Train Cinderella ~A Prohibition Lover~ 作:如月ライト
前回までのTrain Cinderellaいっくよー!
久しぶりに過去の夢を見た私こと時雨氷空
はぁ…お兄ちゃんとの最後の思い出を見て気分もなんか変な感じだよぉ
仲良しのカノンちゃんと帰ってる途中私はまたも過去のことを思い出してしまう
慌てて別れちゃったから後でカノンちゃんにちゃんと謝っておかなくちゃ…
それより…ママが言ってた大事な事って何だろう…?
変な事だったら承知しないんだからねっ!
開演ブザー
「ただいま~」
家に帰った私を出迎えたのは甘い魅惑の香りだった。
この香りには覚えがある。
私の感が正しければたぶん台所に行けば…。
「あら、お帰り~。早かったのね」
そこには見慣れた母の姿、そして台所のテーブルの上には大量のお菓子が。
「もうママァ、作り過ぎなんじゃない?今日は何作ったの?」
私のママ、時雨 晴(ハレ)
少し前も説明したとおり色々な事をやらかしてしまう人物だ。
そして大の料理好き。
特にお菓子作りが何よりの趣味でママの作ったお菓子はお世辞抜きに店のモノよりおいしい。
一度お店を開いてみてはどうかとママに言ったところ「ソラ以外のためになんで作らないといけないの?」と真顔で返されてしまった。
ママはどうやら自分の大切な人のためにしかお菓子を作らないらしい。
「え~と今日はねぇ…クッキーにショートケーキ、それにカップケーキでしょ…あとはぁ…」
「あ、も、もういいよママ、それぐらいで…」
とにかく二人で食べきれないほどのお菓子を作ったということは確かだ。
「あ、そうだ!ママ!帰ってきたら大事な話があるんじゃなかったの!?」
私は目の前のお菓子に圧倒されて大切なことが抜け落ちてしまっていた。
(お菓子のせい・・・だけじゃないだろうな、たぶん私がお菓子の魔力に…)
そんな誰にしているかもわからない言い訳じみたことを頭の中で反復してみる。
それが昔からの私のくせだった。
何かに付けては言い訳じみたことを頭の中で反復して自己を護る。
必死に治そうとはしているんだけどやっぱり頭の方がそれをおぼえちゃってるみたい。
ママは私の質問をきいた後ちらりと時計を見る。
そのあと少し考える素振りを見せたのち笑顔で私にこう言った。
「じゃあリビングでちょっと待っててくれる?今からこのお菓子にあうお茶入れるから」
私はそれをききリビングへと向かった。
リビングの小さなテーブルにはクッキーやらケーキやらの大量のお菓子が散りばめられている。
イスに座った私にママは多分新品であろうコーヒーカップを手渡す。
その中身は上品な香りを漂わせながら湯気を上げている。
私は紅茶に関しては疎いほうだがこれが確実にいい茶葉を使って作られているということぐらいはわかった。
「まぁとりあえず食べて?」
ママは笑顔で私に作ったお菓子を食べるように促す。
私は一番手近にあったクッキーを手に取り口に放り込む。
口に入れた瞬間ふんわりとした甘さが広がりサクサクという音と共に私を楽しませる。
「んっ…うん!おいしいよママ!」
私は素直な感想を述べた後紅茶に口をつける。
「この紅茶も、なんか…え~と、気品?が漂う味だよ」
私のあいまいな感想にママは笑みをこぼした。
紅茶なんてあまり飲まない私にとってはこのくらいの表現が精いっぱいだった。
一つ口にしてしまうともう一つ、さらに一つと口に入れたくなってしまうもので私もその衝動に逆らえずにつづけてクッキーを口に放る。
「ふふ、いっぱいあるから遠慮しないでね」
ママは私の食べる姿を嬉しそうに見つめている。
「はむはむっ…んっ…ねぇママ?それでさ話って何なの?」
私は口の中のモノを全て飲み込んでからママに話を振る。
「それはね…え~と…ヤダ、まだちょっと恥ずかしいわ…」
(ま、ママが照れてる!?)
多分ママがこんなに照れている姿を見るのは生まれて初めてじゃないだろうか。
「もぅ!なんでママが照れてるの!?早く言ってよ!」
そう、私のことなのにママが照れる必要はない。
もしかしてママにとっては恥ずかしいことで私にとっては大切な事?
私はまだ照れて身悶えているママを尻目に思考を巡らせる。
(も、もしかして妊娠!?あ、でもママと男の人ができてるって聞いたことはないし…じゃあ仕事関連で何かあったのかな…?いや、仕事関連で恥ずかしがることなんて…う~ん…?)
考えている合間にもついお菓子に手を出してしまう。
どうやらお菓子に弱いのは女子の逆らえない本能らしい。
(って私!なんか変な方向にずれてるから!)
一度紅茶を口に含みその香りと味で気分を落ち着かせてもう一度ママに問いただす。
「そんなに恥ずかしがらずに言ってよ!」
ついつい荒げた口調になってしまう、反省反省。
「え~とね…笑わない…よね?」
ママは私の顔を覗き込み少し上目づかいで尋ねてくる。
たびたび思うのだがママはまだ少し学生気分でいるようだった。
こんなしぐさ確実に好きな男子とかにするものだろうと私は思った。
「うん、笑わないから」
「じゃあいうね…お母さんはね…」
「うん、ママは?」
「再婚することにしたの!」
私は一瞬その言葉の意味を確認する。
(え~と…サイコン…?さいこん、再婚…もう一度結婚すること…でいいんだよね?)
脳内辞典で言葉の意味を確認した私はママの方を向く。
ママが嘘を吐いていないかどうかを確認するためだ。
「…えへへ、言っちゃった…」
少し頬を染めて恥ずかしそうに舌を出すしぐさをするママ。
ママは昔から嘘を吐くとすぐ眼が泳ぐのだがそれすらも確認できない。
それじゃあ結論はひとつしかない。
(え~と…ママが再婚するんだね、納得納得…)
「って、えぇぇーー!?」
私がママの再婚宣言を聞いてから驚きの声を上げるまでこの間(かん)2.5秒。
私の運命っていうか人生はほんの2.5秒前から崩れ始めることとなった。