「私はオラリオへ行きたい。」
16歳の夏、リヴェリア・リヨス・アールヴはそう言い出した。
当然父は反対した。だが女王たる母は意外にもそう強くは異を唱えなかった。
「なぜだ。リヴェリアをあんな危ない場所に行かせても良いのか?なぜ反対しない!?」
妻にそう詰問した。ところがかえってきたのはさらに予想外な返答だった。
「それがあの子の
その里に行商人として密かに商業神が訪れているのを、彼女は聞いていた。否、調べさせていたと言うべきだろう。女王であり、高位精霊達との架け橋たる巫女たる彼女が必死に隠されていた神の気を嗅ぎつけた。
もし神が本気で隠したなら神の気など感じられないであろう。
しかし、商業神は少しのイタズラ心や、好奇心のようなものを持っていた。この里にはもう一つ神のオーラの強い発信源があり、それが彼にその余計な心を行動に移す余裕を感じさせたからでもあったが、いずれにしろ多少は女王の力を侮っていたと言わざるを得ない。
そして、侍女を呼ぶ。
「エレナ。アイナを呼んできなさい。」
「かしこまりました。」
驚いたように男が口を開く。
「まさか、アイナと一緒にいかせるつもりなのか!?」
「ええ。なんというんでしょうね、リヴェリアは反抗期とでも言うべき時期のようだが、アイナはとてもリヴェリアに好かれてる。今のリヴェリアが素直に言うことを聞く年長者はそこまで数が多くない。そこでせめて大人を一人つけたくてな。」
「供とするならもっと他にいるだろう。戦士だとか。」
「あの街ではこの里の戦士の力はあまり役に立たん。それに、リヴェリアが害される心配はもとより無いのだ。」
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そして、アイナに王命が下る。
「貴女、オラリオに行きたいそうね。リヴェリアと一緒に行きなさい。ただ、リヴェリアと二人で出奔するということになっているから、この事はリヴェリアには秘密にしなさい。そしてもうひとつ、貴女達にニースを任せます。そうすれば商業神ヘルメスが貴女方がオラリオに行くのを手伝ってくれるでしょう。」
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ほぼ同時刻、里の中にあって神殿の役割を果たす場所を、緑の髪を靡かせた少女が立ち去った。
「商業神、その青髪の娘は誰だ?」
口許に僅かに笑みをたたえた金髪の男神が木陰から出て答える。
「やはり気付いていたか。この娘はとある国の姫でね。色々あってすこし前からつれて回っているのさ。ほら。」
「アスフィ・アル・アンドロメダに御座います。お見知り置きを。」
幼い娘が男神の陰から歩み出て頭を下げる。
「なるほど、あの海国の。そのような幼き娘を連れ歩いておるとはお主まさか、」
「ははは、いつボクがロリコンになったというのか。それにそちらの計画の方がよっぽど不健全ではないのか?さながら光源氏計画のようだ。」
「極東の文学の話か。あれは女流作家の書いた、女が読むためのものだ。よって女の願望が表れておる。そしてあの娘も年頃の女。つまりはそういうことだ。それにこの計画はほとんどあの方が考えたものだ。我等の考えではない。それはお主がよく知っていることであろう?ヘルメスよ。」