Train Cinderella ~A Prohibition Lover~ 作:如月ライト
むぅ…お兄ちゃん、私のことずっと避けてくる…
ちゃんと話し合いたいのに…どうしたらいいの?
そう思ってたらカノンが色々アドバイスをくれたんだ!
改めてカノンの優しさが分かってよかったなぁ…
ってカノン!目立ちすぎだよ!
み、みんなこっち見てたじゃん…
転機
さて、どうしたモノか…
カノンにやるって宣言したのはいいんだけど…
いつどうやってやればいいのか、それがまだ決められてない。
すぐにでもお兄ちゃんと話したいけどどうせお兄ちゃんは私の顔を見るなりそそくさとどこかへ行ってしまうだろう。
その顔がつねにとてもつらそうな表情で見ていられない。
この方法はダメ、じゃあ何がいいの?
私は頭を巡らせる。
「…やっぱり色仕掛けしか…」
前にカノンに言われたことを思い出す。
しかしそれでどう解決させることができるのだろうか。
明確なプランがないまま色仕掛けをしても逆効果だろう。
頭の中で考えを巡らすもまとまらず、あの日から2日たっていた。
「う~ん…」
今は学校の昼休み、私は机に突っ伏してうんうんとうなっていた。
「はぁ…ソラったらまだ言えてないの…?」
隣には親友のカノンの姿が。
私は机に伏せたままうんと頷く。
隣でカノンが大きなため息をつくのが分かった。
…ため息をつきたいのはこっちだって同じだよ。
なぜかこんなことを思ってしまうほどに私の心象はヤサグレてしまっていた。
「とりあえずさ、その人にいつ言うかだけ決めておいたら?ソラの事だからどうやっていうか迷ってたんでしょ?」
「…うん、でも方法もなくいつ言うか決めたら…」
カノンは私の目の前で指をちっちっと動かす。
その古めかしい動作に笑いがこみあげてくるが必死に抑え込んだ。
「いつ言えばいいか、ちゃんとした目標の日を設定してるとねしっかりしたプランが無くても絶対に言える。これ私の体験談ね」
要するに方法はどうでもいいから動けってことなのかな?
そりゃ動きたいとは思ってるけど今のお兄ちゃんにそれは逆効果ではないのだろうか?
「あ、ソラまた迷ってる。そんなに気を張らなくてもいいんじゃない?」
まるで私の内面を見透かしたことをいうカノン。
やっぱりカノンに隠し事とかはできないのかと改めて思ってしまう。
「うん…だって無理に言ってもあの人が…」
自分でも驚くほどぽつりと消え入りそうな声だった。
それほど今の私は弱気だったのだろう。
「相手の事なんて気にしなくていいんじゃない?自分がやりたいからやればいいんだよ」
「…え?」
私は驚きの声を上げていた。
「今のソラは相手のことを言い訳にしてるみたいなんだよね。自分は言いたいけど相手がどうとかさ。だからその人の想いは今だけは無視してさ?」
背筋に冷たい汗が流れた。
カノンに言われたことが頭の中でぐるぐるとまわっていく。
そしてその言葉はやがて心の奥底に突き刺さり私の内面と意地、そして恐怖していた感情を潰していく。
結局私はヘタレだったのだ。
好きな人に言うことをちゃんと伝えられないヘタレ、そう考えた瞬間私は自然と口から笑みを漏らしていた。
胸の突っかかりが完全にとれた、そんな気分だ。
「おっ、なんか元気でたじゃん。ソラのそんな顔も久しぶりかな」
そう言ってニッと笑うカノン。
二人の間に久しぶりの笑顔が咲いた。
「じゃあ私今週末の日曜日に言うね」
本日は水曜日、あと4日だ。
「へぇ。夏休み最初の日曜日に言うなんて、なんだか粋だねぇ」
そう、もう夏休みなのだ。
明後日にはもう夏休みというほどすぐそこまで近づいていた。
しかし天候はというとまだ少し涼しめな過ごしやすい気候だった。
まるで今年は本番の夏が来ないのではないかという錯覚すら覚えさせるほどに。
「じゃあそんなソラの為にプレゼントをあげよう」
そう言ったカノンはガサゴソと自分のカバンをまさぐる。
そして2枚の小さな紙切れを取り出した。
「じゃじゃーん!」
カノンは大げさなほどにそれを天高く掲げた後私の目の前に広げてみせた。
「こ、これって…!」
そこに書かれていた内容に私は声が震えるのが分かった。
だってそれは今年できた近場の遊園地の優待券だったのだから。
その遊園地は終日満員で地元民である私たちですら行ったことが無かった。
それに入場料が結構お高くつくというのも私たちが寄り付かない理由だ。
遊園地というのは多くの学生がデートスポットにしたい場所1,2を争うのだろうが…
あの遊園地には学生というより大人の方が多い。
そのためか大人でも楽しめる遊園地というのを売りにしている。
ちなみにこれテレビ情報ね。
「こ、これ…本当に貰ってもいいの…?」
「うん、いいよ!」
震える手でそのチケットを握る。
あまりの緊張にチケットを破ってしまいそうになっていた。
「そ、ソラ…息遣い荒いよ、さっきからずっとはぁはぁ言ってる」
「あ、うん…すぅはぁ…」
大きく深呼吸をする。
だんだんと落ち着いてきたのが分かった。
「ほんと、アリガトね、カノン…何から何まで…」
「いいよ、だって…友達、でしょ?」
「なに臭いセリフ言ってるの?」
そして二人して笑った。
私はこのときは気付かなかった。
この日の夜にあんなことを言われるなんて…
「俺、明後日には元いたところに戻るよ」
晩餐の席でお兄ちゃんはそんなことを言い出したのだ…。