次回も説明回になるけど今回よりかは面白くする予定。
ぼやつく視界。
もやつく意識。
「う…ぐ…」
霞んだ感覚。
しかし確かに残った指先の感覚。
あれ…?俺まだ死んじゃいねえのか?
「…痛ててっ」
そして確かに残る身体の痛み。
大きく斬られた傷跡には包帯が巻かれていた。
「気が付いたようだね」
「…!?誰だ?」
コポコポと鳴る不気味な竈をバックに、ローブを着た魔術師…いや呪術師風の男が見える。
怪しげな一室のベッドに彼は寝かされていた。
「あの出血から復活してくるなんて驚きだよ…だからこそ"素"に相応しい」
「…なに訳分からねえ事言ってやがる?」
痛みはまだあるが、不思議と身体はよく動く。
これはあの男が治療したのだろうか?
もしそうであるならば、怪しげだがその腕は確かだと認めざるをえない。
奴は医者か?
「今自分が動けている事に驚いているだろう?」
「お前は誰だ?まずそれからだ」
相手の問いを無視して自分の問いをぶつける。
相手の事なんか気にしねえ、自分の好きな事、思うがままにやっていく吐いていく。
これが山賊スタイルだ。
「…僕は"錬金術師"だ」
聞き慣れぬ言葉に眉をしかめる。
「レンキンジュツシだぁ?」
「知らないか。無理もない…この世で最も希少とも言われるジョブだから」
錬金術師。
古より伝わる古文書などにはよく出てくる名だ。
森羅万象を司り、あらゆる離れ業を成し遂げていく奇跡の存在。
現在はもうその秘技を受け継いだ者が途絶えたと聞くが、まだ存在していたのか。
「で、そのレンキンジュツシ様が一体俺に何の用だ?」
「その前に、君に言っておかなきゃいけない事がある」
ぴしゃりと男のペースを断ち切るように言い放つ錬金術師。
包帯で覆った傷口を指差しながら、おぞましい事を言ってみせる。
「君、二日以内に死ぬよ」
「…は?」
意味不明だ。
いきなり余命宣告?
俺の身体はこんなにも元気じゃねえか。
それも二日?
何もできやしねえ。
どういう事だ、何がどうなってやがる。
心には思い浮かぶも、言葉にできない。
錬金術師のいかにもな格好が彼の吐く言葉に真剣味を帯びさせる。
切迫する心境。
あれ、こういう時っていつもどっくんどっくん胸が鳴るはずだよな…?
「心臓を抜き取ったんだ。もう使い物にならなくなってたからね」
「…え」
しれっと、非現実的な事を言ってのける。
心臓を、抜き取った?
そんな事をされれば人間はすぐ死んでしまう。
じゃあなんで俺はまだ生きてるんだ?
身体はピンピンしてるし、全然動けるぞ。
「…結界だ。君の居る場所には今、特殊な結界を敷いてる」
言われてみれば何か円盤のような物が、今自分が寝ている床に浮かび上がっているように見える。
要は、今自分が心臓無しで生きていられるのは床に敷いてある結界のおかげで、その結界は二日間しか継続できないという事らしい。
そして、自分が生き残る方法はただ一つ。
「この竈に入る事だ」
「はぁ!?」
先程からぐつぐつと煮沸音を鳴らし、異様な雰囲気を醸し出していた竈。
人一人くらいなら優に入りそうだ。
というか、意識がちょっとはっきりとしてきて、異様な臭いが部屋に充満しているのに気付く。
「…そんなん、死ぬに決まってんだろ」
「ああ、死ぬに決まってるさ。このまま君が手をこまねくようならね」
「…うぐ」
頭の悪い彼にでも、それは痛いほど分かる。
かといってぐつぐつ鳴らして煮えてる竈に自ら跳び込めというのか。
座して死を待つよりかは、いや…。
悩む男を錬金術師が強引に抱き起こす。
「痛っ…痛ててっ!」
「まあまあ、物は試しと言うじゃありませんか…」
「ちょっ、試しって…」
無理に竈の方へ連れて来られ、背中に手をかけられる。
近くで見てみると、竈の中からリザードマンの脚と思われる物や何かの腕と思われる物がはみ出ているのが分かった。
「ちょっと待てって!」
普段であればこんなヒョロい男、簡単に振り払えるが…
怪我が祟って、身体に力が入らない。
いや、しかし彼にとっては怪我の功名だったかもしれない。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああ」
ザバーンッ!と気味が良いほどに豪快にダイブする音。
彼の第二の人生がここから始まる。