Train Cinderella ~A Prohibition Lover~ 作:如月ライト
「さささ、再婚ー!?」
私の声はもう裏返ってしまっていた。
「うん、再婚するの…」
「え?ま、マジなの…!?って私に何の相談もなく!?それより相手って誰なの!イケメン?お金持ち?もしかしておじいちゃんみたいな年齢の人とかじゃ!?」
「ちょっと、落ち着いて…」
私はママのそんな声さえ聞こえないほどパニックに陥ってしまっていた。
第一こんなことはおかしいのだ。
そう、これは夢だ、悪い夢か何かだ。
目が覚めたらきっといつも通りの…
「落ち着けって言ってるの!」
「ふごご…!?」
ママの怒号が響いたと思うと私の口の中に大量のクッキーが押し込まれる。
私はたまにママのキャラがよくわからなくなってくる。
実際こう怒声を響かせてる方がしっくりくるっていうかいつもの動作が裏みたいな感じがしてきてならない。
「どう?落ち着いた?」
ママはさっきまでの怒号が嘘みたいな優しい声でそう尋ねてくる。
しかしその顔は今までにないぐらい微笑んでいて、手にはまだ大量のクッキーが握られていた。
私はそれを見て首を縦に大きく振ることしかできなかった。
多分今ここでまだ騒げばあのクッキーが私を窒息死させかねないからだ。
今の心中別の意味で騒ぎたかったがクッキーで窒息するにはまだ私は若すぎるのだ。
そんな意味不明な事を私は思いながらママが次の話を切り出してくるのを待っていた。
「あなたと話さなかったのは悪いと思ってるの、ゴメンね。でもこれは運命的だったと思うのよ!」
ママは私が落ち着いた途端今までの経緯語り出した。
しかしその説明は大げさな身振り手振りがついているものだったが。
「つい一昨日のことだったわ、私が街を歩いてるとあの人に出会ったのよ…それからはすぐだったわね、あの人と私は新しい恋に落ちたの…それで今に至るのよ」
「いやいやいや!今の会話のどこに再婚するって要素あるの!?」
「私があの人と出会ったってところがポイントね。もうそこで再婚を決意したわ」
メチャクチャだった。
この母親には人間の常識やら感情やらが一切抜け落ちているんじゃないかと疑問に思った。
話を要約すると一目ぼれをした男にすぐに求婚してオーケーを貰った…ってところかな。
ホント冷静に考えてよくこんな奇行を相手も承諾したなと思う。
「あら、ちょっと遅かったけど来たみたいよ、マイダーリンが!」
私の家の前で車が止まったのが分かった。
今のままの言動から察するにどうやら再婚相手が来たらしい。
多分私に合わせるためにそんなことをしたんだろうな。
そう考えるとこの大量のお菓子もその男に食べてもらうってことで納得だ。
(って、それよりマイダーリンって何!?もう新婚気分!?)
「大丈夫よ、そんなに心配しなくても悪い人じゃないから」
私は少し不安げな顔をしていたのだろう。
それを見たママはそう声をかけてくれる。
ママはそういうところ妙に気のまわし方が上手い。
人の感情を顔を見て読み取るってことが得意なのかもしれない。
「さぁ、入って」
ママに呼ばれたその男はリビングのドアを開けて部屋に踏み入ってきた。
その瞬間私は絶句した。
ママの再婚相手は憎きあの男だったのだ。