Train Cinderella ~A Prohibition Lover~ 作:如月ライト
「あ、そうだ!ねぇねぇお兄ちゃん、お昼から買い物行かない?」
お昼ご飯を食べ終わって後片付けをしていた私はそうお兄ちゃんに声をかけた。
「いいけど…急になんでだ?」
「う~ん…ほら、お兄ちゃんがこっちに来てから一緒にお買いものなんてしてなかったでしょ?やっぱりここは兄妹水入らずってことでさ」
それにお兄ちゃんとのデートでもあるわけだし…。
まぁそれを差し引いても久しぶりにお兄ちゃんと一緒にお出かけがしたかった。
一緒にお出かけしたのはいつが最後だったかな…?
子供の頃にママに頼まれたお使いを一緒にいったのが最後だっけ?
それほどまでに私の記憶は劣化していた。
それがまた悲しくなるが今はお兄ちゃんとの思い出作りが先決である。
楽しい思い出なんていくらでも増えるのだから…。
「そうだな…久しぶりに二人きりで買い物ってのもいいかもな。よし、いこうか」
「ありがとお兄ちゃん!じゃあ用意してくるね!」
パタパタと自分の部屋へ戻っていこうとする私にお兄ちゃんが声をかけてきた。
「で、どこ行くんだ?」
「それは…」
私達は数10分間歩いた。
そしてやってきましたのはここ!大型ショッピングモール!
ここは地元の中でも特に大きいところで近隣の街からもたくさんのお客さんが来るのである。
それに数回ほどバラエティ番組の撮影のロケ地に選ばれたほどだ。
ここに行けば何でもそろうとさえ謳われている。
それだけさまざまな店舗が入っていることだ。
さらには映画館やゲームセンター、それにボウリング場まであるのだ。
下手をすればここで1日を潰せるほどに充実した場所だ。
「じゃあお兄ちゃん、はいろっか」
「おう…ッとほら、手、繋いでろ。この人混みじゃはぐれちゃうだろ?」
「お兄ちゃん…」
お兄ちゃんは恥ずかしそうに私の前へ手をつきだす。
私も控えめにその手を取る。
多分今の私は顔が真っ赤になってるんだろうな…。
きゅっと握った手は温かなぬくもりを放っていた。
そのぬくもりがお兄ちゃんが確かにここにいる証、そして私の安心できる場所だった。
私とお兄ちゃんを繋ぐぬくもりを感じながら買い物を開始することに。
といってもあまり欲しいものもなかったのでぶらぶらして行き当たりばったりで買う、みたいなことだったが。
それでもお兄ちゃんの手には買い物袋が2つ握られていたし私が持ってきたポーチの中には小さな包みが3つも入っている。
やっぱりこういうところに来るといらないかなって思うモノも買っちゃうよね?
「次はどこに行く?ソラの行きたいところは他にあるか?」
「う~ん…私は…」
考えている私の目にあるモノが飛び込んできた。
「あ、あれは…!」
私はそれに近づく。
それはこんもりとした山だった。
山のてっぺんに3枚1000円と書かれた値札が堂々と鎮座している。
「お兄ちゃん…これ!」
そして私はその山から一つを取ってお兄ちゃんに見せる。
「ちょっ、ソラ、お前それって…」
「え?…パンツだよ?」
私はさも当たり前のように答えるけどお兄ちゃんはちょっとうろたえているようだ。
う~ん…男の人ってこういうのに抵抗ないのかな?
