弓弥と千秋とデートの約束をしてから翌日の朝、千秋が弓弥のコテージにやって来た。
「おはよう、弓弥くん!」
「おう、もう来たか。
デートって言う割には結構気合い入ってんじゃねぇか」
「うん、色々とこの島の事見て回りたいし、弓弥くんと一緒にやってみたいこともあるんだ」
「…そうかよ。
じゃあ、いっちょ行きますか!!」
そう言って、二人は家を出て、島を歩くことにした。
島を見回ること数十分後、二人にとっては驚きが連続だった。
スーパーマーケットやホテルは前日でわかっていたが、その他にも飲食店や遊園地、カラオケ、道場、温泉などがあった。
そして、さらに目の前にはあるものがあった。
「おいおい、島なのに、ゲームセンターとかあるんだな」
「ほんとだね…!
あ、あれなんかどうかな!」
そう言って千秋が指を指したところは、ゲームセンターの中にある、UFOキャッチャーだった。
「…なるほど、あそこにあるネコだのウサギだのかわいらしいのが欲しいのか?」
「別に欲しくないよ?
弓弥くんと一緒にやりたいもん」
「…?
あぁ、一緒に楽しもうってことか、そいつは失礼したなぁ。
それじゃ、UFOキャッチャーに参りますか!」
そうして、二人はUFOキャッチャーをすることになった。
「それにしても難しいな。
目の前のネコは取れそうで、取れやしねぇ…」
「うん、普通の人なら大抵この辺りで凡ミスするからね。
…そうだ、私は横から見て位置を確かめてみよっか?」
中々景品が取れないことに頭を悩ます弓弥に、千秋は提案する。
「…いや、それじゃあ意味ねぇんじゃねぇか」
だが、弓弥は少し考えてから、それを断った。
「え?
でも、そうした方が景品も取りやすく…」
「オタクはこう言ったよな?
一緒にやりたいって。
だから、そんなことして離れられると、デートというより、ダチと遊んでる気分になんの」
「え?」
千秋は弓弥の言ってることに理解できず少し困惑していた。
「…だからな…」
すると、弓弥は背中から千秋の手を掴み、コントローラーを握らせた。
千秋からすれば、突然後ろから抱き締められたような感覚だった。
「ふぇっ!?
ちょ、弓弥くん!?」
千秋は思わず顔が赤くする。
だが、それでも弓弥は手を、体を離さなかった。
「デートするなら、こうやってゲームしたら、楽しくて、互いに好きになんじゃねえか?」
「~~~っ!」
弓弥は笑顔でそう言うと、千秋はさらに顔を赤くなる。
「よーし!
さっきからケースの中であぐらをかいてそうなネコさんには、そこからご退場願いますか!」
「ひゃ、ひゃいっ!」
そう言って、弓弥と千秋は体を密着させてながら、UFOキャッチャーを続けた。
「いっちょ上がりっと!」
「は、はうぅ…」
それから数回やって、何とかネコのぬいぐるみを取り出すことに成功した二人。
千秋は先ほどのやり取りで、顔が真っ赤になりその場に座り込んでいた。
そんな千秋を見た弓弥は、千秋にネコのぬいぐるみを渡した。
「…?」
しかも、はたから見たら、恥ずかしそうにネコのぬいぐるみで顔を隠してるように見えるように。
「…うん、いいねぇオタク。
その姿勢でも、めちゃくちゃかわいいじゃねえか」
「~~~~っ!
からかわないでっ!」
「おっとぉ!」
かわいいと褒められ、顔から湯気が出そうなまでに真っ赤になった千秋はネコのぬいぐるみを投げつけるも、弓弥に簡単に受け止められる。
「…今のはからかいすぎたか、悪いな。
さてと、他にもゲームがあるみたいだから、やってみようぜ?」
「うぇ、まだやるの!?」
「俺としては、色々学んでいきたいんだよ。
だから、デートの中でそれに付き合ってもらうぜ?」
「学ぶって、何を?」
「それは、後のお楽しみってやつさ!
さてと、どんどん行こうぜ、超高校級のゲーマーさん!!」
「え!?
まっ、待ってよぉ!」
それから二人はゲームセンターにあるゲームをやり続けた。
例えば、シューティングゲーム。
ゾンビの群れに二人は銃で応戦していた。
「…」
「おっとぉ!」
「え!?
弓弥くん、さっきのは私でも撃てたのに」
「悪いなぁ。
あのゾンビが千秋に襲いかかろうとしてるのに、イラッときちまったんだ」
「っ!」
「おおっと!
そこのゾンビも、何かわいらしい女の子に襲いかかろうとしてんだぁ!」
「か、かわいいっ…」
例えば、レーシングゲーム。
千秋が一位のまま走り続けていた。
「…」
「よぉし、ようやく二位にたどり着いたぜ」
「む…」
千秋はアイテムを使って弓弥を攻撃しようとする。
「お、アイテムか。
だが、その程度じゃあ俺は止まれねぇな。
何せ、目の前には千秋というかわいい女の子がいるんでな」
「~~っ!
