を迎えた。春だと言うのに、季節外れの雪が舞っている。もう、俺の姿は誰にも見えない。翼も紗霧も夏凜も元の生活に戻れた。
明日は卒業式だったな。そこまで保たなかった。まぁ、しょうがない。
「一緒にいても良いですか?」
亘には、まだ見えるようだ。勿論だよと言うけど、声は既に聞こえていないようだ。
「1年間ありがとうございました。生きて行く自信がつきました」
それは良かった。俺は俺に出来ることしか出来ない。それだけの男だよ。亘の自信は亘の成長の賜り物だよ。がんばって、生き抜け!って、聞こえていないか。
神社にも行きたかったが、悪霊もどきの俺では、しめ縄の結界で弾かれてしまった。まぁ、それはそれで、安心だけどな。
温泉駅前に行く。喫茶「キャッツアイ」の様子を見て、消えるとしよう。蘭、美和子、瞳が、それぞれの彼に返事を返す日だ。
後ちょっとで「キャッツアイ」って処で、俺の刑は執行されたようだ。瞳…幸せになぁ…
---槇村香---
いい男三人が首を項垂れて、凹んでいる。瞳、美和子、蘭ちゃんが、お断りをしたのだった。
「ごめんね。チョコをあげる相手を間違えちゃったんだ、てへっ」
って、三人同時に、ごめんなさいをしたのだった。
見ていて、爽快だな。って、リョウはチョコすら持って来ないんだが…
閉店後の店内…賢者様が見えた。
「じゃ、約束だ。亜樹と夏美の記憶を、君達に授ける。但し、直ぐには無理だよ。瞳の体内には3ヶ月になる双子の胎児が記憶の封印入りで、入っているんだ」
「えっ!じゃ、あの1回で出来たんですか?」
「ズルい…瞳さん…」
「蘭君、それは違うよ。瞳は母親だ。結婚は出来ない。歳の差カップルで良ければだけどね、亜樹と一緒になれるのは、瞳以外の女性だけだ。ただ、瞳には幸せを少し早く届けただけだ。産む幸せ、育てる幸せ、見守る幸せだよ」
「ありがとうございます、賢者様…」
「じゃ、幸せにな…」
賢者様はそう言うと、姿を消した。
---湯ノ花幽奈---
ここはどこだ?しまった。疲れて寝てしまったようだ。ここはどこよ?
「おぉ!幽奈、久しぶりだな」
えっ?お尻を撫で回されている。この声…亜樹君?夏美ちゃんもいる。あれ、どうして?亘君の気配が感じ無いんだけど…どうして?リミット過ぎちゃったのか…
「なんで、泣いているんだ?」
お尻の割れ目に顔を突っ込んでいる亜樹君。
「お兄ちゃん、ド変態だよ、それじゃぁ」
そう思います。って、それよりも
「ねぇ、亘君は?」
「えっ?亘君?あぁ、神主は神社だよ」
神主?あれ?いつの間に分離したんだ?
「亜樹、どうしたんだ?アレ…幽奈?」
知らない中年女性が、私の名前を呼んでいる。誰、この人は?
「私だよ、狭霧だって」
「どうして、こんなに年増なの?」
「おいおい…幽奈、お前こそ、15年も迷子って、どういう地縛霊なんだ?」
「15年も迷子?えっ…えぇぇぇぇぇぇ~!あれから、15年も経っているの?!」
「そうだよ。亘がかわいそうだよ。15年もやもめ暮らしで…」
神社に行かないと…ゆらぎ荘を出て、神社へと向かう。って、神社のしめ縄で弾かれているし…会えないじゃない…そんな…
「幽奈、何を泣いているんだ?」
「懐かしいオーラを感じる。亘君?ねぇ、亘君?」
ナイスミドルな神主が私を見つめていた。
「15年も…どこをどう迷子になっていたのかな?まぁ、積もる話を訊こうかな。おいでよ、幽奈」
亘君の手を握る。
「天狐お姉さんみっけ!」
えっ!
次の瞬間…私は私の身体を、返して貰い、亘君が抱きついて来た。あの…私、全裸なんですけど…師匠…服をください…