「パンツなのはわかるんだけどさ…その…声デカいから…」
「え?」
あたりを見ると少し変な目が私たち兄妹に注がれている。
途端に恥ずかしさが湧き上がってきて私はうつむいてしまう。
「それにあんまり3枚1000円のパンツをはくのは兄ちゃん感心しないな」
「え?でもこれ可愛いよ?…それにこっちの方が私に似合うの多いし」
そうなのだ、実は私がはいているパンツのほとんどはこういう安売りのやつ。
友達はみんなちょっといい奴をはいてるけど…。
私はそれがあまり似合わないのだ。
だって高いのってなんだか大人っぽいデザインのモノが多いからお尻がちょっと小さ目な私がはくとおかしく見えちゃうんだもん。
それにたいていがブラとセットで売ってるし…。
お尻も小っちゃいけどおっぱいもあんまり出てない私には大人用のブラなど到底無縁の代物だった。
なので私はこっちの売れ残った若干子供っぽいデザインのパンツをはくのだ。
「その…ソラも苦労してるんだな…」
なんか悲しい眼で見られた…。
むぅ…お兄ちゃんもやっぱり大人っぽいのがいいのかな…?
「あ、お兄ちゃん!この中から好きなの選んでよ」
「え?マジでいいの?」
途端にお兄ちゃんの目が輝く。
私がこくりと頷くとお兄ちゃんは目にも止まらぬ速さでパンツの山に手を突っ込んだ。
そして一瞬でそこから手を抜き出す。
その手にはパンツが3枚握られていた。
「これがいいな」
「これって…紐パン!?こんなのいくらお兄ちゃんの好みでもはけないよぉ…」
たまにこういうエッチなのも混ざってるから3枚1000円は侮れない。
しかし…こんなに大量の山の中から紐パンだけを、しかも3枚確実にとるなんてお兄ちゃんって何者!?
「もうお兄ちゃんには頼らないもん!」
「ごめんごめん…あ、これなんてどうだ?ピンクのふりふり」
「あ!これ結構可愛い!…う~んちょっとモコモコしてるけど…でもいいや。まずは一枚目っと」
それから数十分間、私達はパンツ探しをたのしんでいた。
「ふぅ…いっぱい買っちゃったね…」
「あぁそうだな…こんなに荷物が多くなるなんてな…」
そうしてこのショッピングモールに来てから数時間。
私達の両手いっぱいに買い物袋がさげられていた。
「くぅ…こうなるんだったら免許取ってればよかった…」
「お兄ちゃん…免許とっても車ないよ?」
「あ、そうだな…」
もう話すのも疲れた。
それほどまでに私もお兄ちゃんもハジけていたのだ。
と、突然にぐぅと私のおなかが大きな音をたてた。
「…おなか、すいたな…」
それに連動したようにお兄ちゃんのおなかも大きな音をたてた。
「そうだな…俺もなんか食いたいな…そうだ!食って帰ろうか?もちろん俺のおごりだ」
「え!?いいの!?」
「もちろん!」
「やったー!」
なんだかごはんの話をしていたらもっと腹の虫がうなりをあげる。
早く飯をよこせと暴れ始めた。
「じゃあフードコートいくか」
「うん!」
そうしてフードコートに足を運んだ私達を出迎えたのは食欲をそそるいい匂いだった。
その匂いに余計に腹の虫が暴れる。
もう我慢できない食欲を抑えながら私はお兄ちゃんに手を引かれて一つのお店の前へ。
「ここって…和食のお店?」
「うん。ここならそらの好きなてんぷらも食べれるしな…あれ?もしかして…てんぷら、好きじゃなくなった?」
「ううん!大好き!…何でお兄ちゃん覚えてたの?」
「お前昔っから何か食べに行くって言ったらすぐにてんぷらが食べたいって言ってたよな?あれは正直笑えたぜ」
笑いながら昔のことを言うお兄ちゃんに少し腹を立ててしまった。
そこまで笑わなくても…。
「むぅ…お兄ちゃんだっていっつも焼肉とかハンバーグとかしか言ってなかったじゃん!」
「うっ…そこをつかれるとは…ってソラも覚えてたのかよ」
「もちろんだよ!お兄ちゃんの事なんか忘れたことないもん!」
そう…お兄ちゃんの事なら全部覚えてるんだ…。
ぐぅとさっきよりも大きなおなかの音が私たちの会話を引き裂いた。
「…入るか」
「うん、そうだね!」
そうして私たちはおなか一杯になるまでてんぷらを食べたの。
サクサクのそれはやけに懐かしい味がした…。