Train Cinderella ~A Prohibition Lover~ 作:如月ライト
「ヤッホーそら、久しぶりぃ」
「久しぶりって…まだ別れてから1時間もたってないよ」
私は今ファーストフード店に立ち寄っていた。
一人で外をぶらつくのもしゃくだったのでカノンを誘った。
しかしカノンをここに呼んだのは間違いだったかなと今更後悔。
何故なら店内にあふれる学生の視線がすべて彼女一点に注がれていたからだ。
並みのグラビアよりもスタイルの良いカノン、その金髪も相まってか注目の的だ。
カノンは注目を浴びていることにも気づかずに大口を開けてハンバーガーを頬張る。
「ん~おいし~!」
カノンの今の姿はモデルとは程遠いものだが…
何故だろう、胸がドキドキする。
多分素の可愛らしさにあてられたのだろう。
「カノンったら…ちょっと動かないでね」
ポケットティッシュを取り出してカノンの頬にあてる。
んんっとカノンが声を洩らす。
「ほら、動かないの…ソースとれないよ?」
しかしなぜだろうか。
ただカノンの頬についたソースを取っているだけなのに周りからの視線がさらに熱くなったのは。
「はい、とれた。綺麗に食べないとだめだよ、女の子なんだから」
ハハハとカノンは快活に笑ってみせた。
しかしそんなのは一瞬ですぐに顔を素に戻す。
「ソラ、大丈夫なの?学校にいた時よりもなんだか疲れてる気がする…」
やっぱりカノンには隠し事はできないか。
「あのね…」
私は意を決してカノンに話し始めた。
もちろんお兄ちゃんだという事と口淫の事は伏せて、だ。
ふんふんとうなづきながらカノンは私の話をきいてくれる。
今はそれだけで満足だった。
話していくうちにだんだんと胸がすっきりしていく気がした。
「なるほどね…大事な人が酷いことして理由も離さずに避けてくる、と…それに酷い事されたのにもっと大事に思えてくる自分がよくわからない…か」
カノンはう~んと可愛らしくうめくとすぐに口を開いた。
「たぶんそれは恋だと思うよ」
「恋!?」
知らず知らずに声が大きくなってしまった。
周りからの視線が私に突き刺さるもすぐに興味のなさそうに散っていった。
「うん、だってひどい事されたのに大事とかもうそれしかないよ」
恋…私がお兄ちゃんに…?
この感情は恋だったのか?
私の中に恋愛感情がうずくまっていたのか。
「それにソラがちゃんと聞いてくれればその人は理由を話してくれるはずだよ、だってソラの話をきいてる限りとってもいい人なんだから」
「でもそんな簡単にいくのかなぁ?」
そんな簡単にいけばいま悩んでいないと思うのだが…
「ソラは何で訊けないの?」
唐突にそんなことを言われる。
そう言えば私は何でお兄ちゃんに訊けないのだろうか。
顔を合わせられないから?恥ずかしいから?
いや、たぶんそのどれも違う。
「今の関係が崩れたら嫌だから…」
私は絞り出すようにその言葉を放った。
多分お兄ちゃんが正解を出せば今の楽しい兄妹の時間は終わりを告げることだろう。
兄は妹を襲ったけだものとして、私は兄に襲われた哀れな妹として…お兄ちゃんの中ではたぶんそう思うだろう。
私の想いも無視して。
どんな理由であれ私はお兄ちゃんを嫌うことができないだろう。
「私はよくても…おに…その人がダメだと思うの…」
「じゃあソラがちゃんとその気持ちを伝えないと…だって好きなんでしょ…?」
好き…
恋とかそんなのはわからないけど確かにお兄ちゃんは好き、大好きだ。
そう考えると同時、私の胸の中に言い知れない思いが広がり爆発するのが分かった。
お兄ちゃんが好き、大好き!どんな人よりも好き!
そんな思いが胸を侵食した。
「うん…そうだね…私、あの人にちゃんと言ってみる…!」
そう言って私は立ち上がろうとする。
「あ、待って…もうちょっと…」
カノンはそう言って私をとどめる。
「やるにしても作戦がないと、ね☆」
作戦、か…
「やっぱり色仕掛けしかないよね!」
「そんなの無理だから!」
と、言う感じで時間が過ぎていった。
自分の本心もわかりすっきりした私の今の笑顔は今までのモノよりも輝いている気がした。
さぁ…決行の日はいつにしようか?
夏の初め、煩いぐらいのセミの声が宙に響いた。