バカっ!」
そして最後にはプリクラ。
「なぁ、これもゲームなのか?」
「…そうだよ。
ただ写真撮るだけじゃなくて、色々なエフェクトもプリントもできるんだ」
「ふうん。
つまりは変わった写真だな」
「…言っておくけど、さっきみたいにかわいいっていうのは、なしだからね」
「へいへい」
そう言って、弓弥は手を頭の後ろに持っていき、千秋はプリクラのパネルを操作する。
「ほら、もう撮影が始まるから、こっち来て」
「りょーかいりょーかい」
そう言って、弓弥は千秋の肩に手を回す。
「ふぇ!?
も、もう…」
千秋は半ば諦めた様子で弓弥の腰に手を回す。
そして、その状態でプリクラの写真が撮られたのだった。
「いやー、今回は遊んだ遊んだ。
オタクは、楽しかったかい?」
「う、うん。
それなりには、と思うよ…」
ゲームセンターを後にした二人。
千秋は写真を見たり、弓弥は伸びをしていた。
「…」
千秋は写真を見ながら胸の中で何かを感じていた。
それは弓弥と遊んでいる途中からだった。
「ねぇ、弓弥くん。
あのさ…、ちょっと聞いても良いかな?」
「あ?
何だよ、そんなに改まっちゃって」
「きょ、今日色々ゲームをしてさ、結局弓弥くんにペースを持っていかれちゃったけど、弓弥くんは楽しかった?」
千秋は少し顔を赤くしながら聞く。
「うん?
そりゃあ楽しかったっすよ?
おかげで、デートとは何ぞとか、女の子を惚れさせるにはどうしたら良いかとか、色々わかってきたからな」
「そ、そうなんだ…。
それで、最初は少し鈍そうだったのに、徐々にリードしてたんだ…」
「まあな。
俺、人間だった時は情報収集の目的で口説きはしたものの、デートするなんて、あまりなかったからなぁ。
でもま、ありがとな千秋」
「う、ううん!
こっちも、デートしてわかったことがあったと思うから!
…それと、もう一つ聞いても良いか?」
「?」
そう言って、千秋は弓弥の方に体を向けて見つめる。
だが、顔は赤く染まり、目も少し震えていた。
「…あのね、その…、デートしてるときになんだけど、弓弥くんと一緒にいると、胸の中が引っ掛かりがあって、それでいて少し息苦しくて、でもぽかぽかと温かい気分になるんだけど、さ…。
おかしいよね?
私達AIなのに、こんな気分になるなんて、ね…」
「…」
それを聞いた弓弥は少し考える。
だが、そんな言葉を聞いて、ある事が弓弥の頭の中でたどり着いた。
「…多分だけどよ、オタクは、俺に好意を抱いてんだよ。
AIでも、疑似的なものから、オタクの中では本物にレベルアップしたって感じなんだよ」
「それって、どういう事?」
「オタクは、俺に惚れてんだよ。
へへっ!」
「ほ、惚れた?
つまり、私、弓弥くんのこと、好きってこと、なのかな…?」
そう言って、千秋は自分の胸に手を当てた。
胸の中にあった引っかかる感じも、息苦しくなる気持ちも、そうだと気付いた途端に、ほどけるのを感じた。
むしろさらに温かい気持ちになるのを、千秋は感じた。
「…そっか。
そうなんだね、私、弓弥くんのこと、好きなんだ…」
「そうなんじゃねえの?
まぁ、俺もオタクのこと、好きだったりするんだけどな?」
弓弥はほほ笑みながら千秋に言った。
「…!」
千秋は弓弥から好きと言われて目を見開き、顔が赤くなる。
「さて、じゃあコテージかホテルに行って、続きでもするか?
その辺りは、オタクが決めればいいんだ。
どうだ?」
「…じゃあさ」
そう言うと、千秋は弓弥の服の袖をつかむ。
「じゃあさ、ホテルに行こっか。
恋人同士の雰囲気にも良いと思うし」
「そうだな。
でも、今度はオタクのコテージにも入れさせてくれよ?」
「だーめ、女の子の部屋は乙女の秘密でいっぱいなんでーす。
えへへ…」
「へいへい、そう言う事だと思ったよ。
じゃあホテルに行きますか!」
そう言って、二人はホテルへと向かった。
ホテルに向かい、合いカギで部屋に入った二人。
そこにはテレビや冷蔵庫などの生活用品があったが、何より目を引いたのは一つだけの大きめのシングルベットだった。
「巨大なシングルベッドにフリルに付いた布団。
まるで大人のホテルですなぁ」
「でも、私たちもこれから大人の階段上るんだよ?」
「それも、そうだよな」
二人はベッドに座る。
互いに顔を近づける、互いの吐息がぶつかり合うところまで。
「私ね、子作りの方法は知ってるけど、さ。
…初めてだからね、優しく、してね…?」
「…仰せのままに、可愛いお嬢さん」
そうして、互いの唇が重なった。