海に囲まれた孤島、ジャバウォック島の浜辺で一人の少年が項垂れていた。
「はぁ、何でこんなことになるんだよ…」
ため息混じりに少年は呟く。
「あ、いたいた!
そこの男子、何項垂れてんのよ!」
「あ?」
ふと、少女の声が聞こえた。
少年は、声が聞こえた方向に顔を向けると、赤い髪にジャンパースカート、肩から一つだけカメラを下げている少女がいた。
「何だよ?」
「いきなり島に連れてこられたのはわかるけど、何でそこまで項垂れてんのよ?
あんた男子でしょ、しっかりしなさいよ!」
「…じゃあ教えてくれよ」
少年は一呼吸おく。
「…何でこの島の男子は、俺だけなんだよぉぉぉっ!!」
少年の慟哭は島中に広がる。
さかのぼること数十分前。
少年は教室で目が覚めた。
どういうわけか、八人の女子と一緒に。
しかも、教壇にウサギのぬいぐるみ、ウサミが現れ、いきなり修学旅行に行こうという話になった。
その直後に教室の天井がセットのように開いた。
目に映ったのは満点の青空に南国にある浜辺に海。
つまり島に自分たちがいた。
ウサミが言うには、ここでみんなと仲良く過ごせたら帰ることができる、とのことだった。
少年もそれは納得した。
それでも、島に誰かいないかを探し回った。
スーパーマーケットやホテル、皆が個別で住むためのコテージなどが見られたが、誰もいなかった。
つまり、男は少年一人だけで他は八人の女子とウサミ。
少年は別に同性愛者というわけではない。
むしろ女性は大好きだ。
ただ、男子が自分だけということに、嘆いていたのだ。
「男が俺だけって、落ち着かねんだよ!」
「いや、その気持ちはわかるけど喚かないで!
…ほら、まだ他の子にも会ってないでしょ?
行くわよ!」
「やぁめぇろ、放せぇっ!!」
そう言って、少年は少女に引っ張られる形で島の中へと戻るのだった。
「そう言えば、まだ自己紹介してなかったわね?
アタシは、小泉真昼。
超高校級の写真家って言われてるの。
色々と面倒だと思うけど、よろしくね」
「あ、あぁ、それはどうも…」
島の中に戻る途中、真昼と名乗った少女が自己紹介をした。
少年は半ばあきらめた様子で聞いていた。
「で、あんたの名前は?
まさか、私に名前を言わせて名乗らないってわけじゃないでしょうね?」
「人が項垂れてるだけだってのに名乗らねぇわけねえだろ!
俺の名前は狩野弓弥だ!
超高校級の狩人ですよーだ!」
「狩人?
ハンターみたいな言い方ね」
「そこは、物は考えようだろ?
…さて、男一人の身で心もとないが、オタクの言う通り、挨拶して回らねぇとな!」
「あ、ちょっと!」
弓弥は真昼の制止を半ばやけくそになりながら走っていった。
「よおし、あと一人を除いて挨拶はできたぜ!
さて、あと一人はどこだ…?」
弓弥は六人の女子と挨拶を終えてホテルにいた。
休憩しながら、ホテルの中を見回す。
すると、ホテルの娯楽室のゲームに囲まれながらゲームをしている、猫のパーカーを羽織った少女がいた。
「…?
何だ、あいつ?
どこかで見たことがあるような…」
弓弥はその少女に既視感を覚えていた。
だが、今はそんな事言ってる暇はないと思い、弓弥は少女に声を掛けた。
「おーい、そこのお嬢さん!
ちょいとオタクに挨拶に来たんだが、行けるか?」
「…」
「おーい、聞こえてんのか?
まさか、ゲームに夢中ってわけじゃあねえよな?」
「…」
少女は言葉を返さない。
本当にゲームに夢中になってるんじゃないのかと、弓弥は思った。
すると、少女は気づいたのか、弓弥に顔を向ける。
「…あ、ごめん。
聞こえてなかった。
えぇと、なんだっけ?」
「やっと返事したか…。
いやな、ただ挨拶に来たんだよ。
それで、他は終わったからオタクに挨拶しようとしたんだよ。
俺は狩野弓弥、超高校級の狩人だ。
オタクの名前は?」
「…。
私は七海千秋でーす。
一応、超高校級のゲーマーでーす、よろしくお願いしまーす」
七海千秋と名乗った少女はゲームに向かい、間延びしながら自己紹介した。
「…七海千秋、か。
なぁ、一つ質問しても良いか?」
「…?」
弓弥は千秋の顔を覗き込みながら聞こうとする。
「俺達って、どこかで会ったことあるか?」
「…?
あるけど?
というか、私達、このプログラムのAIだよ?」
「…は?」
千秋の言葉に弓弥は呆然とする。
「おい待てよ、プログラムって何だよ。
それに俺たちがAIって…っ!?」
だが、その直後で弓弥は思い出した。
自分たちが何者なのかを。
自分たちの目的を。
「…マジかよ。
俺たちがAIで、俺と千秋とウサミ以外は絶望の残党の連中。
しかも、この世界はそいつらを元に戻すためのもので、俺たちはその監視役ってか?」
「そういうこと、だと思うよ。
…でも、何かバグが発生したみたい」
「バグ?
…!?」
弓弥はその言葉を聞いて、少しだけ頭に痛みが走った。
千秋はその事に眉をひそめるもすぐに話を戻した。
「…?
さっきウサミから聞いたことなんだけど。
それはあとでウサミがみんなに言う、と思うよ?
追加のルールとして」
「追加のルール?
何だよそれ」
「…」
千秋はパーカーのフードを被って黙ってしまう。
「…それも後で聞けってか?
わぁーったよ、そうさせてもらうぜ」
弓弥は頭を掻きながら外に出た。
千秋は弓弥が出たドアを見て、少し顔を赤くしながら呟いた。
「…そんな事、言えるわけ、ないじゃん。
…バカ」
弓弥がホテルの外に出てすぐにウサミから号令がかかり、弓弥も含む9人が島の中央にある公園に集まった。
「えぇ、いきなり号令をかけてちまい、ごめんなちゃい」
「それで、今度は何だよ?
オレたちに何かしろってのか?」
ウサミに警戒するように言ったのは、終里赤音という少女だった。
「ご、ごめんなちゃい~!
じ、実は突然、追加のルールを設けるにちまちた」
ウサミはしゅんとしながら言う。
「追加のルール?」
それを聞いて、弓弥と千秋以外の周囲のがざわつく。
「お、おちずかに!
えっと、その追加のルールなんでしゅけど…」
ウサミはどもりながら内容を説明する。
「その内容はでちゅね…。
皆でエッチしてもらうこと、なんでちゅよ」
「は?」
弓弥は思わず呆けてしまう。
そして、そのまま千秋の方に視線を向けると、どこか落ち着かない様子で顔を赤らめていた。
だが、顔を赤らめたのは周囲も同様だった。
『えぇぇぇぇっ!!!!!?』
瞬間、花も恥じらう少女たちの叫び声が木霊した。
主人公の容姿はfateのロビンフットの黒髪です。