「唯吹が倒れた?」
「うん、何でも、私たちがいたホテルの前で泡を吹いて倒れていた、みたいだよ。
しかも楽器が散らばってたから、その調整をしてた途中だった、と思うよ」
ホテルから戻って、コテージの外で弓弥は千秋から唯吹が倒れたことを聞いた。
「…でも、倒れてた時期から色々と考えられる、と思うよ?
丁度、私たちがエッチしてた時だったみたいだし」
「…おい待て。
確か唯吹って超高校級の軽音部だったよな?」
「うん。
多分だけど、彼女は耳が良いから、それで私たちの行為も他の子よりも鮮明に聞こえた、と思うよ…」
察しがついた弓弥は、冷や汗をかいて確認を取るが、千秋も少し顔を赤くして推理した。
「…」
「…」
二人は互いに顔が赤くなり、視線を下ろす。
「と、とにかく、俺たちに原因あるかもだし?
一応は見舞いに行くってのも、良いんじゃあねぇのか?」
「う、うん。
それが良い、と思うよ」
そう言って、二人は唯吹が入院している病院へと向かった。
「あの、澪田さん、ホテルの前で倒れてたらしいのですが、お二人は何か心当たりありますか?」
病院に着いて、唯吹の見舞いに来たと二人が言った途端、超高校級の保健委員である罪木蜜柑に質問された。
「あー、いや。
その辺りはよくわかんねーな、ははは…」
「う、うん!
私も、よくわからない、と思うよ」
「?」
二人は流石にストレートにホテルでの行為が聞こえたじゃないかと言えるわけではなかったので取り繕うとするが、冷や汗をかいてたり顔が赤くなってたりで、そんな様子だったので蜜柑に怪しまれた。
「本当に、何も知らないんですか?
澪田さん、泡を吹いて倒れてたんですよ、顔が真っ赤で」
まだ数えるくらいながら気弱なイメージがあった蜜柑の真剣な目で問い詰めれしまう弓弥と千秋。
「…直接原因かどうかわからねぇが、心当たりはある。
でも、今は言えねぇんだわ」
「…わかりました、ではその時まで待ってますので」
「澪田さんはどこの病室なの?」
「あそこの病室です」
蜜柑は一つの病室の扉を指した。
「そ、そうか。
じゃあ、また今度、何か話をしようぜ?」
「はい、その時はお願いします」
先程の真剣な表情からいつもの気弱な表情に戻った蜜柑にそう言って、弓弥と千秋はその病室へと向かった。
「おっはよーございまーす!!」
「出会いがしらからうるせー!!」
「…」
病室を開けた途端、病衣の纏いながらもハイテンションで出迎えのは、倒れてたはずの唯吹だった。
「はっ、誰かと思えばゆみちーと七海ちゃんじゃないっすか!
どもっす!」
「はは、そりゃーどうも」
「思ってより元気でよかった、と思うよ」
「ささ、そこにスタンバってないで中に入るっすよ!
病室だからちょっと薬品の匂いとかするけど入るっす!」
唯吹は某日和みたいな勢いで二人を病室の中へと連れていく。
「そう言えばよオタク、今朝ホテルの前で泡拭いてぶっ倒れてたらしいんだけど、大丈夫か?」
「っ!
…いやー、大丈夫っすよー!
今ならフィギュアスケート感覚でギター弾きながら歌える余裕があるっすよ!!」
「意味わかんねー例えだなオイ」
弓弥からの質問にギクッとなるが、明らかに空元気になってる様子で問い返した。
「ねぇ澪田さん、確か耳結構よかったよね?
なら、その倒れたときのこと、覚えてる?」
「っ!?
…」
千秋からの質問に顔が赤くなり、そのまま顔を下に向ける。
「…覚えてるっすよ。
あの男女が荒々しい声でシャワーを浴びあがら互いに名前を呼び合ってたことも。
その時に何の音かわからないんすけど、水気のある音が頻繁に聞こえたんすよ。
…あれ、ゆみちーと七海ちゃんっすよね?」
顔が赤くなりながらも、若干引きつらせた顔で二人の顔を見上げる唯吹。
だが、その様子を見かねた弓弥は唯吹の前に出て謝った。
「すまねぇ!」
「え?」
「弓弥くん?」
唯吹と千秋はぽかんとする中、弓弥は続ける。
「確かに、あのホテルで行為したのは俺たちだ!
でも、オタクが耳が良かったこととホテルの前にいたのは予想できなかった!
だから、すまねぇ唯吹!」
「…!
私からも、ごめんなさい!
外で楽器の調整してるなんて思わなかったから!」
千秋も弓弥の真意を察して一緒に謝る。
だが、唯吹はいきなり謝られて困惑していた。
「ちょ、ちょっと待って欲しいっすよ!
別に、そんな起こってるわけじゃないんすから!
ただ、その…聞いても良いっすか?」
「…?」
「えーと、その、気持ち良かった、っすか?
その、行為というか、エッチした時は…」
唯吹は両手の人差し指で互いに突きながら聞いた。
「えっと…それはだな…」
「…あそこにある、唯吹のベッドを見るっす」
唯吹の言われた通り、ベッドを見るとシーツに染みができていた。
それを見られてやっぱり恥ずかしかったのか、唯吹の顔が赤くなる。
「その、二人の行為を聞いてから、あそこが疼いちゃって、熱くなるんすよ」
そう言って、唯吹は病衣の紐を解いて前を開く。
千秋ほどではないが膨らみのある胸と下腹部を覆う縞々の下着が二人の視界に入る。
しかもよく見ると、ショーツですら隠し切れなかったのか、愛液が太股を伝っていた。
弓弥は目をそらして、千秋は同じ女性として恥ずかしいのか、すぐに着直させる。
「…ゆみちーとしたら、気持ちよくなるんすか?」
「待て、落ち着こうぜ唯吹」
「…?」
弓弥は唯吹の肩を掴み落ち着かせる。
「オタクが興奮するのはよくわかった。
何分、オタクにとってすげー体験だろうからさ。
けどよ、互いに知ってからで良いか?」
「というと?」
「オタク、俺とデートしねぇか?」
「えっ、良いんすかそんなことして!?
七海ちゃんもそれで良いんすか!?」
唯吹の言う事もわかる。
傍から見たら、彼女の前でデートだのエッチだのそう言う事を言ってるようなものなのだ。
「ううん、大丈夫だよ。
そもそもここからはエッチなことしないと出られないし」
千秋はまるで唯吹を応援するように言う。
「…」
唯吹は少し考える。
「よーっし、それじゃあけってーっすね!
じゃ、また今度退院したら場所とか時間とか言うっすよ!!」
「そうかい」
「じゃあ、お大事に」
そう言って、二人は唯吹と別れた。
病院から出た後で、千秋は弓弥の腕をつかみ、胸を当てる。
「…あの、お嬢さん?
胸当たってんですけど、というか、着けてないっしょ、オタク」
「うん、当ててるんだよ。
それに下は着けてないんだ。
…弓弥くんのエッチ」
「当ててきたお嬢さんが何言っちゃってんの」
「えへへ…。
澪田さんとのデートの前に、こうしておきたいなって」
「へいへい、お好きにどうぞ。
せいぜい周りから不審な目で見られないようにな」
やれやれと言った感じで弓弥は千秋の掴む手を離さずに、コテージへと帰って行った。